紫式部ひとり語り (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044005818

作品紹介・あらすじ

侍女になりたくなかった紫式部が中宮の侍女となった理由、宮中の人付き合いの難しさ、主人中宮彰子への賛嘆、ライバル清少納言への批判……。『源氏物語』の時代の宮廷生活、執筆動機がわかる!

感想・レビュー・書評

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  • 『私が源氏物語を書いたわけ 紫式部ひとり語り』はずっと読みたくて、myjstyleさんのレビューを読ませていただいてから益々その想いは募り……もうこれは中古本を入手するしかないとやっと決断したところ、なんと文庫化しているではないか!と気づいて慌てふためき即購入。山本淳子先生の著作はどれも面白いので、手元においておきたいのだ。

    この『私が源氏物語を書いたわけ 紫式部ひとり語り』改め『紫式部ひとり語り』は、〈人間紫式部の心を、紫式部自身の言葉によってたどる〉というコンセプト。まるで本当に紫式部が語っているかのような“打ち明け話”に、「やっぱり高慢ちきな女性だなぁ」なんてちょっぴり文句をたれながらも、彼女の人生に夢中になる。
    『源氏物語』誕生秘話、望んでいなかったはずの女房になった理由、宮中での苦労、主人中宮彰子への賛嘆、清少納言への批判、そして親しい人たちとの別れ…… 
    彼女の人生が確かにこの中にはあった。
    紫式部の内面について知ろうとする際、『紫式部日記』と『紫式部集』の、紫式部自身の手による2作品が圧倒的に豊かな情報をもたらしてくれると著者はあとがきで書かれている。これら本人による証言をはじめ、平安時代の文学作品、紫式部をめぐる歴史資料、国文学・国史学の研究成果によって再構成された本書は、小説のように面白いのだが当然小説ではない。

    わたしは山本淳子先生の『源氏物語の時代』『枕草子のたくらみ』から読んじゃったので、定子と一条天皇の一途な愛にいたく感動し、清少納言の「枕草子」がどれだけ定子のために書かれたものかに大変感心した。だから紫式部が「枕草子」に対して空虚な嘘だ、欺瞞だと大変批判的だったことに、どうしても彼女に対する印象はあまり良くない。
    ただし、紫式部の主人である中宮彰子はとても好きな人物。そうだなぁ定子が太陽なら彰子は月。どんなに帝の心が亡き定子に向かっていようとも、自分の想いは秘めながら、変わらず淡く優しい光でそっと帝を照らしているかのよう。そんなイメージかな。
    彰子は定子一筋の一条天皇の元へ12歳で入内し、定子が亡くなればその皇子を愛情を持って育て、そして自分も皇子を産むことを期待される。彰子の人生は父である藤原道長が作ったといっていい。その人生にずっと従ってきた彰子のいじらしさ、我慢強さ。そして母となり、また帝の譲位に関して父の自分に対する「隔て心」に気づいてからの、勇気、強さ。すごく優しくて芯の強い女性だったと思う。
    だからこそ、わたしは院となった一条天皇の辞世の歌について思いを馳せると切なくなるのだ。『源氏物語の時代』などから、その歌は定子にあてたものであってほしいとわたしは願っているのだけれど、でもやっぱり彰子に遺した歌であってもほしい。この場面はいつも胸がつまる。ふたりの女性のことを考えると、ああ、もうまた涙が出そうになる。
    さらに今回『源氏の物語』の中の1首にも似ている歌があると知り、一条天皇にとっての『源氏の物語』は何だったのか、何かを重ねていたのだろうか大変気になるところであった。

    そんな彰子に仕える紫式部。彼女の独白に、やっぱりプライド高くて上から目線だわ。なのに人の目を気にしていじけてしまう面もあるし、なかなか気難しい女性だなぁと、あまり印象は変わらず。
    それでも、紫式部が〈心とは現実に縛られないものなのだ〉と気づいたところでは、すんなりと共感できた。常々わたしも心は誰のものでもない、そんなふうに思っているから。
    彼女は夫との死別、娘の病気、親しい人の死、そんな自分に与えられた「世」つまり人生が、どれだけ嫌なものであろうと受け入れるしかない、抵抗できぬ現実を痛感する。自分が「世」の前で立ち尽くす無力な現実存在、「身」であることを実感する。不本意な現実に絶望するものの、時が経つことでこの人生を受け入れはじめる紫式部。すると、私という存在は「身」であるだけではないことに気づくことになる。私の中には「心」という部分があったではないか。心は現実に従うしかないのだろうか……
    心とは現実に縛られないものだと紫式部は発見する。現実は現実だ。だがいっぽうで、心はそれと違う世界を生きることもできる。
    〈心は、現実にひれふさなくてよい。またなんと不遜なものなのだろう。だが、それでいいのだ。現実を我儘勝手に動かすことはできないが、心の中ではどんな我儘勝手をしようが自由だ。それは心だけの世界なのだもの。こうしたことを考える私は、まして不遜であるに違いない。だが止められない。〉

