図解 感染症の世界史

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044006334

作品紹介・あらすじ

第一章 世界を巻き込む新型コロナウイルス
第二章 人類の移動と病気の拡散
第三章 微生物という巨大ファミリー
第四章 人類の攻防―人は微生物に1勝9敗
第五章 人類と共生する微生物
第六章 毎年流行するインフルエンザの不思議
第七章 広がる危険な感染症
第八章 感染症と日本人
第九章 感染症は社会を変えてきた

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    ── 石 弘之《図解・感染症の世界史 ~ 人類と病気の果てしない戦い 2014-20210129 洋泉社》
    /藤原 清貴・喜名 景一郎・編集/脇山 真木・協力
    /江澤 隆志・発行/黒岩 二三・装幀/中央精版印刷株式会社
    /フジマックオフィス・本文組版
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4044006334
     
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4800305543
     
    …… ぼくの肺の中にはざっと170種のウイルスや細菌が棲みついて
    いる。まとめて常在菌という。ぞっとする。肺だけではない。人体のど
    こにもいる。
     ブラウン大学のスーザン・ヒューズが数え上げたところ、舌の両側に
    7947個、口腔に4154個、耳の裏側に2359、大腸に3万36
    27の常在菌がいた。この調子で数え上げると、総数で数百兆個になる。
    細胞の10倍以上いる。総重量は約1300グラムあったというから、
    これは脳くらいの重さになっている。

     常在菌として、このところ日本で話題になっているのがピロリ菌だ。
    医療ニュースでは「日本人最大の感染症」と言われた。日本人にはピロ
    リ菌の保菌者がかなり多かったのである。
     意外だったのは、塩酸いっぱいの強酸性の胃にはどんな細菌もとても
    棲めないと思われていたのに、そうではなかったということだ。ピロリ
    菌は胃の粘膜の中にいた。ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pyl
    ori)という正式名がある。ヘリコはヘリコプターと同じ語源で「螺旋」
    のことを、バクターは「細菌」を、ピロリは胃の出口の「幽門」をさす。
    捩れた形状で四~八本の鞭毛をもつ。1984年に西オーストラリア大
    学のロビン・ウォーレンとバリー・マーシャルがピロリ菌こそが胃癌の
    引き金の正体だということをつきとめた(2005年にノーベル賞をも
    らった)。
     ぼくが胃癌を疑われたとき、中目黒の森センセイはひょっとするとピ
    ロリ菌のせいかもしれないと推定し、のちに築地の国立がんセンターで
    調べたところ、おそらく中学生のころからいたんじゃないかと言われた。
    ぞっとした。かつては世界中の大半の胃の中にピロリ菌がいたらしい。
    いまでも人口の半数の胃の中にいる。ということは、ピロリ菌の移動の
    歴史と文明の伝搬には関係があるともくされる。


    ピロリ菌
    ピロリ菌は、らせん形をした細菌で、胃の粘膜に生息している。胃炎や
    胃潰瘍などの胃の病気に深く関っていることが明らかにされてきている。
     生物は自分の遺伝子をコピーして子孫を残そうとする。そのプロセス
    でコピーミスが生じ、さまざまな突然変異がおこる。その残痕は次々に
    蓄積されていく。遺伝子は「進化の化石」なのである。
     遺伝子の変異がどのようにおこるかということを一定の時間で割り振っ
    て、同じ祖先をもつ生物種がどのように分岐していったかを調べること
    ができる。ものさしは分子時計にもとづく。
     ある遺伝子が10万年に一個の割合で変異しているとすると、2つの
    種の遺伝子に50個ほどのちがいがあれば、この元の遺伝子は500万
    年前に分岐したことになる。こういう具合に分子時計による計算を詰め
    ていくと、人類は487万年前にチンパンジーと共通の祖先から分かれ
    たと推定できる。
     マックス・プランク研究所が胃の中に棲みついたピロリ菌の遺伝子を
    分子時計で調べてみると、東アフリカからの距離が遠くなるにしたがっ
    てピロリ菌の数が減少していくことがわかった。ピロリ菌の先祖は人類
    の胃袋とともに、アフリカを旅立ち、中央アジアや東アジアをへて日本
    にやってきたのである。いまでは7種のピロリ菌の遺伝子型が発見され
    ている。
     日本人のピロリ菌は第七種で、中国、韓国、台湾先住民、南太平洋、
    北米先住民と同じものに属する。ピロリ菌人類学だ。しかし、なかでも
    日本人にピロリ菌が多く、胃癌の発生率と重なる傾向を見せていること
    については、いまのところ多様な要因がからんでいるせいで、その理由
    ははっきりしていない。ぼくの場合は人類学とカンケーなく、喫煙常習
    性、ピロリ菌保菌、不節制な生活、偏った食事習慣などが重なり、細胞
    が変異して胃癌になったのだろう。


