世界屠畜紀行 THE WORLD’S SLAUGHTERHOUSE TOUR (角川文庫)

著者 : 内澤旬子
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年5月25日発売)
4.20
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  • Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043943951

作品紹介

「食べるために動物を殺すことをかわいそうと思ったり、屠畜に従事する人を残酷と感じるのは、日本だけなの?他の国は違うなら、彼らと私たちでは何がどう違うの?」アメリカ、インド、エジプト、チェコ、モンゴル、バリ、韓国、東京、沖縄。世界の屠畜現場を徹底取材!いつも「肉」を食べているのに、なぜか考えない「肉になるまで」の営み。そこはとても面白い世界だった。イラストルポルタージュの傑作、遂に文庫化。

世界屠畜紀行 THE WORLD’S SLAUGHTERHOUSE TOUR (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • PCで「屠殺」と一発変換できますか?
    ある種の言葉は、大概の環境では一発変換されないように設定されています。差別に関わるとされる言葉は、変換候補リストから意図的に外されているのが現状です。
    日本(特に西日本)では、屠畜や皮革加工業に携わる人間は長らく差別の対象となっていた歴史があります。
    本書はもともと解放出版社の雑誌連載をまとめて同社から出版されたものなので、どうしても差別に関わる著述部分が入りますが、決してそれがメインではなく、筆はむしろ軽妙なので、そっち系が嫌いな方も、それを理由に敬遠するにはもったいない内容です。

    食肉は動物を殺さない限り決して手に入らない。当たり前のことですが、日本ではその部分が依然として意図的にスポイルされている(魚でさえ、切り身以外の状態を見たことのない親も珍しくない)状況です。
    しかし屠畜・食肉加工の現場には、いかにして健康状態を見抜き、苦痛を与えずに殺し、無駄を出さずに切り捌くかという、感嘆を禁じ得ない職人技や魂が息づいています。
    それを詳細な取材と、実に細かいイラストで紹介してあり、飽きさせません。
    「命をいただく」というぶれない視点を持ったうえで、「それはそうとお肉おいしそう」という食いしん坊の目が常にあるので、文章自体は実に軽やかで、説教臭さはそんなに感じないのがいいです。というか食べたくなる。
    国が違えば好まれる肉も、その家畜が尊ばれる理由も、料理法も違う。そして差別もあったりなかったりする。面白いです。

  • 自分が見てたようで、見えてなかった世界が分かった。
    自分の目で、屠畜の現場をみてみたい、やってみたいってすごい思った。

    それなしには、命の重さだとかを子どもたちに伝えられない気がする。

  • 日本については、芝浦屠場については本当に詳しくて、また肉だけではなく内臓や革鞣しまで追っている。東京が全国一の海外からも呼び声高い豚革の生産地、というのは意外でしたが、考えてみれば全国一豚を消費しているのだから頷ける。BSE検査で分解されていく一頭を追うための手間にはひたすらに頭が下がる。私たちが安心して肉を食べられるのは業者さんの尽力による、ということを肝に銘じたい。
    韓国も屠蓄は歴史的に最下層の白丁と呼ばれる人々が担ってきたが、朝鮮戦争で階層意識はぐちゃぐちゃになってしまい、今は皆ゼロから、という意識がある、とのこと。しかし、エリート意識の高い結婚観のため屠蓄に関わる人はどうやら壁がありそう。
    バリ島は島が豊かなので、基本おおらか。一人前の男は豚は捌けて当然‥‥でも苦手なら他の人がやってくれる、この大らかさはすごいな。見習えたらどれだけ幸せになるか。
    イスラム世界の屠蓄については国の差も当然あるようだが、根元的に我々とは理解の解離があるような感を受ける。これが第三世界なのか、と頭を抱えたくなる‥‥屠殺という職業を面向きは肯定しながらも彼らに敵意を向けたり、あるいは隠さず吐き捨て蔑む人々。なんなんだろうな‥‥。
    チェコのザビヤチカは伝統の豊饒祭だからいいというのは良く理解出来るが、大型の屠蓄場となると残酷と動物愛護団体のTV版組を見ている一般の人は言う。取材していないからその是非を下せないというなら何故書いたと読む方は思ってしまうが(笑)
    モンゴルの遊牧民の屠蓄が一番しっくりくる。可愛がって育て、客人の歓迎のためつぶす。これ以上素晴らしい考え方ってない。
    アメリカは機械化により中産的な職業だった屠蓄は最悪と言われるまでになった。そこを統括する人々はやはり明るくてたくましいが、下は書かれてはいないが違法就労外国人だろうな‥‥カオスな社会だ。そして南北差別がはっきり覗けるのもすごい。
    各国の歴史的文化的考察はちょっと浅い感じがしました。世界と言っても資金的に無理があったらしく、部分的。でも発売したら思ったよりうけたから続編書くよ、と言ってくれてるので楽しみにしています。

