左近の桜 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 1377
感想 : 116
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043944576

作品紹介・あらすじ

武蔵野にたたずむ料理屋「左近」。じつは、男同士が忍び逢う宿屋である。宿の長男で十六歳の桜蔵にはその気もないが、あやかしの者たちが現れては、交わりを求めてくる。そのたびに逃れようとする桜蔵だが。

感想・レビュー・書評

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  • この世とあの世のあわいでまどろみのなかに見た夢のようなお話。長野まゆみさんの小説を読むのは久しぶり。どっぷり楽しみました。

    本人自身その気がなくても、なぜか男を惹きつける
    桜蔵(さくら)は「左近」という世間をはばかる逢瀬のための隠れ宿の長男である。父、母、弟がいるが
    自分は血の繋がりがないような気がしている。それに兄弟は庶子、父には正妻がいる(「浮かれ猫」に登場するけどカッコいい)

    桜蔵がひろってくる男というのがこの世ならざるあやかしのものたちばかり。成就のために男たちが引き寄せられてる感じで、そこには父の柾や父の友人、浜尾が仕向けた案件もあったり。
    皆が桜蔵のことを「女」というのが、ちょっとうーむな感じですが…

    鵺が出てくる「空舟」と、弟の先生関連の「天神さまの云うとおり」が好き。
    流れるような文章に誘われて、浮かんでくる情景に陶酔させられます。

  • この世ならぬものたちを次々と引き寄せて、気が付いたら向こう側へ踏み込んでいる。夢と現が分かち難く溶け合っているような、そんなあいまいで妖しくて生々しくない雰囲気が好きだ。
    それに浸りたくて、忘れかけた頃にふと読みたくなる。

  • エロチックだけど生々しくなく、登場人物が魅力的。桜蔵くんはほんとは認めたくないだけで、悪あがきしてるんだよね

  • 美しい日本語が並んでいて、死と生が交わるこの不思議な世界観に引き込まれてしまった。
    柾さん、すき…。

  • ものすごく久しぶりに長野まゆみを読んだ。高校以来だ。昔はあのきらきらした言葉に魅了され、ほのかな雰囲気に酔わされたがあのころと作風が変わっていると感じるのは読み手としての自分の変化だけではないように思った。事実、解説にもかつての長野まゆみと現在の長野まゆみには意識的な解離があることが記されていた。そしてこの変化は好ましかった。私も中高生のころは古いことばや漢字を多用した文章を好んで書いたが徐々にだれもが読みやすいやわらかなことばを意識的に選ぶようになった。私ごときを長野まゆみと比べては失敬にもほどがあるが親近感をいだいたことはたしかだ。
    そしてこの物語は決して直截には描かれないが明らかで艶かしい。とてもエロティックだ。これが少年ではなく青年の物語だからだろう。ほのめかされることは表現される以上に想像をかきたてる。悪くない再会だった。

  • この方の作品ははじめて読みました。
    古本屋さんで見つけて、裏表紙のあらすじに惹かれて勢いで購入。

    それを読んだ時点で想像していた設定とは結構異なり、
    「あ、ひょっとしてやっちゃった?」
    とも思ったのですが、読みすすめていくうちに、どんどん世界観に引き込まれていきました。

    文体がものすごく好みですし、すごく幻想的な雰囲気が漂っていて、魅力的でした。
    何より柾さん(主人公の父)がすごくかっこいい!
    大人の男として、ものすごく魅力的でした。
    そのほかの大人も、ものすごく素敵な人が多いです。

    幻想的な感じのものが好きな人や、かっこいい男性キャラが好きな人にオススメしたい本です!

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「幻想的な感じのものが好きな人」
      ジャケ買いしちゃいそうな表紙絵。
      現在、長野まゆみを物色中(タイトルが素敵だから)。。。
      「幻想的な感じのものが好きな人」
      ジャケ買いしちゃいそうな表紙絵。
      現在、長野まゆみを物色中(タイトルが素敵だから)。。。
      2012/09/07
  • 常世の男と関わりを持ってしまう美青年の話。
    話のパターンは大概同じだが、情景描写などの文章が美しく、また、妖しく描かれていて心が惹かれる。
    序盤の主人公は美青年という事を除いては普通の青年だが、話の中で様々な常世の男と関わるにつれ、男でありながら女としての魅力も徐々に増す。中学生という子供ではなく大人とも言い難い微妙な年齢の主人公だからこそ、耽美的な作品に仕上がっている。

  • 長野まゆみさんの文章のファンなので、読む麻薬だと思う。文章そのものが読んでいて心地よい。
    どこか妖しさの漂う美しい描写、核心に触れず行間を探り合う軽妙な会話。好き。
    ただ、以前の自分であれば何も考えずに楽しめたのだと思うけれど、親世代の年齢となってしまった今では桜蔵くんを取り巻く大人たちの無責任さに苛立ちを感じてしまい駄目だった…。単に自分が読者層から外れてしまったというだけのことで作者に非はないけれど、こんなこともあるのだなあ。

  • これを読んで一発で長野さんにハマった作品。
    友人に長野さん勧めるときは大体これから。
    文体が程よく読みやすいけれども、長野さんらしい独特の浮世離れした空気感が伝わって来る一冊。
    表紙もイメージに合っててとても好き。
    そしてなにより柾さんがかっこ良さすぎてもう

  • 友人から勧められて読んだものです。

    いわくありげな連れ込み宿の子である桜蔵(さくら)が、人ならざるものとの縁を結んでしまう(いろんな意味で)という短編集です。
    ほんのりとすべての物語がつながっていて、さくさく読めました。個人的には「骨箱」が好きです。オカルト系は苦手と思っていたのですが、これはそのいわゆる悠連さんたちがとても生身の人間のように書かれていたので、自然に読めました。

    全体的な描写がとってもしっとりとした雰囲気を感じさせていて、最初時代小説か?と思ってしまうほどでした。
    父親である(血のつながりはない)柾や、店の常連の浜尾などのおっちゃん(?)がいい味出しております。

    直接的な話法は無いのですが、ああ、”した”んだな。っていうのが言外に香ってきて、情緒がある感じでした。

    長野まゆみ先生の本は本屋で見かけたことはあったのですが、読んだのは初めてです。
    勧めてくれた友人曰く「好みが分かれる」とのことでしたが、自分的には嫌いではありません。

    もっと、柾や浜尾について突っ込んでくれたらなお楽しかった…とは思いました。

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著者プロフィール

長野まゆみ(ながの・まゆみ)東京都生まれ。一九八八年「少年アリス」で第25回文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で第四三回泉鏡花文学賞、第六八回野間文芸賞を受賞。『野ばら』『天体議会』『新世界』『テレヴィジョン・シティ』『超少年』『野川』『デカルコマニア』『チマチマ記』『45°ここだけの話』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『銀河の通信所』『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』「左近の桜」シリーズなど著書多数。


「2022年 『ゴッホの犬と耳とひまわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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