なぜ働いても豊かになれないのか マルクスと考える資本と労働の経済学 (角川ソフィア文庫)
- KADOKAWA (2025年1月24日発売)
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感想 : 4件
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784044008451
作品紹介・あらすじ
ブラック企業や不安定雇用など、労働をめぐる状況はなかなか良くならない。そんな中にあって私たちが、働くことを拒否するどころか、むしろより強く仕事を求めてしまうのはなぜか? 資本主義社会の中で人が仕事を求めるのには、3つの力「経済外的な強制」「貨幣の力による強制」「生産過程の技術的変容」が作用している。人が豊かに生きる新たな社会を構築するため、賃労働について書かれたマルクスのテキストを解読する!
感想・レビュー・書評
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マルクス『資本論』の第1巻の内容を、著者は読者にわかりやすく解説して、いかに労働者階級の人々を資本主義社会から解放していくのかを教授する。資本主義社会では、物象の力、とくに貨幣の力が強く、現在、人々は貨幣の力に支配されていると指摘する。そんな現代社会では、ブラック企業など人間を一方的に搾取し、生活がままならない状態が蔓延っている。このように、労働者の立場が弱い現状から脱却するためにはどうすればいいのかを、本書からそのヒントを得られる。
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序章 - マルクスの方法
- マルクスの理論活動の目的
- マルクスは、世界を解釈するだけでなく変革するための実践的な哲学を追求した。
- 彼の主著『資本論』は、変革の実現を目指しており、著作の完成に全力を注いだ。
- 哲学と変革の関係
- マルクスは、従来の哲学が世界を解釈するだけのものであると批判し、その実践的な意義を強調した。
- 「青年ヘーゲル派」の批判が単なる理論的批判に留まることに対して、実際の社会関係へのアプローチを求めた。
経済学批判の意義
- 『資本論』の目的
- 『資本論』は、資本の動向を明らかにするだけでなく、既存の経済学を批判することも目的としている。
- 経済学的カテゴリーを歴史的形成物と捉え、資本主義の本質を解明しようとした。
- マルクスの批判の焦点
- 既存の経済学が自明視している概念(例:価値、資本)を歴史的に分析し、資本主義が脱史的形成物であることを示した。
- マルクスは、経済学的カテゴリーが特定の条件下で形成されたものであることを理解することが重要であると主張した。
労働の概念
- 労働の定義
- 労働は、人間が自然との物質的代謝を意識的に媒介し、制御する行為である。
- 労働には、労働対象と労働手段が必要であり、これらを組み合わせて生産物を生み出す。
- 意識的行為と労働の自由
- 労働は、意識的な目的設定とその追求を伴う行為であり、人間の個性を発展させる機会を提供する。
- 労働が自由であることは、労働者が自らの目的を自由に設定し、追求できることを意味する。
商品と価値
- 私的労働と商品
- 私的労働は、社会的分業を成立させ、労働生産物を価値物として扱うことが強制される。
- 商品は、使価値と価値という二つの属性を持ち、その価値は社会的必要労働時間によって規定される。
- 価値の表現と価格
- 商品の価値は、他の商品の価値と比較することで表現され、価格として市場で示される。
- 価格は、労働生産物の価値を目に見える形で表現するために必要不可欠である。
貨幣の役割
- 貨幣の生成
- 貨幣は、商品交換を行う際に必要な値札付けから生まれる。
- 価値の表現が統一的に行われることが重要であり、共通の等価物として金が選ばれ、貨幣となる。
- 物象化と物神崇拝
- 商品生産関係において、労働生産物が社会的な力を持つことから、物象化が生じる。
- 物象化された関係が人々の意識や欲望を変化させ、資本主義社会における労働者の立場を形成する。
労働力と資本
- 労働力の価値
- 労働力は、資本家によって購入され、使用されるが、その価値は労働力の再生産に必要なコストによって決まる。
- 資本家は、労働者からの剰余価値を獲得することを目的とし、労働者はその関係の中で自らの労働力を提供する。
- 資本主義における労働者の立場
- 労働者は、自らの労働力を売ることを強いられ、無所有者として生活することになり、労働条件が悪化することがある。
- 資本主義では、労働者は自発的に剰余労働を行うことが求められ、その結果、剰余価値が生まれる。
著者プロフィール
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