紫式部ひとり語り (角川ソフィア文庫)

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  • 本 ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044005818

作品紹介・あらすじ

「この私の人生に、どれだけの華やかさがあったものだろうか。紫の上にちなむ呼び名には、とうてい不似合いとしか言えぬ私なのだ」――。今、紫式部が語りはじめる、『源氏物語』誕生秘話。望んでいなかったはずの女房となった理由、宮中の人付き合いの難しさ、主人中宮彰子への賛嘆、清少納言への批判、道長との関係、そして数々の哀しい別れ。研究の第一人者だからこそ可能となった、新感覚の紫式部譚。年表や系図も充実。

感想・レビュー・書評

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  • 『私が源氏物語を書いたわけ 紫式部ひとり語り』はずっと読みたくて、myjstyleさんのレビューを読ませていただいてから益々その想いは募り……もうこれは中古本を入手するしかないとやっと決断したところ、なんと文庫化しているではないか!と気づいて慌てふためき即購入。山本淳子先生の著作はどれも面白いので、手元においておきたいのだ。

    この『私が源氏物語を書いたわけ 紫式部ひとり語り』改め『紫式部ひとり語り』は、〈人間紫式部の心を、紫式部自身の言葉によってたどる〉というコンセプト。まるで本当に紫式部が語っているかのような“打ち明け話”に、「やっぱり高慢ちきな女性だなぁ」なんてちょっぴり文句をたれながらも、彼女の人生に夢中になる。
    『源氏物語』誕生秘話、望んでいなかったはずの女房になった理由、宮中での苦労、主人中宮彰子への賛嘆、清少納言への批判、そして親しい人たちとの別れ…… 
    彼女の人生が確かにこの中にはあった。
    紫式部の内面について知ろうとする際、『紫式部日記』と『紫式部集』の、紫式部自身の手による2作品が圧倒的に豊かな情報をもたらしてくれると著者はあとがきで書かれている。これら本人による証言をはじめ、平安時代の文学作品、紫式部をめぐる歴史資料、国文学・国史学の研究成果によって再構成された本書は、小説のように面白いのだが当然小説ではない。

    わたしは山本淳子先生の『源氏物語の時代』『枕草子のたくらみ』から読んじゃったので、定子と一条天皇の一途な愛にいたく感動し、清少納言の「枕草子」がどれだけ定子のために書かれたものかに大変感心した。だから紫式部が「枕草子」に対して空虚な嘘だ、欺瞞だと大変批判的だったことに、どうしても彼女に対する印象はあまり良くない。
    ただし、紫式部の主人である中宮彰子はとても好きな人物。そうだなぁ定子が太陽なら彰子は月。どんなに帝の心が亡き定子に向かっていようとも、自分の想いは秘めながら、変わらず淡く優しい光でそっと帝を照らしているかのよう。そんなイメージかな。
    彰子は定子一筋の一条天皇の元へ12歳で入内し、定子が亡くなればその皇子を愛情を持って育て、そして自分も皇子を産むことを期待される。彰子の人生は父である藤原道長が作ったといっていい。その人生にずっと従ってきた彰子のいじらしさ、我慢強さ。そして母となり、また帝の譲位に関して父の自分に対する「隔て心」に気づいてからの、勇気、強さ。すごく優しくて芯の強い女性だったと思う。
    だからこそ、わたしは院となった一条天皇の辞世の歌について思いを馳せると切なくなるのだ。『源氏物語の時代』などから、その歌は定子にあてたものであってほしいとわたしは願っているのだけれど、でもやっぱり彰子に遺した歌であってもほしい。この場面はいつも胸がつまる。ふたりの女性のことを考えると、ああ、もうまた涙が出そうになる。
    さらに今回『源氏の物語』の中の1首にも似ている歌があると知り、一条天皇にとっての『源氏の物語』は何だったのか、何かを重ねていたのだろうか大変気になるところであった。

