写真で辿る折口信夫の古代 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044003272

作品紹介・あらすじ

民俗学者・折口信夫は「古代」を知ることに全生涯をかけてきた。それは歴史という意味での古代ではなく、古来の日本人の信仰や習俗が現代までも伝承されている、時代を超えた精神性である。そんな折口が論じ続けた「古代」的な要素――千年も続く様々な信仰行事を、写真と文でたどるかつてない一冊。万葉の旅から沖縄への旅、芸能史への展開まで、彼の研究の流れに沿って、「日本人の心の原点」ともいえる写真に解説を付して収録する。

感想・レビュー・書評

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  • ・芳賀日出男「写真で辿る折口信夫の古代」(角川文庫)を 見た時、似たやうな名前の書があつたと思つた。それを捜してみると確かにある。2009年に出てゐる折口の本であつた。ただし名前が違ふ。「折口信夫と古代を旅ゆく」とあるのが2009年で、これは慶應義塾大学出版会から出てゐた。判型も表紙も全く違ふ。新しいのは文庫本、古いのは横25センチ、縦18. 5センチほどの、たぶんB5版であらうと思はれる横長の書であつた。表紙がまるで違ふので、一瞬違ふ本かと思つたのだが、よく見ると両者は同じ本であつ た。判型も書名も違ふのに同じ本だとはであるが、これも商業政策上の様々な問題があるのであらうと、納得して見るのであつた。ただし、書名についてい へば、この方が分かりやすいであらうとは思ふ。「写真で辿る折口信夫の古代」の方が、なんとなく折口のイメージに合いさうな気がするのは写真のせゐであるの かどうか。とまれ、さうしてまた買つてしまつたのである、おなじ本を、芳賀日出男の本を。実は「古代を旅ゆく」を買つたのは上粟代であつた。東栄町の上粟 代である。花祭のある地区であるが、ここでの花祭の時に芳賀日出男氏が来てゐた。それで買つたのである。それ以後、本書を何度か読んでゐる。と言つても学ぼうとしたわけではない。ただ写真がきれいだからその写真に惹かれてゐるだけのこと、特別に事情があるわけではない。私は、所詮は、それだけの人間であつ た。
    ・これは写真集である。それも「70年あまり撮り続けた厖大な写真の中から“日本人の心の原点”300余枚を厳選し、解説をつけた折口学の決定版」(「折 口信夫と古代を旅ゆく」帯)といふ、言はば芳賀日出男畢生の<大作>であらう。だからと言つて写真が皆載るわけではないのが本書であつて、言はば本書に向いてゐないやうなものは除かれてゐる。それは例へば「古代を旅行く」の11頁の俊毒道駅であつたり、24頁の川平集落であつたりする。また写真が小さくなつたのが21頁の折口彷徨の花抜峠とそれに続く歌碑である。逆に写真が大きくなつたと思しいのは31頁の玉御殿にあるが、これは1頁文の空きがとれたからであらう。何しろ判型が大きく変わつてゐる。これだけ変はつてはどうしやうもない。写真集ならば全部の載せるべく努力するであらうが、これは それをしない。あくまで不要なもののみを削除する。それで印象が変はったかと言へば、どうもさうはいへぬらしい。あまり変はらないのである。いや、これは 私が鈍いだけかもしれない。鋭い人が見れば、ここにあるのはをかしいといふことになるのかもしれない。しかし、まあ、同じやうな写真が同じやうに並んでゐるのである。本書しか知らなければ問題はない。とまれ、本書には芳賀氏の写真が多く載る。それは折口関係の、更に言へば折口の持つ「奈良町以前の時代に生きてゐた万葉集の中の人びとの信仰や暮らしぶりが、次の時代にも、現代までも伝承されている超時代的精 神」(3頁)を表すはずである。「千年もの祈◯や祓の信仰行事は今も伝へられ、撮ることができる。折口の古代的要素への指摘が私を目ざめさせてくれた。」 と書く芳賀氏は御年97歳である。元本の「古代を旅ゆく」を書いたのは86歳であつたはずである。この間の十年もまた、相変はらず写真を取り続けてゐるのであらうか。だとすれば驚異と言ふ他はない。折口を学生時代にⅠ年半ほど授業を受けただけでそれだけできたといふ。「とても親しめなかった。旅をしてみて 初めて分かった。」(256頁)ともいふ。そんな芳賀氏の畢生の<大作>を楽しむことができる。文庫本は有り難い。次は何が出るか。

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著者プロフィール

1921年、満州大連市生まれ。慶應義塾大学文学部卒。日本写真家協会の創立者の一人で、大阪府万国博〈お祭り広場〉のプロデューサーを務めた。写真家として、日本はもちろん世界中の祭りや民俗芸能の取材を続ける第一人者。著書多数。1989年紫綬褒章受章。1995年勲四等旭日小綬章受章。

「2017年 『写真で辿る折口信夫の古代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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