ミュージック・ブレス・ユー!! (角川文庫)

著者 : 津村記久子
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年6月23日発売)
3.88
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  • レビュー :72
  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043944477

ミュージック・ブレス・ユー!! (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 読むほどにハマっていく心地良さと
    (いやむしろ心地悪さ笑)
    どうしようもない連中なのに
    好きになっていくこの感覚。


    学校の授業より
    3分間のレコードから本当のことを学んだ
    自分のような人間にとっては
    これほど切実に響く小説はないんじゃないかな。


    主人公は
    赤い髪にメガネとカラフルな歯列矯正気器がトレードマークの高校3年生の少女
    オケタニアザミ。


    アザミの日常を
    淡々と描いただけの話なのに
    どうしてこんなにも胸を打つんやろ…


    同世代の女の子たちを遠く感じる
    不器用な主人公の
    うまく生きられない焦りが
    同じような学生生活を送った自分の胸の深いところに
    とにかく突き刺さるのです。


    音楽が鳴っている間は
    自分が自分でなくなることができるという妄想を抱き、
    音楽こそは
    世界が吹き込んでくる窓だと信じていたアザミ。


    音楽マニアではなく
    一つの生き方として
    音楽を選ぶしかなかったんだなぁって
    もう解りすぎるくらい
    解るんですよね。


    人とのコミュニケーションの苦手な印象が強いアザミだけど
    本当は常に人の動向を気にし
    相手の感情を読みとろうとする、

    実は繊細で気遣いに長けた人であり
    人の気持ちの解る人間なんだと思う。


    そんなアザミの唯一の理解者は
    他人の痛みを自分の痛みと感じ
    正義を貫く男気を持ちながらも
    好きな男子には滅法弱い
    親友のチユキ。
    (この子のキャラが飛び抜けていい!)


    のっぽで派手なアザミと
    服も持ち物もモノトーンで統一した
    背の低いチユキとの
    カッコ悪くて
    不器用で
    ベタベタしない友情に
    三十路をとうに過ぎたオッサンが
    何度泣かされたことか(>_<)



    音楽を聴くしか方法がなかった弱い自分や
    できない自分を認め、
    その上で
    一歩だけ前へ歩き出そうとするアザミ。


    好きなことは好きやと
    胸を張って言える君は
    間違ってなんかないよ。

    何かをとことん
    好きになったという思いは
    必ず人間としての深みに変わる。


    自分の「好き」を貫くことは、
    絶対の絶対に
    無駄になんかならへんねんから(^_^)v


    いつかアザミのその後を
    読んでみたいなぁ♪



    いい音楽に触れた時のように、
    読後は
    世界がちょっとだけ違って見える小説です。

  • 冒頭───
    みんな出て行ってしまった。閑散としたスタジオの真ん中に置かれたパイプ椅子に座って、アザミは、ひっぱたかれた頬が今ごろひりひりと痛みはじめるのを感じていた。たたかれた当初は何が起こったのかわからなかった。床に落ちたやたらテンプルの太いプラスチックフレームのメガネを拾い上げた時にやっと、あらあたしびんたされたわ、と頭の中の悠長な部分が言った。女の子に殴られたのは初めてだった。さなえちゃんがそういうことをする女の子だとは思わなかった。あの高い声でまくし立てられたら、アザミは心が端から壊死するような気がして、だからそれだけで、自分はすぐに彼女の心持ちに合わせてどんなことでも言ったはずなのに、さなえちゃんはすごい癇癪をたててアザミをひっぱたき、捨て台詞を残して行ってしまった。
    「だいたいなんなんよ! その矯正器の色!」
     アザミは、携帯電話の画面を「ミラー」というモードにして、イーと歯を噛みあわせ、歯列矯正器をしげしげと眺めた。今年の阪神はどうなんでしょうねえ、という世間話をしていて、気がついたら歯医者の先生はブレースに黒と黄色のゴムをはめてしまっていた。アザミはそれが気に入っており、学校でも家でも、鏡を見るたびににたりと笑ってブレースの確認を怠らなかったし、友達にもうけた。
    ───

    どうです? 面白いでしょう?
    これだけ書き出しにインパクトがある小説は、綿矢りさ以外ではめったに出会わなかったので、長々と引用してしまいました。

    津村記久子は優れた青春小説の書き手でもある、とどこかの新聞の評者が書いていたが、私も全く同感だ。

    この作品は大阪の田舎の高校が舞台。
    どちらかと言えば、スクールカーストの底辺部にいる高校三年生の主人公アザミ。
    外国の音楽にのめり込み過ぎて、勉強もできず受験などどこ吹く風で、一見、閉塞感を抱き鬱々としているようだが、どこか達観している。
    ただし無気力に人生を諦めているわけではなく、真剣な側面も持ち合わせている。
    アザミの唯一の友人ともいえるチアキ。
    このチアキのキャラが何とも魅力的だ。
    相手が男だろうが何だろうが、自分で納得できなければ後先考えずに行動を起こすという独特の正義感が、この物語に強烈な印象を与えている。
    暗く陰鬱になりがちな話を、笑って弾け飛ばすような爽快感のあるものに変貌させる。
    その他のアザミの周りの人々、アザミを優しく見守る(?)両親をはじめ、トノムラやメイケ君やモチヅキ君。
    アヤカちゃんやナツメさん。
    それぞれのキャラがくっきりしていて、目に浮かんでくるようだ。
    特に同じ歯医者に通い、歯が矯正されればハンサムになって好きな女子に告白できる、と頑なに信じているモチヅキ君の脳天気さは笑いを誘う。

