新版 伊勢物語 付現代語訳 (角川ソフィア文庫)

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  • KADOKAWA (1979年11月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784044005016

作品紹介・あらすじ

「源氏物語」をはじめ、後世のわが国の文学に大きな影響を与えた「伊勢物語」は、在原業平を主人公とする歌物語である。初冠の段に始まり、終焉の段に終わる業平の一代記で、さまざまな挿話が歌とともに125段の短篇の中に語られる。本書は学習院大学蔵本を底本として厳密詳細な語注補注をほどこし、読みやすい現代語訳を付した文庫の決定版。成立論を中心とした解説は、「伊勢物語」の本質に迫る。

みんなの感想まとめ

古代日本の文化や政治が色濃く反映された歌物語は、在原業平を主人公に据え、125の短篇を通じて多様な人間模様や制度への考察を展開しています。成立過程に関する考察も興味深く、万葉集や紀貫之、藤原定家の関与...

感想・レビュー・書評

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  •  挫折はチャンス、こう言うのは簡単だが、実際にマインドをポジティブな方向に持っていくのはとても難しい。壁が身近なものであるほど、難易度は高くなる。できるもんだろと侮っている時こそ、足元を掬われがちなのである。
     『伊勢物語』における失敗は、ここ最近で私が経験した挫折の中でもトップクラスに重いものだった。学生時代に慣れ親しんだものと思い込んでいたことが、この重みを最上級のものにした。何事も舐めてかかってはいけない。

     受験勉強でも、大学の講義でも、なんなら興味を持って読んだ新書でも触れる機会のあった『伊勢物語』だが、一般的には簡潔なものとして知られている。在原業平のものと思われる和歌に、詞書よりやや難しい程度の説明がつく本書は、文法や単語の面から見れば、内容の薄さもあり上古の古典の中では優しい部類に入るであろう。しかし侮ってはいけない。文章が簡素ということは、それだけ説明も省かれていることを意味する。また論語などの漢文にも言える事であるが、簡潔な文を好むものは、その短さ故に一つの言葉に多くの意味を持たせようとする。つまり普通の長文よりも作品背景と読解力が試されるのである。

    試みに、作中の中から一首抜き出し、現代語訳と共にここに載せようと思う。

    原文:いにしへは ありやもしけむ 今ぞ知る まだ見ぬ人を 恋ふるものとは

    現代語訳:昔はこんなことがありでもしたのでしょうか−私は今の今まであるはずがないと思っていたのですが-今初めて知りました、まだ一度も見た事のない〈亡くなった〉お方−実はあなた−を恋慕うものだなんて。 

     ものすごく長く、訳文として不適切だと思うかもしれないが、何度か読み返してみると、この訳が八割近く原意を表していることがよくわかる。ちなみに肝心の地の文はものすごく少ない。文法、単語、歴史的背景、当時の風俗や作法、こういった古文に関わる全ての要素を熟知していないと意味がとれないようになっている。安易に直訳してしまうとわけがわからなくなってしまうのだ。

     本書がどうして歴史を超えて名著と言われるかが、原文を通読してみてよくわかった。貴族的な美的感覚、いわゆる「文章の奥底でほのかに香る雅さ」がいたる所に見られるからだ。地の文にしろ、和歌にしろ、全てが寓意に満ちていて、一見しただけでは関係者達の心理が掴めない。しかし解説を読みながら何度か読み返してみると、ふわっと儚げな香りが漂い始め、体の芯へと浸透していくのが感じられる。『万葉集』の頃の直情的な表現とは一線を画す世界だ。もちろん『万葉集』にも仄かな「をかし」はあるし、どちらかが優れているというわけではないのだが、『伊勢物語』のほうがより奥深さが感じられる。

     ただ、この奥深さが裏目にでることもあると感じた場面があった。
    とある女性が「昔男」に恋をしたが、世間体を気にして誰にも言えないでいた。その女性が恋煩いから病気になってしまい、死を目前とするところに至ってようやく「昔男」への恋心を家族に打ち明ける。両親は娘の強い思いを知り、「昔男」を自邸に招いて娘と対面させるのだが、ここで「昔男」が詠んだ歌がとにかくわかりづらい。当時を生きていた人からすれば耳に馴染んだ表現なのかもしれないが、千年以上の時の隔たりがある上に無学な私にはいまいち理解ができなかった。様々意見があると思うので、該当の和歌に関してはそれぞれ自ら読んで確認して頂きたいと思う。

