感染症の世界史 (角川ソフィア文庫)

  • KADOKAWA (2018年1月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784044003678

作品紹介・あらすじ

地上最強の地位に上り詰めた人類にとって、感染症の原因である微生物は、ほぼ唯一の天敵だ。
医学や公衆衛生の発達した現代においても、日本では毎冬インフルエンザが大流行し、
世界ではエボラ出血熱やデング熱が人間の生命を脅かしている。

人が病気と必死に闘うように、彼らもまた薬剤に対する耐性を獲得し、
強い毒性を持つなど進化を遂げてきたのだ。
40億年の地球環境史の視点から、人類と対峙し続ける感染症の正体を探る。

感想・レビュー・書評

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  • もともと新聞社出身の著者が感染症について歴史的な背景からとらえた一冊。
    コロナのパンデミックから数年経過しましたが、映画『フロントライン』上映と書籍を読了したことから、この分野に興味を持ち、少し前の著書でありますが、手にとってみました。
    本書を通して、著者が冒頭で記したように、「感染症は人類の歴史に大きく関わってきた。微生物は、地上最強の地位に登り詰めた人類にとってほぼ唯一の天敵でもある。」という内容が理解できると同時に恐怖を感じました。
    感染症の拡大には、人口増加に伴う熱帯林の大規模破壊や集落の拡大があるのはある程度想像できますが、それ以外にも衛生環境の改善や長寿化、交通・物流の発達に加え、薬品の開発・乱用など、様々な理由の中で変異を繰り返し人間の恐怖になっていることが読み解けます。
    そして、食文化や環境的にパンデミックの背景に中国南部の危険性を指摘しており、「近年の流行は香港亜型とソ連亜型が出現してから30年以上経過しており、過去の流行史からすると、そろそろ強烈な「新型ウイルス」が誕生しても不思議ではない。」と警鐘を鳴らしているわけですが、本書の出版が2014年、加筆修正され文庫化されたのが2018年、翌年に新型コロナウイルス発見されているので、このような感染症の危険性を専門家は見通していたのだと思うと、歴史を学ぶことの重要性を感じるとともに、このような知識を積極的に得ることの大切さを感じざるを得ません。
    また、今年ノーベル賞を受賞した坂口志文教授の活躍にも触れていますので、発行からだいぶ経って読んだわけでしたが、結果的にいいタイミングだったかもしれません。


    ▼地球に住むかぎり、地震や感染症から完全に逃れるすべはない。地震は地球誕生からつづく地殻変動であり、感染症は生命誕生からつづく生物進化の一環である。十四世紀のペストといい、二十世紀初期のスペインかぜといい、感染症は人類の歴史に大きく関わってきた。
     微生物は、地上最強の地位に登り詰めた人類にとってほぼ唯一の天敵でもある。その絡み合った歴史を、身辺をにぎわす感染症を選んで、環境史の立場から論じたものが本書である。
    ▼近年突如として出現した「新興感染症」(エマージング感染症)は、動物が保有するウイルスや細菌に由来する「動物由来感染症」が圧倒的に多い。エボラ出血ウイルスも、もとは熱帯林の奥深くでコウモリと共生していたと考えられる。
     しかし、熱帯林の大規模な破壊や集落の急膨張で、すみかを失った野生動物が人の生活圏に出没するようになった。はじめは、熱帯林内の村落や開墾地ではじまったが、今回はついに大都市にまでウイルスの手が伸びてきた。しかも交通機関の発達で地球上どこにでも短時間で移動できる。

    ▼米国ミシガン大学のネッシー・ランドルフ教授(進化生物学)は、「病気の不快な症状」と忌み嫌っているものの多くが、実は進化の途上で身につけた体の防御反応であり警戒信号であることを明らかにしている。
     「発熱」「せき」「吐き気」「下痢」「痛み」「不安」といった症状のなかで、「発熱」は微生物を「熱死」させるか、患者が「衰弱死」するかの「我慢くらべ」だ。「せき」「吐き気」「下痢」は病原体を体外に排出する生理的反応、「痛み」や「不安」は病気の危険信号だ。
    ▼人類と感染症の関係も、人が環境を変えたことによって大きく変わってきた。人口の急増と過密化も感染症の急増に拍車をかけている。インフルエンザ、ハシカ、水痘(水ぼうそう)、結核などの病原体のように、咳やくしゃみから飛沫感染するものにとって、過密な都市は最適な増殖環境だ。超満員の電車の中で、インフルエンザ患者がくしゃみをした状況を想像してみてほしい。

    ▼ワシントン大学公衆衛生学部の報告書によると、人に病気を起こす病原体は2001年現在、1415種類が知られている。細菌が538種類、ウイルスが217種類、菌類が307種類、原虫が66種類、寄生虫が287種類だ。
     米国野生動物保護学会は、そのうち60%までが動物を介して人間に感染する「動物由来感染症」と発表している。このうち175種類がこの半世紀間に出現した「新興感染症」(エマージング感染症)「再興感染症」(リエマージング感染症)であり、その75%までが動物由来感染症だ。
     1万年にわたって家畜と密接な関係を持ちつづけてきたことで、少なくとも、人と犬は65種類、牛と55種類、羊と46種類、そして豚と42種類もの病気を共有している。複数の宿主に感染するものも多い。米国の進化生物学者ジャレド・ダイアモンドは『銃・病原菌・鉄』のなかで、「家畜は病気の温床であり、食物生産が感染症を生んだ」としている。
    ▼歴史上、戦争で死亡した将兵の少なくとも3分の1から半数は、病死だったと推定される。

    ▼もともと人類と共生してきたピロリ菌は、胃がんのリスクはあっても、寿命が50歳にも届かない時代にはたいした問題ではなかった。ところが、長生きになり、あまりに衛生的な環境をつくりだしたために、細菌との共生関係が変わってしまったのだ。

