- KADOKAWA (2018年10月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784044004347
作品紹介・あらすじ
「民主主義」――果たしてその意味を私たちは真に理解し、実践しているだろうか。昭和23年、文部省は新憲法の施行を受けて当代の経済学者や法学者を集め、中高生向けに教科書を刊行した。民主主義の根本精神と仕組み、歴史や各国の制度を平易に紹介しながら、戦後日本が歩む未来を厳しさと希望をもって若者に説く。普遍性と驚くべき示唆に満ちた本書はまさに読み継がれるべき名著といえる。全文収録する初の文庫版! 解説・内田樹
感想・レビュー・書評
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昭和23年に書かれた中高校生向けの教科書。「新しい憲法のはなし」の三倍以上の分量はあるが、現代の選挙権を持とうとしている高校生に読ませたい、いや現代の大人に読ませたい示唆に富む文章が多々ある。解説者が内田樹で、主たる問題点を正当に補っているのも良い。戦中には、こんなにも真の知識人たちが隠れていたのか!と感動する。
紹介したい所。
・民主主義制度に対する歴史的な批判は、主に二つ。「衆愚政治になる」「個人主義で統一が乱れる」だ。前者に対しては「人間は神ではない。だから、人間の考えには、どんな場合にもまちがいはありうる。しかし、人間の理性の強みは、誤りに陥っても、それを改めることができるという点にある。しかるに、独裁主義は、失敗を犯すと、必ずこれを隠そうとする。理性を持ってこれを批判しようとする声を、権力を用いて封殺してしまう」。後者に関しては「民主主義は、個人を尊び、個人の自由を重んじる。けれども民主主義の立場は、正しい意味での個人主義であって、決して利己主義ではない。できるだけ多くの個人の、できるだけ大きな幸福を実現しようとする民主主義の精神は、おのれひとりの利益だけを求めて、他人の運命を歯牙にも掛けぬ利己主義とは、正反対である。」(251-258p)
・経済民主主義の実現を図るうえからいって、労働組合の健全でかつ建設的な政治活動に期待すべきものは、きわめて大きい。(242p)
・民主主義を単なる政治のやり方だと思うのは、まちがいである。民主主義の根本は、もっと深いところにある。それは、みんなの心の中にある。すべての人間を個人として尊厳な価値を持つものとして取り扱おうとする心、それが民主主義の根本精神である。(3p)(←内田樹は「制度ではなく、心だ」と断定してしまうと、カントもプラトンも「違う」と言うだろうという。しかし、内田は日本思想の民主主義精神の「連続性を顕彰し」たかったのだと擁護する。460p)
・イギリスではマグナカルタ(1215)によって民主主義の芽が育ち、900年かけて育てた。アメリカでも、最初は支配者の利益を図ろうとする打算が動機だったが、ひとたび民主主義の芽が出れば、あらゆる雪や霜の寒さともたたかって、すくすくと伸びた。1946年のフランス共和国の新憲法は、フランス革命の精神をただ単に守り抜いているばかりではなく、その精神を新しい時代にふさわしく拡充しようとしている。(37-63p)
・政治に無頓着な人(棄権する人)に二つのタイプがある。(1)相当の知識もあり、能力もありながら、かえってそのために、政治をくだらないこととして見おろそうとする人々である。(2)政治を自分たちにはわからない高いところにある事柄だと思う人々(「私にはむつかしいことはわからないから」)。どちらも正しい態度ではない。選挙権は、権利でもあるが道徳上の義務でもある。というよりも、むしろ多くの人々の幸福を思う愛情の問題である。選挙場に行かなかったら、乳房を与えてあやしている我が愛児が、その一票のために将来独裁政治の犠牲になるかもしれないということは、けっして物語でも、おとぎばなしでもない。(106-107p)(←当時は非常にリアルに受け止められたであろうこの言葉は、現代では何処まで受け止められるか。しかし、真実である)
・「多数決は、これならば確かに正しいと決定してしまうということではなくて、それで一応のけりをつけて、先に進んで見るための方法なのである。」「少数の声を絶えず聞くという努力を怠り、ただ多数決主義だけをふりまわすのは、民主主義の堕落した形であるにすぎない」(118-120p)
・民主主義の落とし穴。多数をしめた政党に、無分別に権力を与える民主主義は、愚かなウグイスの母親と同じことである。そこを利用して、独裁主義のホトトギスが、民主主義の巣ともいうべき国会の中に卵を産みつける。そうして、はじめのうちはおとなしくしているが、ひとたび多数を制すると、たちまち正体を現し、すべての反対党を追い払って、国会を独占してしまう。民主主義はいっぺんにこわれて、独裁主義だけがのさばることになる。ドイツの場合はまさにそうであった。(117p)
