昭和二十年夏、僕は兵士だった (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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感想 : 25
  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043944491

作品紹介・あらすじ

俳人・金子兜太、考古学者・大塚初重、俳優・三國連太郎、漫画家・水木しげる、建築家・池田武邦。戦場で青春を送り、あの戦争を生き抜いてきた5人の著名人の苦悩と慟哭の記憶。

感想・レビュー・書評

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  • 今日は8月15日、終戦記念日である。ここ数日、梯久美子さんが書かれた太平洋戦争に関する本を3冊読んだ。もちろん、8月15日を意識して。
    終戦は1945年なので、今年は75年目にあたる。
    私自身はもちろん、直接に太平洋戦争を知っている訳ではない。終戦の時、父は16歳、母は10歳だったので、両親はある程度、実体験として戦争と戦後の混乱期を知っているはずではある。

    3冊の本を読んで、改めて感じたのは、私たちは、というか、少なくとも私は、太平洋戦争について、きちんとした知識を持っていないな、ということ。
    父親は、既に亡くなっているが、戦争の話をした記憶がない。母親は存命だが、同じく戦争の話をしたことはない。中学校や高校で歴史は勉強するが、近現代史って、ほとんど入試に出ないので、あまり真剣に勉強した記憶がない。
    本書は、戦争体験のある5名の著名な方へのインタビューで構成されている。
    その中で、建築家の池田武邦さんが、「なぜ無謀な戦争を避けられなかったのか。その理由は、日本人一人一人の中にあるはずです。辛くてもそれと向き合わないと、また同じことを繰り返すに違いありません。」、あるいは、「日本という共同体は、その共同体のために死んだ人々に対して、心から向き合い、弔うということをないがしろにしてきました。」と語られている。
    本書の筆者である、梯久美子さんの創作の想いの一部はそういうところに、すなわち、太平洋戦争のある部分を記録しておくことに、あるのではないかと感じる。


  • これまた、興味深かったです。

    戦争を題材にしたフィクションはたくさん読んだけど、実際に体験した人の話はあまり読んだことなかったかも。

    私の印象では、南方に送られると過酷なイメージ。

    水木しげるさんは、ラバウルで腕を失う経験をしたのに、なんか飄々としてて、きっと思い出したくもないこともたくさんあるだろうに、こんな風に語れるなんてすごい。
    「総員玉砕せよ!」を読もうと思いました。

    とても驚いたのが三國連太郎さん。
    完全に釣りバカのスーさんのイメージだったので、こんな波乱万丈な人生を送ったのかと本当に驚きました。

    今年は戦後70年。
    だんだんと、戦争をハッキリ覚えてる人が亡くなってしまうのは、しょうがないことなんだけど、やっぱり残念。
    その話を読んだり聞いたりした私たちが、「戦争反対」と言い続けていかないとな、と思いました。

    いやむしろ、私なんかよりもっと若い世代に読んで欲しい。
    私は、小学校で「はだしのゲン」を見させられたり「ひろしまのピカ」を読まされたりして、「もうわかったよ~、戦争怖いよー」って植えつけられてきた。
    今の子たちは学校でそういうのってない。
    せいぜい、テレビで「火垂るの墓」をやったのを録画して、見るだけじゃないのかな。
    だからこそ、知って欲しい。

  • 出版されたのが、7年前。私が読もうと思ったのは、文庫になってから。もっと早く読めばよかった。三國連太郎さん、水木しげるさんがご存命のうちに。だから、どうだってこともないんだけれど。

    金子兜太さんも、大塚初重さんも、池田武邦さんもお元気でいらっしゃるのが素晴らしい。

    それはそうなのだが、兵士として戦った方が、本当に少なくなってきた。
    そして今の日本の進む方向。

    生きた方の話を聞く、それが無理なら、書籍や映像になったものからしっかり知る。
    そこからリアルに想像する。
    それしかないような気がする。

    国のために戦うことがとてもカッコいいと思ってやまない人たちは、こんな本も読まないんだろうな。
    どうしたらいいんだ。

  • もう駄目だと思ったとき、ズタズタに切れたクレーンのワイヤーロープが何本もぶら下がっているのに気がつきました。指くらいの太さです。思わず、その一本に飛びつきました。
    うまくつかまることが出来て、反動をつけて甲板のへりにしがみつこうとしました。すると、わたしの脚に、他の誰かがすがりついてきたんです。
    二人だったか、三人だったか。その重さで、ずるずると下に落ちていきそうになります。そのまま落ちれば、下は燃えさかる船底です。
    わたしはどうしたか。
    しがみついてくる者を、蹴り落とし、振りほどきました。必死でした。芥川龍之介に「蜘蛛の糸」という小説がありますが、まさにあれと同じです。(82p)