    ▼人への感染には豚が重要な仲立ちをしている。
    ▼どうして鳥のウイルスが豚に感染するのだろうか。この答えは、中国南部にあった。
    ▼過去100年間に発生したインフルエンザの世界的流行の多くは、中国南部に起源があるとされることも納得できる。
    ▼アジアに集中しているのは、市場で生きた鶏を売買する習慣が根強いからだ。衛生状態や管理の良くない市場、鶏小屋で大量のウイルスを含む鶏の乾燥した糞を、人が吸い込む危険性は十分にある。
    ▼近年の流行は香港亜型とソ連亜型が出現してから30年以上経過しており、過去の流行史からすると、そろそろ強烈な「新型ウイルス」が誕生しても不思議ではない。ウイルスの変異のスピードが当初の予想よりはるかに速いことを考えると、どこかに潜んで人に致命的な姿に変身できる日をうかがっているのかもしれない。
    ▼インフルエンザウイルスは、HIVと同じRNAウイルスに属し、哺乳類が100万年かかる進化を一年でやってのけるほど変化が激しい。たえず変異を繰り返すので、ワクチンをつくっても完成するころには姿を変えていて、効かないことがしばしばある。
    ▼18世紀にイギリスではじまった産業革命と工業化によって、多くの人びとが過密な大都市に住むようになり、インフルエンザ以外にも結核やコレラなど新たな大流行を経験するようになった。しかも、都市の工場には、免疫を持たない労働者がつねに農村から流入した。交通や物流の発達によって、人間、動物の広域の移動が飛躍的に進み、短期間の世界的流行が出現するようになった。

    ▼ウイルスは、変異の速度が激しい。ヒトなどの遺伝子であるDNAは二本鎖なので、どちらかが増殖時に遺伝情報のコピーミスを起こしても損傷を受けても、もう片方によってその部位が修復され遺伝情報が安定的に保存される。
     ところが、HIVやインフルエンザウイルスのようなRNA型のウイルスは一本鎖なので、損傷が起きても修復することができずに変異を起こしやすいのだ。ということは、ワクチンなどもつくりにくいことになる。
    ▼リチャード・ドーキンスが提唱した「利己的遺伝子」の考えにしたがえば、ウイルスにとってもっとも有利な寄生方法は、宿主(遺伝子の乗り物)を殺さずにいつまでも自己の複製をさせることだ。

    ▼ウイルスの系統分析から人類の起源や移動の歴史を推測する「ウイルス人類学」が、近年注目を浴びている。かつては、骨や道具や土器などを手がかりにする形態人類学や考古学から人類の起源や移動を追求してきたが、近年DNA分析など新たな技術の導入によって、人類の過去にも新たな光があてられてきt。ウイルス人類学もDNA分析の進歩に負うことが大きい。

    ▼今後の人類と感染症の戦いを予想するうえで、もっとも激戦が予想されるのがお隣の中国と、人類発祥地で多くの感染症の生まれ故郷であるアフリカであろう。いずれも、公衆衛生上の深刻な問題を抱えている。
     とくに、中国はこれまでも、何度となく世界を巻き込んだパンデミックの震源地になってきた。過去3回発生したペストの世界的流行も、繰り返し世界を巻き込んできた新型のインフルエンザも、近年急速に進歩をとげた遺伝子の分析から中国が起源とみられる。
    ▼古代ローマの歴史家で博物学者の大プリニウスは『博物誌』のなかで、「何か新しいものはつねにアフリカからやってくる」と書き記した。その言葉どおり、本書に登場する感染症でもアフリカを起源とするものがもっとも多い。アフリカ大陸では、依然として新たな感染症が猛威を振るっている。
    ▼これらのウイルスは豚、牛などの家畜や、ネズミ、コウモリ、野鳥などの野生動物が保有するウイルスに由来するものが多いが、自然宿主が不明なものも少なくない。
     ウイルスは何回か変異を繰り返すうちに、宿主から飛び出して他の種に乗り移り、うまく定着できるものが現れる。SARSの原因となったコロナウイルスの仲間が、人間にこれほど恐ろしい病気を引き起こすという認識はまったくなかった。それが、動物から人間に飛び移ったときに凶悪化した。
    ▼感染症の世界的な流行はさらに現実味を帯びている。すべての災害のなかで、感染症はもっとも人類を殺してきた。どんな対策も効果がないような強烈な菌やウイルスがいつ出現してもおかしくない。
    ▼自然界にはまだ無数の病原体が潜み、新たな宿主を求めて試行錯誤を繰り返している。水爆実験が「ゴジラ」を生んだように、薬剤の乱用がモンスター病原体をつくり出すかもしれない。

    <目次>
    まえがきー「幸運な先祖」の子孫たち
    序 章 エボラ出血熱とデング熱ー突発的流行の衝撃
    1.最強の感染症=エボラ出血熱との新たな戦い
    2.都心から流行がはじまったデング熱
    第一部 二〇万年の地球環境史と感染症
    第一章 人類と病気の果てしない軍拡競争史
    第二章 環境変化が招いた感染症
    第三章 人類の移動と病気の拡散
    第二部 人類と共存するウイルスと細菌
    第四章 ピロリ菌は敵か味方かー胃がんの原因をめぐって
    第五章 寄生虫が人を操る?--猫とトキソプラズマ原虫
    第六章 性交渉とウイルスの関係ーセックスががんの原因になる?
    第七章 八種類あるヘルペスウイルスー感染者は世界で一億人
    第八章 世界で増殖するインフルエンザー過密社会に適応したウイルス
    第九章 エイズ感染は一〇〇年前からー増えつづける日本での患者数
    第三部 日本列島史と感染症の現状
    第十章 ハシカを侮る後進国・日本
    第十一章 風疹の流行を止められない日本
    第十二章 縄文人が持ち込んだ成人T細胞白血病
    第十三章 弥生人が持ち込んだ結核
    終 章 今後、感染症との激戦が予想される地域は?
    あとがきー病気の環境史への挑戦

  • オビにあるとおり、「新型ウイルスの発生は本書で警告されていた」。
    人類とウイルス、細菌、寄生虫など微生物との戦いの歴史(共存の歴史と言えるかもしれない)が分かりやすく述べられている。

    感染症と人間の関係は、絶対的ではなく相対的なものだ。そんな印象を強く持った。

    とても面白いし、コロナ対策にすぐに役立つ知識も得られるので、ステイホームウィーク中にぜひ。

    • たけさん
      5552さん、おはようございます。
      コメントありがとうございます!

