初歩から学ぶ生物学 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 69
感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044003982

作品紹介・あらすじ

生命とは何か。種とは何か。死とは何か。遺伝とは何か――。生物学には、わかっているようで解明されていないことがたくさんある。だからこそ、生物学は面白い! 一見、とっつにきくそうだが、基礎さえ理解していれば、新聞やテレビで話題になる事柄も、より興味深く知ることができる。文庫化にあたり、人類起源や免疫構造の最新知見を大幅に加筆修正。事象への本質へダイレクトに迫り、現代生物学への素朴な疑問をわかりやすく解説する入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 斬新な切り口で生物学を語った本。生命とは何かから生物の仕組みや進化論、さらには病気の話までいわゆる生物学にとどまらない範囲を幅広くカバー。生命論、生態学、発生学、進化論、分子生物学といった領域が学問的な範囲。池田清彦は構造主義生物学の立場から科学論を語る生物学者とある。どうりで。

    生命を定義するのは難しい。なぜなら、定義するとは不変の何かを見つけることだが、生命は、刻々と変化する。
    「環境」も「心」も普遍の実体ではない。
    「心」は脳の機能であって実体といったものではない。

    「生物が物質からできている」という立場をとる現代生物学は「物質がどのような状態で存在しているとそこに生命という現象が出てくるのか」を説明しようとしている。

    生物は、、、空間である。
    自律性がある。
    内と外の境界が必ず存在する。
    一般の物体より高次で複雑なルールをもっている。
    できるのにやらないという性質をもっている。
    自分を構成する物質をどんどん変えながら、なおかつ全体としては同じという奇妙な「空間」=オートポイエーシス
    根幹は「物質が循環する」ということ
    究極的には物質の配置

    DNAが遺伝されるのではなく、オートポイエティックなシステムが遺伝されてきている。
    生命は38億年前に誕生しており、その生命が今もただ継承されているだけ。

    近年のDNA解析により生物の系統がかなり正確に推定できるようになったが、携帯が似ているからといって、必ずしも系統が近いとは限らない。

    環境が激変しても地球は困らない。
    生物種の大量絶滅

    現代人のDNAには、ネアンデルタール人やデニソワ人といった先史人類のDNAが混入している。

  • 池田先生の”生物学のウソとホント”が良かったので本書も読んでみた。”生物学のウソとホント”と話題は共通しているがこちらのややや詳しく記載されており良かった。遺伝子や進化、性、死などについての記載がわかりやすくて良い。

  • 以前から気になっていてちょうど電子書籍セールをやっていたので購入。

    初歩から学ぶ…とのことだが、初歩とは?
    いや、決して分かりにくいということではない。
    むしろ分かりやすい。冒頭に2日で読めると書いてあったが、わたしは2日では読めなかった笑
    それくらい情報量が多く、内容が濃くて、面白い。

    そもそも生きているって何?という哲学的な話から(生物学的な論点で書かれていたがだいぶ哲学だと思った)、生物の仕組み、恐竜や人間の祖先の話、最新の医療まで分かりやすく(分かりやすいけど難しい)記載されている。
    よくありがちな、教科書に載っている単語の説明なしにどんどん話が進み読者が置いてけぼりになるタイプのものではなく、具体例の説明があるから理解しやすい。教科書に載ってるレベルのことは知っとけよという感じだろうけど。
    いや、面白かった。濃かった。要約はできない。読んでほしい。

  • これがどうして、初歩とはいえないほどの最新知見のてんこ盛りである。


    詳しい仕組みについては、池田先生の解説を読むのが一番だ。
    むずかしいことを平明で簡潔に言うことに関しては、右に出るものなしである。これでわからないのならば、図解本か、それとも時間をかけるしかない。わたし自身は、二日で読めるだろうとの著者の意に反し、もっと長いことかかってしまったが。

    生命に対し、概観として、二つの新たな学びがあった。
    というのは、一つに、生命は、物理の法則のなかで、何かを「禁止」することで成り立つことである。
    不自由であることで生まれる、その生命らしさ。これは、ずいぶん奥行きのあることではないかと思うが浅薄な思いしか未だ持てていない。これから、思索を深めていきたい。ひとつ言うならば、人の持つ「愛」のような感情など、この法則に従っているように思う。

    もう一つが、自己と非自己を区別する免疫の仕組みである。
    マクロファージのように、種レベルの判断をするものから、キラーT細胞のような、細かい判断をするものもいる。
    キラーT細胞が細かな判断をするためには、自己を判断する力があるもの、自己を攻撃する特性があるもの、自己を判断できないもののうち、自己を判断し、非自己を攻撃する性質のものだけが残るように「教育」する。この、「教育」の実体は殺戮で、自ら作り出したキラーT細胞の96パーセントは死滅する。
    これは、二つの興味深い事実につながっている。
    ひとつは、自己を守るために作り出される免疫機能のうち、とにかく無作為に全パターンを創出することで、攻撃対象に自己を含むものが誕生すること、そして、自己を殺さないために自己を殺すことだ。つまり、誕生の段階では、自己と非自己の区別はなく、「その後に生じるもの」だということだ。これは、自他は互いによく似ていることから起きるのではないかとも思う。そもそも、遺伝子からすれば、人の個の違いは、わずか0.1パーセント、数パーセントも違えば、「全くの別物」と思う動物になるのだ。その、ごく小さな違いにこだわるものが、免疫であるともいえる。
    しかも、この胸腺は、老化とともに衰え、T細胞が1/1000にも減る。さらに、衰えから自己を自己と判断できない細胞が生き延びる。それが、自己免疫病ともなる。

    わたしは、どうしても、何かを自他の区別に投影できないか考えてしまう癖があり、そのいちばんが目下のところ、免疫機能にある。
    人なんて、ほとんど似たようなもので、多少の違いに一喜一憂しても仕方がない。その一方で、その小さな違いこそが重要でもあり、いとおしくもなる。

    生命について考えたとき、現代の持つ課題が様々に反映されていることに気付く。「ミクロ合理性とマクロ合理性のジレンマ」という環境問題、有性生殖とジェンダー、純血種と生物多様性――アフリカ人以外は、ネアンデルタール人とデニソワ人の遺伝子を受け継いでいるという事実、人が人である故に苦しむのは、つまり、生命であるからとしか言いようがない。
    それで、どうしようもなく惹かれ、語らずにはいられない。

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著者プロフィール

1947年、東京都に生まれる。生物学者。早稲田大学名誉教授。東京教育大学理学部卒業、東京都立大学大学院理学研究科博士課程生物学専攻単位取得満期退学、理学博士。構造主義生物学の見地から科学論・社会評論の執筆、テレビ番組(「ホンマでっか!?TV」)長期出演など幅広く活躍している。趣味は昆虫採集。カミキリムシ収集家としても知られる。
著書には『本当のことを言ってはいけない』(角川新書)、『自粛バカ』(宝島新書)、『「現代優生学」の脅威 』(インターナショナル新書)、『もうすぐいなくなります』(新潮社)、『ほどほどのすすめ』(さくら舎)などがある。

「2021年 『したたかでいい加減な生き物たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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