もっとヘンな論文

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044000981

作品紹介・あらすじ

珍論文ハンターのサンキュータツオが、人生の貴重な時間の多くを一見無駄な研究に費やしている研究者たちの大まじめな珍論文を、芸人の嗅覚で突っ込みながら解説する、知的エンターテインメント本。

【目次】
はじめに
一本目  プロ野球選手と結婚する方法
二本目  「追いかけてくるもの」研究
三本目  徹底調査! 縄文時代の栗サイズ
四本目  かぐや姫のおじいさんは何歳か
番外編1 お色気論文大集合 
五本目  大人が本気でカブトムシ観察
六本目  競艇場のユルさについて
七本目  前世の記憶をもつ子ども
番外編2 偉大な街の研究者
八本目  鍼灸はマンガにどれだけ出てくるか
九本目  花札の図像学的考察
十本目 その1 「坊ちゃん」と瀬戸内航路
十本目 その2 「坊ちゃん」と瀬戸内航路 後日譚
あとがき

感想・レビュー・書評

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  • おもしろかったのは、「かぐや姫のおじいさんは何歳か」と、最後の「「坊ちゃん」と瀬戸内航路」。
    手掛かりの少ない中で、地道に検証していくおもしろさ。
    研究者の熱量を感じられるエピソードだった。

    全体的には、前作よりパワーダウン。

    最初はヘンに見える研究でも、その意義を気づかせ、真価とおもしろさをわからせてくれるようなツッコミが、前作の魅力。
    今回は、ヘンなところを茶化す段階にとどまりがち。
    真の意味で、論文を「おもしろい」と感じさせてくれるところまで、なかなかいかなかった。

    女性研究者に対して、礼を失しているように感じる表現もあった。

  • 研究者とは誰もが気にもとめない事柄に執着しとことん調べる人である。そしてこの本では「なんでこんな研究を?」とツッコミを入れたくなる論文ばかりを拾う。ヘンな論文である事は確かだがどの論文も興味が湧くものばかり。ヘンなもの紹介本はよく読みますがこれは特におすすめ。

  • 第一弾ほどではないけれど、やはり楽しく読んだ。最初の何本かは、研究自体が(いかに「ヘンな論文」といえど)はぁ~そうですか~という感じだし、著者もちょっと茶化しすぎではないかな。この調子で続くのならつらいなあと思ってしまったが、六本目「競艇場のユルさについて」あたりから面白くなり、七本目「前世の記憶を持つ子ども」が、おお、これは!の衝撃だった。

    論文タイトルは「『過去生の記憶』を持つ子供について」。内容はタイトルが語っているとおり、前世の記憶を鮮明に持っている子どもの事例研究である。これは、研究方法がどうとかと言う前に、あげられている実例があまりにもすごくて驚愕! 二つ三つの幼児が、前世の自分について話す内容が実にリアル。知るはずのない外国の事件のことを知っていたり、いやもう、生まれ変わりって本当にあるんじゃ?と思ってしまう。過去生の記憶をなくすきっかけのエピソードにも、妙な説得力がある。肝心の「研究」の方は、ごくあっさり触れられているだけなのだが、まあこれって「検証」は難しそうだ。

    番外篇で取り上げられている、「算数・数学の自由研究」作品コンクールで最優秀賞をとったという「メロスの全力を検証」も良かった。太宰治「走れメロス」のメロスは、本当に全力で走ったのか。どのくらいのスピードだったのか、本文から読み取って数値化してみたもので、これが中学生の手になるものだとは恐れ入る。著者も書いているが、自分で問題を立てているところが立派だなあ。与えられた問題を解いたり、暗記したりするのとは違う、「研究」の素晴らしさが感じられる。

    第一弾「ヘンな論文」の白眉は、掉尾を飾る「湯たんぽ研究」だったが、今回のしんがりもいいぞ。「海事史研究」に載った「『坊っちゃん』と瀬戸内航路」がそれで、漱石が松山に赴任する際、どういうルートをとったのか、従来の定説(広島から船)に疑問を感じて、徹底的に検証したもの。漱石研究は国文学の一大分野で、まあ膨大な論文があるのだが、こういうアプローチがあったとは。論文著者の山田廸生さんは東京都の職員だった方で、在野の研究者として、移民船の歴史などを調べてきたのだそうだ。この方にサンキュータツオさんが会いに行き、いろいろ話を聞く章がとても良かった。最後の山田さんの言葉に、人からはあまり顧みられない研究に打ち込んできた人の実感がこもっていて、しみじみとした気持ちになった。
    「海事史学会でも反響がなかったのに、こうして読んでくださっている人がいたことを知ることができてうれしいです。 80年生きてて良かった」


