明治生まれの日本語 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 62
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044004781

作品紹介・あらすじ

私たちの日本語には、150年前には誰も知らなかった明治の新語、流行語があふれている。文明開化が生んだ「東京」「時間」「世紀」、家族像を更新した「恋愛」「家庭」「新婚旅行」、そして「個人」「常識」「科学」といった近代の基本概念──。身分制の崩壊、人の移動、学校制度の確立など、かつてない社会の変動が引き金となって、言葉は大きく変わった。意外に新しい言葉たちの誕生の秘密に、国語辞典の編纂で知られる第一人者が迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 明治期に入ってきた種々の知識は、言葉と成ることで日本に定着していった。
    ただ、外国の言葉を日本語に当てはめるのにも、意味から相応しい字を模索するという、ものすごい苦労があったのではないか……と思う。
    結果、教科書を通じて定着を見た語も多く、教科書の例文って侮れんのだな、ということも知る。

    なにはともあれ、先人の苦労の結果、私たちは「常識」のことを「コモンセンス」とは言わない。
    (明治期の小説を読んでいると、うさんくさい横文字が出てきて、笑ってしまったりするけど、まだ訳語が定着してなかったということなんだろう。)

    どうでもいいのだけど、『ドン・キホーテ』を『鈍機翁(どんきおう)冒険譚』と訳した松井松葉さん、素晴らしいセンスと思います!
    ちなみに「〜しちゃう」とか「ぽち」といった変わり種な項目もある。

    参考文献に柳父章『翻訳語成立事情』が入っているが、当時の考え方と翻訳語がどう近付いていくかをもっと詳しく知りたい方は、そちらをオススメしたい。

  • 今でこそ日常で使っている言葉だが、個人や社会など明治時代に生まれた言葉は少なくないと知り、他にどんな言葉があるのだろうと思い読んだ本。経緯や初出典を知ることができ、当時の生活も伺えて面白かった。

  • 東2法経図・6F開架:814A/H54m//K

  • 2020/6/4-7/4読了

  • ・飛田良文「明治生まれの日本語」(角川文庫)は よくある、明治にできた言葉の解説書と言へばその通りである。しかし、本書は全体を三章に分けて、全21語を採り上げてゐるだけである。明治の日本語と言はれるものはまだたくさんあるはずだが、本書にはこれだけである。頁数254、20数頁が本文以外の参考文献等であるが、それにしても語数が少ない。逆に言へば説明が詳しいのである。それは参考文献を見れば分かる。幕末から明治にかけての英語辞書や日本語辞書、参考文献には載らないが明治文学も多い。最近の多くの辞書と同様に、実際の意味や使用例豊富なのである。言葉の説明に当たつて、実際の使用状況等を確認していくことは、自分が知つてゐる言葉であればあるほどおもしろくなるものである。本書はさういふ書である。
    ・例へば「ポチ」、よくある犬の名前である。これが本書に載る。ポチは明治にできた語であつた。私はもちろん知らなかつた。どこかに出所はあるのだらうがといふ程度の認識であつた。ところが明治の語であつた。どのやうに調べるのか。ポチの出てくる有名な話と言へば「花咲か爺さん」である。これをまづ調べる。昔話ではどうか。江戸の子供の本ではどうか。更に江戸の様々な随筆等ではどうか。かうして調べてくると、犬をポチと呼んだものはない。馬琴が補綴した 合巻に福と呼んだ例が一例だけあるらしいが、いづれにしても花咲かでの犬はポチではない。ところが明治になると教科書に出てくる。明治19年の「小学校教科書 読書入門」にポチが出てくる。同34年には「教科適用 幼年唱歌」初編下に例の「うらのはたけで、ぽちがなく」(169頁)といふおなじみの歌が出る。そして同37年の国定教科書「尋常小学読本」巻2に出てくる。このあたりで小学校の教科書に定着するらしい。問題はどこからポチが来たかといふことで ある。これには「『ポチ』の語源」(178頁)といふ節がある。ここにspottyやpetitからではないかとあるが、どうもこれではなささうである。 結論は「『ぶち』『まだら』の意味の『ぽちぽち』が起源」で、つまり語源であるらしいとなる。この語は「あまりにも日常語であって、記録されないためか」 (180頁)用例探しに苦労したといふ。この辞書の用例は新しい。ところが明治文学には古い用例があつた。巖谷小波「新知事」は明治31年であるから、例の唱歌より古い。二葉亭四迷「平凡」にも出てくるが、こちらは明治41年である。この頃には小学校の教科書の影響もあつてか、ポチの名は一般化してゐたのであらう。……と、まあ、このやうな語源探しを各所で、といふより本書全体でやつてゐるのである。これがおもしろい。漢語となると漢籍を捜すことになるから、出てくるのは漢文である。実際にはかう単純ではなく、実にいろいろなものを捜す。辞書でも英語の辞書だけでなく仏語や蘭語等々、そしてもちろん漢語も 日本語もである。最後に、本書を「書き終えて、あらためて感じるのは、西洋文化の移入にともなう新語がきわめて多いということである。」(「あとがき」 247頁)とある。確かに新語が多いのだが、個人的には借用語や転用語もまた多いと感じる。漢字の造語能力が明治に生かされたのだが、それ以外の古い用語を借りたり転用したりすることもまた行はれた。これもやはり漢字の強さであらう。と同時に、語が「統一されていく過程で、なんらかの形で日本政府の力がおよんでいたことは、特筆されて良いだろう。庶民の力がその誕生に関わったのは、ごく限られたものであった。」(同前)先の「ポチ」もこれに当たるのであつ た。なるほどである。

  • 明治になって次々と日本にやってくる新しい物事や考え方、日本語にして定着させるのは大変なようで
    教科書に載ると定番化する例が多くて、学校教育ってスゲーんだな、と思いました

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著者プロフィール

1933年、千葉県生まれ。国語学者。国際基督教大学アジア文化研究所顧問、国立国語研究所名誉所員、日本近代語研究会名誉会長。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。国立国語研究所を経て、国際基督教大学・同大学院教授、同日本語研究教育センター長を歴任。『三省堂国語辞典』『大辞泉』編集委員を務める。代表作に『東京語成立史の研究』があるほか、編集した辞典多数。

「2019年 『明治生まれの日本語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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