    心だに いかなる身にか 適ふらむ 思ひ知れども 思ひ知られず
               『紫式部集』56番

    こうして紫式部は物語の世界へとのめりこんでいくことになる。物語について友たちと語り合い、自分の心を楽しませるために物語を作る。その先に『源氏の物語』が誕生することになる。彼女は現実を生きながら、もう一つそれとは違う世界、心の世界を生きる人間になったのだ。

    その頃からわたしの中でも、紫式部は実は器用に生きられない人だったのかなぁと少し見方が変わってきた。高飛車な割には臆病で。生真面目で敏感で、人づきあいも得意じゃなくて。ちゃんとしなきゃとずっと緊張していて。紫式部の嫌だった部分も不器用さ所以、そう思うことで彼女がちょっぴり可愛らしく見えてくる(紫式部に己は何様じゃーと罵られるでしょうが 笑)。

    でも、そんな紫式部だからこそ、「身の程」の中で生きてゆく女性たちの怒りや惨めさ、諦めなどの「心」、光源氏の闇の部分、つらい「身」と過激な恋という「心」を書けたんだなぁと思う。そして、紫式部の心が求めた『源氏の物語』は、これからも時代を超え、読む人を虜にしながら、素晴らしい文学作品として読み継がれていくはずだろうと思うのだ。

    • 地球っこさん
      myjstyleさん、こんばんは。

      そうです、myjstyleさんが背中を押してくださいました。
      読めてよかったです。
      ありがとう...
      myjstyleさん、こんばんは。

      そうです、myjstyleさんが背中を押してくださいました。
      読めてよかったです。
      ありがとうございました。

      文庫は、2011年刊行の単行本を改筆・改題したものらしいので、ちょっぴり内容に変更箇所はあるかもしれません。

      一条天皇は罪作りですね。
      どうもこの場面に涙腺が緩んでしまうのです……

      なるほど!「源氏迷」ですか!
      myjstyleさんの「源氏迷」関連のレビュー(もちろん他のレビューもです)が、これからも読めたら嬉しいです。

      わたしは「源氏物語」も気になるし、どうしても一条、定子、彰子のあの時代のこともとても気になります。
      2020/08/24
    • マリモさん
      地球っこさんこんばんは!

      うわー、読みたいです!面白そう!
      横からすみませんが、私も紫式部のじっとりした腹黒さ(言い得て妙!!まさにこれ笑...
      地球っこさんこんばんは!

      うわー、読みたいです!面白そう!
      横からすみませんが、私も紫式部のじっとりした腹黒さ(言い得て妙!!まさにこれ笑)がちょっと好きになれません(笑)
      でもたぶん、平安時代は清少納言みたいなタイプの方の方が珍しかったのでしょうね。そして、このじっとりした腹黒さがあるからこその源氏物語の誕生だったのだろうなとも。
      文庫本出ているのですねー、これは手にとってみなければ!素敵なレビューをありがとうございました。
      2020/08/24
    • 地球っこさん
      マリモさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます!

      山本淳子さんの著書は、どれも面白いですね(*^^*)
      今回は、紫式部目線...
      マリモさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます!

      山本淳子さんの著書は、どれも面白いですね(*^^*)
      今回は、紫式部目線でしたが……うーん、じっとり腹黒かった 笑

      先に清少納言側の著書を読んだから、特に思っちゃうのでしょうかね。

      彰子に関しては、やっぱり素敵な女性だなと思いました。

      あの一条天皇の辞世の歌ですが、「源氏物語」にもよく似た歌があったなんて、びっくりしました。
      実はワタクシ恥ずかしながら、源氏物語を最初から最後までちゃんと読んでないのです……

      紫式部はうーん……ですが、源氏物語はやっぱり素晴らしい物語だと思うので、じっくりと読んでみようと思ってます!
      2020/08/24
  • 私は紫式部にはかなり偏見を持っていた。単純に若い頃に枕草子を先に読み、手に入れて大事に読んでいたからなのだが(笑)
    その後、紫式部日記等も学び、子供だった私には彼女はとてもいけすかない女性に思えた。
    それから、私も当時よりたくさんの人間関係を経験し、母を亡くし、改めて、源氏物語を読んでみたいと思った。
    谷崎潤一郎翻訳の源氏物語を読みながら、紫式部と清少納言の関係を見直してみたくなり、何冊かの本を選んだ。
    その一冊である。
    読み終えて、二人とも変わらない。会社に勤めて理不尽なことや人間関係に悩む女性。
    才があるだけに宮廷暮らしは辛い事も多いことだったろう。

