世界屠畜紀行 THE WORLD’S SLAUGHTERHOUSE TOUR (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.17
  • (95)
  • (82)
  • (44)
  • (6)
  • (0)
本棚登録 : 889
感想 : 106
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043943951

作品紹介・あらすじ

「食べるために動物を殺すことをかわいそうと思ったり、屠畜に従事する人を残酷と感じるのは、日本だけなの?他の国は違うなら、彼らと私たちでは何がどう違うの?」アメリカ、インド、エジプト、チェコ、モンゴル、バリ、韓国、東京、沖縄。世界の屠畜現場を徹底取材!いつも「肉」を食べているのに、なぜか考えない「肉になるまで」の営み。そこはとても面白い世界だった。イラストルポルタージュの傑作、遂に文庫化。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 内容(「BOOK」データベースより)
    「食べるために動物を殺すことをかわいそうと思ったり、屠畜に従事する人を残酷と感じるのは、日本だけなの?他の国は違うなら、彼らと私たちでは何がどう違うの?」アメリカ、インド、エジプト、チェコ、モンゴル、バリ、韓国、東京、沖縄。世界の屠畜現場を徹底取材!いつも「肉」を食べているのに、なぜか考えない「肉になるまで」の営み。そこはとても面白い世界だった。イラストルポルタージュの傑作、遂に文庫化。

    肉が好きです。特に焼肉が大好き。出来る事なら毎日食べたい。カルビにホルモンにタン。どれもこれも家畜とお肉にしてくれるひとが居て初めて成立する事です。でもそこはかとなく流れる屠畜への蔑視。それが世界共通なのか日本だけのものなのか。とことん潜入取材をしている稀有な本だと思います。「飼い喰い」を先に読みましたがその手前にある世界の屠畜事情のルポです。自分自身目の当りにしたらきっとしばらく肉食えなくなるであろう光景のオンパレードですが、屠畜蔑視ではなく逆に尊敬してしまいます。速やかに裁かれで美味しく安全なお肉として皆の食卓に上るその大変さ。その為に変化進化してきた食肉業界。未だに結婚差別や就職差別があると言います。そういう人は肉食わないのかと声を大きくして言いたい。おちょぼ口でかわいそうなどと言いながら肉を口に運ぶ人々。自分の手を汚さないままに批判だけで恩恵を享受する人がどれだけ多いことか。
    と、堅い話はあるものの、実際世界中のお肉の現場をイラスト付きで解説する本書は、興味津々で是非読んでいただきたいです。読み終わった時にはパックのお肉の手前の姿が思い浮かぶはず。それをありがたく思いながら今日もおいしく頂きましょう。

  • 屠畜っていうと、牛や豚などを「殺して肉にする」エグいと思われるテーマです。獣医師にとっても、と畜検査員になりたい!と免許取得後の第一選択にしていることはまずないんじゃないかと個人的には思うわけですが、本意・不本意の別なく、と畜検査員になられた方にはぜひ一度お手にとって眺めていただけると良いのではないかと思います。

    僕はこの本を読んで、自分の仕事であると畜検査がより一層好きになりました。

  • 好奇心が知らない世界を身近にする。私たちも疑問は投げ掛けて、食わず嫌いを無くそう!

    続編が待ち遠しいです。その次は革製品に関する本も書(描)いてくださらないかなぁ?と密かに期待しています。

  • テーマは良い。中身も好き。
    時系列順に書いてるようでそうでもない(のか後から振り返ってごちゃ混ぜに比較して書いてるのか)のでわかりにくいところがある。一番最初に日本を載せたほうがいいのでは。もしくは●ページに後述してますが、と書いてほしい。消化不良で全部読むの不快。
    実際のメインの説明よりも通訳さんとか案内してくれる人の感想が多く感じるのもちょっと微妙。

  • PCで「屠殺」と一発変換できますか?
    ある種の言葉は、大概の環境では一発変換されないように設定されています。差別に関わるとされる言葉は、変換候補リストから意図的に外されているのが現状です。
    日本(特に西日本)では、屠畜や皮革加工業に携わる人間は長らく差別の対象となっていた歴史があります。
    本書はもともと解放出版社の雑誌連載をまとめて同社から出版されたものなので、どうしても差別に関わる著述部分が入りますが、決してそれがメインではなく、筆はむしろ軽妙なので、そっち系が嫌いな方も、それを理由に敬遠するにはもったいない内容です。

    食肉は動物を殺さない限り決して手に入らない。当たり前のことですが、日本ではその部分が依然として意図的にスポイルされている(魚でさえ、切り身以外の状態を見たことのない親も珍しくない)状況です。
    しかし屠畜・食肉加工の現場には、いかにして健康状態を見抜き、苦痛を与えずに殺し、無駄を出さずに切り捌くかという、感嘆を禁じ得ない職人技や魂が息づいています。
    それを詳細な取材と、実に細かいイラストで紹介してあり、飽きさせません。
    「命をいただく」というぶれない視点を持ったうえで、「それはそうとお肉おいしそう」という食いしん坊の目が常にあるので、文章自体は実に軽やかで、説教臭さはそんなに感じないのがいいです。というか食べたくなる。
    国が違えば好まれる肉も、その家畜が尊ばれる理由も、料理法も違う。そして差別もあったりなかったりする。面白いです。

