百人一首の正体 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044001865

作品紹介・あらすじ

あなたは、本当の百人一首を知っていますか?

誰もが一度は聞いたことがある「小倉百人一首」。しかし、実はこの作品には研究者たちから多くの「謎」が指摘されている。
定家が選出したということの真偽、いつから「百人一首」と呼ばれることになったのか、
どのような基準で百首の歌が選ばれ果たして選ばれた歌はすべて秀歌ばかりなのか?

研究者でもあり、稀代の百人一首コレクターでもある著者が、
百人一首の「なぜ」を読み解き、今まで知らなかった百人一首の姿を浮き彫りにする!

【目次】
序章   百人一首への招待
第一章 百人一首成立の謎
第二章 百人一首の流れ
第三章 百人一首の広がり
第四章 百人一首の撰歌意識を探る
第五章 百人一首の見どころ

感想・レビュー・書評

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  • 百敷【ももしき】や古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり
     順徳院

     末次由紀による大ヒット漫画「ちはやふる」は、「百人一首」を用いた競技かるた人口を増やし、海外にもその魅力を知らしめた。とはいえ、百人一首の存在自体には大きな謎があることを、実証的な研究者である吉海直人は強調してやまない。

     まず、百人一首は、原本が現存していない。藤原定家が撰をしたということすら、実は推測の積み重ねに過ぎないという。また、百首すべてが必ずしも「秀歌」とは言えないことも、ミステリアスな横顔の一つだろう。

     たとえば一番歌は天智天皇の〈秋の田のかりほの庵のとまをあらみ我が衣手は露にぬれつつ〉だが、一流歌人の秀歌とは言いがたい。けれども、平安朝の歴史を語るには欠かせない「始祖的人物」であるために、巻頭に置かれたそうなのだ。吉海直人は、百人一首は秀歌選ではなく、「和歌で綴る平安朝小史」だ、と断言する。

     その証拠が、最後の百番歌にあたる掲出歌。宮中の古い軒端に生える「しのぶ」草ではないが、忍んでも忍びきれない「昔」であるなあ、という歌意だ。

     「百敷」は宮中や天皇を賛美する語だが、「百敷の」という枕詞で最初に賛美された都こそ、天智天皇の近江京だったのだ。

     つまり、順徳院がこの歌で喚起させたのは、天智天皇の御代であり、この百番歌が一番歌へとつながり、永遠に平安朝へのあこがれが繰り返されるのだとか。それこそが百人一首の「正体」という吉海説、なるほど、ひじょうに興味深い。
    (2017年1月8日掲載)

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著者プロフィール

1953年、長崎県生まれ。國學院大學大学院修了。博士(文学)。現在、同志社女子大学表象文化学部日本語日本文学科教授。専門は平安時代の物語文学・和歌文学。「異本百人一首」の発見をはじめ、かるたや浮世絵などの関連資料を多数発掘・紹介している。

「2018年 『古典歳時記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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