    そう考えると日本の女性たちは変わらない環境の中で、今も頑張っているのだと胸が熱くなる。
    さぁ、源氏の続きも読まなくては(^^)

  • 凄い人だわ

    紫式部ひとり語り 山本淳子:文庫 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/321912000059/

  • タイトル通り、紫式部が己を語る。
    あいかわらず、陰険なひと。
    その辺りのキャラがぶれんなあ(笑)

    あと、作者が彰子贔屓の先生なので
    後半はそれ推し。

    素晴らしい上司に出会えた幸せは
    今も昔も変わらない。

  • 2024大河への助走⑥

    形見の話が印象に残った。

    読んだのは文庫じゃないやつなんだけど出てこない…。

  •  大河ドラマ「光る君へ」に触発されて読みだした本。紫式部って源氏物語の作者であることは知っているもののそれ以外のことは意外と知らなかった。
     源氏物語を書きだしたきっかけは、夫、藤原宣孝が突然になくなり、その後、物語を書くという作業を通じて、自らを昇華させていったという所なのかな。
     初めは、雨夜の品定めといった一編を収録している「箒木」、「空蝉」、「夕顔」の三帖から物語は始まったそうだ。その後、「桐壺」の巻やいろいろな物語を書き足していって源氏物語が完成していく。その間、物語の成立には、藤原道長などの援助もあったようだ。
     読んでいていると、結構他の女房達の批評が乗っているが、特に清少納言などについての人物評は手厳しい。かなり口で言えない分、書くことで発散する人だったのだろうかとも思う。
     一条天皇の皇后で、紫式部がつかえていた上東門院藤原彰子が徐々に人間として成長していく様を描いている所がまたいいなあ。
     注目は、道長との関係。昔、読んだ北山茂夫氏の「藤原道長」では、関係があったという記述があった記憶があるが、実際はどうだろう。この人の性格を見ているとmそういう危ない橋は渡らなそうだし、召人のような関係は好まなさそうだから、ない様な気がするのだが、どうだろう。
     「紫式部日記」や歌集の「紫式部集」の成立の事情にも触れている。この人は、根っからの作家のような気がする。こういう人は、これまでの文学史上居たのだろうか?
     紫式部とはどんな人だったのか、その生涯、述作などを知るための入門書としてはちょうどいい本だと思う。

  • 先に読んだ小説のこともあってか少々内容が当然ですが被るけど、フィクションばかりではなく紫式部式部日記と紫式部集の引用が途中に組まれ、
    よりリアル感ありました。ひとり語りという独白なのが作者の言われるように小説のようで全く違うと思いました。ここでも源氏物語の登場人物の投影の事が描かれていますが、特に印象に残ったのは召人。源氏物語を読んだ時今まで主人公に愛された女君にしか注意が行かなかったけど、その女君に隠れた召人の存在はいたわけで、そういったことも書かれていたことに気がつきました。でも当時は儀礼的部分もあって、現代の常識ではわかり得ないので難しいなと思いました。

  • 2023.05.13 2024年大河ドラマに備えて

  • 紫式部の書き残したもの、歴史的資料などを元にした紫式部の人生が小説風にまとめられています。
    偉大な物語作家ではあるけれど、シングルマザーでお勤めをして、仕事や職場の人間関係に悩み、ついいじめに加担するなど、あぁ、普通にいそう、こういう人…と紫式部が身近に思われます。また、主人である中宮彰子の人柄についても述べられています。藤原道長の娘で、政治の道具としてしか印象がなかったのですが、そうではなかったのだな、と。
    全体の印象としては、紫式部の心のなかに入り込んで世界を見ているような。心の奥に沈み込むでいくような。そんな感覚を覚えました。

  • 自伝風評伝
    紫式部の姿が浮かんできて興味深い。
    清少納言が機知や意志の人、紫式部はねちっこくてリアリスト。それも彰子の女房だったからか。枕草子や清少納言へのいらつきっぷりに、枕草子の力(「枕草子のたくらみ」)が感じられておもしろい。

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著者プロフィール

山本淳子
<プロフィール>
京都先端科学大学教授。京都大学文学部卒業。高等学校教諭等を経て、1999年、京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。京都学園大学助教授等を経て、現職。『源氏物語の時代』(朝日選書、2007)でサントリー学芸賞を受賞する。他の著書に『枕草子のたくらみ』(朝日選書、2017)など。

「2022年 『古典モノ語り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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