心臓に毛が生えている理由 (角川文庫)

著者 : 米原万里
  • 角川学芸出版 (2011年4月23日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043944361

作品紹介

在プラハ・ソビエト学校で少女時代をすごし、ロシア語同時通訳者として活躍した著者が、鋭い言語感覚、深い洞察力で、人間の豊かさや愚かさをユーモアたっぷりに綴る最後のエッセイ集。同時通訳の究極の心得を披露する表題作、"素晴らしい"を意味する単語が数十通りもあるロシアと、何でも"カワイイ!"ですませる日本の違いをユニークに紹介する「素晴らしい!」等、米原万里の魅力をじっくり味わえる。

心臓に毛が生えている理由 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • いつものウィットに富んだ小咄から、亡き母への弔辞、「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」についての対談など、大変充実した内容でした。
    そして読み終わって、もう米原万里はこの世にいないのだ・・・と思うと、悲しくて涙が溢れました。もっともっと長生きしてほしかった。3.11も原発事故も見てほしかった。

  • 米原万里さんの最後のエッセイ集。コラムなのかな?ショートショートくらいの長さです。でも、短いなかにもピリリと光るものがあるし引き締まる。本の中で自分の日本語が堅いって言ってたけど、これが好きかな。最後にお母さんの告別式で読んだもの、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』についての対談があって、これが本当に読めて良かった。

  • 本書は米原万里さんが新聞や雑誌に連載していたコラムを集めたもの。2006年に癌で逝った著者最後のエッセイ集です。話題はロシア語通訳として活躍しながら考えたこと、少女時代の家族との思い出やソビエト学校で学んだこと、日本人のアイデンティティについて、食や四季の花々に関する蘊蓄、などなど多岐にわたります。最後には「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」の楽屋話にあたる対談が収められている、大変充実した文庫本です。

    米原さんが趣味で住宅の設計図を描いていたというのは初耳!小説や映画に出てくる家は、全体像を再構成して平面図や立面図を描いていたそう。招かれた知人の家、新聞広告や折り込みチラシの間取り図を見る度に手を加えたくなり、あれこれのリフォーム・バージョンを図面化していたとのこと。しかも仕事そっちのけで建築雑誌を愛読し、建築材や住宅設備、新しい工法に関する情報を絶え間なく取り入れていたというから病膏肓に入る。建築家さんでもここまで情熱的なプロはなかなかいません。

    ソビエト学校でのドラゴン・アレクサンドラの話が印象に残りました。彼女は図書室に君臨する司書で、子どもたちに大変恐れられています。それは本を返す時にあれこれ厳しく尋問するからでした。まだロシア語が話せなかったマリを相手に「どんな内容だったの?話して聞かせてちょうだい。」と追及の手を緩めません。質問に身振り手振りで何とか答えようとするマリのつたないロシア語を、ドラゴンは辛抱強く正しい文章に直してくれました。

    いつの間にかマリは、返却する時にドラゴンに語り聞かせることを想定しながら本を読むようになります。内容をできるだけ簡潔にかつ面白く伝えようと悪戦苦闘しているうちに、いつも絶句していた授業での口頭質問もこなせるようになり先生や同級生を驚かせました。読むことよりも覚えることよりも、自分の言葉で内容をかいつまんで話すことこそ子どもにとって必要な訓練なのだなあと、帰国して日本のマルバツ式テストにぶっとんだという著者の経験を重ね、しばし考え込んでしまいました。

    著者が、スターリンによる粛清の嵐吹き荒れるソ連の女囚ラーゲリー生存者を取材した際の記事「花より団子か団子より花か」は、胸に迫るものがありました。女囚たちは暗く狭いバラックで、疲れきった体を休める寸暇を惜しみ、読んだことのある文学作品や寸劇を披露しあっていました。生存者はその楽しみこそが、飢餓と不潔に苦しむ彼女たちの尊厳を守ってくれたと語ります。この収容所でのエピソードは「オリガ・モリソヴナの反語法」に取り入れられているそうです。絶対に読みます!

  • 2012.8.1〜9 読了
    日本と欧米の文化の違いが浮き彫りになっていて興味深い。中欧ヨーロッパの位置付け、知識量しか評価しない日本教育と論文・口頭試問評価の欧米教育、返却時にどんな内容だったか聞かれる図書室、ロシア語では何通りもある”素晴らしい”の表現、基本的には底抜けのお人好しで天賦の才能は自分だけのものではないと考えるロシア人の性向などなど。しかしロシア人が昔から蕎麦を食べていたとは・・・

  • ぴりっと引き締まった、短いのにみっちり詰まった文章たち。ひとところに落ち着きがちな興味や思考を、ちょっとずらしてくれる楽しさ。

  • 短いエッセイが沢山入った本ですが、どれを読んでもどこから読んでも、とにかく面白い。エピソードも面白いし米原さんのものの捉え方も面白いし、語り口も威勢が良くて爽快。米原さんのエッセイは、飽きることなく繰り返し読んでいます。

  • ウルトラ・ナショナリズムについての見解が面白い

  • 毒舌にはユーモアが不可欠。

  • 心臓に毛が生えている理由、わかりますか?

    いえ、これはあなたの心臓にということではなく、米原万里自身の話。通訳を仕事にするということは、言語における文化の違いを仲介することにもなる。日本語のように、名詞に男性形や女性形がない言語をこれとは異なる国の言語に同時通訳で訳す時、スピーカーの言葉を最後まで待つという訳にはいかない。つまり、腹を決めて、あるいは剛腹に、形容詞を待たずに訳し始める必要がある。まして、米原万里のお相手は政治的要人。こうして、心臓に毛が生えるのである。

    つくづく頭の良い人だと思うし、様々な考察は読む価値のある内容だ。惜しむらくは既に逝去された彼女のエッセイがこれ以上増えないという事。

  • ロシアや中欧の人たち文化や通訳のあるある話がとても新鮮で興味深い。米原さんの文章も読みやすいし、おもしろい。

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