    青春時代、特に高校卒業を間近に控えて、将来の自分の姿に思いを馳せるとき、若者は未来への希望と厳しい現実の狭間で揺れ動く。
    自分はどうなるのか、何を目指すべきなのか、もやもやとした心で悶々と答えがでないまま、時はどんどん過ぎてゆく。
    これもまた“青春”の一側面だ。
    この作品は、そんな悩みや苦しさを抱き、もがく若者を淡々とした筆致で見事に描いている。
    音楽を、そんな側面を象徴する微妙なエッセンスとして登場させている。

    ミュージック・ブレス・ユー!!
    一般的な、明るく感動的な印象を抱く青春物語ではないけれど、ちょっと違った雰囲気を持った青春小説の傑作だと思う。
    お薦めです。

  • うまく言えませんが、すごい好き。
    わっかるわーあと叫びたくなる、このウダウダな高校生活。
    時間は結構たっぷりあって、将来は何者になるか見えないからどっか不安で、でも友達とダベってたら元気になれて。
    あのころ、に一瞬戻った気がする。
    世に描かれるキラキラで胸キュンな青春じゃなくって、自分が過ごしたのはまさにこういう高校時代でしたよ!

    主人公のアザミは音楽依存症ってくらいのパンクロックマニア。
    小学校とかでは軽くいじめられてたのではないかと思われるくらい不器用な感じがします。
    でも、「要するに音楽は恩寵なのだ」っていうくらい、これだけ愛するものがあるのはとても幸せなことだよなあ。
    バンド名とか一個もわかりませんでしたが。
    あと、「趣味的なものと他者を同時に手に入れられる人と、他者だけの人と、趣味的なものだけの人っていう3種類がいる」っていう一文もなんとなく納得。

    それにしてもしょっちゅうお茶して結構おいしそうなもの食ってるんだけど、金よく続くなあ・・・。

  • 津村記久子さん。芥川賞を受賞しているのですね。初めて読む作家さんです。

    音楽を聴くことが何よりも大事な高校三年生のアザミが、友達や進路などについて考えるなかで、音楽と自分との関わりを問い直していく青春小説。「音楽って素晴らしい!」みたいなキラキラした話ではないのが面白いです。「音楽はただそこにあるけど、別に役には立たん…」といった感じでしょうか。言い方が難しいですが。

    津村さんはこれまで一貫して、「何も持っていない人」が「賢くなること」を小説の中で描いてきたそうです(解説より)。音楽を通して、不器用ながらも「賢く」なっていくアザミの姿が、青春を感じさせる作品でした。

  • 音楽好きな、あるいはたんにさえない学生時代をすごした、わたしたちへの祝福である。ミュージック・ブレス・アス!

  •  やっぱり、年を経るごとに高校生が主人公の小説を読むのはしんどなってきて、6年前に30代前半で読んだ「夜のピクニック」もギリオッケーくらいやってんけど、ミュージックブレスユーはアザミの気持ちに結構共感したりして一気に読めました。

     津村さんの文章は読みにくいというレビューもあるけど、逆に大阪弁やし、土地勘のある場所が舞台やと主人公が高校生でもぐっと共感できるんかな。京都の大学受験すんのに、トノムラくんが補助席確保してくれたりとか、東京が舞台の小説やとそんな細かい描写はさっと飛ばすんやけど、ちゃんと情景が浮かんでくるのがおもしろかった。

     印象的やったのは主人公アザミの親友「チユキ」。最初の方で片思いの男の子に尊大な態度を取られてふられるシーンがあって、どっちかっていうと優等生タイプのおとなしい女の子なんかなと思いきや、女子に失礼な言動を吐いた他校の男の子をトイレに閉じ込めたり、タパコのポイ捨てをした女の人のブランドバッグにこっそり捨てた吸い殻を放り入れたり、かなりぶっとんだ女の子でびっくり。そんなチユキとアザミの関係もよかった。友達とは面白い話以外したくないというチユキの言葉、あ、一緒やんと思ったり。
     
     もう高校生活なんかだいぶんと昔の話やのに、共感度が高いお話でした。今まで読んだ津村さんの小説の中ではNo.1かな。

  • 今回は社会人小説じゃないので星三つかな〜と思ってたけど、最後の最後にはやっぱり流石の津村さんらしさがあったので星四つ。

  • みんなかっこいい。

  • 不器用な生き方をしてしまう人は、周りにではなく、自分にちゃんと折り合いをつけているのだろうな。ほんとうまい、世間ずれしてるようで、ほんとはこっちが真っ当なんじゃ?って人を書くの。

  • 前から、魅力的な女性を書く人だなと思っていた。
    いまいち、大丈夫じゃない人を書くのがうまい。
    特に、この主人公のアザミは周囲から浮きまくっていて
    本人なりには、自覚していて
    合わせようとしているのだが、とけこめないので
    あきらめてしまっている。

    チナツというアザミの友達が出てくるが、この子も魅力的だ。
    飄々としていて勉強もできるのだが、強烈な正義感をもっていて、これがとても気持ちがいい。
    もっとやってやれ!!と思う。

    世の中は生きていきにくいことも多い。
    だけど、本当に好きなことがあって
    ちゃんときちんとした自分の生きる道がわかっていれば、それでいいんだと思う。

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