文章予測 読解力の鍛え方 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044003302

作品紹介・あらすじ

文章の読解力を伸ばすにはどうすればよいか? 答えは「予測」にあった! 幅広いジャンルの秀逸な文章で「予測」の技術を学べば、誰でもきっと「読み上手」になれる。作文にも役立つ画期的な「文章術」入門書。

第1章 文章理解とは?
第2章 予測とは?
第3章 問いの予測とは?
第4章 答えの予測とは?
第5章 予測の表現効果とは?

感想・レビュー・書評

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  • 文章を予想しながら読むことによって、文章をより理解できるようになる、というのが本書のメッセージです。正味200頁たらずの本ですが、行ったり来たりで、読むのに苦労しました。

    文章のあとに続く展開の幅を限定するのが予測、予測があることで、後続文脈の候補が絞られ、無駄な処理をしなくて済むようになり、文章理解の経済効率が格段にあがる。
    つぎはこんな展開になるのではないかという想定に基づき、つぎの文に入ることで、流れに乗って読めるようになる

    言語の予測研究は、70年代に、アメリカで、人工知能研究の1つとして始められた学術分野です。
    ですが、本書を読むにあたって、文法的でなく、不完全な文章を予測して、理解ができる、AIがここしばらく、できそうにもないと感じました。

    気になっているのは次の点です。

    ・私の考える読書とは、書かれた文章の内容を把握するなかで起きる筆者との対話です。

    ・優れた筆者は、読者がテキストと対話ができるような仕掛けを文章のなかに巧妙に埋め込んできます。

    ・優れた文章には、予測という手段を使って対話に引き込む強い力があります。

    ・文章を映像として理解しているのか、概念として理解しているのか。前者を経験世界といい、後者を論理世界と称す。

    ・文章を音で理解するのか、それとも、文字で理解するのか。音として理解する場合は、外来語でなくても、カナで表現すれば、理解が易しくなる。文字で理解するとは、音がはっきりしなくても、漢字の字面を手がかりに連想できるもの。

    ・言語は一本の線であり、頭から順に読むようにできている。頭から順に読む過程で、徐々に意味が見えてくるという性格が言語にはあり、その線的な性質が予測を生む。

    ・文字理解には、ボトムアップとトップダウンの2種類がある
     ボトムアップとは、1つ1つの要素の意味や機能を考え、それを順々に組み合わせて理解をしていく方法
     トップダウンとは、その文章に何が書かれているか、先行文脈などから、あらかじめ見当をつけ、それを利用して個々の文の内容を理解していく方法

    ・トップダウンは、話題がわかるとスムースに進みます。精読している時間がなく、速読で文章の内容をとらえる必要があるときや、よんでいる言語が外国語で、語彙力や文法力が乏しいときに力を発揮する。

    ・予測が起きるのは、おもに、文脈の展開が変わる節目です。

    ・第一に、文脈理解は、文章を媒体にした読み手と書き手の疑似対話であり、問いの予測と、答えの予測がある。
    ・第二に、加えて、文の内容を深めるもの、「深める予測」と、進めるもの、「進める予測」とがある。
     <深める予測>今読んでいる文に情報として「何か足りない」という欠落感があって、その欠落感を「いつ」「どこで」「誰が」「何が」「何を」「どう」「なぜ」といった疑問詞をつかって補填しようとする予測です。
     <進める予測>読み手が物語の場面に没頭し、登場人物に感情移入しているときによく起きる

    ・第三に、予測の実現です。予測には当たるものと、外れるものがある。それを順接の予測、逆説の予測という。実現しなかった予測は、行間に存在を示唆し、読みを深め、余韻を感じとるきっかけを与えてくれる。
     伏線を張る、緊張を作りだす。
     笑いにせよ、安堵にせよ、予測がはずれたところで、オチをあざやかに決める。決めたら、くどくどと説明しないで、パッと切り上げる。バッサリと落とすことで文章の切れ味が増す。

    ・予測とは何か、予測とは、今読んでいる文を通して感じられる理解のもやもやを、そのあとに続く文脈で理解しようと期待する読み手の意識のことである。

    ・予測とは推論の一種です。

    ・日常会話で言葉どおりのやりとりをすると、人間関係がぎくしゃくします。言葉の足りない部分を推論で補っているので、コミュニケーションは成立するのです。
     予測もまた、言葉の足りない部分を論理的に導き出し、読むというコミュニケーションを円滑にする推論の一種ですので、文法論ではなく、語用論で扱うべき問題です。

    ・よい書き手は、よい読み手です。文章を書くのが上手な人は、読み手の立場に立って推敲する術にたけている。

    ・構成の予測:それは文章の枠をはじめに示し、その枠の詳細をあとから、埋める技術です。

    ・文章というのは、一本の線ですが、後続する文章の構成を予告する文や、先行する文章をまとめる文、「第一に」「次に」「第三に」「最後に」のような指標によって文章が立体的に理解できりょうになっている。このような表現はメタ言語表現とよばれ、文章を構造化する重要な働きを担っています。

    ・文章を理解するとは、予測によって意味の箱のようなものを頭に作り、その箱が埋まったら片付け、また別の意味の箱をつくるという作業をくり返して文章を理解すること。

    ・文章にタメを作る。予測には、タメを作り、次にくる内容に注目させる表現効果がある。

    ・行間を読ませる。ないものを読み手が補って推論することが「行間を読む」ことの内実です。予測をとおして行間の存在に気がつく。行間の存在に気づき、その行間を埋める工夫をし始めた瞬間から、書き手との対話が始まる。