    そんな彰子に仕える紫式部。彼女の独白に、やっぱりプライド高くて上から目線だわ。なのに人の目を気にしていじけてしまう面もあるし、なかなか気難しい女性だなぁと、あまり印象は変わらず。
    それでも、紫式部が〈心とは現実に縛られないものなのだ〉と気づいたところでは、すんなりと共感できた。常々わたしも心は誰のものでもない、そんなふうに思っているから。
    彼女は夫との死別、娘の病気、親しい人の死、そんな自分に与えられた「世」つまり人生が、どれだけ嫌なものであろうと受け入れるしかない、抵抗できぬ現実を痛感する。自分が「世」の前で立ち尽くす無力な現実存在、「身」であることを実感する。不本意な現実に絶望するものの、時が経つことでこの人生を受け入れはじめる紫式部。すると、私という存在は「身」であるだけではないことに気づくことになる。私の中には「心」という部分があったではないか。心は現実に従うしかないのだろうか……
    心とは現実に縛られないものだと紫式部は発見する。現実は現実だ。だがいっぽうで、心はそれと違う世界を生きることもできる。
    〈心は、現実にひれふさなくてよい。またなんと不遜なものなのだろう。だが、それでいいのだ。現実を我儘勝手に動かすことはできないが、心の中ではどんな我儘勝手をしようが自由だ。それは心だけの世界なのだもの。こうしたことを考える私は、まして不遜であるに違いない。だが止められない。〉

    心だに いかなる身にか 適ふらむ 思ひ知れども 思ひ知られず
               『紫式部集』56番

    こうして紫式部は物語の世界へとのめりこんでいくことになる。物語について友たちと語り合い、自分の心を楽しませるために物語を作る。その先に『源氏の物語』が誕生することになる。彼女は現実を生きながら、もう一つそれとは違う世界、心の世界を生きる人間になったのだ。

    その頃からわたしの中でも、紫式部は実は器用に生きられない人だったのかなぁと少し見方が変わってきた。高飛車な割には臆病で。生真面目で敏感で、人づきあいも得意じゃなくて。ちゃんとしなきゃとずっと緊張していて。紫式部の嫌だった部分も不器用さ所以、そう思うことで彼女がちょっぴり可愛らしく見えてくる(紫式部に己は何様じゃーと罵られるでしょうが 笑)。

    でも、そんな紫式部だからこそ、「身の程」の中で生きてゆく女性たちの怒りや惨めさ、諦めなどの「心」、光源氏の闇の部分、つらい「身」と過激な恋という「心」を書けたんだなぁと思う。そして、紫式部の心が求めた『源氏の物語』は、これからも時代を超え、読む人を虜にしながら、素晴らしい文学作品として読み継がれていくはずだろうと思うのだ。

    • 地球っこさん
      myjstyleさん、こんばんは。

      そうです、myjstyleさんが背中を押してくださいました。
      読めてよかったです。
      ありがとう...
      myjstyleさん、こんばんは。

      そうです、myjstyleさんが背中を押してくださいました。
      読めてよかったです。
      ありがとうございました。

      文庫は、2011年刊行の単行本を改筆・改題したものらしいので、ちょっぴり内容に変更箇所はあるかもしれません。

      一条天皇は罪作りですね。
      どうもこの場面に涙腺が緩んでしまうのです……

      なるほど!「源氏迷」ですか!
      myjstyleさんの「源氏迷」関連のレビュー(もちろん他のレビューもです)が、これからも読めたら嬉しいです。

      わたしは「源氏物語」も気になるし、どうしても一条、定子、彰子のあの時代のこともとても気になります。
      2020/08/24
    • マリモさん
      地球っこさんこんばんは!

      うわー、読みたいです!面白そう!
      横からすみませんが、私も紫式部のじっとりした腹黒さ(言い得て妙!!まさにこれ笑...
      地球っこさんこんばんは!

      うわー、読みたいです!面白そう!
      横からすみませんが、私も紫式部のじっとりした腹黒さ(言い得て妙!!まさにこれ笑)がちょっと好きになれません(笑)
      でもたぶん、平安時代は清少納言みたいなタイプの方の方が珍しかったのでしょうね。そして、このじっとりした腹黒さがあるからこその源氏物語の誕生だったのだろうなとも。
      文庫本出ているのですねー、これは手にとってみなければ!素敵なレビューをありがとうございました。
      2020/08/24
    • 地球っこさん
      マリモさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます!

      山本淳子さんの著書は、どれも面白いですね(*^^*)
      今回は、紫式部目線...
      マリモさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます!