    ピロリ菌の拡散地図
     ポール・フォーコウスキーの『微生物が地球をつくった』(青土社)
    が鮮やかに描いたように、環境も地球も生物も、そしてわれわれも、微
    生物で成り立っている。ぼくはニトロゲナーゼとルビスコの役割に驚嘆
    した。
     そんな微生物のなかで、これまで約5400種のウイルスと約680
    0種の細菌(バクテリア)が発見されてきた。びっくりするのはウイル
    スの種類がとてつもなく多いということだ。コロンビア大学のスティー
    ブン・モースによると、まだ見つかっていないウイルスの存在数を予想
    すると360万種になるのではないかという。

     細菌(真性細菌 bacteria)はれっきとした生物である。大腸菌・枯
    草菌・シアノバクテリアを含み、地球中のどこででも活躍して、広範囲
    の生物圏の底辺を支えてきた。光合成や窒素固定も細菌がいなければお
    こらなかった。ウイルスはどうか。
     細菌たちの30分の1のサイズしかないウイルス(virus)は、生き
    ものとしては極小の存在者たちではあるが、実は生物の条件を満たして
    はいない。生物の最低の条件は、わかりやすくいえば、①遺伝子をもっ
    ている、②細胞がある、③代謝エネルギーを生成する、④自己複製でき
    る、という四つにあるだろうが、ウイルスは遺伝子をもつものの細胞が
    なく、自律的には複製できないし、代謝エネルギーももっていない。そ
    れでも「生きている」。
     ウイルスは生物ではなく、生物モドキなのである。生物モドキである
    ウイルスは、しかしながら生物の細胞を利用して自己複製をする。つま
    り増殖できる。他動的なのだ。これがなんとも微妙だ。
     増殖は「細胞表面への吸着→細胞内への侵入→脱殻→部品の合成→部
    品の集合→感染細胞からの放出」というふうに進むのだが、このプロセ
    スのなかで、細胞はウイルスに感染した状態になり、われわれは感染症
    (infectious disease)に冒される。麻疹もインフルエンザもエイズも
    ウイルスによる感染症である。


    人獣共通感染症の脅威
    科学技術白書より
     ウイルスが感染症をおこすのは、ウイルスがモドキであるからだ。自
    分のコピーをつくりたいくせにタンパク質合成に必要な遺伝情報や酵素
    をもたず、宿主細胞のものを借りて、自己複製や自己組織化をする。こ
    の「ちゃっかり」のメカニズムは、まだ十全には解けていない。
     そもそもウイルスの基本構造は粒子っぽい。粒子の中心にウイルス核
    酸があり、それをとりかこんでカプシド(capsid)というタンパク質の
    殻がある。カプシドとエンベロープ(envelope)の二重殻になっている
    ものもある。
     おまけにウイルス殻はRNAかDNAかのどちらかしか含まない。通
    常の生物は一個の細胞にRNAとDNAの両方を含むのに、ウイルスは
    片方しかもたない。RNAウイルスかDNAウイルスしか、ない。それ
    でどうするかというと、カプシドはウイルスが細胞に侵入したのちに壊
    れて脱殻し、あとは宿主の細胞のもつタンパク質合成機構や代謝力を利
    用する。「ちゃっかり」かつ「ハッキング」なのだ。
     ウイルスがどのように標的の細胞を感染させるのかは、宿主細胞の表
    面に露出しているレセプター(標的分子)に出会えるかどうかで決まる。
    この決まり方に感染症という事態が蔓延する最初の要因がある。


    ウイルスの模式図
    『ウイルスと感染のしくみ』p119
     感染症とは、医学的には寄生虫・細菌・真菌・ウイルス・異常プリオ
    ンなどの病原体(pathogen)によって、宿主(host)に生じる「望まし
    くない反応」(症状)の総称だ。「望ましくない反応」は人体のどこに
    でもおこる。
     ごく一部をあげても、脳(髄膜炎・脳炎)、顔(鼻炎・咽頭炎・喉頭
    炎)、肺・気管支(肺炎・気管支炎・結核)、心臓(心内膜炎・心筋炎
    ・大動脈炎・敗血症)、消化器(胆囊炎・肝炎・胃炎・胃潰瘍・腸炎・
    虫垂炎・クラミジア肝炎)、泌尿器(腎盂炎・膀胱炎・前立腺炎・膣炎)
    、皮膚(蜂窩織炎・脂肪織炎・ガス壊疽・とびひ・せつ・よう・ブドウ
    球菌性傷様皮膚症候群・帯状疱疹・水痘・麻疹・風疹・疥癬)など、膨
    大だ。これでは感染症という名称は広範になりすぎていると思うのだが、
    いまのところそうなっている。


