- KADOKAWA (2025年3月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784044008512
作品紹介・あらすじ
喜怒哀楽を操り、共同体を再生させ、時に神や亡霊をも呼び出す舞台芸術の魅力は如何に生み出されるのか。ギリシア悲劇を範とし、オペラやバレエへと拡散していく西洋演劇史を踏まえつつ、能、文楽、狂言、歌舞伎といった日本の伝統芸能や中国の京劇、バリ島の舞踏も取り上げ、その真髄を鮮やかに描き出す。自らも演出家として活躍した演劇研究の泰斗が、歴史・理論・実作を一本の線で結ぶ入門書の決定版。
解説・平田オリザ
*本書は、1996年に放送大学教育振興会より刊行された『舞台芸術論』を再編集し、改題のうえ文庫化したものです。
【目次】
はじめに
第1章 演劇 この多様なるもの
第2章 劇場の系譜
第3章 劇場とその機構――システムとしての劇場
第4章 演じる者の系譜
第5章 稽古という作業
第6章 劇作の仕組み
第7章 悲劇と運命
第8章 喜劇と道化
第9章 近代劇とその対部――前衛の出現
第10章 東洋演劇の幻惑(一)
第11章 東洋演劇の幻惑(二)
第12章 前衛劇の地平
第13章 理論と実践――世阿弥の思考
第14章 オペラとバレエ――新しいキマイラ
第15章 舞台芸術論の現在
おわりに
解説
参考文献
感想・レビュー・書評
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「舞台芸術入門」要約
概要
本書はギリシア悲劇から日本の伝統芸能、現代劇に至るまでの舞台芸術の多様な側面を解説する入門書である。歴史的変遷を踏まえつつ、舞台芸術の本質や各ジャンルの特有要素について考察している。
主要テーマと重要な内容
現代日本における舞台芸術の状況と課題
観客の分断: 現代日本の舞台は観客が極端に縦割りになり、共通の話題となる舞台が少ない
批評の公共性の曖昧さ: 文化や芸能では公的な批評の主体が曖昧で、担当者の主観的情報が拡散しやすい
海外作品の受容: 音楽を伴うオペラやバレエは言葉の壁を超えて受容されやすいが、純粋な演劇作品では翻訳の質や文化的背景の理解が重要
ヨーロッパ演劇史と舞台機構の変遷
劇場空間の進化: 古代ギリシアからルネサンス、近代へと変化した劇場空間(プロセニアム・アーチの出現、オーケストラ・ピットの配置など)
バレエの成立: 17世紀フランスの宮廷バレエがオペラと並ぶ舞台芸術として確立
パリ・オペラ座の運営: 年間約280公演、75万人動員、1400人の契約スタッフを持つ大規模な組織
演出と俳優
演出家の役割: 作家によって想像された戯曲の生命を舞台上の現実的生命に転換させる重要性
俳優の集客力: 公演の集客には俳優の知名度や人気が考慮される現実
稽古のプロセス: スタッフ会議から本読み、立ち稽古、舞台稽古、初日に至る制作段階
悲劇と喜劇の考察
アリストテレスの悲劇論: 『詩学』における悲劇の定義と構成要素(筋、性格、思考、言葉、歌、見せ場)
能における「よき能」: 世阿弥の『風姿花伝』における定義(観客を幻惑する面白さ、珍しい風体の重要性)
悲劇の普遍性と多様性: 多くの文化や社会に見られる表現形式だが、「人間」の捉え方は異なる
喜劇と道化の役割: 人間や社会の歪みに対する批判や風刺として機能
能と現代演劇の接続
レヴィ=ストロースの能への関心: 構造主義人類学者による日本伝統芸能への注目
クローデルの能体験: フランスの詩人・劇作家が日本滞在中に能(『道成寺』『翁』『弓八幡』『羽衣』『角田川』など)を鑑賞し創作に影響
アルトーとバリ島の演劇: パリ植民地博覧会で見たバリ島の演劇から「残酷劇」理論に影響
現代演劇における「語り」の復権: 近代劇が排除してきた「語り」の要素が再び重要視される傾向
結論
舞台芸術は歴史を通じて多様に発展し、各時代・文化が特有の表現形式を生み出してきた。現代ではグローバルな視点を持ちながら伝統芸能を見直し、新たな創造へつなげる試みが重要である。また、劇場空間、演出、俳優、観客、批評といった要素が相互に影響し合い舞台芸術を形作っている。クローデルやアルトーが日本の能やバリ島の演劇から影響を受けた事例は、異文化交流が新たな芸術創造の源泉となることを示している。
著者プロフィール
渡邊守章の作品