    ここのところ古典を読んでいて気付いたのだが、私にとって上古文学というのは魔境に近いものだった。色恋沙汰や高貴さとは無縁な人生を歩んできた私からするとかなりハードルが高い。しかし、やはりその言葉は美しく、趣の深さは魅力的なのだ。今回の失敗をしっかり反省し、これからも上古の文学に挑み続けていきたいと思う。

  •  伊勢物語といい源氏といい、とにかく政治と鎮魂は文学から引き離せないものだと思う。ただ、成立の流れとしては、万葉集を参考に、業平の日記か和歌かがあり、それを妻か後の親族がまとめたのではないかと。日記というのは、天皇を巡って、我々はこれほどの文化・風習・格式があってやっているという記録本であり、政治的にも重要であったろうと思う。それを紀貫之が加筆。さらに藤原定家が訂正・編集し、いまの形となったのではないかと。まあ、ややこしい。谷戸貞彦氏の本、ネットで見れるのだが、買ってしまおうか……。

     最も初期の成立時はおそらく班田収受の法のころなので、口分田がなくなるまで男女で田畑を拡大しまくったのである。また田舎から来た男。または都会から来た男を女が迎え、取捨選択する。もしくはうまくいかない。その様々な模様が歌われており、いかに財産を増やすか、いかに男女は制度の中でかくあるべきか、古代からのケースを事例検討とともに、打倒藤原で打ち出された提言書であるのではないか……まだまだわからないけれども。五十八段とか特にそんな感じがする。

    第五十八段
     むかし、心つきて色好みなる男、長岡といふ所に家つくりてをりけり。そこのとなりなりける宮ばらに、こともなき女どもの、ゐなかなりければ、田刈らむとて、この男のあるを見て、「いみじのすき者のしわざや」とて、集りて入り来ければ、この男、逃げて奥にかくれにければ、女、

      荒れにけりあはれいく世の宿なれやすみけむ人の訪れもせぬ

     といひて、この宮に集り来ゐてありければ、この男、

      むぐら生ひて荒れたる宿のうれたきはかりにも鬼のすだくなりけり


    とてなむいだしたりける。この女ども、「穂ひろはむ」といひければ、


      うちわびておち穂ひろふと聞かませばわれも田づらにゆかましものを


     この本に関わるものはみな、藤原氏の中心から外れた者達であると思う。政治に破れた文化人によるもの。定家もそうだろう。ただ、最初期は、言霊というか、政争に勝ったアイテムだったのだろう。とにかく色々研究しないとわからない難解至極の本だ。

  • わかりやすく定期的に読む

  • 在原業平をモデルにしたとされる歌物語。作者も成立年代も不詳だそうだが、源氏物語に影響を与えたとか。歌の機微に通じていることが必須とされた時代であり言葉に対する感覚の鋭さに感心することも多かった。千年以上前の文学が今の美意識にも通じている伝統に想いを馳せるきっかけになる。
    解説がやや古いのが残念。

  • 軽さと流麗さと言えば伊勢物語。

  • 補注、解説がていねい。現代語訳もあるので読みやすい。解説によると後の文学作品、絵などへの影響もあるので、読んでおきたい古典の一つだと思った。

    2017/9/25~10/15

  • 古今和歌集を読んだときに、伊勢物語と多数の歌が含まれていることを知り、元ネタのほうを読んでみた。古今の中でも、詞書がそのまま載せられているものも多かったが、段によっては、それほどストーリー性のないものもあり、個々の段というよりは、作品全体を通して業平の物語に仕立ててある。源氏物語への影響など、解説も丁寧。
    (2015.3)

  •  
    ── 在原 業平/石田 穣二・訳《伊勢物語 197911‥ 角川学芸出版》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/404400501X
     