    サンキュータツオさんは朝日新聞の書評委員をしているのだが、取り上げる本がいつも面白そうで、紹介がとてもわかりやすい。本業もあるだろうが、もっといろいろ書いてほしいなあ。

  • 第二弾がきましたよ!

    今回のトップバッターは、プロ野球選手と結婚する方法?!
    なんだか、ミーハーで、およそ、学問とは思えない…?
    いやいや、これって確率論だし、恋愛は、「どこかに1000万以上の年収でイケメンいないかな、あっ、落ちてた!」と言うわけにはいかないので、ピンポイントで獲物を狙うためにはどうしたら良いか、ということを突き詰めている。
    良いですか、努力なくして成功なし!
    敵(伴侶)を効率よく倒す(結婚にこぎつける)には、兵法という学問があるのだ。
    その戦いはまさに恋愛!いざ、出陣と参る!
    まずは敵(恋人候補)と出会わなくちゃならない。
    警察官や消防官、医者や法曹関係者と知り合いたければ、自分がなれば一番高確率で出会える!
    (いやまず仕事だろとは思うが、それをやっている前提で)同じように野球選手と知り合いたければ、行く先は…!
    野球選手か?!ボールガールか?ビールの売り子か?
    あ、そこ、そこですか!
    虎穴に入らざんば虎子を得ず!
    これはなかなか面白い。
    うーんなんでも真剣に検討してみるもんだ。

    競艇場、鍼灸が漫画に出る割合、花札…
    やたら今回はギャンブル色が強いのだが、決して、ギャンブルサイコー!一攫千金!不労所得イエー!とならないのが、さすが論文。
    花札などは、蘊蓄を語れれば教養のある人に見えそうだ。
    小野道風はじつは教育的配慮から、斧定九郎だった、とかね!
    また、坊ちゃんと瀬戸内航路についての考察も、素晴らしい。
    うん、まあ言い方悪くすれば、これ、ストーカーだよね!
    と思いつつ、学問とはエロスであるという言葉を思い出す。
    学問とは、愛なのだ。
    愛しているから知りたい。
    そしてその愛をどんな形でも受け入れるのが学問だ!
    今日明日役に立つことだけが学問ではない!
    すぐ使えないことをもっと真剣に研究したほうがいい。
    誰得、そんな言葉は学問にはない。

  •  どうしたって直接確認しに行くことができない過去、未来、遠い宇宙について研究している人たちの想像力と探究心には、本当に頭がさがる。だって「考えても無駄じゃん」という周囲の声を聞いていながら、それでも考えずにはいられない好奇心をむき出しにしてくれている。率直にいって、カッコいいという言葉しかないのである。(p.47)

     考えてみれば、いま現在にもりんごやみかんといった果物には大きさの差はある。だが、特別なときに使うものは、出来が良くて大きなものになるだろう。もし何千年後かに、現代の六別のりんごやみかんが発見されたら、「この時代のみかんはこれくらいの大きさ」と、たまたま見つかった大きいみかんを、現代を代表するみかんだと思われても困るだろう。いやいや、小さくても甘いやつとか、いろいろあるんだよ、と。こう言う想像力が働くところも、学者のすごいところだ。(p.58)

     想像してほしい。スマホもネットも存在せず、人口もいまほど多くなく、車や電車もなく、移送は馬、遠出をするなんてかなりの労力であった時代。そんな時代の関心事は、恋愛、家族の成長、そして季節の美しさ。そんなところだ。冷房も暖房もない。テレビもラジオもない。音楽も生演奏しかないし、料理もすべて手作りだ。(p.63)

     和歌や日記、そういったものから、当時の人たちがなにを考え、どういう気持ちを込めたのか、それを大の大人たちが、かなり真面目にこうじゃないか、ああじゃないかと考えているのだ。そんなに昔の人のことじゃなくて、いま隣にいる私のことを考えて、と研究者の奥さんたちがいっているかもしれないが、1000年前の人が考えていたことを受け取るのは、1000光年先の宇宙人が考えていることをキャッチすることくらい、ロマンのあることだ。(p.72)

