龍の起源 (角川ソフィア文庫)

  • KADOKAWA (2021年1月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784044006068

作品紹介・あらすじ

西洋のドラゴンと東洋の龍。その性格はさまざまで、姿形もまったく違うのに、なぜ同じ「龍」と呼ばれるのか? バビロニアのティアマト、エジプトのウラエウス、インドのナーガ、日本や中国の龍。西洋では反秩序の象徴で退治される存在だが、東洋では雨を降らせて農民を助けたり、皇帝のシンボルとして崇められたりしてきた。龍とはいったい何者か。世界の神話や民話、絵画に描かれた記録を調査・探索。図版109点を掲載する。

感想・レビュー・書評

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  • 中国の龍とインドのナーガは姿形は異なるのに、性格的に類似していたのはなぜか。中国とメソポタミアのみ種々の動物からなる「龍らしい龍」が生まれたのをどう考えるべきか。なぜ中国ではそれが聖獣であったのにメソポタミアでは悪神視されたのか。どうしてインドとエジプトでは「龍らしい龍」が生まれなかったのか。(略)調査に一区切りがついた現在、いよいよ龍の起源を問うときである。
    (104p)

    このように世界の龍伝説をスケッチした後「龍の起源」「日本の蛇と龍」「龍と宇宙論」へと進む構造の本である。著者の専攻は「科学思想史」であり、考古学の立場からは、異論が出そうな気がする。しかし、「龍の起源」の仮説は非常に魅力的で、大変参考になった。

    以下はマイメモ。
    第3章「龍の起源」
    ・人類にとって「食べること」と「産むこと」は、生存のための基本的な条件だった。そのために、技術の進化と共に、呪術的な自然の支配も努めてきた。女性像や男根像はその現れ。
    ・BC1万年頃から氷河期は終わり、温暖化に入る。農耕が始まる(新石器時代)。分けても農耕に不可欠な降雨の制御に、人間は無力だ。そして呪術に「蛇」が加わる。
    ・初めから(日本の弧帯紋の前身を想起させる※)渦巻き紋様は、蛇を意味していた(BC五千年西ウクライナ・シビンツィ)。蛇の神秘的なダイナミズム、卓越した活力、周期的に若返る生態という「強靭さと不死性」が、過酷な自然環境のもとでの願いに結びついただろう。
    ・男根と蛇は早くから結びつく。
    ・世界共通で忌み嫌われる動物である蛇。しかし「恐怖は畏怖心に変わる」。
    ・中国とインドは仏教以前に「稲の道」を通して交流があった。よって龍の性格が似通ったのだろう。
    ・新石器時代の仰韶期の中国(甘粛省)や東南アジア(タイ・ウドン)から出土した壺に施された渦巻き紋様は、ほとんど弧帯紋になる直前のように思える(※)。やがてこれはギリシアのメアンダー紋様に、青銅器の雷紋にもなる。
    ・角や足を持つ複合動物の「龍らしい龍」の誕生は、メソポタミア・シュメールと中国からであった。シュメールでは、洪水の治水のために強力な王権と官僚制の確立が不可欠だった。天や牛を信仰していた侵略者シュメール人は、先住民の蛇信仰は退治すべき存在だった。よって悪神化される。暴れ川の治水は、蛇では表現できない。猛獣と猛禽の能力が入ってきた。中国でも同様の過程を経る。しかし中国・黄河では、龍は黄河のシンボルとして、天子の権力の強大さを示すシンボルとして、限りなく強力な獣が創造されねばならなかった。
    「龍は政治化された蛇である」
    ・インドとエジプトではコブラという特殊な蛇の存在が、あえて特別な怪獣を創造させる必要性を無くした。

    ※は、私の感想です。

    第4章「日本の蛇と龍」
    ・中国の影響を受ける前から、地球規模で蛇の信仰はあり、日本も例外ではない。縄文土器にも女性像と男根、そして渦巻き紋様、蛇形把手、頭に蛇をつけた土偶などが出土する。縄文時代なのにヨーロッパの農耕シンボルたる蛇が登場?焼け畑農業をしていたか?
    ・なぜか弥生前期には、蛇紋様や蛇土器は姿形を消す。著者は中国から稲文化が持ち込まれたのだから、反豊穣のシンボルである蛇の紋様は消えたのだろうと推測する。
    ・弥生後期から龍が描かれた土器が出土する。(水の祭り)中国伝来の神獣鏡の龍がどういう位置にあったかは不明。渦巻き紋様は残ったが、主流は流水紋になる。男根などの性の呪術は健在。

