- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044001872
作品紹介・あらすじ
洋の東西を問わず、太古の時代より、人間の生活は常に神話の語る真実と共にあったと。だが科学の発達により古来の観念体系は崩壊し、文化や宗教は分離した。社会秩序と個人が重要視される今日、神話の果たす機能とは何なのか――。身近な出来事から文学、精神医学、そして宇宙に至るまで、広範な例を挙げながら神話と共に豊かに生きる術を独自の発想で語る。
多くの作家に影響を与えた神話学の巨人ジョーゼフ・キャンベル。『神話の力』や『千の顔をもつ英雄』に並ぶ不朽の名著、待望の文庫化!
解説・古川日出男
(目次)
序文 ジョンソン・E・フェアチャイルド
著者はしがき
第一章 科学は神話にどんな影響を及ぼしたか
第二章 人類の出現
第三章 儀式の重要性
第四章 東洋と西洋の分離
第五章 東洋宗教と西洋宗教の対立
第六章 東洋芸術のインスピレーション
第七章 禅
第八章 愛の神話
第九章 戦争の神話と平和の神話
第十章 精神分裂病――内面世界への旅
第十一章 月面歩行――宇宙への旅
第十二章 結び――もはや境界線はない
訳者あとがき
解説 古川日出男
後注
感想・レビュー・書評
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物語の勉強のために
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宗教の普遍性はどこにあるのかというお話。それは形骸化した教会の教えやルールにあるのではなく、もっと根源的な精神性にあると。神話や宗教に通底する精神性に注目するかぎりにおいて、神話や宗教は私たちにとても役に立つ。要するに、自分と世界を根源的に結び付ける役割を果たす神話はいつの時代においても不可欠だけど、現代では既存宗教をそのまま信じるだけではその効果を得られなくなってしまった。だから自分で神話を構築する必要があるということ。西洋思想マンセーでところどころイラっとしてしまったが、主旨は同意できる。まあ著者は既存宗教にかなりキツく否定的だけど、私を含め多数の弱い人にとっては、体系として完成している既存宗教が自分の神話を作ろうとするときに果たせる役割はまだ大きいのではないかとは思う。特に日本人はデフォルトが無宗教で、他国の人のように既存宗教の否定というステップを踏む必要がないのだから。
古今東西いろんな神話が出てきたけど、なかでも興味が湧いたのはヒンドゥー教の神話かな。とても印象的だったのは5章。村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』の元ネタもおそらく(というか明らかに)この5章の内容。ちょっとそのまんますぎて笑ってしまったけど。 -
見事な日本庭園で行われた園遊会の席で、我が友は神官のひとりに近づき、こう言いました。
「私はたくさんの式典に参加し、かなり多くの神社を見物しましたが、神道のイデオロギーがさっぱり理解できない。あなたがたの神学思想がわからないのです」
(中略)
相手の日本人紳士も、礼儀正しく、いかにも外国人学者の深遠なる質問を尊重しているといった様子で、考え込むかのようにしばらく沈黙し、それから唇を噛んでゆっくりと頭を振りました。
「私たちにはイデオロギーなどないと思います。
と、その神官は答えました。
「神学思想もありません。私たちは、ただ踊るのです」
(p. 170) -
印象的だった記述。これからもいろんなグローバル企業、政府、社会起業、都市、そして個人はビジョンを語る。そのときに、どの範囲までスコープに捉えるのだろう。地域社会を超えて世界中につながっている世界で、ビジョンは世界を視野に入れる必要があるとさはたら、この本ほど参考になるものはない。
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神話は絵画的な言語であり 、われわれが生活のなかで認識し 、かつそこに取り入れるべき精神のさまざまな力について語っている 。それは人間精神にとって永遠に共通の力であり 、それあるがゆえに人間が何万年かを生き抜くことができた種の知恵を代表している 。だから 、それらは科学の発見によって取って代わられたことは一度もないし 、今後もそれはあり得ない 。科学は 、われわれが眠りのなかで入っていく深層というよりも 、むしろ外面的な世界の事象にかかわっているからだ 。
地球では 、世界を分割していたすべての境界線が崩壊しました 。人類はもはや 、自分の仲間にだけ愛を向け 、よそものに敵意をむき出しにすることはできません 。なぜなら 、この宇宙船地球号には 、 「よそもの 」は乗船していないからです 。いつまでも 「よそもの 」や 「部外者 」について語り 、そういう教えを説く神話は現代には通用しないのです 。