宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044004170

作品紹介・あらすじ

人類に残された超難問、ABC予想の解決をも含むとするIUT(宇宙際タイヒミュラー)理論。
京都大学の望月新一教授によって構築された論文は、「未来から来た論文」と称されるなど、数学界のみならず、世界に衝撃をもたらした。

この論文は、世界で理解できるのは多く見積もっても数人、といわれるほどの難解さであり、
論文の発表から6年以上たった現在もなおアクセプトに至っていないが、望月教授と、議論と親交を重ねてきた著者は、
IUT理論は数学者ではない一般の人たちにもわかってもらえるような自然な考え方に根ざしていると考える。

本書では、理論のエッセンスを一般の読者に向けてわかりやすく紹介。その斬新さと独創性を体感できる。
理論の提唱者である望月新一教授の特別寄稿も収録!

(目次)
第1章 IUTショック
第2章 数学者の仕事
第3章 宇宙際幾何学者
第4章 たし算とかけ算
第5章 パズルのピース
第6章 対称性通信
第7章 「行為」の計算
第8章 伝達・復元・ひずみ

感想・レビュー・書評

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  • 一気読み。
    まごうことなき数学啓蒙書。数学的知識はなにも前提されていない。もっと知りたいという欲求が出てきた。数学ってすごい、と改めて感じた一書でした。

    わたしは加藤先生、望月先生と同世代だが、ガロア理論のように何千ページかかっても良いので、IUT理論を死ぬまでに理解したい。

  • IUT理論を全く知らなかったが、本書を読んで外枠だけでも理解できた。全く新しい概念だったが、各章とてもわかりやすく、拒絶反応なしに読めた。
    著者の、一般の人にも伝えたい想いが伝わった。

  • 「宇宙」とは天文学の宇宙ではなく、数学における「宇宙」のこと、つまり、足し算とかかけ算とか、自然数とか複素数とかそういった数学をするのに必要な道具一揃いのことをいいます。もしかしたら違う平行世界にはわたしたちの想像しないような計算方法で(違う宇宙で)計算しているかも知れません。京都大学の望月新一教授はそのような異なる宇宙の間で数式をやりとりする方法を調べたところ、もちろん計算結果がずれてくるのですが、そのずれを不等式で評価する方法を見いだしました。それが宇宙際タイヒミュラー(IUT)理論です。国際が国と国との間を表すように宇宙際とは宇宙と宇宙の間、という意味です。
     これを調べることによって長いこと未解決問題だったABC予想(ヨビノリさんの動画を貼りますhttps://www.youtube.com/watch?v=PIUCfN08p8M)という問題が解けてしまいました(証明については現在も議論中?一応論文掲載に至ったが、新しすぎて世界でも理解できる人が少なくて合ってるのかどうかわからない)。
     この本は一般向けの科学書であり、これを読んでも理論の詳細は理解できないのですが、本書は望月教授の親友であり、もっとも近くでこの理論が出来る過程を見てきた加藤氏が望月教授の人となりを紹介しているという側面もあり、数学の研究ってこういう風にやるのか~ということを純粋に楽しむことも出来ます。
     数学好きの中には厳密な証明こそが大事でアナロジーやお気持ちなどは不要という人もいると思いますが、この本を読めばアナロジーで発想を豊かにすることも大事なのだ、とわたし自身は元気づけられました。

  • 『だれも歩いたことのない土地をまっすぐ歩こうとするとき、次の一歩だけを見て歩き続ければ、まっすぐに歩けるとは限りません。しばらく歩いて後に振り返ってみると、ぐにゃぐにゃに曲がりながら歩いていた、ということの方が多いでしょう。しかし、自分の歩いている進路を、GPSなどを使って全体的に鳥瞰できれば、まっすぐ歩くのは難しいことではありません。そして、多くの場合、数学の新しい理論を構築する上でGPSの役割を果たすのが、「自然であること」についての鋭敏な直観なのだ、というわけです』―『第3章 宇宙際幾何学者』

    馴染みの言葉の英語での表現を知って元の日本語の意味を再確認するというようなことを時々経験する。例えばそれが英語をカタカナにしただけのインターハイのような言葉ならなおさらだが、それが「inter(-)college」を真似た「inter」と「high school」を合わせた合成語で高校総体(高校総合体育大会)を指しているという理解の元、「inter」が英語では「中、間、相互」という意味だと知ることで、なるほど「inter high school」の「inter」は、学校「間」を表しているのか、と理解が進むように。

    「際」は「きわ」という読みの方が強く印象があって、例えば「窓際」のような使われ方では何かと何かの「接するところ」というよりは「端っこ」という意味が強い。なのに「国際」となると「inter(-)national」と急に「間」という意味で使われる。なんでこんな話をするかといえば「Inter-Universal Teichmüller Theory(IUT)」の日本語訳が「宇宙間タイヒミュラー理論」ではなく「宇宙際タイヒミュラー理論」となっているからなのだけど、例えば「宇宙間通信」のように、宇宙と宇宙のあいだを繋ぐなら「際」じゃなくて「間」でもいいんじゃないか、と読み始める前はぼんやりと思っていた。

