アメリカの鏡・日本 完全版 (角川ソフィア文庫)
- KADOKAWA/角川学芸出版 (2015年12月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044000042
作品紹介・あらすじ
GHQ労働諮問委員会の一員として来日したミアーズ。中立な立場で日本を研究してきた彼女にとって、「軍事大国日本」は西欧列強が自ら作り上げた誇張であった。ペリーによる開国を境に平和主義であった日本がどう変化し、戦争への道を突き進んだのか。日本を西欧文明の鏡と捉え、満州事変を軸に中国・韓国との関係を分析しながら、アメリカが変えんとするその未来に警笛を鳴らす。マッカーサーが邦訳を禁じた日本論の名著。
感想・レビュー・書評
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GHQ労働局の諮問機関である11人委員会の一人である著者が、日本に対する占領政策について論じた一冊。
米国で出版されたのは1948年だけれど、当時はマッカーサーが邦訳を許さなかった。
「私たちは自分たちの行為なら犯罪と思わないことで日本を有罪にしている。これは正義ではない。明らかにリンチだ」とのように連合国を断罪しているためか。
著者はこの当時既に真珠湾攻撃は奇襲ではなく、当然の帰結であったとして見做している。
満州占領は日本にとって国家経営の先生であった英国が従来して来たことを、法に基づいて行ったに過ぎず、もし白人国家が同じことをしたならばリットン調査団の報告書は違ったものになっただろうという。
更に日本は満州における列強の不平等条約をなくそうとしたが、これは当該地に権益を持っていた連合国にはできない所業でもあった。またアジア解放の盟主になり得る日本は、植民地を失う国々にとり決して許せる存在ではなかった。
それ故に日本について、世界で最も軍国主義的であり世界征服を企てているとのレッテルを貼って究極の悪として位置付けた。そうした事情の上で日本を再教育する資格がGHQにあるかを問い掛けている。私はないと思う。
戦史研究が進んだ現在でもこういった言説がアメリカ側から出されたら驚くと思う。それなのに、この本が戦後すぐに書かれていたというのがもっとびっくり。
日本人はもちろん、アメリカをはじめとする連合国側の人たちに読んでもらいたい本。
抜粋の感想しか書けなかったけれど、内容はもっとすごいので。よくまあこれだけ言えるなぁ、と。近代戦争史の教科書にしてもいいくらい。
アメリカは日本を罰するけれど、鏡に映った自身の姿は日本と同じものなのではないか。
そういった意味が題名に込められていそう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
パールハーバーはアメリカ合衆国の征服を企んで仕掛けられた一方的な攻撃であるというが、この論理では日本を公正に罰することはできない。なぜなら私たちの公式記録が、パールハーバーはアメリカが日本に仕掛けた経済戦争への反撃だったという事実を明らかにしているからだ。パールハーバーは青天の霹靂ではなく、然るべき原因があって起きたのだ。原因は、1941年7月25日にアメリカ、イギリス、オランダが打ちだした「凍結」令である。三国は自国領内にある日本の全資産を凍結し、貿易、金融関係をすべて断絶した。
こんな文章が載る本書が書かれたのは、第二次大戦が終わった3年後の1948年。そして、書いた人物は、アメリカの白人の研究者。この事実に覚える衝撃は決して小さくない。
著者は、1920年代に日本や中国を訪れて東洋学を研究し、大戦中は米国の大学で日本社会などについて講義をしていた人物。大戦直後の1946年にはGHQの諮問機関の一員として再来日を果たし、労働基準法の策定に携わる中、本書を著した。著者が拠って立つ基本的なスタンスは、「侵略行為」と見なされた日本の行動は、欧米列強がそれ以前にさんざん行ってきた植民地拡大政策と同質のものである、というものだ。だから、本書のタイトルも「鏡」なのである。本書の魅力は、単なる日本びいきに全くなっていない、というところにある。アメリカの日本に対する行為の中に見える自己欺瞞を、まるで第三国の視点であるかの如く客観的に論じている。そのロジックの組み立ては極めて冷静で、時の元帥マッカーサーが本書の邦訳を禁じたほど、”公正”に徹している。