      山本淳子さんの著書は、どれも面白いですね(*^^*)
      今回は、紫式部目線でしたが……うーん、じっとり腹黒かった 笑

      先に清少納言側の著書を読んだから、特に思っちゃうのでしょうかね。

      彰子に関しては、やっぱり素敵な女性だなと思いました。

      あの一条天皇の辞世の歌ですが、「源氏物語」にもよく似た歌があったなんて、びっくりしました。
      実はワタクシ恥ずかしながら、源氏物語を最初から最後までちゃんと読んでないのです……

      紫式部はうーん……ですが、源氏物語はやっぱり素晴らしい物語だと思うので、じっくりと読んでみようと思ってます!
      2020/08/24
  • ビギナーズクラシック「紫式部日記」を買った時近くにあった。冒頭を読むと、~それにしても私の人生とは、なんとまあ次々と大切な人を喪い続けた人生だったろうか。思えば、この悲しみから目をそらすまいと決めたことが、私を『源氏の物語』の作者、紫式部にしたのだ。・・
     「姉君」の話をしよう。あれは長徳元(995)年、私がまだ若い娘で、父や弟と一緒に京の邸に暮らしていた頃のことだった・・ と始まる。

    そう、これは山本氏が残された史料をもとに、想像を駆使して描いた『紫式部』の人生の独白なのだった。これがめっぽうおもしろい! ずんずん読み進めて一気に読んでしまった。
     ・・私は後になって書いた『源氏の物語』で、登場人物たちを次々に私と同じ目に遭わせた。光源氏は三歳で母を亡くし、六歳で祖母を亡くす・・

    本文には独白の合間合間に「紫式部日記」、「紫式部集」の本文と読み下しが入る。独白の根拠を示している。これが私にはとてもしっくりきた。山本氏の解釈としての独白文が、なるほど、と真実味と凄みをもって迫ってきた。また歴史的出来事もはさんであるが、それらは「小右記」「権記」「御堂関白記」から「日本紀略」「今昔物語集」、また「枕草子」「蜻蛉日記」「古今和歌集」「栄花物語」などなどによって、心境を紡いだ。いやはや実に多くの史料を読み込んで書いてある。

    私は和歌が苦手なのだが、当時は自分の心境を和歌によって現わしてしたのだ、ということがわかった。

    「紫式部日記」では清少納言を悪しざまに書いている、と流布されているが、山本氏の解釈は少し違う。そこには清少納言と紫式部との漢詩への思い入れと解釈の深さの違いがあるのだ、とする。定子はじめ道隆一族、清少納言は、『香炉峰の雪は』の一文に見られるように漢文の素養があり、それが定子後宮を輝かしいものにしている。そして「枕草子」の存在で10年後の今になっても輝きが増している。それが『枕草子』の力だ。それに比べ彰子後宮は地味だ。彰子様もそれを分かっている。が、しかし定子後宮にとって、漢文とは風流な装飾品でしかなかった。漢文とはもっと自省的な深い意味を持つものなのだ、とする。

    また、「紫式部日記」は4つの部分に分かれ、後段のつけたした部分は何故そうしたのか、その紫式部の真意を推理するのも日記を読む醍醐味です、とビギナーズクラシック「紫式部日記」で言っていたが、この「ひとり語り」では、娘の賢子のために書き足したとしている。賢子は父も早くに亡くし後ろ盾がない。あの子は女房になるしかない、と紫式部は考えていて、女房の心得をつけたしの部分で書いた、としている。

    しかしこれを読む限り、紫式部と道長は、紫式部が『源氏物語』を書く以前には面識はなかった。大河はドラマなのであるが、ちょっと設定が大胆かなあ、という気もする。でも、倫子と紫式部は母方のはとこ同士、道長とは6代遡る冬嗣からの子孫。お互いの曽祖父の曽祖父が冬嗣なのだった。


    単行本「私が源氏物語を書いたわけ 紫式部ひとり語り」角川書店2011.10 を文庫化したもの
    2020.2.25初版 2022.11.25第7版 購入

  • 私は紫式部にはかなり偏見を持っていた。単純に若い頃に枕草子を先に読み、手に入れて大事に読んでいたからなのだが(笑)
    その後、紫式部日記等も学び、子供だった私には彼女はとてもいけすかない女性に思えた。
    それから、私も当時よりたくさんの人間関係を経験し、母を亡くし、改めて、源氏物語を読んでみたいと思った。
    谷崎潤一郎翻訳の源氏物語を読みながら、紫式部と清少納言の関係を見直してみたくなり、何冊かの本を選んだ。
    その一冊である。
    読み終えて、二人とも変わらない。会社に勤めて理不尽なことや人間関係に悩む女性。
    才があるだけに宮廷暮らしは辛い事も多いことだったろう。

