群青に沈め (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043944163

作品紹介・あらすじ

1945年、夏。特攻要員の宣言をされた僕が配属されたのは、「伏龍隊」。機雷を持って海に潜り、敵上陸艇を爆破して自らも海の藻屑となる任務だ。来るべき「死」へ向かって訓練を重ねる日々。そんな中でも日常は続いてゆく。友情、上官への反目、海のきらめき、カレーの味…だが、ある日の訓練中、僕の前で友人が死んだ。そして、戦況は悪化の一途を辿り…。比類ないみずみずしさで描かれる、新時代の戦争文学。

感想・レビュー・書評

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  • 伏龍の特攻隊員になった少年の話。

    戦争真っ只中だが、戦闘のシーンはない。
    かっこ悪い死に方は嫌だ、意味のある死に方とは?
    まだ少年である主人公の心の成長に寄り添った物語。
    訓練中、戦争が終わった後の友人の死。
    悲しいけれど、特攻について深く考えるきっかけになる物語だった。

  • 多分、戦争を体験してない方が書いたのかな?という印象。
    悲しいより、戦時下の訓練兵の日常で、隊律は厳しいけど、一般人と比べたら幸せそうに映る。
    予科練に入って美味しいとこだけで、苦労を知らないと自ら言ってた祖父に重なった。

  • 熊谷達也さんは戦争文学も書いていると知って、読んでみました。
    17歳で特攻に志願することになってしまった少年の物語。特攻と言っても、よく知られている飛行機による特攻ではなくて、人間魚雷の回天でもなくて、戦争末期、飛行機も潜水艦も燃料も、何もかもが底を尽きている状況で考え出された、体一つで潜水して敵艦を待ち受ける「伏龍(ふくりゅう)」。
    飛行機乗りにあこがれて、そうじゃなくてもカッコよく軍人として活躍したいと願って志願した少年にとって、変な形のかぶとをかぶって、歩いて潜水するなんて、「かっこ悪すぎる!」と思えた。
    でも、そこで仲間たちと出会い、良い上司も悪い上司も含め、色々な大人に出会い、戦争の意味、この作戦の意味を考え葛藤する。
    「伏龍」は作戦だけで終わったのか、実際に実行されたのかこの小説だけではわからなかったけど、なんとも恐ろしくて、言い方は悪いけど滑稽な作戦だ。こんな特攻もあったのかと、悲しくなります。
    数ある戦争文学の中でも、主人公が17歳と若く、戦争を見つめる視点が新鮮に感じた。

  • 特攻隊伏龍に属する少年兵から見た戦争。素直な気持ちで書かれていて、終戦までの死と隣り合わせの中、死を受け入れていく気持ち、流されながらも、ぼんやりとした生きたい気持ち。こんな事を若い彼らに背負わせていた戦争とは?無駄に亡くなっていった人達にはご冥福を祈りたい。先人があっての今なんだなと思えた。

  • P329

  • 解説にもあったけれど、珍しいタイプの戦争小説。
    戦地も戦闘シーンもないのに、戦争の犠牲者が増えていく…
    戦争が終わっても犠牲者が出る。
    なんとも、何にも納得もスッキリもしないけれど、こういう感覚がとても大事なんだと思いました。
    2015/4/7読了

  • 簡易潜水服で海に潜り、敵の大型上陸用船艇が頭上を通過する瞬間に棒機雷で爆破する――。
    その特攻要員として「伏龍隊」に配属された僕、浅沼遼一。17歳。
    訓練を受けるべく海軍工作学校に出向いたものの、装備はお粗末、武器は粗悪品、作戦が無謀なら訓練さえ無謀。そして上官からのいじめ。
    戦局への不安と、米軍の上陸から家族を守るために死ぬという決意と、ひもじく辛く惨めな日々。 
    そのころ僕らは本当はなにも知らなかった。
    「お国のために」と高らかに言いながら、その先には避けがたい死が待つこと。
    そして戦地に出ずして死んでしまう、そんな無念があること。
    親孝行のつもりで死地へと望んで向かうことが、どんなに親不孝なことかも。

    『お母さん、さようなら』

    人生には、後戻りできなくなる選択の瞬間がある。
    この群青の海に沈み、敵舟艇と刺し違えて散るのが、今の僕らの忘れてはならない任務なのだ。
    けれど現実には、貧相な装備で無茶な訓練を強いられ、その挙句の事故で戦地に出ずして次々と死んでゆく友人たちの姿があった。
    本当に怖いのは、意味のない死なのに。
    誰か答えて欲しい、あの戦争は、一体なんだったのか――?

    多くの作品にとりあげられ、その悲惨な記憶を今に伝える「神風特別攻撃隊」、『出口のない海』などで描かれた人間魚雷「回天」。
    この作品では、それらと同じように太平洋戦争末期、秘密裏に編成され、しかし実戦に投入されることなく終戦を迎えた忘れられた特攻部隊「伏龍隊」に配属された少年兵たちの、訓練に明け暮れる毎日を描く。
    いずれ来る「死」への思い。母や幼い弟妹たちを守りたい気持ち。かけがえのない仲間や友人たちとの日々。大人たちに思うこと。
    重くなりがちな題材を扱っていますが、毎日が戦争だった、そんな時代を少年らしい率直な言葉で伝えてくれている、読みやすい一冊です。

  • 現代が舞台の小説を読んでいるような感じでした。
    文章の感じと主人公の気持ちの揺れ動き方が。

    伏龍隊というものの存在を私は初めて知りました。
    読みやすい文章だし、そういった意味で、若い子向けにはよいきっかけ?になる本かなあって思いました。

  • 15点。
    もっと事前勉強してから書きましょう。

  • 重苦しいテーマを、
    重苦しくない軽いタッチで描いているのは、
    万人受けというか、
    戦争アレルギーの若い人も受け入れやすくていいのかも、
    と、思わなくもないけれども、
    ワタシ的にはこの軽さが不快。

    新しいとか、瑞々しいとかいう評価はどうなんだ??
    納得いかないんですけど。

    あえて伏龍に目を向けたことには敬意を評しますがね。

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著者プロフィール

1958年仙台市生まれ。東京電機大学理工学部卒業。97年「ウエンカムイの爪」で第10回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2000年に『漂泊の牙』で第19回新田次郎文学賞、04年に『邂逅の森』で第17回山本周五郎賞、第131回直木賞を受賞。宮城県気仙沼市がモデルの架空の町を舞台とする「仙河海サーガ」シリーズのほか、青春小説から歴史小説まで、幅広い作品に挑戦し続けている。近著に『我は景祐』『無刑人 芦東山』、エッセイ集『いつもの明日』などがある。

「2022年 『孤立宇宙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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