  • おもしろかった。世界の様々な国で家畜がどのように食肉として処理されているかを突撃レポートしている。「関心のあるものを見て作者大興奮」という本なので、屠殺や部落差別について掘り下げたくなったら、また別の専門書を。そのよいきっかけになる本だと思う。

    登場する肉料理がとてもおいしそう。とりあえず焼肉定食を食べに行ってきた。

  • 昨年宮崎で起こった口蹄疫のこともあり、屠畜という分野を「他の人よりかは多分知っている状態」である自分を戒めたくて読んでみた。

    文章としてはどうかなーと感じる部分も多々あった。差別問題に関する記述が所々でてきたが、これはどうも蛇足だった感がする。(差別問題を取り上げるな、という意味では決してなく、扱うなという意味でも決してなく。)もっと別の所で掘り下げてもよかったのではないかなと。屠畜という行為そのもののこと、差別や文化の否定に関することと分けて読みたかった気もする。

    世界の屠畜文化の描写はとても分かりやすく素晴らしかった。文化として肯定/否定する姿勢や、家畜の擬人化などの問題はどこにでもある問題で考えていかないとなぁと思わされる部分もあった。

    「畜産王国」で育ってきたこと、子どもの頃から「屠ること」について高齢者から聞かされてきたこともあり、私自身にはこの本を読んで肉が食べれなくなったとかいうことはない。むしろ見えにくかった裏側が見えてよかったと思う。

    モンゴルの章や、殺すという単語とは別に「切る」などの意味で言葉を分けている点など、前述した口蹄疫の問題を改めて考えさせられる内容も多くあった。私の中ではまだ口蹄疫は終わった問題ではないので、結びつけて考えさせられて、勉強になった。

  • トチク、どころかトサツすらPCで変換できないってどういうことなの?
    と転記しようとして思った。
    ちなみに、ほふる、かちく、から変換した。

    著者が実際に韓国、バリ、エジプト、イスラム世界、チェコ、モンゴル、インド、アメリカ、日本の芝浦、沖縄、墨田とか、の屠畜場に行って見てきた記録。
    「部落開放」という雑誌に連載されていたもの。

    まず忌避感沸く人が多いってそんなに多いんだとびっくりした。
    だってお肉だよ?普通に牛肉豚肉鶏肉なんだから元はそうだろうに。
    まあ捌いた事など魚しかない私が言うのもなんだけど。
    もちろんニオイとかいろいろは気になるけれどそれだけじゃないのか。

    色々考えさせられるというか私の感性もどちらかと言うと内澤さんよりなのでそういった意味でのショックを受けた。

  • どれも目を瞠る話が続く。なかでも印象的なのはラクダのとインドの中での話。体当たりの取材に基づく圧巻の本。続きが読みたい。

  • 10年かけて取材しつくした感じ(・ω・)圧巻の文章力と知識!屠畜について、世界から日本から突き詰める内澤さんのアプローチの姿勢に感動!

  • (推薦者コメント)
    肉を食べるとき、その肉が元々生きていた動物であったことを私たちは意識しているだろうか。誰しも一度は考えたことがあると思うが、どうやって屠殺が行われているのかを分かっている人はほとんどいないだろう。本書は、世界の屠畜の現実をまじまじと見せつけてくれる。

  • 世界各国の屠畜の現場を見て歩いたイラスト付きの本。
    差別のあるところと無いところが国によって異なる。
    肉を食べる前に「動物」を屠ることになるが、その行為そのものが「タブー」となっているのがいまの現状。

    それを表面に出しているのが本書である。「オチャラカ」という表現がいいかどうか分からないが、著者の軽い文章が重たいテーマを明るくしてくれている。

    この次は著者の「飼い喰い」を読んでみようと思う。

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