    WHOが注意喚起する感染症
     本書は石 弘之さんによるダイナミックな感染症案内記である。感染
    症に関する本はゴマンとあるけれど、とてもいい本だ。
     石さんはぼくが初めてお会いした頃はまだ朝日新聞の編集委員をして
    いて、その精力的な活動範囲で、多くの人脈ネットワークの雄弁なハブ
    になっていた。その後はもっと大事なハブになられただろう。著書も多
    く、新聞記者時代に鍛えた文章もうまい。かなり自在に文章を書く。
     とくに『地球環境報告』1・2(岩波新書)は画期的だった。最初に
    読んだときはかなり衝撃を受けた。歪みながら腐食しつつあるリアルな
    地球像の実情を突きつけられた。ぼくは湯浅赳男・安田喜憲さんと自在
    に語りあっていた『環境と文明の世界史』(洋泉社)も愛読した。これ
    もたいへん仮説に富んでいた。意外な名著に『鉄条網の歴史』(洋泉社)
    などもある。
     石さんはずっと「文明」とは何かを考えてきた人だ。本書も、文明の
    伝搬にあたっては農耕・道具・言語・技術・神話・音楽・信仰・武器・
    服飾などとともに、ネズミ・ダニ・ゴキブリ・ノミ・カ・シラミ・寄生
    虫たちがいたこと、膨大な細菌・ウイルス・原虫・カビなどこそが猛威
    をふるうグローバライザーであったことをくりかえし訴えて、病原性の
    微生物としてのウイルスがもたらす感染症をわかりやすく案内した。


     石 弘之と中村 桂子
    「水と風の惑星」である地球をめぐって日本のナチュラルヒストリーを
    語り合う。(『めぐる』p74-75より)
     石さんが本書で重視したことは、大きくは3つある。
     第一に、感染症をもたらすウイルスがなぜ感染網を広げるのかという
    ことだ。答えははっきりしている。通常の遺伝子は親から子へとタテ
    (垂直型)に移動するけれど、ウイルスはヨコ(水平型)に遺伝子を移
    動させてきたからだ。
     ヒトゲノムが2003年にすべて解読されて、タンパク質をつくる機
    能のある遺伝子はわずか1.5パーセントしかなくて、全体のほぼ半分
    くらいはウイルスに由来することがわかってきた。多くはトランスポゾ
    ンといわれる自由に動きまわれる遺伝子の断片だった。
     ウイルスが進化の途上でわれわれの遺伝子に潜りこんだのか、それと
    も遺伝子がウイルスを利用したのか、どちらが「つもり」で、どちらが
    「ほんと」かはわからない。なかでもRNAウイルスの一種のレトロウ
    イルスは、自分の遺伝子を別の生物の遺伝子に組み込むことによってま
    んまと生き延びてきた。これでヨコ水平ネットワークをつくりあげたの
    だ。
     第二に石さんは、いったいいつごろから人間とウイルスが共生してき
    たのかということを考える。
     われわれの祖先がアフリカのサバンナから出所したことはわかってい
    る。そこからさまざまな文明が発達し、多くの為政者が世界を征服する
    つもりになってきた。その一方、結核菌、ピロリ菌、エイズ、パピロー
    マウイルス、マラリア、麻疹、水痘(水疱瘡)、成人T細胞白血病など
    の原因になる病原性微生物が、いずれもアフリカ起源であることもわかっ
    てきた。
     この2つのことは生物と人間と文明の展開のなかできわめて重大な両
    義性もしくは多義性が、アフリカで発揚されていただろうこと、直立二
    足歩行とともに何かが始まっていたことを暗示する。ウイルスはわれわ
    れに厄災をもたらすとともに、その半面でわれわれをここまで進化させ
    たのだ。


    マラリアの注意喚起
    国境なき医師団制作
     第三に、いったいウイルスと人間は敵対しているのか、それとも共生
    しているのかということを問う。
     生物は感染したウイルスの遺伝子を自分にとりこむことで、突然変異
    をおこして遺伝情報を多様にし、進化ゲームを有利に進めてきた。とり
    こんだのだから、われわれにとってウイルスがすべて有害者や敵対者だっ
    たはずはない。たんなる居候だったはずもないし、お互いにそれなりの
    利得をなにがしか交換しあったはずだ。ウイルスはわれわれを感染病に
    罹らせるだけではなく、なんらかの恩恵も提供したはずなのだ。
     たとえば、ウイルスは哺乳動物の胎児を守っていることがわかってき
    た。胎児の遺伝形質の半分は父親に由来するもので、それは移植された
    臓器のように母親の免疫系にとっては異質なものである。だから胎児は
    母体がもつ免疫反応によって生きていけなくなってもおかしくなかった
    のだが、そうならなかった。なぜなのか。このことは学界でも長らく謎
    になっていた。
     1970年代になって、哺乳動物の胎盤から大量のウイルスが発見さ
    れ、拒絶反応を引きおこすはずの母親のリンパ球が一枚の膜(合胞体細
    胞膜)に遮られ、胎児の血管に入るのが阻止されていたことが判明した。
    1988年にはウプサラ大学のエリック・ラーソンによって、この細胞
    膜が体内に棲むウイルスによってつくられていたことが発見された。最
    新の研究報告では、どうやら海洋にうごめく大量のウイルスが、大気中
    の二酸化炭素の蓄積や雲の形成にかかわっていることもわかってきた。
     こうなると、ウイルスによって地球生態系を語る方法がもっとあって
    いいということになるのだが、しかし一方、人体と文明に危険な状態を
    もたらすウイルスも少なくない。ふつう、感染症といえばこの「由々し
    いウイルス」との闘いをどうするかという問題になる。