・(巧妙なメディア宣伝の中から健全に判断し、正しい主張を)冷静に判断しうるのが、「目ざめた有権者」である。(131p)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『民主主義とは心である。制度だけが形を取っていても、国民が目覚めた有権者にならなければ真の民主主義とは言えない。』
『私達自身が政治に深い関心を持って、自分達の力で政治を良くしていくと言う強い決意を抱く事、それが政治を良くする唯一の確かな方法である。』
精神論に終始している所はモヤモヤする部分もあるけれど、今の日本の政治が腐敗しているのを政治家ばかりのせいにするのではなく、それを選んだ自分達にも責任があるのだと言う事をよくよく理解しないといけないなと改めて感ずる。
日本って自分達の力で民主主義を勝ち取ったと言う経験がないから、欧米に比べて政治への関心が希薄なのかな。内田さんの解説が面白い。 -
長い…!とにかく長い!これが中高生の教科書として採用されていたと考えるとげんなりするけれど、読み物としては重厚感があって大変分かりやすい。中高生だけでなく、ぜひ大人にも読んでほしい。
民主主義とは何か?どうしたら日本は民主主義をわがものにできるか?戦後まもなくに編まれたこの教科書は、その数年前に日本を荒廃の地にした戦争を繰り返さないための想いが詰まっている。民主主義は、政治家による政治ではなく、国民による政治である。何を今更、と言われるかもしれないが、大多数の人にとって政治とはどこか私生活とはかけ離れた遠い存在になってしまっているのではないかと思う。自分は関係ない、自分には政治なんてわからないからと政治を他人事のように扱うのは危険である。なぜなら、それは独裁者を生む道を用意しているからだ。政治を遠ざけるのではなく、身近なものであることを教える役割を、この本は担っていたのだと思う。一人一人が自分のこととして考え、議論し、より多くの人が納得できるようなよい選択をすることが、民主主義を健康的に運用することへとつながる。
昨今世を騒がせているウイルスの流行によって、国内(国際も?)政治への疑問が増している気がする。そんな時期にこの本を読むと、考えさせられることが多くある。ちょうど解説を書いている内田樹さんもついこの間ブログでコロナ後の政治の在り方について語っていて、タイムリーだなぁと。今後「正道」と思われていた民主主義がどう捉えられていくのかがたしかに課題となるのだろうと思った。有事の際、民主主義は対策を立てる上では後れを取るのかもしれない。あれはいい、これはダメ、というような意見の対立により、即決が求められる事柄がスムーズに進まないことが、今回の事態で身に染みた人も多いのかもしれない。しかし、だからと言って独裁者による専制政治は歓迎されないだろう(と思いたい)。
1948年に教科書に指定されてから70年以上経った今でも通じる内容であるところに、この本の意義があるのだと思う。内田さん的に言えば、今もなお「リーダブル」なのだ。丸々一冊は無理でも、部分的にでも学校で読まれてもいいんじゃないかな、と全体を通して思った。 -
全ての政治家に
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1948年から1953年に中学高校で用いられた「民主主義の教科書」ですが、一般の教科書にあるような事実を淡々と述べる文体ではなく、先の戦争に至ったことへの反省から独裁主義の危険性と独裁政治が人々に忍び寄り支配してしまう過程、そして民主主義によって平和を維持するために有権者ひとりひとりが賢明にならなければならないことを、熱意を持って繰り返し読者に説くものです。
具体的な情報をアップデートすれば現代の教科書としても通用するのではないでしょうか。
70年以上前の著書ですが、改めていまこそ響くことばが数多く含まれています。
解説は内田樹さんです。 -
冗長だが価値は大きい
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次世代がこの教科書で学んだことを実践してくれることに対して、「言いたいことは全部伝えた!健闘を祈る!」という篤い信頼(あるいは、願望)が表明されている著作。
「解説」が本書の文脈の重要な補足となるので、これを先に読んでから本文に取りかかるのをお勧めします。
七十余年前にこの教育を受けた世代が作り上げた世の中にあって、この本がいまだ「リーダブル」で「批評的」であることは、果たして本書にとって良いことなのかどうなのか。 -
35ページや103ページを筆頭に、民主主義としての悪手で成りうる結果としてあげられてる内容が、今の日本の政治に当てはまるところがある。
だからこそ、60年前に書かれたものだが、今こそ政治家に、そして国民にも読んでほしい。長いけど。
民主主義の意識は、国民がしなくてはならない。その意識を多忙を盾に持たせまいとするのは、果たして民主主義の崩壊か、独裁主義の始まりか。 -
戦後の昭和23年に施行された日本国憲法の施行を受けて当時の識者たちにより、民主主義を中高生向けに教科書として刊行された。
本書を取りまとめた主な著者は法哲学者の尾高朝雄氏で前述の「憲法(1956年)」の著者、鵜飼信成とは戦前に京城大学での同僚(年齢は尾高朝雄が6つ上)で戦後には一緒に論文集も出している。
