人生論ノート 他二篇 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.71
  • (8)
  • (2)
  • (8)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 197
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044002824

作品紹介・あらすじ

如何に生きるか?生きるとは何か?愛と死、幸福と嫉妬、瞑想と懐疑、孤独と感傷、虚栄と名誉心、利己主義と偽善、旅と個性…、透徹した真摯な眼差しで人生の諸相を思索する。
近代と現代の狭間で人生の処し方・生きざま・死生観が問われた時代に書かれた、今なお読み継がれる畢生の論考集。
『人生論ノート』/死について/幸福について/懐疑について/習慣について/虚栄について/名誉心について/怒について/人間の条件について/孤独について/嫉妬について/成功について/瞑想について/噂について/利己主義について/健康について/秩序について/感傷について/仮説について/偽善について/娯楽について/希望について/旅について/個性について/後記
ほか、『語られざる哲学』、自分の娘へ当てた書簡『幼き者の為に』所収。
解説/岸見一郎

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 人間は幸福だと幸福のことを考えない。
    内面的なだけでは幸福ではなく、幸福は表現するもの。外に現れて他の人を幸福にするものが真の幸福。
    古代には成功は存在せず、幸福が目指すところであったが、現代は成功が主要な課題となり、幸福は関心事ではなくなった。
    成功と幸福を同一視することは憐れむべきことである。
    ヘーゲルの哲学は、一時的に熱狂的に信奉されるが、やがて顧みられなくなる。
    すべての悪は、孤独であるこたできないところから生じる。創造的な生活は虚栄を知らない。孤独は山にはなく街にある。大勢の人間の間にある。
    すべてのストイックは本質的に個人主義者である。
    ひとは軽蔑されたとき最も怒る。自信があるものはあまり怒らない。
    瞑想はつねに不意の客である。思索と瞑想は違うもの。対話している間は瞑想はできない。
    我々の生活を支配しているのは、ギブアンドテイクの原則である。すなわち利己的になるのは意識的にならなければできない。利己主義者は期待しない、信用しない人間である。
    感傷には常に何らかの虚栄がある。
    人生は仮説的なものである。常識には仮説的なところがない。
    「善く隠れる者は善く生きる」自然のままに生きることは隠れることである。そのくらい世の中は虚栄的である。
    娯楽は近代的な観念である。機械技術によって娯楽と生活を対比するようになった。娯楽より生活を楽しむべき。
    希望は運命のごときものである。運命だから絶望的である。失われる希望は期待と呼ぶべきもの。消して失われないものこそ希望。
    旅には旅のあわただしさがある。旅はつねに遠くあわただしいもの。旅の利益は、初めてのものを見ることではなく平素自明のものに驚異を感じ、見直すところにある。

  • 「人生論ノート」P173の『語られざる哲学』の中で三木は自分のことを正直に書いている。私は今まで獄中で死んだ彼をおとなしく理性的な人物だと思っていた。意外な感じがしたが、魅力的な行動的な人間だという印象を新たにした。
     思索を重ね、語られざる哲学の意味をじっくりと醸成していく様子を読み続けたい。

  • 難解です
    怠惰は罪
    素直に熟考し続けることが大切
    獄中死されたが家庭をもっていたそうです。
    過酷な人生、しかも普通の人生は送れないと自覚されてたそうですね

  • 懐疑について、デカルトの懐疑は一見考えられるように極端なものでなく、つねに注意深く節度を守っている。
    個性について、詩のように美しい個性賛歌である。「個性の奥深い殿堂に到る道はテーバイの町の門の数のように多い。」から始まる。
    何度でも読みたい。

  • 内容は難しいですが、色々なテーマが書かれているので何かしらプラスになる部分が必ずあるはずです。

    瞑想を不意な来客と書いてある部分は面白かった。

  • NHKで紹介していた一冊。
    何とか読みきった…というのが本音です。難しかった…
    ただ、最初の「人生論ノート」は比較的平易な言葉で書いてあります。
    人生で起こるいろんな出来事や感情について、「なるほど」とか「わかるわかる」といったような共感できる記載が折々あります。
    とはいえ、こういう種類の本は、作者の考えを一方的に突きつけられるもので、物語のように読者の想像が入り込む隙がないため、読むのは疲れるかもしれません。
    哲学にご興味ある方、ぜひ。

  • やはり難解であった。ちょうどNHKで取り上げていたので並行してようやく理解できるかなという感じ。そんな中でも心に残るメッセージがいくつもあった。「愛する人に対して、自分が幸福であること以上に善いことを為し得るだろうか」「習慣として形作られるのでなければ情念も力がない。」「どのような天才も習慣によるのでなければ何事も為し得ない」「神は憎むことを知らず、怒ることを知っている」「幸福が存在に関わるのに反して、成功は過程に関わっている」「一切が必然なら希望はない。一切が偶然でもまた希望はない」

  • 高校の現代文の教科書で「旅について」で,三木清に出会ったと思う.高校生ながらにして,とても引きつけられる文章で,国語の授業として読むものというよりも,何度も読み返して反芻したくなるものだった.
     
    最近,岸見一郎さんがこの三木清の人生論ノートを解説する本を出したりして,もう一度じっくりと読みたくなった.色々な出版社からも出ているけれど,角川ソフィア文庫から岸見一郎さんの解説で出版されたものがあったので,購入した.
     
    解説を読むと,より深い理解が得られる.この人生論ノートがどのような時節に書かれたものなのか.そういったことも踏まえてもう一度読み直すと,凄く攻めていることがわかる.
     
    哲学というものの扉を開く,良い読み物だと思う.何度も反芻して読み直したい.

  • 途中で断念。将来の再読の為に残してはおくが、日本語が難しい事に加え、書かれている内容を消化する事が困難なため。

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

明治三十(一八九七)年兵庫県生まれ。京都帝国大学で西田幾多郎、波多野精一、ハイデルベルク大学でリッケルト、マールブルク大学でハイデガーの教えを受ける。大正十五(一九二六)年三高講師を経て、昭和二(一九二七)年法政大学教授。翌年、羽仁五郎と「新興科学の旗のもとに」を発刊、同年の「唯物史観と現代の意識」は社会主義と哲学の結合について知識人に大きな影響を与えた。昭和五(一九三〇)年共産党に資金を提供した容疑で治安維持法違反で検挙、入獄中に教職を失い著作活動に入る。以後マルクス主義から一定の距離を保ち、実在主義と西田哲学への関心を示す。昭和十三(一九三八)年には近衛文麿のブレーンとして結成された昭和研究会に参加、体制内抵抗の道を摸索したが挫折。昭和二〇(一九四五)年三月、再度、治安維持法違反容疑で投獄、九月獄死。未完の遺稿に「親鸞」がある。主著に「パスカルに於ける人間の研究」「歴史哲学」「構想力の論理」(全二巻)「人生論ノート」のほか、「三木清全集」(全二〇巻、岩波書店)がある

「2022年 『三木清 戦間期時事論集 希望と相克』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三木清の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×