    ※中国では、暴れ川の象徴たる蛇の怪物化が王権と結びつくことで、龍となった。つまり治水と王権は初めから一緒だった。しかし、日本ではじめ全国に広がった龍は王権と結びついていない(今年の関西遺跡の旅で確信した)。それを結びつけたのが、吉備の特殊器台祭司である。何故そういう輸入が行われたのかは、本書を読んでも謎が深まるばかりであった。
    ※ここから一挙に話は古事記・日本書紀に移る。結局、弧帯紋や王権としての龍は、この著者の目には入らなかったようだ。
    ※最終章は「龍と宇宙論」という訳の分からない話ななった。

    • 地球っこさん
      kumaさん こんばんは☆

      中国の皇帝と朝鮮王朝の王と世子とそれぞれが着る袞龍袍に刺繍された龍、日本に入ってきた龍、それぞれの爪の数が違う...
      kumaさん こんばんは☆

      中国の皇帝と朝鮮王朝の王と世子とそれぞれが着る袞龍袍に刺繍された龍、日本に入ってきた龍、それぞれの爪の数が違うことを知ってから、中国の龍はとても気になる神獣です。

      でも龍の起源までは考えてなかったので、読んでみたいと思います。
      2022/11/15
    • kuma0504さん
      地球っこさん、こんばんは。
      そう言えば、中国皇帝を表す龍は五本指、位が下がることに三本指、朝鮮や日本は位が下がるんですよね。少し書いていまし...
      地球っこさん、こんばんは。
      そう言えば、中国皇帝を表す龍は五本指、位が下がることに三本指、朝鮮や日本は位が下がるんですよね。少し書いていました。

      でも、弥生時代の龍にはそんなこと関係ないし、学者はWやグルグルだけで龍だと判断していたりしています。記号化に西日本全体が影響されているから、うなづくしかない。

      実は、大和政権発足直後(3世紀)は吉備の特殊器台祭司の影響で、龍に王権継承儀式が大王(天皇)の権威を決定していたと、私は確信しているのですが、古事記ができる7世紀には、いつのまにかアマテラスが最高位に座って、どうも太陽神信仰に変わっているぽい。だから、龍と王権が結びついていたのはいったい何時ごろだけだったのか?その信仰変更には、どんな大事件があったのか?ホントは知りたいのですが、古事記以前の文献がない日本ではわかりません。恐ろしいことには、その太陽神信仰は現代まで続いているぽいことです。3種の神器を使った天皇代替わり儀式の「秘儀」がつい最近行われたことでも示されました。

      それ以降日本では、龍の爪が5本であろうが、三本であろうが、どうでも良くなったのかもしれません。

      ‥‥というようなことを、地球っこさんのコメントで、いろいろ考えてしまいました♪
      2022/11/15
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著者プロフィール

1940年福島県に生まれる。東北大学理学部を卒業後、東洋大学、東京職業訓練短期大学校、静岡大学、愛知東邦大学を歴任。専攻は科学思想史。静岡大学名誉教授。
主な著書に『古代日本人の宇宙観』(海鳴社、1981年)、『日時計=最古の科学装置』(海鳴社、1983年)、『科学と科学者の条件』、『車の誕生』、『世界を動かす技術=車』(海鳴社、1993年)、『龍の起源』(紀伊國屋書店、1996年)、『日本人の宇宙観――飛鳥から現代まで 』(紀伊國屋書店、2001年)、『東と西の宇宙観 東洋編』(紀伊國屋書店、2005年)、『東と西の宇宙観 西洋編』(紀伊國屋書店、2005年)、『教師・啄木と賢治――近代日本における「もうひとつの教育史」』(新曜社、2010年)がある。

「2014年 『原発に抗して 一科学史教師の闘い』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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