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本 ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784044004477
作品紹介・あらすじ
人間の前にドーブツがいた。その前に植物が繁った。
植物の前にコーブツがいて、地球が酸素でかこまれた。
そういうところに花と虫が一緒にあらわれた。
ぼくはささやかな理科少年だった。
デボン紀、石炭紀、ジュラ紀、白亜紀にどきどきし、
タングステンおじさんやシダの密生に憧れた。
感想・レビュー・書評
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『千夜千冊エディション 理科の教室』
松岡正剛
2018年
角川ソフィア文庫
豪華な理科の先生たちが勢揃いし、
窓際には化石や鉱物、苔が並べられ、
クラゲやメダカの水槽、
蝶や虫たちの標本が飾られ、
足元にはネコ、犬、
はては猿が自由に戯れている。
絢爛で混沌、知的好奇心を刺激する
坩堝と化した場所、
それがこの教室の教壇に立つ
セイゴオ先生の『理科の教室』である。
第一章からいきなり豪華な顔ぶれが揃う。
『ロウソクの科学』のファラデー、
『科学と方法』ポアンカレ、
『不思議の国のトムキンス』のガモフ、
『タングステンおじさん』の
オリヴァー・サックスなど
古典的名作がズラリと揃っている。
それだけでは終わらない。
日本の「理科の先生」たちも登壇する。
セイゴオ先生の「千夜千冊」
記念すべき第一夜目にあたる
中谷宇吉郎『雪』をはじめ、
漱石門下の寺田寅彦、
冥王星の和訳を命名した野尻抱影、
同学年でどちらもノーベル物理学賞受賞者の
湯川秀樹と朝永振一郎と、
のっけから理科少年たちの好奇心を刺激する。
第二章では、
鉱物・化石・植物の魅力を堪能する本が出揃う。
個人的に気になったのが岡山倉敷にて
「蟲文庫」なる古本屋を開いている
苔に魅了された店主、田中美穂による『苔とあるく』だ。
カバーや装幀に工夫がなされており
「苔」に関しては全くの素人だし
興味もなかったがそこはセイゴオ先生が
華麗に千夜千冊しており
この苔本を読んでみたくなってきた。
第三章では、
昆虫や動物たちのマニアックで
未知なる世界を覗きみる。
三葉虫から貝、クラゲ、ペンギンにメダカに蝶、
フクロウ、そしてカラスに象。
誰もが気になる動物たちの謎や
その生態についてまるで
生物図鑑のように網羅している。
第四章は、
この世で最も不自然な生き物、
「人間」について、そして今抱える問題を取り上げる。
有名なデズモンド・モリス『裸のサル』、
ジャケ買いならぬタイトル買い必須の
石原勝敏『背に腹はかえられるか』、
ウイルスや細菌、感染症に挑んできた人々と
その感染症の殺戮の歴史を読みといていく。
本書最後の一冊にセレクトされたのは
『沈黙の春』で知られるレイチェル・カーソンの
『センス・オブ・ワンダー』。
最後の結びにこの本を持ってくるセンスに脱帽。
理科に遊んでやがては地球と遊ぶ。
そんな「神秘や不思議さに目を見はる感性」を
養っていけば、やがて鳥たちが優雅に飛びかい
その鳴き声を聴かせてくれるだろう。
そんな春がやってくることを願い
本書『理科の教室』を閉じたところだ。
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⚫︎目次情報⚫︎
前口上
第一章 科学のおじさん
マイケル・ファラデー『ロウソクの科学』
ウィルヘルム・オストワルド『化学の学校』
アンリ・ポアンカレ『科學と方法』
寺田寅彦『俳句と地球物理』
中谷宇吉郎『雪』
野尻抱影『日本の星』
湯川秀樹『創造的人間』
朝永振一郎『物理学とは何だろうか』
ジョージ・ガモフ『不思議の国のトムキンス』
オリヴァー・サックス『タングステンおじさん』
第二章 鉱物から植物へ
上西一郎『理科年表を楽しむ本』
益富寿之助『カラー自然ガイド 鉱物』
森本信男・砂川一郎・都城秋穂『鉱物学』
井尻正二『化石』
ピーター・トーマス『樹木学』
盛口満『シダの扉』
田中美穂『苔とあるく』
第三章 虫の惑星・ゾウの耳
本川達雄『生物学的文明論』
リチャード・フォーティ『三葉虫の謎』
奥谷喬司ほか『貝のミラクル』
坂田明『クラゲの正体』
トニー・D・ウィリアムズほか『ペンギン大百科』
岩松鷹司『メダカと日本人』
ハワード・E・エヴァンズ『虫の惑星』
日浦勇『海をわたる蝶』
ジェームズ・ローレンス・パウエル『白亜紀に夜がくる』
クリス・ミード『フクロウの不思議な生活』
佐々木洋『カラスは偉い』
クリス・レイヴァーズ『ゾウの耳はなぜ大きい?』
日高敏隆『ネコはどうしてわがままか』
子母澤寛『愛猿記』
江藤淳『犬と私』
第四章 背に腹はかえられるか
デズモンド・モリス『裸のサル』
三木成夫『胎児の世界』
石原勝敏『背に腹はかえられるか』
久保田博南『電気システムとしての人体』
クロード・ベルナール『実験医学序説』
イヴ=マリ・ベルセ『鍋とランセット』
藤田紘一郎『笑うカイチュウ』
石弘之『感染症の世界史』
レイチェル・カーソン『センス・オブ・ワンダー』
追伸 化石・サンゴ・三葉虫・カラス・感染症