      この本、1ヶ月前は購入できなかったんですね。今は重版されたらしく、Am...
      5552さん、おはようございます。
      コメントありがとうございます!

      この本、1ヶ月前は購入できなかったんですね。今は重版されたらしく、Amazonで注文した翌日に届きました。

      とても重いテーマですが、この本はかなり軽い語り口なので、深刻にならず読み進められました。なかなかの良書なのではないかと思います。
      2020/05/03
    • 5552さん
      たけさん、お返事ありがとうございます。

      amazonで注文できました。売上1位なんですね。今は入荷にはもう少し時間がかかるみたいです。...
      たけさん、お返事ありがとうございます。

      amazonで注文できました。売上1位なんですね。今は入荷にはもう少し時間がかかるみたいです。届くのが楽しみです。情報ありがとうございました。
      2020/05/03
    • たけさん
      5552さん。
      ほんとだ!また、入荷まで時間がかかるようになったんですね。
      自分は谷間の時期に買えてとてもラッキーでした。

      と、本のネット...
      5552さん。
      ほんとだ!また、入荷まで時間がかかるようになったんですね。
      自分は谷間の時期に買えてとてもラッキーでした。

      と、本のネット通販サイト見たら、軒並み在庫切れとか、入荷未定なんですね…

      感染症については、この時期とても重要な知識なので、出版社には大増刷をお願いしたいところです。
      2020/05/03
  • 著者は、1940年生まれ。

    この本のあとがきによると、

    「人は病気の流行を招きよせるような環境をつくってきた」とのこと。

    つまり、今回のコロナの場合、私たち人類の方から、ウイルスが蔓延しやすい状況をつくり出してきたということ。

    例えば、都市化。
    20世紀初めには都市人口は2割だったが、今は5割に増加している。

    肉食文化の広がりによる家畜の増加や、森林破壊による野生動物の居住環境の変化も感染拡大の要因とか。

    つまり、今回のコロナの場合、コロナウイルスの自然宿主とされるコウモリが、森林破壊により、本来のすみかを追われ、人や家畜との接触機会が増え、人類に感染したと考えられると。

    ●2021年10月24日、追記。

    著者、石弘之さん、どのような方かというと、ウィキペディアには、次のように書かれています。

    石 弘之(いし ひろゆき、1940年5月28日 - )は、日本の環境ジャーナリスト、環境問題研究者。

    東京市(現東京都豊島区)生まれ。朝日新聞編集委員を経て東京大学教授、駐ザンビア特命全権大使等を歴任した。

    その他にも国連環境計画上級顧問、国連開発計画上級顧問、東欧環境センター常任理事、国際協力機構参与、通商産業省産業構造審議会委員、運輸省運輸政策審議会環境部会長、持続可能な開発のための日本評議会議長。

    教育学者の石三次郎(元東京教育大学教授)は父。経済学者の石弘光(一橋大学名誉教授)は実兄。末弟の石和久は日本の医師、医学博士であり順天堂大学名誉教授。他に姉1人、弟1人。


    ●2023年6月18日、追記。

    私自身、コロナに感染。
    感染が分かったのは、2023年5月31日。
    今は回復している。

  • ジャーナリスト/研究者として環境問題に長年関わってきた著者は、アフリカ、アマゾン、ボルネオなどで長く働いていたこともあり、「さまざまな熱帯病の洗礼を受け」てきた。
    「マラリア四回、コレラ、デング熱、アメーバ赤痢、リーシマニア症、ダニ発疹熱各一回、原因不明の高熱と下痢各数回」(「あとがき」)を、これまでに経験してきたそうだ。

    そのように感染症の世界を身をもって知り抜いた著者が、「病気の環境史に挑戦した」のが本書である。

    人類誕生から現代までの約20万年間に展開されてきた、感染症と人類の戦いの歴史を綴っている。
    著者自身の体験にもときおり言及されるが、基本は客観的な概説書だ。

    感染症をめぐる世界史を鳥瞰した類書は多いが、管見の範囲では本書がいちばんよいと思った。研究者らしい正確な記述と、元新聞記者らしいわかりやすさのバランスが絶妙なのだ。
    ウェブの連載コラムがベースになっているためか、面白い読み物にしようとする工夫も随所に見られる。

    本書を通読すると、感染症との戦いが歴史を大きく変えてきたことを痛感させられる。

    アレキサンダー大王も平清盛も、死因はマラリアであったとする説が有力だ(異説もある)。

    江戸を襲ったコレラの大流行は、ペリー艦隊の乗組員にコレラ患者がいたことが原因とされる。その恨みが黒船や異国人に向けられ、攘夷思想の高まりの一因となった。

    中世ヨーロッパで人口を激減させたペスト禍によって、「多くの農村が無人となり、荘園領主と農民の力関係が逆転し」、そのことが中世社会崩壊の原動力になった。

    アステカ帝国崩壊の大きな要因となったのは、スペイン人が持ち込んだ天然痘だった。
    一時はアステカ軍に撃退され、敗走寸前だったコルテスの軍隊が態勢を立て直して首都に攻め込むと、街はすでに天然痘による死者で埋め尽くされていたという。