    ウイルス感染時期(推定)と胎盤の系統樹
    ウシ亜科動物とヤギ亜科動物が分かれたおよそ2000万年前に、ウシ亜科
    動物の祖先動物にBERV-K1ウイルスが感染したことを示唆している。ウ
    イルス感染が胎盤を進化させた。
     感染症についての本は、最近になってずいぶんふえたようだ。ぼくも
    ちょいちょい目を通してきた。よく読まれてきたものとしては、国立感
    染症研究所の初代感染症情報センター長だった井上栄の『感染症の時代』
    (講談社現代新書)や『感染症』(中公新書)、山本太郎の『感染症と
    文明』(岩波新書)、益田昭吾の『病原体から見た人間』(ちくま新書)
    などの新書がある。いずれも新書だから入手しやすいだろう。
     世界の感染症をセンセーショナルなヴィジュアル・リストにしたのは、
    日本疫病研究会が編集した『人類を滅ぼす感染症ファイル』(竹書房)
    だった。2014年にエボラ出血熱が大ニュースになったとき緊急出版
    された。ペストやチフスやマラリアだけでなく、炭疽症、クロイツフェ
    ルト・ヤコブ病、ラッサ熱、SARS、サルモネラ症、O157、ボツ
    リヌス食中毒なども採り上げていた。一冊入手しておくことを薦めたい。
     それでも千夜千冊としては石さんのものを選んだのは、ぼくが大の石
    ファンであったからだ。そのうちフランク・ライアンの『破壊する創造
    者―ウイルスがヒトを進化させた』(早川書房)、ポール・イーワルド
    の『病原体進化論』(新曜社)といった本格的なウイルス論も採り上げ
    たいが、まずは石さんだ。そう思って本書を千夜千冊しようとしていた
    ら、ごくごく身近で感染症の実例がおこった。

     2、3週間ほど前、編集工学研究所のスタッフがノロウイルスに感染
    した症状を見せたのである。それも続けさまに4人だ。1日おいたり、
    4日ほどしてからだったり、1週間をこえてからだったりした。みんな、
    嘔吐や下痢に苦しんだようだ。一人は、パソコンを打っていたら急に何
    かがズンとやってきて目の前でしていることが手につかなくなったと、
    一人は「出産以来の辛さだった」と言っていた。
     ノロウイルスは牡蠣などの二枚貝をナマで食べるとおこりやすいが、
    小腸粘膜の細胞だけで増殖し、嘔吐物や糞便によって感染が広がる。感
    染も速い。80度以上2分間をこえて加熱しないと死滅しないところが
    悩ましい。水洗トイレもあやしい。当然、四人とも仕事場に来るのを控
    えた(これを書いているときに、「出産以来の辛さだった」と言った彼
    女の娘もノロになった)。まもなく一人はアニサキスによる食中毒だと
    わかった。自分で捌いたシメ鯖をばくばく食べたせいだ。シメ鯖の彼は、
    みんなから自業自得だと詰られた。


    ノロウイルスと集団感染
    2013年12月、京都総合病院で患者や職員ら101人がノロウイルスに集団
    感染し、4人の入院患者が死亡した
    2014年1月22日「朝日新聞 朝刊」に掲載
     日本語になったノロウイルスという響きはまるで呪われたような名前
    に聞こえるが、もとはノーウォーク・ウイルス(Norwalk virus)と呼
    ばれていた。1968年にオハイオ州ノーウォークで集団発生したとき
    の糞便から該当ウイルスが検出された。
     検出されたのはSRSV(小型球形ウイルス)で、1990年に全塩
    基配列がほぼあきらかになり、2002年にノロウイルス(Norovirus)
    と名付けられた。経口感染して、たちまち感染性胃腸炎をおこす。潜伏
    期間は12時間から72時間。わがスタッフたちは仕事場で感染したと
    おぼしいが、こんなに感染力があるとは思わなかった。
     ノロウイルスのことなど、てっきり遠方のニュースで知るものだと感
    じていたが、いやいや、こんなふうに身近なところでもおこるのである。

     そういえばこの数年で、スタッフの中にはインフルエンザに罹る者が
    必ず出るようになった。タミフルで治った者もいる。症状はどうあれ、
    いったん罹ると医者からは自宅軟禁のお達しが出るし、仕事場には急に
    マスク派がふえる。
     ぼくの家内も昨年の冬に罹った。ちょうどぼくが肺癌手術を了えて退
    院する一日前のことで、おかげで家には戻れず、数日を渋谷のホテルで
    待機した。肺をやられた者にはインフルエンザは致命傷になることがあ
    るので隔離されたのだ。右肺3分の1をもぎとられた直後のホテル滞在
    は、なんとも落ち着かなかった。
     インフルエンザのことを、ぼくの子供の頃はリューカンと言っていた。
    流感、つまり流行性感冒だ。リューカンは近所とか学校で流行る「きっ
    つい風邪」のことで、昔は友達の多くが罹ってもよほどのことがないか
    ぎり学校は休みにならなかった。マスクなど誰もしなかった。当時のリュ
    ーカンは冬の風物詩のようなものだったのだ。ちなみにぼくはいまなお
    マスクが苦手で、息苦しくなるので、すぐ外してしまう。
     風邪とリューカンの区別も知らず、いつからリューカンがインフルエ
    ンザと呼ばれるようになったかも知らなかったが、むろん両方ともウイ
    ルスが原因である。
     医療的な病名では、風邪(common cold)は「急性上気道感染症」で、
    一番多いライノウイルス、夏風邪(プール熱)をおこさせるアデノウイ
    ルス、冬に広まるコロナウイルスなど、10種類以上のウイルスがいた
    ずらをしてきた。
     風邪ウイルスにくらべて、インフルエンザ・ウイルスはそうとうに強
    い。毒性ももつ。季節性を伴うものとしてA型・B型・C型があり、A
    型から新型インフルエンザが派生する。毎年、世界中で300万人から
    500万人が罹り(A型が多い)、25万人から50万人が死んでいる。