    考古学者の重鎮、大塚初重氏の初めての戦争体験の本格的インタビューである。1926年生まれ。海軍一等兵曹として乗り込んでいた輸送船が二度撃沈され、二度とも九死に一生を得た。この本には、他に金子兜太、三国連太郎、水木しげる、池田武邦のインタビューがある。

    この壮絶な体験の前に、なんと言っていいのかわからない。このインタビューがなされたのは氏が80歳の頃。よくお年寄りは戦争体験のことは黙して語らない、ということを聞く。「戦争は二度としてはいけない」と強く思っていたとしても、である。こういうのを読むと、その気持ちが少しわかる気がする。

    現在、戦争を体験した最後の世代が次々と鬼籍に入ろうとしている。認知症を患っている方も多いが、80歳代でまだまだ矍鑠(かくしゃく)としている方もおられる。

    その方たちの話を聴く最後の「とき」が来ている。
    2014年10月22日読了

  • 俳人・金子兜太氏
    考古学者・大塚初重氏
    俳優・三國連太郎氏
    漫画家・水木しげる氏
    建築家・池田武邦氏

    兵隊として戦地に赴いていた五人に著者がインタビューをするといった形で、
    作品が構成されている。
    将校として、もしくは招集された一般兵としての立場や
    戦地が違うがそれぞれが体験した本物の戦争の話だと思いました。

    金子氏はトラック島に大尉として配属された。
    見捨てられたトラック島での生活、捕虜になったときの話が
    淡々と語られる。
    淡々とした語り口はよけいに戦争のむなしさをもの語っていた。

    大塚氏は、東京大空襲の後、下士官として寿山丸に乗り込むが
    魚雷により、船は沈没する。
    この時は、済州島に流れ着く。
    海を漂白している間の話など胸の詰まる話が多いのだが
    特にジンときたのが
    氏がもし生きて、日本に帰ることができたなら
    もう一度、歴史勉強しなおそうと。

    大塚氏のことば
    日本は神国であるとか、神風が吹くとか、そういうことではなくて
    もっと科学的な目で見た歴史を学びたいと思いました。そして、
    子供たちに間違いのない正しい歴史を教える教師になりたい。

    この言葉に、この時代、この戦争では、国のために死ぬということが前提の教育。
    その教育になんの疑問もなかった時代があったのだと、痛感させられた。

    三國氏は徴兵逃れの末、憲兵につかまり中国戦線に駆り出されることになる。
    生き抜いて、帰国するまでの話が語られている。

    この本の中で、特に淡々としているのに、
    涙が出てきてしまった章があった。
    それが
    水木氏の章だ。
    言わずと知れた、ゲゲゲの鬼太郎の作者であるが
    氏が配属されたのが激戦区のラバウルである。
    自分のいた分隊が氏一人をのこして全滅した話だとか
    仲間の死だとか、とにかく”死”の話が中心である。

    水木氏が居た隊の大隊長についての記述が

    彼の頭には自分の大義と美学をまっとうすることしかなく
    部下のことが全く見えないまま、敵にではなく自分の死に向かって突撃していった。
    そんな軍人が数百人の人間の生命を預かっていたという事実への何ともいえないやりきれなさ

    先ほどの大塚氏の話とシンクロして、何とも言えない気持ちになった。
    玉砕命令がでてしまえば、死ぬ以外の選択枝は無かった。

    以前、零戦について調べたいたことがあったときに
    ある、掲示板にたどり着いたことがあった。
    たぶん、中高生くらいの子たちの集まりだと思うのだが、
    零戦の特攻につて、
    「なんで、あんな効率の悪い戦い方をしたんだ」と、ちょっとバカにしたような文章が目にとまった。
    それを見ながら、
    そうではない、もう、資金も弾も燃料も、戦えるだけの飛行機もなくして
    誰も止めるものがいないから、最後の最後の方法が特攻しかなかった。
    もし、資金や弾や飛行機が充分であれば、”効率”の良い戦い方をしたでしょう、
    そんな想像力もなくしているのかと、愕然としたことがあった。

