猪・鹿・狸 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044002787

作品紹介・あらすじ

僕は実際近頃にこのくらい愉快に読んだ本はなかった――芥川龍之介(東京日日新聞)

九十貫を超える巨猪を撃った狩人の話。仕留めた親鹿をかつぐ後から子鹿がついてきた話。村で起きる怪しい出来事はいつも狸の仕業とされた話……。奥三河・横山で見聞、古老から聴き溜めた猪・鹿・狸の逸話が縦横に語られる。芥川龍之介・島崎藤村も絶賛した文学性の高い文章は、伝説や昔話も織り交ぜて独自の伝承世界を形づくっている。暮らしの表情を鮮やかにすくい取る感性と直観力から生まれた、民俗学の古典的名著。

感想・レビュー・書評

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  • (01)
    山里で接する大型の哺乳類であるイノシシ,シカ,タヌキが取り上げられ,こうした動物という媒介者によって攪乱され,混じり合ってきた人間と自然の様子が,詩情も添えられながら描かれている.鶏を含む鳥についてのトピックも付録として収録されており,このような小さな動物を捕獲しながらも観察を続けてきた山里の人々が残した記録も読む者にとっては愛おしい.
    イノシシもシカも害獣ではあるが,動物は何も語らないため,神秘が付与され,敬愛も受けている.動物にも繁殖があり,それは人々の収穫にただ害をもたらすものであれば,繁殖を断つべく動物たちを絶滅に追い込まなければならないはずである(*02).しかしながら,被害者らは,狩る対象としてのこれらの動物たちへ情をつないでおり,そこには詩的で神話的な情景が現れている.
    本書がまとめられた時代には,シカが減っていたともされる.動物たちは獲って見られるものというばかりではなく,語られ伝えられるものとしても描かれている.空想と現実の曖昧な関係がどのように風景として結ばれるか,本書から察することができるものの価値はそのあたりにもある.

    (02)
    残酷と憐憫,このふたつが村にどのように同居されていたのかの実際を読み考えるには,本書のエピソードは最適であるだろう.また,村の近代化のその受容の過程が描かれており,いくつもの事例は,現代の村の凋落の様子と比較してみてもよいだろう.

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著者プロフィール

1889(明治22)年12月20日~1956(昭和31)年12月23日。大正から昭和時代の民俗学者。画家を志して松岡映丘に師事。松岡映丘の兄・柳田國男に師事し、多くの民俗調査を行った。愛知県奥三河の花祭と呼ばれる神楽を調査して『花祭』を刊行。農山村民俗の実地調査につとめた。

「2017年 『猪・鹿・狸 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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