     郷土史家ってどの市区町村にもいるものだ。自分の生まれた場所やルーツを徹底的に調べていく人間。そういう人の面倒くささたるやないのだが、しかしそういう人がいないとその土地のことは50年前のことすらまったくわからなくなってしまうのだ。(中略)この本を読んだ人には、ぜひ人生をかけた研究テーマをひとつはもってほしいということだ。「えー、無理無理」と思うかもしれないが、だれでもできるのである。世の中にやっている人がたくさんいることでもいいし、それで一番にならなくてもいい。
    「こんなところに片手袋が出てましたよ」という情報提供者になってくれたらいいのだ。それも研究に携わっていることにはちがいないのだ。(p.166)

  • 在野の研究者という存在を認識したことも意識したこともなかった。そういうやり方もあるのかと、なんだか物凄く嬉しくなった。

  • こんな面白い研究があるんだ!という紹介とともに、著者の研究、研究者に向けるあたたかい視線がいいなと思える一冊。途中までは研究者を志していた身としては、楽しく読めて、激しくうなずき、笑い、深く納得し、といった一冊でした。◆プロ野球選手と結婚するための方法論を策定することを目的...その球団の選手がよく来る水商売のお店のホステスとして潜入する、というのがもっとも打率のいいコース?。◆竹取物語の翁は話を盛る人だ、読み込んだ結果42歳だったのでは…「この論文を読み終えたとき、最高に気持ちよく好奇心を刺激されて、とても晴れやかな気持ちでこう叫びたくなる。「だからなんだよ」と。これが古典研究の最高の醍醐味だ。役に立つとか立たないとか、そういう基準で生きている自分があさましく思えてくる。現在の常識などではかってはいけない。(p.73) ◆マンガ1015タイトル(10421冊)を7人で手分けして読んで、鍼灸について言及のあった箇所を抽出・分類・分析した研究。◆漱石が松山に赴任するルートを確定させた、生粋の船オタク研究者、客船史研究者の緻密さと行動力...「自分の関わっているジャンルが世間に誤解されて伝わるということはよくあるが、それ「自分の責任」と思うのが専門家の意識なのだ。」(p.242)。◆1997年から開始した卒業論文の調査をきっかけとして常滑競艇場と関わり、今日もフィールドワーク、ついには競艇場でバイトはじめちゃった研究者…「 競艇場には着飾らず気負わずに、日常の延長線上のなかで足をのばせるという場所の「気安さ」があるということ。」(p.133)を詳細に描いてくれる。◆走れメロスを読み込んで、メロスの速度を大胆に算出して、歩いてたんじゃないかとする中学生◆しかし、やむにやまれずしてしまう「苦しみ」を表現する手段として「研究」があるのかもしれない。最高に贅沢な自己満足、エンタメ化された修行。これこそが「ヘンな論文」ではなくてなんであろう。(p.158)

  • 研究は面白い。
    そして、研究機関に所属しなくても続けられる。
    一見、どう見ても役に立たなそうな研究も50年後、100年後に日の目を見るかもしれない。
    細々と自分の興味があることを調べている私にはとても応援になる一冊でした。

  • 著者がそれぞれの論文をちょっと下げているようにも見えてしまうのが難点だけれども、興味深い論文を選んでいるなとは思う。

  • 1作目の方が面白かったけど、サンキュータツオのへんな論文を見つける能力とそれを面白おかしく真面目にまとめる能力が相まってクスッと笑える。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。漫才師「米粒写経」として活躍する一方、一橋大学・早稲田大学・成城大学で非常勤講師もつとめる。早稲田大学第一文学部卒業後、早稲田大学大学院文学研究科日本語日本文化専攻博士後期課程修了。文学修士。日本初の学者芸人。ラジオのレギュラー出演のほか、雑誌連載も多数。主な著書に『これやこの サンキュータツオ随筆集』『学校では教えてくれない!国語辞典の遊び方』『ヘンな論文』『もっとヘンな論文』(以上、KADOKAWA)など。

「2021年 『まちカドかがく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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