痴人の愛 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川学芸出版
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本棚登録 : 1519
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044000783

作品紹介・あらすじ

「つまりナオミは天地の間に充満して、私を取り巻き、私を苦しめ、私の呻きを聞きながら、それを笑って眺めている悪霊のようなものでした」 独り者の会
社員、譲治は日本人離れした美少女ナオミに惚れ込み、立派な女に仕立てやりたいと同居を申し出る。我儘を許され性的に奔放な娘へ変貌するナオミに失望しながら、その魔性に溺れて人生を捧げる譲治の、狂おしい愛の記録。谷崎の耽美主義が発揮された代表作。解説・島田雅彦

感想・レビュー・書評

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  • 嗚呼、変態

  • 田舎から東京に出てきた譲治は、ウエイトレスとして働いていた十五のナオミを家に引き取ることを決める。彼女に教育を施して自分好みの立派な女性に仕立て上げるーそんな想いを持ちながら、会社では「君子」と呼ばれ、稼ぎもあった譲治。確かにナオミよりも立場が上のはずだったのだが、ダンスに興じたり男たちと派手な遊びを続けたり、ついにはナオミの浮気がバレて一度は別れることになった二人だったが、ナオミは女としての美しさを武器、その妖艶な肉体を出し惜しみすることで譲治を翻弄し、ついに譲治は己の欲望に負けて、ナオミの自由な生活を保障するという約束をさせられたまま、また夫婦生活を再会させることになる。この間、母を亡くし、田舎から大金も工面して、辞職して同窓生と会社を起こすことになった譲治だが、それでも尚、ナオミに貢ぐ人生を選択する。浜田や熊谷といった日本人ではもはやなく、西洋の男たちと奔放に遊ぶようになったナオミは、皮肉にも最後には譲治よりも遙かに流暢に英語を話すようになる。
    関係が破綻していることは分かっているのに、でもその関係に固執する。理性ではない。男の下半身ゆえである。あるいは今後、今以上の女を得ることができないことが分かった上でのそれを失うことへの恐怖である。自分の出身、容姿、性格、それを自分で分かっていて、なんなら女はそれを自分以上に見抜いていて、だからこそ逆に男を利用する。第三者的な目線で見れば、馬鹿な男とずる賢い女の物語にすぎないかもしれない。でも人間は理性だけでは生きられず、肉欲で人生を破滅させてしまう。いやしかし、破滅というのもあくまで第三者的な立場からの評価であり、当の本人は幸せだったりするものだ。

  • なんでこの文スト表紙しかないんだ(笑)

    にしても好きすぎる。こういう狂気的な愛は狂おしいほど好き。ナオミちゃん(良い人かどうかは別として)魅力的。

  • 優しい人はいてもいなくてもいいらしい。
    ナオミのような女になりたい。
    美しく、奔放で、可愛らしく、我儘で、愛おしく、傲慢で、他人を惹き付けて止まない、離れたくても決して離れられない、そんな唯一の女になりたい。

  • ナオミには呆れたけれど面白かった。
    最後の方は譲治が可哀想になってくる。
    けれど譲治はナオミがいれば幸せなんだろうな。

    ナオミの言葉遣いの酷さが女として「無いな」と。
    ダンスに行き出した頃から、ナオミはもう何をしても譲治は自分を捨てられないと悟っていたんだと思う。

  • 遥か昔から女と男は実に面白い。

  • この表紙には納得できないが、面白かった…。物語は源氏物語のように譲治がナオミを育てる関係から始まる。ナオミの自我がはっきりと出て手に負えなくなり、ナオミを手放す。ナオミがいないと譲治がヒステリーを起こすようになり、「これから何でも云うことを聴くか」「うん、聴く」「あたしが要るだけ、いくらでもお金を出すか」「出す」となる。外面的で物質的にこうして見ると「譲治気持ち悪っ!」となるだろう。しかし、内面的に心理的に見てみると、やはり「譲治気持ち悪っ!」となる。

  • 最後の教訓が全てを物語っている気がした。
    読み分には、何でこんなにナオミに狂わされるのだろうか?とも思ったが、男女問わず気付けばこんな状態になってしまうものなんだと思ってしまう。
    恋は盲目って事がよく分かる。

  • やっと読み終わりました。
    文学小説はなかなか読みにくく、苦手な分野なんですが、
    この小説は他のものと比べると比較的読みやすかったです。
    内容的にはこういう話は基本的にはあまり好きではないですが、この時代がどういう時代だったのかなど知れてそれは面白かったです。
    文章にしても、やはり今まで私が読んできたものとはだいぶ違っていて、詩的というか、今の時代ではなかなか使わない表現というかがとても面白くて、そういう面では楽しく読めました。
    ただ登場人物たちはあまり好きになれなかったけど、この話の終わり方は好きでした。
    人生の途中という感じが良いなと思いました。

  • なかなか衝撃な内容だった。真面目な人が一旦女性に溺れるとこんなことになってしまうのかなぁ〜

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著者プロフィール

1886年7月24日~1965年7月30日。日本の小説家。代表作に『細雪』『痴人の愛』『蓼食う虫』『春琴抄』など。

「2020年 『魔術師  谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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