    20世紀初頭の世界を襲ったパンデミック――「スペイン風邪」(後年、インフルエンザと判明)は、あまりにも多くの兵士が感染して命を落としたために、第一次世界大戦の終結を早めた。
    だが、「各国から参戦した兵士は、ヨーロッパ戦線で感染して本国にウイルスを持ち帰ったために、一挙にインフルエンザのグローバル化が起きた」とされる。

    ……と、そのように、感染症の猛威は歴史を変え、世界を変えてきた。
    そしていま、コロナ禍によってまさに世界は大きく変わりつつある。その転換点の只中にいる我々が、「感染症の世界史」から学ぶべきことは多いだろう。

  • 新型肺炎でわかった、人類にとって唯一の天敵! 『感染症の世界史』 | J-CAST BOOKウォッチ
    https://books.j-cast.com/2020/02/16010906.html

    新型コロナウイルスはなぜ発生したのか、いつ収まるのか『感染症の世界史』著者、石弘之さんインタビュー | インタビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/609043

    『感染症の世界史』著者の石氏、「人間の一人勝ちはあり得ない」 | 日経クロステック(xTECH)
    https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01296/052200021/

    感染症の世界史 石 弘之:文庫 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/321710000160/

  • 内容からして楽しいと思いながら読める本ではなかったが、この時期読むにはちょうど良かった。ペスト、天然痘、麻疹、エイズなどのウイルスが人類にどれほど猛威を振るったのかが記されており、今回のコロナウイルスもそれらに名を連ねて語られていくのだろうと感じた。本書で指摘されているように、食物連鎖の頂点に立つ人間にとって、もはやウイルスは唯一の敵なのかもしれない。

    しかし、ウイルスの撲滅には途方もない時間を要するし、非現実的だ。今は撲滅ではなく、ウイルスとの共存を考えるべきだろう。そのためには二つのことが重要だ。一つは、「現在、ヒトに感染することが確認されているウイルス」の治療法を確立すること。もう一つは、これ以上ヒトに感染するウイルスを増やさないことである。言い換えれば、ヒトとウイルスの棲み分けである。

    前者に関しては、現在流行中の新型コロナウイルスを考えればすぐに分かる。医療従事者の方は今この瞬間も感染者の治療に全力を捧げている。ワクチンや特効薬の開発も昼夜を問わず進められている。医療関係者、研究者が一人でも多くの方の命を救おうとそれぞれ闘ってくださることに感謝と敬意を示したい。
    後者に関して、著者は今後(本書は2017年に刊行された)、感染症の発生地として危険が高いのは、中国とアフリカであると指摘していた。どちらも衛生状態が良いとは言えず、野生動物を食べる慣習が残っているからだ。野生動物を宿主としていたウイルスが人に感染し、人の体内でヒトヒト感染ができるように変異してしまうのである。こうしてヒトを宿主にできる新たなウイルスが誕生してしまう。コロナウイルスも、センザンコウ、コウモリ、ヘビなどの野生動物を起源とする説が出ている。

    そもそも、なぜ野生動物を食べる人がいるのだろうか。
    その背景には、やはり十分な食べ物が買えないという貧困があるのだろう。食肉を買えない、家畜が足りない、そんな時に野生動物で栄養を補うのではないか。中国など13億人以上の人口を抱えている。開発途上の地域では、十分な食べ物を供給できないゆえに、たとえ野生動物であっても食べられるものはすべて食べてしまうのだろう。こうしてヒトの体内で、新たなウイルスが誕生する。

    グローバル化した世界では、どこかで感染症が発生したら一瞬でウイルスが広まってしまう。そして、新たなウイルスが発生する可能性が高いのは、人々が飢え、苦しむ貧困地域だ。やはり、貧困の撲滅は「彼ら」の課題ではなく地球に住む全員、すなわち「私たち」の課題なのである。

  • すごい。平成30年初版なのに、今回のコロナ流行を見事に予言しているかのような後書きだった。
    比較的衛生環境がよい現代の日本で暮らしているから気づかなかっただけで、世界では、エボラ出血熱を筆頭に数多くの感染症がとうに流行していた。また、日本でもかつては天然痘、結核などの流行で何度も人口を減らしてきた。人類の歴史は進化する病原体との戦いであり、今に始まったことではないらしい。
    これから衛生環境は少しずつ進化していくのかもしれないが、それ以上に、人口増加に伴う森林破壊や食肉の確保、都市への人口密集など、人間社会は病原体の繁栄に有利な方向に変化しつつある。今回のコロナ流行もある意味必然の出来事なのかもしれない。
    人間にとっての最恐の自然災害であるという認識を持って、常に対策を強化し続けなくてはいかなくては、こちらも常に進化する病原体に勝てないと分かった。

  • 感染症は太古から人類とともにあった。
    感染症の大流行は繰り返され、そのたび、人はそれと闘ってきた。
    多くの者が犠牲になる一方で、病禍を生き抜いた者が子孫を残した。
    やがて、衛生管理が改善し、栄養状態がよくなり、医学や医療制度が発展した。感染症の原因が細菌やウイルスなどであることもわかってきた。
    では、人類は感染症に打ち勝ったのか、といえば、もちろん、そんなことはない。
    ヒトが感染症と闘うのと同時に、感染症もまた、自身の存在を賭けて戦っているのだ。少しずつ姿を変え、新たな武器を手にして、ヒトの防御の隙を突き。
    本書はそんな、人類と感染症の闘いを俯瞰する1冊である。
    著者は環境ジャーナリスト・研究者。
    よく整理されていて読みやすいのは元新聞社編集委員のゆえか。