    そう考えると日本の女性たちは変わらない環境の中で、今も頑張っているのだと胸が熱くなる。
    さぁ、源氏の続きも読まなくては(^^)

  • 楽しかったわー。

    源氏物語や紫式部日記、紫式部集はもちろん、小右記、御堂関白記、権記、栄花物語などから紫式部の「外側」を繋ぎ「内側」を想像する本。

    登場するエピソードは有名なものが多く、話の筋が分かっているので読みやすいが、そのままでは終わらないのがいい。各エピソードをまるっと包んだ紫式部の「心境」は彼女の下級貴族出身の才媛ぶりを見事に想像したもので、眉根を顰めたり舌打ちしたり(しないだろうけど)するのが聞こえてきそうなほどに現実的。
    定期的に差しこまれる和歌も補強資料であると同時に筆者のひとり語りなのか紫式部のひとり語りなのか分からなくさせる役目を持っていてグラデーション感が心地良い。

    どれもイイんだけど読み終わって思い出すのは3つ。

    1つめは夫を亡くして失意の日々だった紫式部が「身」と「心」について話す場面。

    数ならぬ心に身をば任せねど身に従うは心なりけり
    心だにいかなる身にか適ふらむ思ひ知れども思い知られず

    筆者はこの二首を紫式部集から選び、ままならぬ現実はそのまま受けなきゃいけないけれど、まぁそれと心は別世界だし。心は勝手気ままにね。としている。

    私の古い古い友人は私と同じく頭がおかしい人ではあるけれど、ピンポイントに平安の才女の考えを覗かせてくる。一つ目は「ブスに声をかけられるのが苦痛(声をかけてもいい、その程度だと思われているのが腹立たしい。自分の価値が下がった気がする。)」というもの。さてこれは清少納言の「身分の低い女性がやんごとなき男性の噂をするとその男性までもがなんだか価値が下がる気がする」というのに繋がる(と私は思う)。二つ目はまさにこの身と心で語られたものと似ていて、彼は昔から「自分がどう思おうと勝手なんだから心に任せられることは自分の思いたいように思えばいい。」と断言していた。人がどう言おうとも自分が純愛と思えばそれでいいと。(頭がおかしいのでね彼は)
    若い私は「そんなアホな。世の中には決まりがあるし事実は変わらない。何でも思いようだって?ただの逃げだろ。目を逸らすな。自分なんて他人と他人の隙間であって自分自身に形なんてないのに。」と思って聞いていたがここでも彼の考え方は紫式部に共通している(と私は思う)。
    ちなみに今は私も完全に紫式部サイドです。

    2つめは

    亡き人にかごとをかけて煩ふもおのが心の鬼にやはあらぬ

    1000年前にこれよ。仏も憑物も全く信じて無さそうでかっこいい。21世紀にこれを読む私は「ちょw 紫式部w冷静すぎんだろw」とケタケタ笑っていられるけれど、1000年前の日本で神仏を信じきれなかった紫式部はそれはそれで辛い日々だったろうなぁ。

    3つめは

    暮れぬ間の身をば思はで人の世のあはれを知るぞかつはかなしき

    これいいですね。自分もすぐ死ぬ身だというのに他人の死を悲しんでいた。あはれなんて人間全体なのにね。と。
    いや、ほんとそうなのよ。皆んな100年ぽっちで必ず死ぬんだもの。マジでやってらんないよね。何もかもが儚すぎて。

    3つって言い切っちゃったからもう終わりにするけど弟の辞世の句が途中で止まってるなんてのも良かったなぁ。

    山本淳子さんの他の本も読んでみよう。

  • 大河ドラマを見ていて本書を手に取りました。
    読み始めたばかりですが星5つつけました。
    少しずつ読み進めているので、毎日本を開くのが楽しみです。

  • 凄い人だわ

    紫式部ひとり語り 山本淳子:文庫 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/321912000059/

  • 例によって大河ドラマの影響で読んでいます。紫式部さんの内なる思いが肉声で聴こえてきそうなほどリアルな描写でスイスイ内容が入ってきました。肉声というか吉高由里子さんのお声で再現されてしまっていますが。笑 それはそれでまたドラマを楽しめるのでぜんぜん良しとします。

