気候を操作する 温暖化対策の危険な「最終手段」

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044006112

作品紹介・あらすじ

大気中のCO2を直接回収、成層圏に微粒子を撒いて太陽光を遮る……最先端の温暖化対策は、「人類が気候を操る」レベルまで達している。世界で話題沸騰の技術の概要・効果・危険性について、日本の第一人者が解説。

感想・レビュー・書評

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  • ポン・ジュノ監督の映画『スノーピアサー』は、地球温暖化対策が裏目に出て地表が雪と氷で覆われてしまった未来を描いた。本書のタイトルからそんな連想が働いたが、“気象工学”について至って真面目に解説した本だ。CO2除去・地域的介入・放射改変など平易に解説されているが、まったくの門外漢であるぼくにはそれでも理解が及ばない部分もあった。2050年までになんとかすると言うが、本当にできるのだろうか? 地球に未来はあるのか?

  • 杉山昌広(1978年~)氏は、東大理学部卒、マサチューセッツ工科大学Ph.D.・修士取得、東大サステイナビリティ学連携研究機構特任研究員、東大政策ビジョン研究センター講師・准教授等を経て、東大未来ビジョン研究センター准教授。気候変動に関する政府間パネル(IPCC) 第6次評価報告書第3作業部会の主執筆者。専門は環境・気候政策。
    本書は、地球温暖化への対応が喫緊の課題となる中で、世界的に注目を集めつつある「気候工学」と呼ばれる、気候を操作・コントロールする技術について、概要、リスク、今後の課題等を解説したものである。
    著者は前述の通りIPCCのメンバーでもあり、前段で、現状の取り組みでは、パリ協定で合意されている「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて+1.5~2℃に抑える」という目標は到底達成できないとした上で、追加的な気候変動対策としての「気候工学」について述べているが、私が理解したポイントは概ね以下である。
    ◆現在各国が取り組んでいる温室効果ガスの排出削減は、専門用語では「緩和策」と呼ぶ。また、変化する気候に人間社会や経済が対応して被害を軽減すること(堤防のかさ上げ、移住など)を「適応策」と呼ぶ。
    ◆「気候工学(ジオエンジニアリング)」とは、人工的に直接的に気候システムに介入して地球温暖化対策をすることを指し、主に「CO2除去」と「太陽放射改変」に分けられる。いずれも、現時点で完成されたシステムとしての技術ではないが、ベースとなる技術はローテクなものであり、ある程度効果に目途は立っている。
    ◆「CO2除去(CDR)」とは、一度大気に出てしまったCO2を、光合成等の生物活動の活用(植林、CCS付バイオマス・エネルギー、海洋の肥沃化)、化学工学的CO2直接空気回収・貯留などの方法で、大気から回収すること。尚、CCSとは大規模発電所などの煙突にCO2を回収する装置を設置してCO2のみ空気から分離し、圧縮して地中に埋める技術。これらの方法の問題点としては、緩和策への取り組みが抑止されること、生態系等への副作用などがある。
    ◆「太陽放射改変(SRM)」とは、太陽光を宇宙に反射して地球に入るエネルギーを減らすことにより地球を冷却(し、CO2等による温暖化を減殺)すること。太陽光を反射する場所を、宇宙、成層圏、対流圏、地上のいずれにするかにより、様々な手法が考えられるが、最も効果が確実視されているのは、大規模火山噴火を真似て、航空機等で高度20㎞(成層圏)の上空大気に浮遊性の微粒子(エアロゾル)を注入し地球全体の反射率を上昇させる「成層圏エアロゾル注入」。この方法には、エアロゾル注入を止めた場合、途端に地球の気温が大きく上昇する可能性があるという「終端問題」と呼ばれる副作用がある。
    ◆気候工学を使った温暖化対策は、2000年代半ばに、それまであったタブーが打ち破られて研究が進展し、現在はIPCCの報告書にも掲載されるようになっている。
    ◆気候工学は、上記の通り様々な副作用や社会的問題を引き起こす可能性のある技術であり、現代の先端科学技術であるAIやゲノム編集技術の取り扱いと同じく、最大の課題はガバナンスである。今後更に検討を進めるにあたっては、一般市民や多様なステークホルダーを含んだ幅広い議論が不可欠である。

    近年のベストセラー『人新世の「資本論」』の中で斎藤幸平氏は、SDGsなどの温暖化対策をアリバイ作りのようなもの、現代版「大衆のアヘン」であると喝破しているのだが(同書における論理展開は「よって、脱成長コミュニズムが必要」となる)、昨年末のCOP26でも(一部の国を除いて)改めて危機感が共有されたように、現状の緩和策の取り組みではパリ協定の目標を達成するのは不可能である。
    私は基本的には斎藤氏の主張に共感を覚える立ち位置だが、あと数十年というタイムスパンでは、何らかの現実的な対応策が必要なのではないかという思いから本書を手に取った。そして、気候工学という技術についての理解は進んだものの、一方で、本書で著者が述べている「神に成り代わって人間が気候を弄るということに、生理的な違和感を感じる人もいるかもしれません」という人の中から抜け出せないのも事実であった。差し当っては、身近でできることをやりつつ、様々な議論に関心を持ち続けていくしかないのか。。。悩ましい問題である。
    (2022年1月了)

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/545540

  • 519-S
    閲覧

  • 個人的に大の暑さ嫌いなので、関心を持って読んだ。「不都合な真実」的な事や、能動的な対処法が無い訳では無い、という、ある意味、超アナログ的ではあるが方法はあるんだよ、という話。治験のようなお試しが不可能なので、走り出しからとても慎重に行かないと、悪い前例を作ってしまうと誰にも止められなくなる話とか。
    日本人は消極的で否定的ってのが、自分も含めて辛い。

  • ●「2018年1月の日本の高温イベントは、人為的な地球温暖化がなければ起こりえなかった」科学では因果推論を行うのが望ましい。しかし地球で起きている事は実験をすることができない。スーパーコンピューターで仮想地球を作って実験をする。
    ●いちど大気に出てしまったCO2は長期にわたって残るため、1度上昇した気温は1000年ぐらいは低下しません。気温は元に戻らないのです。
    ● CO2を100%削減する事は非常に難しいです。一方で、大気からCO2を回収するのは、相対的には「やすい」ものです。
    ●気候工学。英語ではジオエンジニアリング。様々な手法の総称で、主に太陽放射改変とCO2除去に分けられます。 
    ● ヨウ化銀をばらまいて、人工的に雨を降らす
    ●クライムワークス社のCO2回収機。
    ●放射改変。太陽光を宇宙に反射して地球を冷却する。宇宙太陽光シールド。成層圏エアロゾル注入。雲の白色化。屋根の反射率増加。

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著者プロフィール

1978年、埼玉県生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科卒業。マサチューセッツ工科大学にて、Ph.D.(気候科学)・修士号(技術と政策)を取得後、東京大学サステイナビリティ学連携研究機構特任研究員、一般財団法人電力中央研究所社会経済研究所主任研究員等を経て、東京大学未来ビジョン研究センター准教授。専門は気候政策(モデルによるシナリオ分析)、ジオエンジニアリングのガバナンス(公衆関与)。著書に『気候工学入門―新たな温暖化対策ジオエンジニアリング』(日刊工業新聞社)がある。

「2021年 『気候を操作する 温暖化対策の危険な「最終手段」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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