  • 自分が見てたようで、見えてなかった世界が分かった。
    自分の目で、屠畜の現場をみてみたい、やってみたいってすごい思った。

    それなしには、命の重さだとかを子どもたちに伝えられない気がする。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「やってみたいってすごい思った。」
      素晴しい行動力と観察眼です。そして必然だったように「飼い喰い」に至るのが凄過ぎです!
      「やってみたいってすごい思った。」
      素晴しい行動力と観察眼です。そして必然だったように「飼い喰い」に至るのが凄過ぎです!
      2013/07/05
  • 日本については、芝浦屠場については本当に詳しくて、また肉だけではなく内臓や革鞣しまで追っている。東京が全国一の海外からも呼び声高い豚革の生産地、というのは意外でしたが、考えてみれば全国一豚を消費しているのだから頷ける。BSE検査で分解されていく一頭を追うための手間にはひたすらに頭が下がる。私たちが安心して肉を食べられるのは業者さんの尽力による、ということを肝に銘じたい。
    韓国も屠蓄は歴史的に最下層の白丁と呼ばれる人々が担ってきたが、朝鮮戦争で階層意識はぐちゃぐちゃになってしまい、今は皆ゼロから、という意識がある、とのこと。しかし、エリート意識の高い結婚観のため屠蓄に関わる人はどうやら壁がありそう。
    バリ島は島が豊かなので、基本おおらか。一人前の男は豚は捌けて当然‥‥でも苦手なら他の人がやってくれる、この大らかさはすごいな。見習えたらどれだけ幸せになるか。
    イスラム世界の屠蓄については国の差も当然あるようだが、根元的に我々とは理解の解離があるような感を受ける。これが第三世界なのか、と頭を抱えたくなる‥‥屠殺という職業を面向きは肯定しながらも彼らに敵意を向けたり、あるいは隠さず吐き捨て蔑む人々。なんなんだろうな‥‥。
    チェコのザビヤチカは伝統の豊饒祭だからいいというのは良く理解出来るが、大型の屠蓄場となると残酷と動物愛護団体のTV版組を見ている一般の人は言う。取材していないからその是非を下せないというなら何故書いたと読む方は思ってしまうが(笑)
    モンゴルの遊牧民の屠蓄が一番しっくりくる。可愛がって育て、客人の歓迎のためつぶす。これ以上素晴らしい考え方ってない。
    アメリカは機械化により中産的な職業だった屠蓄は最悪と言われるまでになった。そこを統括する人々はやはり明るくてたくましいが、下は書かれてはいないが違法就労外国人だろうな‥‥カオスな社会だ。そして南北差別がはっきり覗けるのもすごい。
    各国の歴史的文化的考察はちょっと浅い感じがしました。世界と言っても資金的に無理があったらしく、部分的。でも発売したら思ったよりうけたから続編書くよ、と言ってくれてるので楽しみにしています。

  • おもしろかった。世界の様々な国で家畜がどのように食肉として処理されているかを突撃レポートしている。「関心のあるものを見て作者大興奮」という本なので、屠殺や部落差別について掘り下げたくなったら、また別の専門書を。そのよいきっかけになる本だと思う。

    登場する肉料理がとてもおいしそう。とりあえず焼肉定食を食べに行ってきた。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「そのよいきっかけになる本」
      そうですね。
      頭の中に「何故?」と言う疑問符も浮かんで来るのですが、内澤旬子の好奇心の方に引っ張られてしまう感...
      「そのよいきっかけになる本」
      そうですね。
      頭の中に「何故?」と言う疑問符も浮かんで来るのですが、内澤旬子の好奇心の方に引っ張られてしまう感じですね。。。
      2012/12/25
  • 昨年宮崎で起こった口蹄疫のこともあり、屠畜という分野を「他の人よりかは多分知っている状態」である自分を戒めたくて読んでみた。

    文章としてはどうかなーと感じる部分も多々あった。差別問題に関する記述が所々でてきたが、これはどうも蛇足だった感がする。(差別問題を取り上げるな、という意味では決してなく、扱うなという意味でも決してなく。)もっと別の所で掘り下げてもよかったのではないかなと。屠畜という行為そのもののこと、差別や文化の否定に関することと分けて読みたかった気もする。

    世界の屠畜文化の描写はとても分かりやすく素晴らしかった。文化として肯定/否定する姿勢や、家畜の擬人化などの問題はどこにでもある問題で考えていかないとなぁと思わされる部分もあった。

    「畜産王国」で育ってきたこと、子どもの頃から「屠ること」について高齢者から聞かされてきたこともあり、私自身にはこの本を読んで肉が食べれなくなったとかいうことはない。むしろ見えにくかった裏側が見えてよかったと思う。

