日本の色を知る (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川学芸出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044000127

作品紹介・あらすじ

化学染料を使わずに天然素材で糸や布を染めていた時代、日本人はどのように色と付き合っていたのか。季節を写す色を解説しつつ、紅花、藍、刈安などによる古法の染色法にもふれ、古来の色彩感覚を甦らせる。著者の工房で染められた、十二ヶ月を象徴する美しい布や、江戸時代の色帖などもカラー写真で紹介。

感想・レビュー・書評

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  • 心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたる夕顔の花
    「源氏物語」

     公園ではツツジ、レンギョウ、ライラックと、濃い紅色や黄色、薄紫などみずみずしい彩りに満ちている。そろそろラベンダーも芳香を放ち、花シーズン到来である。

     さて、掲出歌の「夕顔」は夏の花。江戸後期から続く京都の老舗「染司【そめのつかさ】よしおか」当主である、吉岡幸雄の著書「日本の色を知る」に、「初夏の彩り」として引用された和歌である。

     吉岡幸雄は、「源氏物語」に登場するさまざまな色の再現を手掛ける染織史家でもあり、本書の引用も、源氏物語の具体的な話題が多い。

     アサガオやヒルガオに比べ、梅雨明けに咲くというユウガオは、さほど目立つ存在ではなかったという。ところが、この源氏物語の「夕顔」の帖によって、広く世に知られるようになったそうだ。

    「夕顔」の帖は、まだ若き光源氏が、魅力的な六条御息所のもとに通っていたころの話である。

     ある用事を済ませてから御息所のところに行こうとした光源氏は、偶然にもユウガオの花が美しく咲く家を見かけ、一枝を所望した。その一枝を載せた白い扇に書かれていたのが、掲出歌である。

     歌意は、あて推量に高貴なお方かしらと思っております。美しい「白露の光」のため、この「夕顔」(女性を暗に指す)もいっそう美しくなります、というもの。その奥ゆかしさに魅かれて、光源氏はその女性と懇意になるのだが、彼女の命は、はかなくも断たれてしまうのだった。本書掲載の「夕顔の襲【かさね】」の色を、ぜひご覧いただきたい。
    (2016年6月19日掲載)

  • ・吉岡幸雄「日本の色を知る」(角川文庫)は 染織家の書いた書である。昔風に言へば染め物屋の著作である。当然カラーである。文庫本ながらきれいな本である。見てゐるだけで楽しい。色だけでなく花や風 景の写真も、その色に関連して載る。さういふのも美しい。例へば襲の色目、これは古語辞典や国語図録等によく出てゐる。しかし、それゆゑにどれが 本当の色なのか分からないことがよくある。似てゐると言へるのならまだ良い。へたをするとほとんど別の色である。それが同じ襲として出てくる。素人はどちらを信じたら良いのか分からなくなる。いや、どちらも信じられなくなる。さういふ時、標準になる色の図鑑等があればと思ふ。ところが、それさへも信じられない事態もあるから困る。本当の色はどれなのだと思ふことしきり、結局分からないでまますませてきた。ならば本書はどうなのだと思ふ。どうなのであらう。 最初の写真は梅の襲(12頁)である。この色はそこらへんの辞書や図録とは違ふ。紅梅の濃淡を下から上に並べた写真である。明らかにその上を行くと私は思ふ。次が桃の襲(16頁)、梅よりは明るいく澄んだ感じ、ピンクと言へさうな色を含む。次が柳の襲(20頁)、白つぽいのから新緑を超えて……いづれも和紙や布を染めたものを並べてあるのだらう。写真が大きくてきれいなこともあつて、これならば信用できさうだと思ふ。辞書等のは小さすぎる。色も悪すぎる。 信用できない。これは著者が著者である。京の染め物屋5代目である。当然、写真の色校正も著者自身がしてゐるはずである。さうでなければ広告に偽りありで ある。だとすればこの色は信用できる。さう思つて私は色を見ながら読んでゐた。杜若の襲(36頁)などは見事なものである。これでこそカキツバタだと思 ふ。女郎花の襲(60頁)や柿渋で染めた茶の色(64頁)などといふのもある。正に見てゐるだけで楽しい。
    ・ここでふと思ふ。これらの色をこのPC上で再現できるのか。最近はデジカメ写真で屏風や襖再現などといふことをやつてゐる。かなり精緻な再現ができるらしい。微妙な色の違ひもきちんと再現してしまふらしい。PC上での色の再現に関はる技術的な進歩が大きいのであらう。ならば梅の襲の紅梅の微妙なグラデーション(もどき)も再現できるのであらうか。それにはこれらが数値化できるといふこと必要なのであらうか。例へばFF0000のやうにカラーコードで表せるのか、である。たぶんかういふ処理方法だと、この十六進数から漏れる色は再現できないであらうから、あの襲の色目をPC上に再現するのは難しいのではないかと思ふ。他の方法はあるのか。あるかもしれない。しかし、個々のPCのディスプレイはまた個々で違ふ。十六進数を全く同じ色に再現できるのかどうか。 さういふことを考へてゐると、結局、PC上で色を再現するのはかなり難しい、ほとんど不可能ではないかと思つてしまふ。辞書や図録の襲の色目は見るからに 悪さうで、信用できない。そしてPCもあやしいとなると、信用できるのは、やはりかういふ著者がきちんと色校正をしてゐるであらう書しかない、たぶん。本当に「日本の色を知る」ことをしたければ、最後は直接その染色したものに当たつてみるしかない。その意味で、本書はそれに近いのかもしれないと思ふ。できることな ら、実際に、例へば紅梅の襲や桃の襲の微妙な差異を知りたいと思ふ。男でも女でも良い。男なら狩衣か直衣か。そんなのをこの吉岡氏の染めた布で作つて見せてもらひたいものである。それが日本の色を知る第一歩であらう。そこまで行く書物とか展示があつても良いと思ふのだが……。

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