    第一部では地球の環境史と感染症の関わり、第二部では人類と共存するウイルス・細菌、第三部では日本の歴史と感染症に触れ、終章では今後、感染症が蔓延する地域を予測する。
    2014年の発行だが、今日を予見するような箇所もあり、示唆に富んで、非常に興味深い。

    エボラ出血熱。デング熱。マラリア。コレラ。ペスト。SARS。ピロリ菌。トキソプラズマ。ヘルペス。インフルエンザ。エイズ。ハシカ。風疹。成人T細胞白血病。結核。
    各論もそれぞれ読ませるのだが、特になるほどと思ったのは、性交渉の危険性のくだり。感染症の病原体は宿主から宿主へと乗り移る。単に近くにいるか、接触するか、捕食するか、機会はさまざまだが、性交渉は接触の中でもかなり濃密なものである。当然、この機を捉える病原体はいる。
    例えば、ヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)は、子宮頸ガンの原因ウイルスである。子宮頸ガンの多くは性交渉によるなどのウイルス感染が元で発症する。つまり、感染症によっておこるガンである。
    WHOによれば、ガンによる死亡の20%は性交渉で感染するウイルスによるものだという。タバコによるガンの死亡が22%と見積もられるというから、性交渉の危険性は、見方によってはタバコとあまり変わらないとも言えるのだ。
    HPVに関しては、ワクチンによる予防がかなり有効と見られるが、副作用に関するトラブルで日本における接種はあまりうまく進んでいない。このあたりの解説も簡潔にまとまっていてわかりやすい。

    終章の予言めいた記述も読ませる。
    人類も「生き延びてきた」種族だが、感染症病原体たちもまた、「生き延びてきた」種なのだ。
    攻防はなお続く。

  • 感染症の世界史をわかりやすく。ジャーナリストがまとめてみた

    ●本の概要・感想
     環境ジャーナリストの石井氏が感染症の歴史をまとめて紹介する本。「感染症の世界史」というタイトルだが、著者は感染症や感染症史の専門家ではないことに注意。本書では感染症史の大きな流れやストーリーを抽象化するような話はほとんど含まれていない。あくまで、ジャーナリストによって分かりやすく編纂された感染症の歴史である。ピンポイントで事実を抑えたい人にお勧めする。感染症史だけでなく、そもそもの感染症の原因であるウイルスの特性や発生源についても学べる。

    ●本の面白かった点、学びになった点
    *なぜウイルスは宿主を殺してしまうのか?
     感染症を引き起こすウイルスは免疫との戦いの果てに、宿主を殺してしまうことがある。免疫にウイルスが目をつけられれば、「どちらかが死ぬ」まで戦いが終わることはない。免疫がウイルスを殺す過程で人間を傷つけることもあれば、ウイルスによる作用で人類が傷つくこともある。感染症によって人が死ぬのは「ウイルスが人の免疫メカニズムに勝利」した証拠なのである。となると、ウイルスの運命も数奇なものだ。自分たちの勝利が決まった瞬間に、居住環境は壊れてゆき、やがて宿主からは何の栄養も奪えなくなる。免疫に勝っても負けても、いつかはウイルスは死ぬことになる..。

    *ウイルスを取り込んで動物は進化する
     ウイルスは常に悪者というわけではない。生物が進化する手助けをすることもある。>>「生物は、感染したウイルスの遺伝子を自らの遺伝子に取り込んで、突然変異を起こして、遺伝情報を多様にし、進化を促進してきた。人も含めて、どんな生物にもウイルスに由来する遺伝子が入り込んでいる。」

    *都市開発によって未知のウイルスが人間社会に入り込みやすくなった
     新しい感染症は、動物にもともと潜んでいたウイルスが人に侵入できるように進化してもたらされることが多い。野生動物との接触がより身近になった現代社会では、未知のウイルスがより入りこみやすくなったといえる。コウモリやサルが暮らすジャングルを開発し、人と野生動物の距離が近くなったため、感染症をもたらすウイルスが人に入り込みやすくなった。
     加えて、かつてないほど人間が世界各地を行き来する「移動文化」の発展が、感染症をより広めやすくもしている。

    *都市社会が感染症に弱い2つの理由
    1. 人が多く、過密
    2. 様々な地域から人々が往来する

    *家畜を飼っていると花粉症やぜんそくにかかりにくなる

    *14世紀に流行ったペストは少なくとも三、四十年は流行しつづけ、ヨーロッパの人口の3分の1に相当する二千五百万人から三千万人が死亡した。それによって森林面積は上昇。二酸化炭素の排出量が減った

    *日本でのペスト拡大も収束までに27年かかっている。ペストが最初に日本に侵入したのは1899年で、収束発表があったのは1926年となる。実に27年間かかったものの、ペスト被害国のなかでは上手に収めた方である。日本だけで2215人の死者があったが...

  • 新型コロナウイルスの世界的流行の影響で注目されている一冊。出版は2014年で、そこから加筆して2018年に文庫化された。この本は医師が感染症のメカニズムを解説したり、社会学者がデータを分析する類の書籍ではない。環境ジャーナリストが地球環境史という大きなマクロ的な視点から、人類と対峙し続けてきた感染症の正体を究明しようとする画期的なもの。著者自身も世界各地で様々な感染症に罹患した経験があるというツワモノ。動物由来のウイルス変異、劣悪な衛星環境による免疫力低下、性行為による感染など、先人の知見から学べる良書。

  • 今年だから読もうと思った本、読んだ本。
    面白いと思ったポイント3つ。
    ①ウイルスも生き物だから生存を目的に進化していく。宿主の死が自身に悪影響を与える場合、弱毒化していくこともある。時に宿主の行動を操ろうとする種もいる。
    ②コロナ前の本にも関わらず、中国が感染症の発生源になっていくことを指摘。その理由として、特殊な食文化、地方の衛生状態の悪さなどが挙げられる。
    ③第一次世界大戦の死因第一位は、スペイン風邪

