古代研究I 民俗学篇1 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044001964

作品紹介・あらすじ

「本論を読み解く上で、これ以上に優れたシリーズは他に存在しない」(安藤礼二)

折口にとって「古代」とは単に歴史の時代区分を示すものではなかった。熊野への旅で光輝く大王崎を眼前にし、その波路の果てに「わが魂のふるさと」を感じたことを「かつては祖々の胸を煽り立てた懐郷心(のすたるじい)の、間歇遺伝(あたいずむ)として、現れたものではなかろうか」と記す。「古代研究」はまさに彼が実感を通して捉えた、古代的要素の探求なのである。全論文を完全収録する決定版!
解説・池田弥三郎/安藤礼二

感想・レビュー・書評

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  • 角川ソフィア文庫 折口信夫 「 古代研究 民俗学篇 」

    日本人の精神生活における古代的要素を研究した本

    神はどこにいて(常世)、祭りの何を目印に来臨し(依代)、どこを通ってくるのか(聖水信仰)を 民俗学的に紐解いた論文集。さらに 聖水信仰を 王権論につなげている。池田弥三郎 安藤礼二 の解説のおかげで 読めた

    面白い論文
    *常世の論文「妣が国へ・常世へ-異郷意識の起伏」
    *依代の論文「ひげこの話」
    *聖水信仰の論文「水の女」
    *王権論へ展開する「高御座」
    *国家神道を否定した「神道の史的価値」

    これだけ「神」を論じているのに「神」を定義していない。序文「わが魂のふるさと〜ノスタルジーのアタイズムとして現れたもの」の「魂」が「神」を意味しているのか?

    神道の史的価値
    *神虜(人間の意志でなく、人間の意志でコントロールできない神の意志)を問うことこそが重要
    *近代国民国家を統べるための「道徳」として組織された「国家神道」を否定し、近代以前の荒々しい神の力を復活させることが、折口学の課題


    「妣が国へ・常世へ-異郷意識の起伏」のアタイズム
    *人間の意識の下には、祖先たちの記憶が遺伝されている
    *過去の記憶と現在の知覚が一つ溶け合ったとき「古代」が現れる

    「妣が国へ・常世へ-異郷意識の起伏」の「妣が国」
    *母権時代の面影
    *異族結婚に見られる悲劇的結末〜其母の帰った異族の村を思いやる心

    ひげこの話
    *主題は、神の来臨の場所〜神をどこに招き寄せるか
    *最初に神がよりつく「物」は、神が肖像として認めている「物」、それを造って、神の目につきやすいところに出しておく

    *祭りの折りに依代を設けるのは、日本の神は常に国土にいないことを意味〜日本の神はどこにいるのか


    来臨する神々の故郷 常世
    *魂のふるさと
    *気候がよく、物資が豊かな、住み良い国を求めて移ろう心
    *わたつみ(神)の国
    *死の国、常暗の恐怖の国

    神=言葉は、人間世界の外に存在する。神=言葉が存在し生成される場所が常世(他界)

    人間にできることは、外の世界から、この世界に「神=言葉」が降りてくるのに耳を傾けるだけ

    まれびとは、2つの世界をつなぐ機能を表す









     






























  • 若水の話
    盆踊りと祭屋台と

  • 読まなくてはならない本が沢山溜まっているのに、手を出してしまった……。

    私は、折口信夫という名より釈迢空の方がやや慣れているように思う。
    全論文を完全収録しているとのこと。
    この巻では、琉球信仰と髯籠の話が中心。

    個人的には「よばい」と真名の関係。
    「おめでとう」は目下の者が目上の者に使う言葉で、反対はなかったということなんかは面白い。


    「いわゆる「異教」の国人の私どもには、何の掛り合いもないクリスマスの宵の燈に胸の躍るのを感じるのは、古風な生活の誘惑に過ぎまい。
    くりすますの木も、さんた・くろうすも、実はやはり、昔の耶蘇教徒が異教の人々の「生活の古典」のみやびやかさを見棄てる気になれないで、とり込んだものであったのである。」

    しきたりとして正月の国旗掲揚、門松と対比して述べている文なのだが、思わず笑ってしまった。

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著者プロフィール

歌人・詩人、国文学・民俗学・芸能史・宗教学者。筆名・釈迢空。
大阪府木津村生れ。國學院大學卒業。國學院大學教授、および慶應義塾大学教授。
1953年9月3日逝去(66歳)。能登の墓所に養嗣子春洋とともに眠る。

「2019年 『精選 折口信夫 Ⅵ アルバム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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