    …… そのようなことがあったかもしれないし、なかったかもしれない。
    http://oshiete.goo.ne.jp/qa/1772304.html(No.1 20051112 09:19)
     伊勢物語「京に思ふ人なきにしもあらず」
     
    …… 定家本によれば全125段からなり、ある男の元服から死にいたる
    までを数行程度(長くて数十行、短くて2~3行)の仮名の文と歌で作
    った章段を連ねることによって描く。章段の冒頭表現にちなんで、この
    主人公の男を「昔男」と呼ぶことも古くから行われてきたが、歌人在原
    業平の和歌を多く採録し、主人公を業平の異名で呼んだりしている
    (第63段)ところから、主人公には業平の面影がある(Wikipedia)。
     
    (20141231)(20170416)
     
     ブックマークコメントは「ブラック・マーク・コメント」だったか。
    http://q.hatena.ne.jp/1508919770#a1265206(No.3 20171101 04:48:44)
      暗愚=無知+愚鈍+底意 ~ わびさびなきやから ~
       

  • 気軽な短編集って感じですよね。古典だけど。
    角川ソフィア文庫は、現代語訳も全部あるし、読みやすいと思って気に入ってます。

  • 何度も読みたい。
    酷すぎて笑ってしまうところもあり、いかにも風流なところももちろんあり、ふとした時に歌を思い出せたら良いなあと思います。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーー

    秋の夜の千夜を一夜になずらへて
    八千夜し寝ばや飽く時のあらむ

    秋の夜の千夜を一夜になせりとも
    ことば残りて鶏や鳴きなむ

  • 最初期の歌物語。
    受験期にも思っていたけどやっぱり和歌って難しい。現代語訳と照らし合わせても2回目読んでようやくなんとなく分かるかなというところ。

    面白いと思ったのは、昔はほいほい浮気し放題だったということ。夫が浮気をすれば妻も浮気する。互いの浮気性を非難して和歌の応酬をかける。今よりよっぽど壮絶なのではないかと感じた。

    古典はいろんな話の原型になるエッセンスが多く詰まっているということを実感した。これからも定期的に日本の(学校の科目で言う)古典に触れていきたい。

  • 何故か、同時に購入したビギナーズクラシックよりこちらから着手。訳文がいいですね。成人から死ぬまでというのが昔男の人生の重みを感じてイイと思います。原文も源氏物語ほど解りにくくないような。ひじきを贈られても困りますが。最終段はちょっと泣けますね。どんなにイケメンでブイブイ言わせてても老いるし死ぬんだよなあ…。

  • かなわない恋をしたり、歳をとったり、友達と出会ったり別れたり。
    そんな折節に詠んだ歌だったり。
    ひとりの男の一生ぶんの。

    おもしろいけど、読み終わったあとは何だかせつない。

  • 色男?のナンパ物語。

  • 塩竈などを舞台とした作品です。

  • 時々意味の取りづらい文がある

  • 高校の授業でやった初冠と東下りが好きで読んでみた。
    歌物語という形式が良い。

  • 教養の為に読んでみたけど、いつのまにか本心から楽しんで読めた。
    平家物語の方が断然好きだけどね。

  • 何回読んでも内容を全く覚えることがないため、いつでも新鮮な気持ちで読み返しています…。私だけでしょうが。

    お手付きの田舎女に対するあまりにもつれない仕打ちとか、最初は気取っていた女性の行儀の悪いところを見てすっと冷めてしまうところとか、何だか妙〜にリアルで、今も昔も人の心は変わらないんだなあ、としみじみと感動することができます。

    海外留学にお供で持っていった思い出深い一冊です。

  • 在原業平の一代記。歌物語。125段から成り立つ。田舎者の男などが主人公として扱われることもあるなど、完全な一代記とはいえない。
    基本的には『男』と『女』なので『業平とおぼしきもの』と書かれている第1段を飛ばして読んでしまったら誰なのかわかりかねます。
    一代記ということからもわかるように書かれている歌は恋の歌が多いです。恋の歌と思えなくても、その背景にはしっかりと愛しき者が描かれていたりして深いです。
    恋多きもの故に良き歌が読めり、という感じですね。

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