  • コロナの影響で遅ればせながら読み始めた。
    人類と感染症の歩みについて、分かりやすくまとめられている。
    これを読むと、感染症が人類と切っても切り離せないものであることがよく分かる。

    まずウイルスというものは、基本的にどこにでもいるらしい。空気中、人や動物の内臓や皮膚といった所はもちろん、南極だろうが深海だろうが発見されている。
    むしろ乳酸菌など一部の菌とは共存関係にある。
    少なくとも人の住う所には確実にはびこっている存在なので、人類の歴史には感染症も当然ついてまわる事になる。
    ウイルスは現代でもワクチンの開発を上回る速度で進化を続けている。まさに追いかけっこだ。

    本書の終章では、新たな感染症の始まりや激戦の予想に、中国やアフリカの衛生環境、野生動物を食べる習慣、野生のネズミやコウモリが保有するウイルスからの感染など、今回のコロナ禍を予想する内容が書かれている。
    新型コロナの被害が大きな欧米を中心に、発信地となった中国に責任を求める風潮もあるが、一部の地域や人々に原因を見るのは危険な行為であるように思う。
    いくつかの感染症は、ダムや灌漑施設などの開発がきっかけで流行し、「開発原病」と呼ばれているらしい。
    また、「農地の拡大、森林伐採などの環境破壊や地球温暖化が、感染症の発生や拡大に影響を与えると思うか」というアンケートでは、半数以上の専門家がイエスと答えている。
    感染症は中国やアフリカだけが招くものではない。人類全体と深い関係がある。そこに目を瞑って現状だけ打破しようとするならば、次のパンデミックを招く事になる。

    今回のパンデミックでは、日本は比較的感染者、死者数が抑えられている国だ。それに対し各国から疑問視する声が聞こえ、今のところ曖昧な解答しか見られない。
    しかし、次なる感染症に備えてというだけでなく、オリンピックを控えるなか、曖昧な対策だけでは諸外国、特に被害の大きな国は納得しないだろう。
    感染症がなくなるものでない以上、このままの流れで収束を待つのではなく、具体的な対策を持たなければ、ウイルス以外の被害も更に拡大していく恐れは大きい。

  • 今読むべき

  • 1.感染症についてまともに学んだことがなかったので自分の好きな歴史と合わせて読んでみることにしました。

    2.感染症が広がった原因は過密社会の構築、人間の行き来が自由になったことにより、これまで触れることがなかったウイルスと出会ってしまったからです。近代化が進み、社会が変容し、暮らしが変わってしまったからこそここまで感染症が拡がったのだと述べています。つい数十年前までは、ウイルスは撲滅できる存在として認識されていたのですが、今は真逆のことを言ってます。つまり、人間は感染ありきで物事を考えていかなくてはなりません。
    この本では、過去にどのような歴史を辿って感染症が拡がってきたのか、感染症が爆発的に拡がった原因はなんだったのか、さらに話題になった症状ごとに述べています。


    3.人間は感染症と向き合って生きていかなくてはなりません。感染症は数十年に一度のサイクルで訪れるようになってます。このようだと、人間は生きてる限り必ず一度は感染症と向き合うことになります。対策を打ちようにも、人類の成長スピードを遥かに超えるスピードで感染症は人間を襲ってきます。今、苦しめられているコロナもいずれはおさまるでしょうが、また次の感染症がくることは目に見えています。そうなったときに、今回のコロナの経験を活かすことができるのかどうか、ここで人間の成長が問われるのではないかと思います。今回のコロナを機にどのように向き合っていくのかを考えなければならないと思いました。

  • インフルエンザ、はしか、風疹、結核、HIV,白血病、エボラ出血熱、マラリア、デング熱、ペスト、天然痘などなど。人類の歴史で、繰り返し発生した疫病の歴史に、現在の新型コロナウイルスCovid19のパンデミックを重ね合わせながら読みました。

    世界人口の急増、都市化、高齢化、そして環境破壊などの要因が今後の感染爆発の要素となっていく、という巻末の主張には説得力があります。もともとは、ジャングルの奥地や、寒冷地の湖沼に潜んでいたウイルスが、野生動物や渡り鳥から、家畜、人間へと感染していく過程で毒性を強めていくこと、そして人類の移動が拡大していくにつれて風土病が遠隔地で蔓延することなど、正に今回の新型コロナウイルスで目にした事象が繰り返されてきていたことが良く分かりました。現代では、移動手段の高速化にともないパンデミックの広がりも加速していることでしょう。

    また、感染症は人の密集状態により伝染拡大していくため、過去の大規模な戦争では戦死者と同等またはそれ以上が感染症により命を落としているといいます。第一次世界大戦は、独仏の塹壕戦の長期化で有名ですが、両軍ともスペイン風邪の大流行による兵力が調達できなかったことが終戦の一因であったようです。

    今回のCovid19に対するWHO対応についても物議が醸されていますが、WHOが2009年の新型インフルエンザをパンデミックに指定し非常事態宣言を発出したものの、結局大流行には至らず多くの国が製薬会社から無駄に輸入したワクチンが廃棄されることになってしまったという事実も紹介されています。感染症の毒性や伝染拡大を予測することの難しさを改めて認識することができました。