    モンゴルの章や、殺すという単語とは別に「切る」などの意味で言葉を分けている点など、前述した口蹄疫の問題を改めて考えさせられる内容も多くあった。私の中ではまだ口蹄疫は終わった問題ではないので、結びつけて考えさせられて、勉強になった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「分けて読みたかった気もする」
      文庫になる前の出版社が解放出版社だから、或る程度は仕方無いのかも。考えようによっては、色々な問題点を知る切っ...
      「分けて読みたかった気もする」
      文庫になる前の出版社が解放出版社だから、或る程度は仕方無いのかも。考えようによっては、色々な問題点を知る切っ掛けになると言えるのかも。
      早く続編が出ますように!
      2012/09/19
    • macochiさん
      nyancomaruさん。コメントありがとうございます。確かに、考え方でとらえ方が違ってきますね。一方的に否定ばかり考えるのは、思考停止にな...
      nyancomaruさん。コメントありがとうございます。確かに、考え方でとらえ方が違ってきますね。一方的に否定ばかり考えるのは、思考停止になりかねませんね。ご指摘ありがとうございます!
      2012/09/25
  • 筆者がモンゴルにて、羊を目の前で解体され振る舞われたことをきっかけに「屠畜」に興味を持ち、海外と国内の屠畜の現場を回ったルポです。文庫で450P以上と長いですが、各国の屠畜を通じて文化人類学、歴史、動物の情動、宗教観、日本特有の差別の構造にも触れ、興味が途切れることなく読めました。

    オリジナルの単行本は2007年に発表されてますが、それ以前にも屠畜・屠殺を題材にした本は多く出版されています。しかし屠畜をこのようなポップな装丁、感性、文体で本にしたことは凄いと思います。当時話題になりましたし、多くの人の価値観への見事なカウンターとなったのではないかと想像します。

    文体および文中の著者の振る舞いは、よく言えば天真爛漫、悪く言えば(著者ご本人も文中で書いてますが)不躾で、著者の素直なリアクションが伝わってきます。素直ということは当然、著者のバイアスもそのまま文中に現れるので、動物愛護の気持ちの強い人などからしたらケンカを売られているように感じる物言いも見られます。そのあたりは読者の好みによりますね。

    基本的には、動物が気絶させられたり、ノドを捌かれ吊るされたり、皮を剥がされたりする場面においても終始ネガティブな反応はほぼなく、ワクワク!な筆者ですが、文中で一箇所だけ著者が「かわいそう」と思う場面があります。それは肉の需要量に応えるため、人工授精によって牛を増やしている現実に触れた時です。人間の都合で自然な繁殖である「交尾」をせずして生涯を終える牛がいるということを知った時の筆者の心情はワクワク!の時と対照的で印象に残っています。

    日本の食肉文化の歴史は世界的に比べて浅く、そのうえ現代は家畜を飼う一般家庭も少ない。「動物を殺して生きている」という感覚は極限まで薄められています。ベジタリアンではないわたしとしては、動物がどういう風に肉へと加工されていくのかを見ずして美味しい思いだけするのはフェアではないと思ったので(フェアにはなり得ないとも思っていますが)、屠畜の現場の動画を目を逸らさずに視聴しました。おそらくその動画は動物愛護的観点に偏った編集がされていて、外国の特に残酷なものであったと思いますが…。あとはお肉を食べられることに感謝を忘れないようにしようと思います。

    個人的な話ですが、わたしの幼少期に母は移動販売業をしており、顧客の中にたまたま屠畜場で働く人がいて、学校を終えたわたしの送り迎えのついでに仕事のため2、3回ほど屠畜場へ母はわたしを連れて行きました。そこでわたしは初めて吊るされた大きな枝肉を見て、「本当にあの『牛』が『お肉』になるんだ」と悟ったことを読後に思い出しました。そして今思えば母は屠畜業に対する差別がなかったのかもしれないと気づき、今更ながら母を尊敬しました。

    日本の屠畜場は世界に比べて衛生面ではトップクラスであり(その分めちゃくちゃスタッフさんが働いてくれている)、日本産の肉を食べられていることはとてもありがたいことだと改めて感じました(ま、食肉偽装という別の問題はあるでしょうけれど…)。

全106件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1967年生まれ。神奈川県出身。文筆家、イラストレーター。緻密な画風と旺盛な行動力を持つ。異文化、建築、書籍、屠畜などをテーマに、日本各地・世界各国の図書館、印刷所、トイレなどのさまざまな「現場」を取材し、イラストと文章で見せる手法に独自の観察眼が光る。2011年、『身体のいいなり』(朝日新聞出版社、のち朝日文庫)で第27回講談社エッセイ賞を受賞。他に『世界屠畜紀行』(角川文庫)、『ストーカーとの七〇〇日戦争』(文藝春秋)、『着せる女』(本の雑誌社)など多数。

「2021年 『飼い喰い 三匹の豚とわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

内澤旬子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
卯月 妙子
宮部みゆき
村上 春樹
村上 春樹
三浦 しをん
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×