    もちろん、元の論文が500頁を超える大著で、かつ、そこへ至るまでの積み重ねの論文の総量が1000頁を超えるような理論を、この一冊で理解できることなど到底出来ないだろうし、著者の加藤文元氏が述べているように、その理論の技術的概要を一般向けに解説することは本書の意図ではないのかも知れない。実際、高度な数学上の議論を抜きにした本書の解説を読んでも当然のことながら門外漢の自分にはその概要が掴めたとは言える筈もない。けれど、何故これが「宇宙間」ではなくて「宇宙際」と訳されなくてはならないのかということは、ぼんやりと解ったような気にはなる。

    考えてみれば「際」には「きわ、はて(際限)」という意味がありつつ「さかい、接して交わるところ(学際、国際)」という意味もある。「はて」という否定的な意味合いで用いられる「窓際」もよくよく考えれば「窓を越えた世界」との繋がりを強いた場所とやや肯定的な意味合いも考えられなくもない。水際(みずぎわ)だって現(うつつ)の世界では越えられないけれど、浦島太郎のように夢や幻の世界では易々と越えて行ける「さかい」だ。二つの数学(宇宙)を繋げることによる不定性を測るというIUTは、なるほど越えがたい二つの世界を結ぶという離れ業をやっているのだと知れば、これは同じ物理法則の成り立つ単に遠く離れた銀河の間を繋ぐような「宇宙間(interspace)」ではなくてどうしても「宇宙際(Inter-Universal)」とならざるを得ないだろうな、と妙なところで得心する。

  • 宇宙本コーナーにあったので手に取ったのだが、ゴリゴリの数学だった。が、読むうちにどんどん引き込まれ、結果として宇宙本を読むより何倍も面白かったと思う。加藤先生は本当にすごい!難解な理論を喩えを用いてこんなにもわかりやすく説明できるとは。加藤先生自身もIUT理論に熱狂しているんだろうなあと思わせる熱い文章で、画期性、有用性、イメージ感が伝わった。本書には数式はほとんど出てこないので置いていかれずワクワクが持続したが、論文だけなら意味不明すぎて興味を持つことすらなかっただろう。出版に本当に感謝。加藤先生は他にも一般向けのライトな数学本を執筆しているようなので、そちらも読みたい。
    (どうでもいいけど、inter universeと日本語訳の宇宙際ってわりと受ける印象が違う気がする。。inter universeの方がしっくりくる。)

  • このように最先端の理論をど素人にも判るように解説してくれる本があるのはありがたい。

  • 自分は一応数学で学士の学位を持っているが,望月教授が発表した論文は正直Abstructの1行目からちんぷんかんぷんであった.

    本書は望月教授と親交深い加藤教授が,数学の専門的な知識をほとんど使わずに,IUT理論の概念について解説している.

    本書を読むことで,一般の読者でも望月教授の理論が現代数学の理論体型を根底から覆す可能性を持つ事を漠然と理解することができる良著である.

  • 縦書きの啓蒙書なのでスイスイと読めた。いろいろとインスパイアされる良書。
    忘れないように覚書。
    1) inter-universeという意味は2つの世界、従来の数学世界と今一つ加算と乗算の関係性(正則)が崩れる世界を構築する。
    2) 2つの世界は並行宇宙的なものより「入れ子」的になっている。
    3) 入れ子にはなっているが2つの世界で共有できるものは非常に限られており、両者をつなぐ「通信」がある
    4) 通信はある種の豊かな対称性で成立する 別世界の方は可換ではない「遠アーベル群」からなる世界
    5) 2つの世界の間にはある種の「歪み」が存在するが、IUTの一つの特徴はこの歪みを定量化する式 ThetaーLinkがあることで2つの世界を数量的に関係づけることに成功している
    6) この2つの世界の関係性によって deg(Θ) ≒ deg(q) のような式を構成し、その結果としてABC予想を解決している
    7) IUT理論はABC予想を解決することが発端で構築されたが、その世界は従来数学に対する革命であり、もはやABC予想を解決したことよりも数学的な革命をもたらしたことの意義の方が大きい

  • 足し算と掛け算を切り離し、証明した。
    図で表してくれるともっと分かりやすかったのではないか。

    ABC予想の証明やこの新しい理論によって、どんな実社会への応用が可能になるのか、興味深い。

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=41352

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB28108569

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著者プロフィール

かとう・ふみはる 1968年、宮城県生まれ。東京工業大学理学院数学系教授。97年、京都大学大学院理学研究科数学数理解析専攻博士後期課程修了。九州大学大学院助手、京都大学大学院准教授などを経て、2016年より現職。著書に『ガロア 天才数学者の生涯』(角川ソフィア文庫)『物語 数学の歴史―正しさへの挑戦』『数学する精神―正しさの創造、美しさの発見』(以上、中公新書)『数学の想像力―正しさの深層に何があるのか』(筑摩選書)、『宇宙と宇宙をつなぐ数学―IUT理論の衝撃』(KADOKAWA)、
『天に向かって続く数』( 共著、日本評論社)など。

「2021年 『人と数学のあいだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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