釈迢空全歌集 (角川ソフィア文庫)

著者 :
制作 : 岡野 弘彦 
  • KADOKAWA/角川学芸出版
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本棚登録 : 27
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (683ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044000387

作品紹介・あらすじ

折口信夫(釈迢空)は近代日本にまるで奇蹟のように、古代の心、古代の詩歌のひびきを、鮮烈に蘇らせた歌人であった――。
短歌滅亡論を唱えるも、その真意は再生への願いであり、日本語の多彩な表記を駆使しながらつねに短歌の未来と格闘し続けた。
折口が残した6冊の歌集に私家版・自筆選集、短歌拾遺、
さらに関東大震災に直面し、短歌形式に収めることのできない苛烈な体験を詠んだ詩作品含めた、初の文庫全歌集。
「葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり」
生涯「旅びと」であった折口の姿が立ち現れてくる。

感想・レビュー・書評

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  • いまははた 老いかゞまりて、誰よりもかれよりも 低き しはぶきをする
    釈 迢空

     1953年8月、折口信夫(釈迢空)は、箱根山荘で掲出歌などを作っていた。衰弱が激しく、幻視も起こったため、下山。だが、翌月ついに永眠。掲出歌は遺影となった。享年66であった。

     国文学者・民俗学者として数々の業績を残し、優秀な弟子たちに看取【みと】られた人物が、なぜ、誰よりも低く切ない「しはぶき(咳)」をしながら世を去ったのか。そこには、太平洋戦争のなまなましい傷跡が横たわっていた。

     戦争末期の43年、最愛の弟子で、同居していた藤井春洋【はるみ】が応召した。藤井は国学院大学の教授として、研究も脂ののった時期であり、2度目の応召に緊張が走った。折口信夫は、万感の思いを歌に託すよりほかはなかった。

    かたくなに 子を愛【メ】で痴【シ】れて、みどり子の如くするなり。歩兵士官を

     立派な軍人たる春洋の頭を、赤子をかわいがるようになでたり、身体をさすったりして、祈る。

     大君の伴の荒夫の髄【スネ】こぶら
     つかみ摩【ナ】でつゝ 涕ながれぬ

     引き締まった足の「髄こぶら(ふくらはぎ)」をなでさすり、顔を押し当てて「涕【なみだ】」をも流したのだ。

     翌年、激戦地の硫黄島に着任した春洋を折口は養子にし、帰りを待った。だがついに春洋は帰らなかった。享年38。今なお、折口父子の「しはぶき」が聞こえそうだ。(2019年8月18日掲載)

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著者プロフィール

歌人・詩人、国文学・民俗学・芸能史・宗教学者。筆名・釈迢空。
大阪府木津村生れ。國學院大學卒業。國學院大學教授、および慶應義塾大学教授。
1953年9月3日逝去(66歳)。能登の墓所に養嗣子春洋とともに眠る。

「2019年 『精選 折口信夫 Ⅵ アルバム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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