    池田氏は、軽巡洋艦 矢矧 に乗員
    この本を読むまで、この「矢矧」という船を知らなかった。
    「矢矧」は秘密裏に作られた巡洋艦でその最後も闇に葬られた船であったらしい。
    さらに、その秘密保持のため、矢矧の乗員は靖国にもまつられていないとのことだ。

    戦いも終盤に入り、大和を中心とした海上特攻に
    この「矢矧」と「冬月」「凉月」「磯風」「浜風」「雪風」「朝霜」「霞」「初霜」
    の計10艦

    この作戦では、無事、大和が沖縄についたとしても
    陸上に乗り上げて砲台として使用する予定だったという。
    どちらにしても、大和には”戦艦”としての未来はなかったのだな~と、
    しみじみ思った。

    一緒に出撃していた、「磯風」の乗組員の話があった。
    「矢矧」が自立航行不能となり、「磯風」への移乗を試みた際に
    「磯風」もまた、至近弾を受けて航行不能となる。
    その時の話が

    正直、あの戦いは、大和の主砲が働いてくれさえしたら、あんなに惨めなことにならなかったと思います。
    ~中略~
    視界が効かず、敵機の姿も、ごく近くに下降してくるまで見えない。
    それに味方の飛行機は一機も飛んでいないのですから。

    この言葉に、この時の戦況がありありとうかがえる。
    戦争を戦っていた人たちは、
    日本は負けるという気持ちがあったのだとおもう。
    しかし、
    先日、義父と話をしていたら、
    義父が「まさか、日本が負けるとは思いもしなかった。
    ずっと、勝っていると言われて、その通りだと思ってたんだ」
    と、言っていた。

    そこでまた、
    大塚氏の話を思いだのだ。

    戦争を知らない自分が、戦争について学ぼうとする場合は、
    正しい歴史と、証言を聞くしかないです。

  • 忘れてはいけない日本の過去。
    死ぬかもしれないと思うことがなく
    毎日を生きることができる。
    そのことがどれだけ幸せか、計り知れない。
    「好きなことを勉強できることが何より幸せ」という言葉にグサリときた。
    毎日大切に生きよう、そう思える本。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    かれらもまた、あの夏、ひとりの兵士だった。俳人・金子兜太、考古学者・大塚初重、俳優・三國連太郎、漫画家・水木しげる、建築家・池田武邦。廃墟の中から新しい日本を作り上げた男たちの原点は、太平洋戦争の最前線で戦った日々にあった。何もかも失った若者は、どのようにして人生を立て直したのか。過酷な戦場体験と戦後の軌跡を語り尽くした感動のノンフィクション。巻末に児玉清氏との対談を収録。

  • 生き残った人の背負うものの重さは、戦場を知らない私たちには想像できない。
    語り継ぐことの大切さを感じると同時に、語りたくない人も多かろうことも思う。

  • 「狂うひと」がとてもよかったので、梯久美子さんの未読の著作をさかのぼって読んでいこうと思い、まずこれを。

    兵士として敗戦の日を迎え、戦後の人生を生き抜き、それぞれの世界で一流となった方たちへの聞き書き。戦時中の体験はどの方も壮絶で、つくづく軍隊というものの恐ろしさを痛感させられる。それだけでも充分本として成立しただろうが、戦後をどう生きたかということにも多く筆が割かれていて、そこがとても良かった。

    当然ながら、置かれた状況は異なるし、戦後の歩みも違うわけだが、戦争で死んでいった人たちのことをずっと胸に抱いている点は共通している。生き残ったこと、自分が生きていることの意味を問い続けずにはいられない人生…。どれだけ多くの人がそうやって生きてきたのだろう。

    どの人の話もそれぞれに重いが、金子兜太宗匠の「アベ政治を許さない」の背景にはこういう体験があったのかと、心に強く残った。

  • 悲しい

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。1961(昭和36)年、熊本市生まれ。北海道大学文学部卒業後、編集者を経て文筆業に。2005年のデビュー作『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。同書は米、英、仏、伊など世界8か国で翻訳出版されている。著書に『昭和二十年夏、僕は兵士だった』、『百年の手紙 日本人が遺したことば』、『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』(読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞、講談社ノンフィクション賞受賞)、『原民喜 死と愛と孤独の肖像』などがある。

「2020年 『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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