    猫から感染するといわれるトキソプラズマについては、宿主の行動に影響を与えると言われ、猫好きがなぜ猫に取り込まれてしまうのか納得してしまう思いがしました。

  • 【目次】
    -まえがき――「幸運な先祖」の子孫たち
    -序章 エボラ出血熱とデング熱――突発的流行の衝撃
    --1.最強の感染症=エボラ出血熱との新たな戦い
    --2.都心から流行がはじまったデング熱
    -第一部 二〇万年の地球環境史と感染症
    --第一章 人類と病気の果てしない軍拡競争史
    --第二章 環境変化が招いた感染症
    --第三章 人類の移動と病気の拡散
    -第二部 人類と共存するウイルスと細菌
    --第四章 ピロリ菌は敵か味方か――胃ガンの原因をめぐって
    --第五章 寄生虫が人を操る?――猫とトキソプラズマ原虫
    --第六章 性交渉とウイルスの関係――セックスがガンの原因になる?
    --第七章 八種類あるヘルペスウイルス――感染者は世界で一億人
    --第八章 世界で増殖するインフルエンザ――過密社会に適応したウイルス
    --第九章 エイズ感染は一〇〇年前から――増えつづける日本での患者数
    -第三部 日本列島史と感染症の現状
    --第十章 ハシカを侮る後進国・日本
    --第十一章 風疹の流行を止められない日本
    --第十二章 縄文人が持ち込んだ成人T細胞白血病
    --第十三章 弥生人が持ち込んだ結核
    --終章 今後、感染症との激戦が予想される地域は?
    -あとがき――病気の環境史への挑戦

    <メモ>
    ・感染症が人類の脅威となってきた理由(5)
     ・農業や牧畜の発明・定住化・家畜との密接な暮らし
     ・熱帯林の急ピッチな開発
     ・大量・高速移動
    ・エボラ出血熱の流行は大規模な自然破壊の勅語に発生することが多い(中略)。1994年のガボンでの流行は、金鉱山の開発で広大な森林が破壊された直後に発生した。"(30)
    ・"エボラ出血が流行している西アフリカだけで2万人を超える中国人が働いている。中国は2009年に米国を抜いて、アフリカの最大の貿易国になった(中略)。エボラウイルスの発見者の一人であるロンドン大学のピーター・ピオット教授は、アフリカとの濃密な関係を考えると、エボラウイルスがいつ中国に持ち込まれてもおかしくない、と断言する。"(31)
    ・"米国獣医学会の調査によれば、もっとも人を殺す野生動物は「蚊」だという。"(35)
    ・デング熱の流行国:1970年代以前:9ヶ国→現在:100ヶ国以上(40)

    ・人の遺伝情報のうち、タンパク質をつくる機能のある遺伝子は1.5%で、全体の約半数はウイルス由来。(52)
    ・"ウイルスが哺乳動物の胎児を守っていることも明らかになった。大意の遺伝形質の半分は父親に由来するもので、移植された臓器のように母親の免疫系にとっては異質な存在だ。通常なら母体の免疫反応によって胎児は生きていけないはずで、長いこと謎になってきた。
    拒絶反応を引き起こす母親のリンパ球は、一枚の細胞の膜に守られて胎児の血管に入るのが阻止されていた。1970年代に貼って、哺乳動物の胎盤から大量のウイルスが発見された。1988年に、スウェーデン・ウプサラ大学のエリック・ラーソン博士らによって、この細胞の膜は体内にすむウイルスによってつくられたものであることが突き止められた。つまり、ウイルスは生命の本質部分をにぎっていることになる。"(53-54)
    ・"これまで、約5400種のウイルスと約6800種の細菌が発見されている。"(55)
    ・"微生物にとって哺乳動物の体内は温度が一定で、栄養分も豊富な恵まれた環境だ。"(56)
    ・微生物と宿主の永遠の戦い
     ・宿主が微生物の攻撃で敗北して死滅する。ラッサ別・エボラ出血熱等
     ・宿主側の攻撃が功を奏して、微生物が敗北する。天然痘、ハンセン病、ポリオ、黄熱病
     ・宿主と微生物の和平関係、日和見菌
     ・宿主と微生物の果てしない戦い:水痘(57-58)

    ・人に病気を起こす病原体は1415種類。細菌538種、ウイルス217種、菌類307種、原虫66種、寄生虫287種。(ワシントン大学公衆衛生学部の報告書、2001年)。(84)
    ・1858年、日本でのコレラによる死者は3万人~26万人。1911年、これらの総死者は37万人。(本当か?)(90)

    ・人体の常在菌は、舌:7947種、喉:4154種、耳の裏側:2359種、大腸:33627種、女性器:2062種(ブラウン大学スーザン・ヒューズ准教授)(124)
    ・口内に100億個、皮膚に1兆個。人体を構成する細胞数の10倍以上(数百兆個)。常在菌の総重量は1300グラム。(125)
    ・大便の約半分が腸内細菌またはその死骸(126)
    ・ピロリ菌の遺伝変異系統を描くと、人類の移動経路と同じになる(大分大学医学部山岡吉生教授)(133)
    ・"感染症にかかりにくくなったら、今度はアレルギーに悩まされるようになった。両者はシーソーのような関係だったのだ。"(138)

    ・ヒトパピローマウイルス(HPV)によるがん発生:
     女性:頸がん>外陰がん>肛門がん>口腔がん>膣がん
     男性:口腔がん>肛門がん>陰茎がん(165)

    ・日本でのスペイン風邪。一回目の死亡者数25万7363人、死亡率1.22%、二回目の流行の死亡者数12万7666人、死亡率5.29%。一回目の流行だけで人口の37.3%が感染。内務省衛生局編纂『流行性感冒ー「スペイン風邪」大流行の記録』1922年。(217)
    ・"インフルエンザウイルスは、HIVと同じRNAウイルスに属し、哺乳類が100万年かかる進化を1年でやってのけるほど変異が激しい。"(221)
    ・鳥インフルエンザ猛威の理由。過去反省に世界の湿地の50%が失われた。ラムサール条約事務局。"カモなど水菌類の越冬地は狭められて過密になっている。"(221-222)
    ・世界で飼われている鶏は2010年に約200億羽。国連食糧農業機関(FAO)による。(224)