    A型ウイルスの増殖のしかた
    『ウイルスと感染のしくみ』p124
     インフルエンザ・ウイルスの正体や感染経路は一様ではない。もとも
    とはシベリア・スカンディナビア・アラスカ・カナダなどの北極圏の近
    くで、凍りついた湖や沼の中にじっと潜んでいて、それが春になって水
    鳥のカモやガンなどの体内に入り込み、腸管で増殖し、その鳥たちが渡
    り鳥として各地に飛来するとともに撒布されるという定式で、流行する。
     インフルエンザは鳥インフルエンザがルーツなのである。その水鳥の
    ウイルスが変異をくりかえしているうちに、だんだん多様な亜型を生ん
    でいった。鳥インフルエンザ・ウイルスの表面には2種類のトゲ状のタ
    ンパク質の、HA(ヘマグルチニン)とNA(ノイラミニダーゼ)があ
    る。HAは宿主の細胞に付着するときに使われ、NAはウイルスが別の
    細胞に乗り移るときに機能する。
     このHAが抗原によって17種ほどの違いをもつ亜型ヴァージョンを
    つくる。そうすると、NAが10種類ほどの亜型に分かれる。となると
    HAとNAの順列組み合わせだけでも、理論的には鳥インフルエンザ・
    ウイルスは170種のインフルエンザのパターンをもっていることにな
    る。
     しかし奇妙なことに、宿主のカモやガンはインフルエンザには罹らな
    い。長らく共生してきたからだ。けれどもそのウイルスがアヒルやニワ
    トリなどに入りこむと、とたんに感染がおこる。ウイルスには「他者」
    が必要なのである。感染がくりかえされるうちに遺伝子がさまざまに変
    化して、強い毒性を発揮するようにもなった。
     それでもすぐに人には感染しなかった。それなのに鳥インフルエンザ
    ・ウイルスが今度はブタに入ると、人に感染する亜型ウイルスがつくら
    れるようになった。鳥インフルエンザから豚インフルエンザへ。養豚場
    がふえたからだ。そのうちブタが新種の亜型ウイルスの製造工場になっ
    ていた。ブタが媒介になったのは中国南部での出来事だったと推測され
    ている。
     こうしてかつての20世紀初頭のスペイン風邪、1957年のアジア
    風邪、1968年の香港風邪、1977年のソ連風邪などのインフルエ
    ンザ大流行がおこったわけである。スペイン風邪ではエゴン・シーレ、
    クリムト、アポリネール、島村抱月、辰野金吾、関根正二らが死んだ。
     問題はここから新型ウイルスが次から次へと派生していったというこ
    とだ。とくにA型だ。インフルエンザ・ウイルスの遺伝子はRNAでで
    きている。これが驚くべき連続抗原変異をおこす。増殖速度も異様に速
    い。1個のウイルスが翌日には100万個になる。哺乳類が100万年
    をかけておこしてきた変異がたった1年でおこるのだ。


    鳥インフルエンザのルート
    『人類を驚かす感染症の正体』(宝島社)p59
     2014年、南極のアデリーペンギンから鳥インフルエンザの新型が
    見つかったニュースは、関係者を震え上がらせた。唯一の空白地帯だっ
    た南極にもウイルスが届いていたのだ。これでインフルエンザ・ウイル
    スは全地球にくまなく撒布されていることになった。
     インフルエンザの正体と経路をめぐることは、文明の正体と経路を辿
    ることである。さまざまな推理が乱立してきた。かつてはフレッド・ホ
    イルやウィクラマシンジがそういう仮説をたてたのだが、彗星や隕石に
    よってウイルスが撒き散らされるとも思われていた。そういったなか、
    インフルエンザについてはジョン・バリー『グレート・インフルエンザ』
    (共同通信社)、アルフレッド・クロスビー『史上最悪のインフルエン
    ザ』(みすず書房)、山本太郎『新型インフルエンザ―世界がふるえる
    日』(岩波新書)、NHK「最強ウイルス」プロジェクト『最強ウイル
    ス­―新型インフルエンザの恐怖』(NHK出版)、岡田晴恵『鳥イン
    フルエンザの脅威』(河出書房新社)、外岡立人『豚インフルエンザの
    真実』(幻冬舎新書)などが、かなりヤバイ話を満載している。
     いわゆる風邪についての本も家庭医療本をふくめてかなり出回ってい
    るが、ジェニファー・アッカーマンの『かぜの科学』(早川書房)が詳
    しく、岸田直樹の『誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた』(医学
    書院)が専門家たちに受けている。