戦争というものは起きるものではなく、起こされるものだということも、本書は示唆する。戦前の日本がアジアに進出した行為は、軍事的要素より、政治・経済的要素が強かった。しかし、アメリカはその事実を覆い隠し、『日本人は好戦的でファナティックな軍国主義者である』と徹底したプロパガンダを行った、と指摘する。悲しいかな、こうした強者のロジックで戦争が起こされることを示す事例は、第二次大戦が最後ではなく、ごく最近も起きていることに気づかざるを得ない。 -
戦後すぐ、米軍占領下の日本に来た女性学者が書いた本だが、マッカーサーが日本での出版を禁じたという「いわくつきの」本。とは言っても、内容は突飛でも過激でもなく、客観的に、冷静に歴史を見ればそうなるのだろうというもので、終戦直後の米国にこれだけ客観的に物事を見られる人がいたということに驚いた。同時に、「他山の石」のメンタリティとは縁遠い(と個人的に思っている)多くのアメリカ人にとっては極めて受け入れがたいのだろうなという点でも納得。さすがに日本が急速に経済成長を遂げることは予想していないにしても、国際政治・地政学の面では本当に75年近く前に書かれたとは思えない、今でも通用する内容が多く含まれているように思う。
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戦後GHQの諮問機関の一員として来日した人物。一発でマッカーサーから発禁食らったらしいが、判る。よく書けたもんだし、よく日本での出版に持ち込めたものだ。
アメリカは素晴らしい、日本は後進国で翻弄された駒だったみたいな描写に辟易する部分はあるが、全体に客観的で、それに従ってあの大戦、戦前から終戦に至る過程を検証すれば見えて来る違う様相。
日本がアメリカを征服するための戦争ではなく、アメリカが日本を征服するための戦争だった。
戦後中国に関する著実も、まずその見通し通りになってしまったかと思う。
それにしても、日本とアメリカの、当時の工業力の差ってのは目がくらむ。これだけ差があって、まだ戦争になるんだ。
要は、日本だけでなく世界のどの国でも、あの大戦の総括ってきちんとできてないってことだ。 -
戦後すぐにこのような本がアメリカ人によって書かれていたとは知らなかった。著者の考えよりも事実を淡々と紹介し、アメリカがすべて正しいわけではないことを主張している。マッカーサーが日本での出版を禁止したももうなづける。日本人が書いていれば間違いなく検閲にひっかかっただろう。この頃は当たり前の事だった人種差別にもスポットを当てているのもすごい。欧米と同じことをしていても、有色人種というだけで日本の行為を否定されていた事実である。満州事変、リットン調査団等。
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米国人の日本研究者が、占領の始まる時点で、日本が鎖国終了以来国際関係の中に置かれた経緯を、列強との関係を中心に大局的に見通している。
日米戦争を中立の視点から描かれると、まったくそうであったに違いないと思う。最初から戦争になっていない。
日本人がそう見ないよう、占領軍が施した洗脳は、今もって有効であると感じる。 -
この本が終戦から間もない1948年に出版されていることは驚きだ。ペリーが来航して開国以来、日本は欧米、特にアメリカの背中を追いかけて近代化を成し遂げてきた。しかし何処で間違えたのか、やがて欧米と敵対し太平洋戦争へと突入していく。その日本の姿をアメリカを写す鏡であり、欧米がアジアで拡大させた植民地支配とパワーポリティックスの結果であると著者は看破する。戦勝国に「正義」がなかったのであれば、正義はどこにあるべきであったのか。北朝鮮の核をめぐる問題の行方が見えない東北アジアの行く末を考える上でも、考えるべき課題である。
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きっとたまに読み返すだろうな。
敗戦国日本は口をつぐむしかないし、日本人は後から何か言うことを言い訳と考えるから。。。
公平なアメリカ人がいたんですね。 -
日本の生きざまが書かれた本。
アメリカ人はアメリカ人である著者が書かれた内容を読んでどのように感じ、何か考え方が変わったのだろうか。