戦後の新しい日本を民主主義という国民のための社会をどのように作り上げていくべきかを、日本や世界の歴史と失敗の繰り返しから学び、政治から家庭に至るまで多岐にわたって詳細な事例とともに民主主義の崇高な理念を説いていく。
巻末には内田樹氏による当時と今を鑑みた解説も秀逸である。
今の不穏な状況に陥りやすい社会の中、現在の中高生は勿論、大人も民主主義の根幹を学び直すべき。 -
戦後、教育について、個性重視ということが強く願われていたのか、と。戦後の悲願だった本来の日本らしい教育実現のために、まだまだ色々としないとな。
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昭和23年文部省により刊行された中高生向けの教科書,本書の啓蒙による効果が気になるところ。
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是非、解説から読み進めていただきたい。
1948年の本なので、当然のことながらGHQの検閲は不可避と思われるが、その点込みでも、実に本質的な内容である。
書き振りが時代的背景を想起させるので面白く、現代社会に当てはめて考えるのも楽しい。 -
375.9||Mo
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終戦後に文部省によって出版された民主主義の教科書。広義の意味合いでの民主主義の定義や、日本での民主主義の発展に対する分析、今後の日本で民主主義を実現するための提言は時代のコンテクストも含まれていて面白かった。
読んでいてそこまで時代錯誤感を感じなかったのは、当時と日本また国民の状況が良くも悪くもそこまで変わっていないからなのかと思ったり。 -
<結論>
選挙に行こう、政治について関心を持とう
<概要>
人類は数々の失敗を繰り返した結果、民主主義を見出した。
日本は敗戦の結果憲法が策定され、民主主義が採択されたが(厳密には戦前から民主主義の精神自体はあった)国民一人一人が選挙権を持つ有り難みを理解し、政治への理解を怠ることなく【我々国民のための政治】を私たち一人一人の手で行っていかなければならない。
民主主義=単なる政治上の制度ではない。
全ての人間を個人として尊重することである。
<感想>
はしがきを読み、自分の愚かさを恥じた。
敗戦後荒れ果てた日本は今や経済大国となり、生活水準も大きく変わった。
しかし書籍が世に出されて半世紀以上経った今でも、民主主義は作者が提唱するようには浸透していない。私を含む若い世代は政治に無関心であり、選挙にも行かない。訳も分からず毎月給料から年金が引かれ、多額の税金を納めている。【目ざめた有権者】ならぬ【税金納め機】である。少しでもSNSに政治経済に関わる文書を投稿しようものなら、【意識高い人、関わりたくない】とレッテルを貼られてしまう現状を変えるには、どうしたらいいのか。恐らくそれを考えるのが私たち世代の課題である。
民主主義とは言葉通り、国民のための政治であり、国民一人一人の意見が反映されて初めてその機能を果たす。
この本は、自分たちの生活をより豊かにする為に、国民全てが住みよい国にする為に、将来の子供達が独裁主義国家の奴隷にならない為に、私たち一人一人が真剣に、政治について考えていく必要性を訴える【民主主義の教科書】である。
若い世代、特に20歳以下の人たちは是非読んで、考え、行動にうつしてほしい。
私も持ちうる知識・経験を活かし、更に知識をつけ、行動に移したいと思う。 -
最後の文部省著作教科書の一つ。中学生用の教科書とは思えないほど、詳しく書いてある。読むべき本だなぁと思います。
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「現代議会主義の精神史的状況」 (カール・シュミット著)を読む前に読んでみた。
第1章「民主主義の本質」が秀逸。 -
文部省が戦後、中高生のために作成し実際に使用されていた「民主主義」の教科書。
戦後の反省、その憲法への反映が言い聞かせるように、諭すような文体で表されている。民主主義にかける期待や理想がとても詰まった一冊。戦後日本の原点と政治史が詰まっています。
現行民主主義の価値の再確認と、果たしてこの理想は実現できているのか?と問いかける読み方がひとつ。
その上で、全部をざっと読んだ上で感じる違和感は人それぞれ気づくものがあると思います。その疑問を並べてくれる内田樹の解説も秀逸。思想とその表層に潜むアメリカの目、無視される植民地主義への反省、ではなぜ戦争が起こってしまったのか?という検証の欠如…。
解説まで含めて読んで、また思索するために最適な書。 -
戦後の日本、戦後まもない教育は今の私たちが思っている以上に民主主義について真剣に向き合って、本質的な部分を教えようとしていたという衝撃。占領下という制限のある中で、あそこまできっちり書いだ人がいたからそこ、今の日本が保たれているのかとしれない。
文部省の作品