     千夜関連書籍
     身近で感染症を知ったという例では、イシス編集学校にデング熱に罹っ
    た者がいた。たいへん優秀な学衆で、チェンマイに住む化粧品クリエイ
    ターだった。当時の症状を聞いたが、高熱・関節痛・発疹のほか、口や
    鼻からの出血がとまらなかったようだ。
     デング熱(dengue fever)はフラビウイルス科に属するデングウイル
    スによるもので(血清型で4種類に分けられている)、このウイルスの
    仲間は黄熱病・西ナイル熱・日本脳炎・リフトバレー熱・ダニ媒介性脳
    炎などを発症させる。いずれも蚊やマダニが媒介する。デング熱はヤブ
    蚊の一種のヒトスジシマカ(タイガー・モスキート)による。
     それでも1970年代までは、デング熱は九ヵ国でしか発症していな
    かった。デングウイルス4種類が発見されたのも東南アジアだけだった。
    それがいまでは100ヵ国をこえる。2014年の夏には東京の代々木
    公園でダンスの練習をしていた若者が発病した。ただちに蚊の退治が徹
    底されたが、わずか2ヵ月で感染者が青森から高知に及んでいたことが
    確認された。
     世界で最も大量の人間を殺してきた野生動物は何か。わかるだろうか。
    第1位は、なんと蚊なのである。第2位は何か。蚊に続くのは人間だ。
    蚊は人間と並ぶ殺戮生物なのである。マラリア、デング熱、黄熱病、日
    本脳炎などで毎年1000万人が死ぬ。これらの感染症は人から人へと
    感染するのではない。必ず蚊が媒介になる。

     蚊(Culicidae)にはナガハシ蚊、イエ蚊、ヤブ蚊、ハマダラ蚊など
    35属、約2500種がいる。1億7000万年前のジュラ紀の化石に
    発見されているのだから、小さな恐竜と言っていい。
     われわれを刺すのはメスである。メスだけが吸血する。それも交尾し
    た直後のメスが産卵に必要な栄養分として血を選ぶようになった。ふだ
    んの蚊が血を必要としているのではなく、オスもメスも花の蜜などで一
    般養分を確保するのだが、メスは卵巣を活性化させるために吸血をする。
    一滴吸えばそれだけで何百個もの卵を産める。気温が15度以上になら
    ないと、蚊は吸血活動をしないこともわかっている。
     どうやって吸うのかというと、まず口吻(極細の針が六本束ねられて
    いる)を皮膚に刺し、タンパク質などの生理活性物質がまじった唾液を
    注入しておいてから(この液によって血小板の凝固反応を巧みにくいと
    める)、毛細血管の血を吸い上げる。人体のほうはこれで小さなアレル
    ギー反応がおこり、血管が拡張して痒くなる(搔いてはまずいらしい。
    冷たいタオルなどを当てるか、ひどいときは抗ヒスタミン薬を塗るかす
    る)。
     よく血液型がO型の者が刺されやすいといわれるが、これについては
    証拠がないらしい(O型説を調査しているグループもある)。それより
    も汗が蒸発するときに汗の中のL(+)乳酸が誘引物質になったり、皮
    膚呼吸による炭酸ガスがその気にさせたり、女性ホルモンの分泌周期が
    原因になったりすることが多いようだ。

     いつのまにか話がぼくの周辺事情や蚊に片寄ってしまったが、本書は
    今日の地球文明にとって感染症がどんな緊急事態をもたらしたかという
    ことを縦横無尽に説明してくれている。せっかくなので、猛威をふるっ
    た新興感染症(エマージング感染症)について、二、三、とりあげてお
    く。
     2014年に西アフリカで発症したエボラ出血熱は、内臓が溶けて全
    身から血を噴き出して死んでいくという悲惨な症状で、死亡率はほぼ9
    0パーセントに達する。治療対策もまったく見つかっていない。
     エボラ・ウイルスは細長いRNAウイルスで、糖タンパク質を鍵にし
    て人間の細胞の鍵穴をこじあける。マールブルグ出血熱の要素や機能に
    似ていた。治療対策が見つからないのは、鍵になる糖タンパク質が細胞
    に入ってくるとき、「おとり」を使っているためで、この巧妙な手口に
    よってウイルス本体を叩くことがなかなか成功しないせいでもあった。
    ザイール株が最も毒性が強く、レストン株はフィリピンからアメリカと
    イタリアに輸出されたカニクイザルの大量死によって発見された。感染
    源はまだ不明だが、熱帯林で果実を貪るオオコウモリが有力視されてい
    る。ちなみにコウモリたちは、100種以上の多様なウイルスを媒介す
    ることで知られる名うての「運び屋」なのである。