    ・文章世界に引き込む。文章理解とは問題解決過程、すなわち「謎」を解く過程だからです。

    結論

    ・優れた文章は、重層性のある問いが有機的に関連してできています。そして、その問いを解き明かそうと予測を重ねるうちに、その文章世界に引き込まれ、読みが広がっていく。

    目次

    はじめに
    文庫版はしがき

    第1章 文章理解とは
    第2章 予測とは
    第3章 問いの予測とは
    第4章 答えの予測とは
    第5章 予測の表現効果とは

    この本に登場した文章例
    おわりに
    文庫版あとがき

    ISBN:9784044003302
    出版社:KADOKAWA
    判型:文庫
    ページ数:208ページ
    定価:720円(本体)
    発行年月日:2017年09月
    発売日:2017年09月22日
    国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:CJBR
    国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:2GJ

  • 読者の予測の仕方を考慮しながら、説得力のある文章わ書くにはどうすればよいかという観点で有益。
    本書を読んで、現代文の受験参考書に書かれているパターン型解法をチェックしたくなった。
    本書の難点は、例文の大半が小説で、評論や随筆が少ないことだろう。

  • 文章理解は、読み手と聞き手の疑似対話。
    次に来る文章を一つに決定するのではなく、ある程度予測する。

  • 私たちが当たり前にやっていることをあえて言葉にして説明し意識化して、より良い読み、より良い執筆につなげられるようにしている。
    本人も書いているが、同著者の新書『「読む」技術』を読めば事足りる感は多分にあった。わたしも人に勧めるなら、この文庫ではなく、新書にする。

  • 面白く無かった。学びがなかった。

  •  タイトルの通り「予測」がキーワードになっている。
    予測と聞くと当てるための予測をイメージしてしまうが、そうではなく文章の後に続くであろう展開の幅を限定することなんだとか。
    極端な例えだが、ゴジラの話を読んでいるのに「次は大谷翔平が出てくるな」と思う人はいないように、ある程度どうなるか(ゴジラが暴れるかも、どうしてこんなとこにいるのか等)を読み手は絞っていることがわかる。
     大事なのは「文章理解とは文章を媒介にして読み手と書き手が擬似対話をすること」を理解することであり、書き手に常に問いの予測をすることで読み上手になれるんだと感じた。
     私が、一番勉強になったのは5章の「行間を読ませる」だ。
    私が思うに、どんな本(特に小説や戯曲)でも、行間の存在に気づき、深く読み、深く理解することができるかどうかが「読み上手」になれるかどうかなんじゃないかと思う。
    そのためにやはり「予測」は重要で、予測は行間の存在を気付かせてくれる。
     行間の存在に気づき、その行間を埋める工夫をして、そこでやっと書き手との対話が始まり、問いたり答えたりを繰り返して、文章理解へつながっていくんだと思う。

  • この本は「予測する」という行為によって、読解力を上げるための説明本。
    しかし私は「書くために必要なことも書かれている」と知人に言われ読みました。実際にその通りだと思いました。なので、「書く」ことに困っている私のような方におすすめできます。というのも、本書に書かれているように、「書く」というのは、読み手との対話によって達成される行為であり、「読む」と切っても切り離せない関係にあるからです。
    つまり、「書く」というのも、この本の主旨である読み手がどう読むか、という「予測」が非常に重要になるということです。

    「人は、次に来る文を予測しながら、文章の展開の広がりを楽しむ」
    当たり前のようであり、無意識に頭の中で処理しているこの行為。読み手にとって、これが文章の展開を楽しむためのキーポイントになっているのです。
    当たり前に読んでいた文が、文章として読まれるまでに、どのような布石が打たれているか。(気付きや疑問を持って読んでいるか。)面白い例文と、その解説によって、すんなりとその構造を理解することができます。

    書き手はこれらをうまく使いこなさなくてはいけません。本全体を通して、書くために重要な前提を与えてくれたように思います。

  • ・副詞「たしかに」「もちろん」「なるほど」「むろん」、係助詞「は」「も」、文末表現「だろう」「でしょう」「かもしれない」など、逆説の予測に役立つ一連の表現に注目する。こうした表現が逆説の接続詞「しかし」等とセットで示されると、逆説の接続詞の直前の文は筆者と対立する立場であり、逆説の接続詞を含む文は筆者自身の立場を示す文になる

  • 2018.9.1市立図書館
    →2018.9.15購入、手元においてゆっくり読むことにした

  • 本を読んでいる時に読者が感じる事、そこに起こっている事をわかりやすく懇切丁寧に説明してくれてとても勉強になった。文章予測についての本なだけに読みにくい文章を書いてたら終わりだからハードルは高かったが、それをいとも軽々と飛び越えた。また再読、再々読したい本。

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著者プロフィール

横浜市出身。1993年一橋大学社会学部卒業。1999年早稲田大学文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。国立国語研究所教授。一橋大学大学院言語社会研究科連携教授。著書に、『「接続詞」の技術』(実務教育出版)、『段落論』(光文社新書)、『よくわかる文章表現の技術』Ⅰ~Ⅴ(明治書院)など多数。明治書院教科書編集委員。

「2021年 『よくわかる文章表現の技術 Ⅳ 発想編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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