  • 京都への旅のお供にと、Kindleへ。
    著者がTVでコメントされていた方、というだけで中身を確認せずに選んだにも関わらず、大正解でした。
    現代語に訳された「ひとり語り」というだけでなく、原文があるおかげで(ドラマのシーンと相まって)千年の時を越え、今語りかけているよう、いや、自分が平安の「世」に誘われているよう。
    若き日に円地文子訳の「源氏物語」を読み、定年を機に、今度は原文で読み始めたところ。
    特に、彰子のお産の箇所は興味深く、女子校ならば、是非この部分をテキストに!などとも思いました。「紫式部日記」もいつか読めるかなぁ。

  • 藤原道長の長女、藤原彰子。一条天皇の中宮です。元々は、道長のお兄ちゃんの娘、定子が中宮でしたが、出産時にお亡くなりに。
    平安時代の貴族・皇族は「楽して生きてるんだよねー、あーあ、いいなーっ」というイメージがありますが、本当にそういうわけではなかったんですね。政権争いとかで、命を狙われてしまったり、金持ち、権力者はいつもリスクを背負って、生きてるんですね〜!道長の、甥っ子・伊周も道長の企みで太宰府に送られてしまっているので。
    話は戻り、中宮と言ったら、天皇の妃の中で一番位が高いのです。中宮・皇后、女御、更衣と、このような感じです。
    ところで、一条天皇の時は特殊で、中宮、皇后と二人、正室が二人いるってことなんです。普通、正室は一人と決まっていますが、道長がゴリ押しで彰子を中宮にしたってことなんですよね。
    それに、ライバル定子は一条天皇が幼き頃からそばにいるから、寵愛を受けている。しかも、彰子が初めて、帝と枕を共にする日の朝に定子が第一子を出産してしまうのです。
    だから、彰子のことなど、初めから眼中に入ってなかったんですね。
    定子が亡くなってからも、彰子にお渡りはなく、どうしたものかと思った道長が、定子の宮中のように、知性があふれ、華やかな宮中にしようと、源氏物語の作者、紫式部を登用したんです!
    紫式部日記、源氏物語と紫式部の女房時代が始まっていくんですね!
    感想:面白かった!!(≧∇≦)

  •  大河ドラマ「光る君へ」に触発されて読みだした本。紫式部って源氏物語の作者であることは知っているもののそれ以外のことは意外と知らなかった。
     源氏物語を書きだしたきっかけは、夫、藤原宣孝が突然になくなり、その後、物語を書くという作業を通じて、自らを昇華させていったという所なのかな。
     初めは、雨夜の品定めといった一編を収録している「箒木」、「空蝉」、「夕顔」の三帖から物語は始まったそうだ。その後、「桐壺」の巻やいろいろな物語を書き足していって源氏物語が完成していく。その間、物語の成立には、藤原道長などの援助もあったようだ。
     読んでいていると、結構他の女房達の批評が乗っているが、特に清少納言などについての人物評は手厳しい。かなり口で言えない分、書くことで発散する人だったのだろうかとも思う。
     一条天皇の皇后で、紫式部がつかえていた上東門院藤原彰子が徐々に人間として成長していく様を描いている所がまたいいなあ。
     注目は、道長との関係。昔、読んだ北山茂夫氏の「藤原道長」では、関係があったという記述があった記憶があるが、実際はどうだろう。この人の性格を見ているとそういう危ない橋は渡らなそうだし、召人のような関係は好まなさそうだから、ない様な気がするのだが、どうだろう。
     「紫式部日記」や歌集の「紫式部集」の成立の事情にも触れている。この人は、根っからの作家のような気がする。こういう人は、これまでの文学史上居たのだろうか?
     紫式部とはどんな人だったのか、その生涯、述作などを知るための入門書としてはちょうどいい本だと思う。

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著者プロフィール

所属:大阪女学院大学国際・英語学部(企業、国立長岡工業高等専門学校、新潟県立看護大学、新潟経営大学を経て2019年度より現在に至る)
専門分野:第二言語習得(動機づけ,CALL),英語科教育法
主要著作:
①「ICTを中心とする英語教育を受けた学生の意識に関する質的研究」(『日本教科教育学会誌』43(3), 35-47,2020年,単著)
②「大学生が活用するICTの機能と学習意欲の関係」(『英語授業研究学会紀要』30, 1-14,2021年,単著)
③“A case study of EFL Students’ motivation toward online exchange programs.” Journal of Osaka Jogakuin University, 18, 51-72, 2022. 単著

「2024年 『ファシリテーションが創る大学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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