    ・"HIVやインフルエンザウイルスのようなRNA型のウイルスは一本鎖なので、損傷が起きても修復することができずに変異を起こしやすいのだ。"(249)
    ・エイズの現状、2012年待つで累計HIV感染者7500万人、累積死者3600万人。2012年の年間新規HIV感染者230満人、エイズ関連死者数160万人。世界人口の0.8%が感染者または患者。日本は新規感染者1002人。累計HIV感染者1万4706人、エイズ患者6719人。HIV検査件数は17.7万(2008年)→13万(2013年)。(254)

    ・旧大陸から新大陸に持ち込まれたのは天然痘とハシカ。(274)
    ・"1850年代、ハワイの人口の2割、1875年にはフィジーで人口の3割、19世紀にはインド洋のアンダマン諸島の人口をほぼ皆滅させた。"(275)
    ・1862年、江戸だけ約24万人の死者???(278)
    ・"子どもの成長を祝う「七五三」は、天和元年(1681)に、綱吉の長男で舘林城主である徳川徳松の健康を祈ってはじまったとされる。"(
    279)

    ・2009年の厚生労働省の調査によると、T細胞白血病ウイルスの感染者は全国で108万人(301)。
    ・ウイルスの系統分析から人類の起源や移動の歴史を推測する「ウイルス人類学」が近年注目を浴びている。かつては、骨や道具や土器などを手がかりにする形態人類学や考古学から人類の起源や移動を追求してきたが、近年DNA分析など新たな技術の導入によって人類の過去にも新たな光があてられてきた。(306)
    ・T細胞白血病ウイルスの偏在。沖縄、鹿児島、宮崎、長崎の感染率は5%、キャリアは日本全体の三分の一を占める。(311)
    ・母子感染対策として、妊婦検診にHTLVの検査が加えられた。(315)

    ・"世界で2012年に860万人が結核に感染し、130万人が死亡している。単一の感染症としてはエイズについて世界で二番目に死亡者が多い。"(318)
    ・"結核菌は分裂するのに時間がかかり、感染してから発症するまでに一~二年かかるのがふつうだ。感染しても発病するのは10人に1、2人だ。残りは発病しないで一生を無事に過ごすことができる。"(330)
    ・"今後の人類と感染症の戦いを予想するうえで、もっとも激戦が予想されるのがお隣の中国と、人類発祥地で多くの感染の生まれ故郷でもあるアフリカであろう。いずれも、公衆衛生上の深刻な問題を抱えている。"(342)
    ・"熱帯地方でダムや灌漑施設のような静水域をつくるのは、さまざまな感染症を運ぶ蚊に繁殖場所を提供するようなものだ。"(346)


    https://kadobun.jp/feature/interview/9yhcdzonav40.html

    2020.02.17 朝活読書サロン
    http://naokis.doorblog.jp/archives/reading_salon_150.html
    2020.03.01 読了

  • いくつかの感染症をピックアップし、その経緯、ルート、またどんな型があるかの解説がある。
    新興感染症については、だいたいが他の動物経由で人に移り変異するため起こるのが多く、「人と森とがちかくなったこと(人口爆発、土地開発)」、「人と人とが近いこと(都市での密集)」、「人やものの移動が多いこと」から広がって来たんだなと実感ができる。これからについての記述で、中国、アフリカで新興感染症が起きやすいことやコロナウイルスがSARSであんなに脅威になるとは、といった"未来予測"に近いことが書かれていて、なるべくしてなった世界なのかもな、と実感した。

  • Kindle unlimitedにて。

    ◯興味深い所
    ある種と共存関係だったウィルスが、他の種に移ると重篤化する理由として
    「生活環境の競争相手を駆逐する事で、元の宿主の利益になるのではないか」
    という仮説。

    日本がワクチンワースト国であるということ。

    螺旋二重タイプと一重タイプだと、写しがない一重タイプが変異しやすいので厄介なところ。

  • COVID19のパンデミックは起こるべくして起こった感染症であると感じた。ウイルスを初めとした微生物も生き残るために必死で、それは人間と同じなんだと分かった。
    COVIDパンデミックが起こる前に書かれた本なのに、今後は中国南部から重症感染症が起こることが予想されていて、以前から危険地帯と考えられていたのが興味深かった。これからも起こるだろう。

  • 今流行しているコロナウイルスのことを予測していたのではないかという内容であった(実際に可能性は示唆されていた)。人口問題、家畜問題、環境問題がここまで感染症に影響を及ぼすものであるとは全く考えもしなかった。人類が自らの欲を満たすために行動を続けると、取り返しのつかないことになるのではないかと思う。これは今まさに我々が体験していることであり、今回発生したコロナウイルスの爆発的な感染は必然的なものであったのではないかと思わされる。感染症は必ず発生する、今発生しているコロナウイルスよりも甚大な被害をもたらす感染症が発生することは間違いない、といった考えのもと、我々がなすべきことを熟考し、行動していく必要があると強く思った。

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著者プロフィール

1940年東京都生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞入社。ニューヨーク特派員、編集委員などを経て退社。国連環境計画上級顧問。96年より東京大学大学院教授、ザンビア特命全権大使、北海道大学大学院教授、東京農業大学教授を歴任。この間、国際協力事業団参与、東中欧環境センター理事などを兼務。国連ボーマ賞、国連グローバル500賞、毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。主な著書に『感染症の世界史』『鉄条網の世界史』(角川ソフィア文庫)、『環境再興史』(角川新書)、『地球環境報告』(岩波新書)など多数。

「2022年 『噴火と寒冷化の災害史 「火山の冬」がやってくる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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