- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043944934
感想・レビュー・書評
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愛のために「気持ち悪さ」なんて無視できてしまう。ドロドロした粘液のように、愛というものは、高い粘稠度で構成されているのだ。悪臭なんて愛のシンボル。
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ホラーというより、やっぱりファンタジーかなーと思うんですが。終始なにしろぬるぬるしている。話の内容もだけれど、文章も、何かぬるぬると悪臭を放っていそうな感じがする。ヌメリヒトモドキという生き物(劇臭、ぬるぬる、死なない)を監禁して、飼育し、死んでしまった愛妻にもう一度会おうとする話。しかし、妻としては、ここまで愛されてうれしいと思うべきなのか、てか、こんな生き物で代用するなとキレるべきなのか。主人公が、狂っていく様をとても丁寧に書いてあるのが秀逸。
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悪臭を放ち、粘液をぼたぼた落としながら這うように歩き、人々にモドキタタキで追い払われながらもぬぼっと存在しているヌメリヒトモドキ。その生態を研究している主人公はヌメリヒトモドキを一匹捕まえ浴室に監禁し、亡くした妻に似せていき、妻をヌメリヒトモドキの中に蘇らせようと奮闘する。発想の新鮮さはあまり感じないが、インパクトは充分。
それよりも、決して上手いとは思えない粘着質の文書が徹底されていて、そちらの方に凄みを感じた。主人公が人を見る目は自分にも他人にも厳しく、しかも非常に複雑に自分も他人も分析し苦悩する。その心情をとても丹念に書き上げてある。非常に読みにくいけど、そこがいい。文章はキャリアさへ積めば上手くなるのだから。その時に読み易いだけで中身が無い文章になるより遥かにいい。ただし、主人公の終盤の心情の変化の部分だけは逆に舌っ足らずで、ラストの展開に違和感を感じた。
最後のオチは王道という感じで(違和感があるにせよ)充分良いんじゃないかと思う。帯の表現には外れが多いが、「胸を撃ち抜く衝撃のラスト」という表現もありかなと思う。
なににせよ若いし、将来性充分な新人作家だと思う。大いに期待。 -
ネタバレ?
恩田陸『月の裏側』のような設定(はっきり人ならざるものが認知されているが)であるが、ねちっこい文章がそれとは別物の面白さを演出していて良いと感じた。
我思う故に我あり。 -
★3.5。ラストは好きだが長い。
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ホラー小説大賞長編賞受賞作。
「ヌメリヒトモドキ」という異形の生物をテーマにした作品。これがもう気持ち悪い。独特の粘着質な文体と相まって、とかく不愉快。想像させられて、とっても嫌。でも街の中にある「女王」の光景は、想像するとなんだか惹きつけられるものがありました。
とかくぬるぬるどろどろな印象なんだけど。怖いのは、どんどん変容する主人公の心のほうだったのですね。ラストには驚くやら哀しいやらで。どうしようもない寂寥感が残りました。 -
ヌメリヒトモドキという生物を利用して亡き妻をよみがえらそうとする話。
物話が進むごとに主人公や周囲の人の状況が刻一刻と変化していき、読むのに没頭してしまった。
とても気持ち悪いヌメリヒトモドキという正体不明の生物が妻に変わっていく過程で主人公の心情が狂っていく様がとても恐ろしかった。