    ヒトスジスマカとオオコウモリ
    左はデング熱、右はエボラ出血熱の感染源
    出典:国立感染症研究所ホームページ「ヒトスジスマカ」(国立感染症
    研究所)を加工して作成
     エイズ(AIDS)については、すでに畑中正一の『エイズ』(共立
    出版)を千夜千冊したことがあるが、文明社会に突如として姿をあらわ
    したのは1979年から翌々年にかけてのことだった。最初はその末期
    症状からカリニ肺炎などと呼ばれた。実はHIV(ヒト免疫不全ウイル
    ス)による感染だということがわかった。
     1982年には「スリム病」の名のエイズが、タンザニア国境近くの
    ウガンダ南部で流行した。500人の村人のうちの17人が死に、5年
    後に患者は6000人に達した。
     リュック・モンタニエ、ロバート・ギャロをはじめ、多くの医学者が
    この奇病の原因究明に乗り出した。こうしてひとまずはエイズ・ウイル
    スHIVがつきとめられたのだが(二人はノーベル賞をもらった)、一
    方では各国の研究機関がエイズ・ウイルスに似たもの、すなわち“モド
    キ探索”に一斉に取り組んだ。
     その結果、ミドリザル、マンガベイ、バブーン、マンドリルなどのア
    フリカ産の霊長類の大半、および牛・家猫・ライオン・馬・羊・ヤギな
    どに同類のウイルスがあることが判明した。マカクザルから摘出された
    ウイルスもHIVに酷似していたため、こちらはSAIDS(セイズ)
    と名付けられ、ウイルスのほうはSIVと命名された。
     やがてロスアラモス国立研究所のチームが、ツェゴチンパンジーのS
    IVが突然変異をおこして人間感染型のHIV︲1型に変わったのでは
    ないかという仮説を発表した。そういうことがおこったのは1950年
    前後のことだという。
     なぜこんなことがおこったかは推測するしかないけれど、おそらくは
    チンパンジー狩りをしているうちに、この異常な転移と変異が生じたの
    ではないかと予想されている。「ハンター(狩人)仮説」と呼ばれる。

     エイズの症状は恐ろしい。最初は全身の倦怠感、体重の急激な減少、
    慢性的な下痢、極度の疲労、帯状疱疹などが発症し、しだいに過呼吸、
    めまい、発疹、口内炎、発熱などを併発するため、いったんは風邪とま
    ちがえるほどなのだが、この時期の自覚では医者もお手上げなのだ。
     やがてCD4陽性T細胞の減少とともに、ニューモシスチス肺炎、カ
    ポジ肉腫、悪性リンパ腫、皮膚癌などが次々におこり、悪性腫瘍やサイ
    トメガロウイルスによる身体異常が目に見えてくる。HIV感染細胞が
    中枢神経系組織に浸潤してしまったのだ。これが脳に及べば認知症や精
    神障害になる。
     いまでは23にのぼるエイズ指標疾患がリストアップされている。カ
    ンジダ症、サルモネラ菌血症、壊疽、クリプトコッカス症、活動性結核、
    反復性肺炎、原発性脳リンパ腫などだ。これほど恐ろしいエイズなのだ
    が、潜伏期間が十年近いため、気が付きにくい。感染源となりうる体液
    は血液・精液・膣分泌液・母乳などで、これも警戒がしにくい。

     疫病や厄災が世界的に広がることをパンデミック(pandemic)という。
     これまで感染症パンデミックで歴史上最大の犠牲者を出したのは、6
    世紀の「ユスティニアヌスの疫病」である。ペストのことだ。約1億人
    が死んだ。第1位が1346年から4年間に猛威をふるった黒死病(ペ
    スト)で5000万人が死に、第3位は1918年からの2年間でパン
    デミックになったスペイン風邪で、約4000万人が犠牲者になった。
     そして第四位がエイズなのである。すでに3600万人を突破してい
    る。ロック・ハドソン、アンソニー・パーキンス、フレディ・マーキュ
    リーなどのスターも倒れていった。ちなみにパンデミック第13位に、
    2009年の28万人を失った豚インフルエンザが入っている。
     それでもエイズ対策はそこそこ進んでいて、いま先進地域でエイズ患
    者がふえているのはどうやら日本だけになった。なぜなのかははっきり
    しないけれど、日本はスリーパーエージェント(潜伏ウイルス)に対す
    る警戒心が極端に甘いからだという説が有力だ。