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第1章 科学のおじさん
859夜 マイケル・ファラデー 『ロウソクの科学』
1683夜 ウィルヘルム・オストワルド 『化学の学校(上・中・下)』
18夜 アンリ・ポアンカレ 『科学と方法』
660夜 寺田寅彦 『俳句と地球物理』
1夜 中谷宇吉郎 『雪』
348夜 野尻抱影 『日本の星』
828夜 湯川秀樹 『創造的人間』
67夜 朝永振一郎 『物理学とは何だろうか』
768夜 ジョージ・ガモフ 『不思議の国のトムキンス』
1238夜 オリヴァー・サックス 『タングステンおじさん』
第2章 鉱物から植物へ
311夜 上西一郎 『理科年表を楽しむ本』
119夜 益富寿之助 『カラー自然ガイド・鉱物』
1044夜 森本信男・砂川一郎・都城秋穂 『鉱物学』
1050夜 井尻正二 『化石』
809夜 ピーター・トーマス 『樹木学』
1476夜 盛口満 『シダの扉』
1614夜 田中美穂 『苔とあるく』
第3章 虫の惑星・ゾウの耳
1487夜 本川達雄 『生物学的文明論』
780夜 リチャード・フォーティ 『三葉虫の謎』
744夜 奥谷喬司編 『貝のミラクル』
124夜 坂田明 『クラゲの正体』
195夜 トニー・ウィリアムズほか 『ペンギン大百科』
1307夜 岩松鷹司 『メダカと日本人』
277夜 ハワード・エヴァンズ 『虫の惑星』
1145夜 日浦勇 『海をわたる蝶』
616夜 ジェームズ・パウエル 『白亜紀に夜がくる』
533夜 クリス・ミード 『フクロウの不思議な生活』
640夜 佐々木洋 『カラスは偉い』
802夜 クリス・レイヴァーズ 『ゾウの耳はなぜ大きい?』
484夜 日高敏隆 『ネコはどうしてわがままか』
94夜 子母沢寛 『愛猿記』
214夜 江藤淳 『犬と私』
第4章 背に腹はかえられるか
322夜 デズモンド・モリス 『裸のサル』
217夜 三木成夫 『胎児の世界』
770夜 石原勝敏 『背に腹はかえられるか』
467夜 久保田博南 『電気システムとしての人体』
175夜 クロード・ベルナール 『実験医学序説』
423夜 イヴ=マリ・ベルセ 『鍋とランセット』
244夜 藤田紘一郎 『笑うカイチュウ』
1655夜 石弘之 『感染症の世界史』
593夜 レイチェル・カーソン 『センス・オブ・ワンダー』 -
古今東西の事象を直接体験できずとも,本によって網羅的に疑似体験できることを詳らかにする.まるで修行僧のような本との接し方である.そのモティべーションの根源は一体何だろうか.
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いつもの通り、ものすごい内容である。知の巨人とはまさにkの著者ではないだろうか。
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およそ授業ではつまらない時間を過ごしたはずの、あれやこれといった分野の、実はなんと魅力的なことか、と理系エッセイを読むと感嘆させられる。
松岡正剛さんって、こんな人だったっけ?
と思うほど、一冊一冊への想い入れがすごいというか、むしろ想いがガツンと先行して、感動詞ばっかりになっていたりする(笑)
ただ、その高揚感で、読みたくなる。
この人にビブリオバトルをさせたら、まさに魔法の五分間になるに違いない。
きっと出ないだろうけど。聞いてみたいわー。
敢えてラインナップを見ずに読み始めた。
後々、この時の自分を振り返って、博多華丸・大吉の「天ぷら」の漫才を思い出す。
行きつけの居酒屋さんで出る季節の天ぷら。
大吉さんが「えびと、しいたけと、」という風に紹介していく内に、「ああ、次にそれが来るのっ⁉︎」と華丸さんの顔がキラキラ輝きだす。
(チュートリアルのBBQ串ネタもあったな)
寺田寅彦『俳句と地球物理』
中谷宇吉郎『雪』
野尻抱影『日本の星』
湯川秀樹『想像的人間』
朝永振一郎『物理学とは何だろうか』
ですよ!!
うっひゃー!もう途中から「あああああ、そうきちゃいますかぁーっ!」って悶えました。
あー。興奮したー。
この章は割とベタなんだろうけど、他の章は松岡正剛さんに所縁のある方や、これは自分では出会わないな、という本ばかりで楽しめます。
とりあえず、お互いにテンション上がる本です。
「ポアンカレは書いている、『突如として啓示を受けることはある。しかしそれは無意識下で思索的研究がずっと継続していたことを示しているのだ』。ポアンカレはこのことを『数学的発見における精神活動の関与』とよんだ。」
最近、この話聞いた気がするんだけどな。
どこだったかな。
「ぼくは(人間)水棲説には好感をもっている。そもそもヒトが流線型の体形をもっていること、体毛が背骨にむかって生えているということ、サルとちがって著しい皮下脂肪に富んでいることなどは、どうもわれわれが一時期水の中にいたことを暗示しているような気がしてならないのだ。かつてジョン・C・リリーとこの話をしたときは、リリーさんは『そんなこと言うまでもない、当然のこと』というように、自分の両手をフリッパーにしてクジラとイルカの真似をしてみせた。」
なんとなく、このくだりに夢があるというか、イメージすると微笑ましかったので引用。
著者プロフィール
松岡正剛の作品