     感染症パンデミック死亡者比較リスト
    『人類を驚かす感染症の正体』p43
     スリーパーエージェントで最も厄介なのはヘルペスである。ヘルペス
    ・ウイルスはいつ暴れだすのかがわからない。宿主の状態を見きわめて
    いるとしか思えない。疲労、ストレス、紫外線、妊娠、病気がち、免疫
    力の低下などを見計らって、てきめんにヘルペスは動き出す。
     子供のころに罹る水痘(水疱瘡)、口のまわりに水ぶくれができる口
    唇ヘルペス、陰部が痒くなる性器ヘルペス、加齢につれて脇腹や背中に
    激痛が走る帯状疱疹、いずれもヘルペス・ウイルスの悪さだ。なかでも
    HSV︲1(単純ヘルペス・ウイルス1型)は、感染すると三叉神経節
    に潜伏して、じっと出動の機会を待っている。
     ヘルペス・ウイルスは2億2000万年前に、哺乳類が出現する以前
    に登場したとみられている。真核生物とともにスタートを切って、変異
    をとげながら動物間にヨコ水平に広がっていった。そのうち7000万
    年前に分化をおこして、その一部が人間を好み、その最も狡猾なウイル
    スが三叉神経節に隠れることを学んだのだろう。
     ぼくの友人や知人も三人がヘルペスに悩まされた。なかには有名な写
    真家もいる。なんとも名状しがたい鈍痛に苦しむようだ。帯状疱疹にか
    かると、自分の皮膚が異質なものに冒されているという奇怪な実感に耐
    えられなくなると言っていた。しかも日本はワクチン対策がかなり遅れ
    ている。抗ヘルペス薬「アシクロビル」のこともあまり知られていない。
    感染症の歴史は、いまや生物学の歴史に介入してしまったのである。


     Leprosy.jp ハンセン病制圧活動サイト
     世界のハンセン病制圧事業に取り組んでいる日本財団(笹川陽平会長)
    からの委託で、国内外のハンセン病の歴史と現在を伝えるWEBサイトを
    松岡事務所が総合監修している。ハンセン病は、らい菌による慢性の感
    染症で、皮膚や神経に症状があらわれる。古来より感染者は差別や偏見
    に苦しんだ。

    ⊕ 目次情報 ⊕

    ∈∈ まえがき―「幸運な先祖」の子孫たち
    ∈  序章 エボラ出血熱とデング熱―突発的流行の衝撃
    ∈ 第1部 二〇万年の地球環境史と感染症
       第1章 人類と病気の果てしない軍拡競争史
       第2章 環境変化が招いた感染症
       第3章 人類の移動と病気の拡散
     
    ∈ 第2部 人類と共存するウイルスと細菌
       第4章 ピロリ菌は敵か味方か
       第5章 寄生虫が人を操る?
       第6章 性交渉とウイルスの関係
       第7章 八種類あるヘルペスウイルス
       第8章 世界で増殖するインフルエンザ
       第9章 エイズ感染は一〇〇年前から

    ∈ 第3部 日本列島史と感染症の現状
       第10章 ハシカを侮る後進国・日本
       第11章 風疹の流行を止められない日本
       第12章 縄文人が持ち込んだ成人T細胞白血病
       第13章 弥生人が持ち込んだ結核

    ∈ 終章 今後、感染症との激戦が予想される地域は?
    ∈∈ あとがき―病気の環境史への挑戦
    ∈∈ 主要な参考文献

    /Ishi, Hiroyuki
     石 弘之  1940‥‥ 東京/東京大学卒業後、朝日新聞に入社。ニュ
    ーヨーク特派員、編集委員などを経て退社。国連環境計画(UNEP=本部ナ
    イロビ)上級顧問。96年から東京大学大学院教授、ザンビア特命全権大
    使、北海道大学大学院教授、東京農業大学教授を歴任。この間、国際協
    力事業団参与、東中欧環境センター理事(ブダペスト)などを兼務。英国
    ロイヤルソサエティ(RSA)会員。国連ボーマ賞、国連グローバル500賞、
    毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。
     
    https://1000ya.isis.ne.jp/1655.html 松岡 正剛《千夜千冊》
    (20210718)

  • 感染症について、分かりやすく解説している本。人間は30億年生き続けているのと同じようにウイルス(細菌)も幸運な存在、という表現でコロナ前から感染症は人間と深く関わる存在であることを認識した。実際鎌倉の大仏は、天然痘の鎮静を願って造られた。

  • 3月10日新着図書:【人類と感染症にまつわるさまざまな話題を100点超の図版を使って紹介しています。新型コロナウイルスの最新の知見も満載されています。】
    タイトル:図解感染症の世界史
    請求記号:493.8:Is
    URL:https://mylibrary.toho-u.ac.jp/webopac/BB28178467

  • 人類と感染症の歴史を、図や表と共に分かりやすく解説してくれる本。人類の発展と共に、さまざまな感染症が猛威を奮ってきたが、完全制圧できたのは天然痘のみということ。世界史なので、史実が分かりやすく伝わる本だが、じゃあどうすればいいの?という部分は分からない。(でも世界史という本なので、そこは仕方ないと思うけど、対策を知りたくなる)

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著者プロフィール

1940年東京都生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞入社。ニューヨーク特派員、編集委員などを経て退社。国連環境計画上級顧問。96年より東京大学大学院教授、ザンビア特命全権大使、北海道大学大学院教授、東京農業大学教授を歴任。この間、国際協力事業団参与、東中欧環境センター理事などを兼務。国連ボーマ賞、国連グローバル500賞、毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。主な著書に『感染症の世界史』『鉄条網の世界史』(角川ソフィア文庫)、『環境再興史』(角川新書)、『地球環境報告』(岩波新書)など多数。

「2022年 『噴火と寒冷化の災害史 「火山の冬」がやってくる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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