改訂 雨月物語 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044011024

作品紹介・あらすじ

巷に跋扈する異界の者たちを呼び寄せる深い闇の世界を、卓越した筆致をもって描ききった秋成の本格怪異小説の数々。崇徳院が眠る白峯の御陵を訪ねた西行法師の前に現れたその人は…(白峯)。男同士の真の友情は互いの危機において試された(菊花の約)。戦乱の世に7年もの間、家を留守にした男が故郷に帰って見たものは…(浅茅が宿)。男が出会った世にも美しい女の正体は蛇であった(蛇性の婬)など、珠玉の全九編。

感想・レビュー・書評

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  • 現代語訳と原文、解説がセットになってるので、おても読みやすかった。原文と比較すると、現代語訳ではかなり文章を補ってくれてるのが分かる。

    内容も、全体的には怪奇寄りだけど、全編パターンが違うので飽きない。1篇が短いのも◎。

  • 貧福論。金は本来倫理とは関係ない。経済は国家の基本である。富める者は必ず心がねじけている、富める者の多くは愚者である、というのは間違い。孟子の言うように、一定の生業・財産のないものは定まった善心もない。▼春の夜の闇。妖しくも美しい。上田秋成『雨月物語』1776 読本
    ※溝口健二。映画、雨月物語。

    京の水で顔を洗うと、色白になるって話だぜ。十返舎一九『東海道中膝栗毛』1802

    賢い者、愚な者。邪しまな者、正しい者。貧しい者、豊かな者。貴い者、賤しい者。だれも風呂に入るときは裸になり、産まれたときのように自然の姿になる。欲垢と梵悩を洗い清めれば、旦那も下男もどれがどれやら見分けがつかない。式亭三馬『浮世風呂』1809

    滝沢馬琴『南総里見八犬伝』1814

    ※化政文化

  • 安永5年(1776年)刊行、江戸時代中期の不思議短編九編現代訳版。讃岐に流された崇徳院天皇の怨霊、映画「雨月物語」の基になった浅茅が宿。能の演目道成寺にも登場「蛇性の婬」。栃木大平山大中寺を舞台人間の肉を食う坊主「青頭巾」など。ホラー要素よりも当時のもののけ感をファンタジー的に読めました。

  • てこなもいそらもここからか。道成寺もここか…

  • 内田樹さんが、たしか村上春樹さんの書評??書いてるのを読んだときに、

    雨月物語の吉備津の釜との関連を挙げていた気がして、それで気になって読んでみた。

    もともと小学校の時に読んだことがあって(もちろん小学生用に訳されているやつね。)読んだ気になってたんだけど、まぁ年月を経て読んでみるとまた違った見え方がして面白いというか。


    多分、小学生の頃は「ちょっと怖い怪談昔話」くらいに読んでいたと思う。もっと子供を怖がらせる手法にとんだ現代の怪談話はもっとたくさんあったから、雨月物語が特別怖い話なわけではなかった。


    今読んでみるとどうだろう。村上春樹になぞらえて考えながら読んだのもあるかもしれないけど、

    「あっちの世界」と「こっちの世界」のつながりが曖昧で、それをふと超えてしまった日常の話、というようにとらえたって感じかなぁ。

    最近、思うのよね。そんなに「あっち」も「こっち」も隔てのあるものではないと。それは「死」を軽く考えてるとか、そういうわけじゃなくって、やっぱり「こっち」で生きてる人が、「あっち」に行ってしまうことは大きなことで、どんなに灯が潰えてしまいそうでも、そこに足を踏み入れそうになっている人に、簡単に行ってほしくはない。二度と「こちらの姿」では会えないというのは、大きなこと。

    ただ、「あっち」も「こっち」も、分断された世界なんかじゃなくて、ふと踏み入れられるような身近さを、近頃感じる。

    だから、「そういう話には慣れているの」という意味じゃなくて、もっと自然に「そういうこともあるわよね」という感じで、このお話を読んだ気がしました。

    とりわけ夜。「あっち」と「こっち」が混ざり合って、この世ならざるものがふとそばにいると感じるあの感覚。

    私は、幽霊的な意味で金縛りを信じてはいないのだけど、小さいころからよく金縛りにはあっていて、あれは脳が目覚めてるのに、体が眠っている感覚だから、無理やり体を動かそうとすると元に戻ったりとか、そういうのは普通にあったのよね。あの感覚「トレインスポッティング」で、確か主人公が薬でトリップするときに、ベッドに沈んでくようなシーンがあったんだけど、あれに似てる。ただあのまどろみの中で、普段とは違う金縛りの感覚で、おなかから太ももあたりがずしって重くなって、何か視線のようなものを感じる時とか、耳鳴りがするときとか、「あ、これは目を開けちゃダメなやつだ」とか、思う時があったのを思い出す(今もないわけではないけれど)。

    幽霊とか見たことないし、そのくせ嘘だってわかっていても、怪談話とか大嫌いだし、「世にも奇妙な物語」とか未だにトラウマの人間だし、「幽霊が見える」という知り合いがあんまりに胡散臭いので、「そういうのって自分の見えたものを都合のよいように合理化する一種の思い込みだよ」とか思う人間なのだけれど、

    「見えないけどいる」という感覚や「その人を離れて場所に残る思いの強さ(私は多分これを幽霊と呼んでると思う)」は、信じてる。

    あら。オカルトみたいなレビューだな。

  • 戸時代に書かれた古典。
    一度読んでみたいと思っていたので読めてよかった。根性がないので現代語訳を読んだが。
    怪異テーマにした短編集もので、幻想小説とも言えるかもしれない。

    魚になって水中で遊ぶ僧、遊女の容姿を水面に映った桜の影にたとえるなど清清しさを感じさせる一方で、恨みや怪異、血生臭さを併せ持っていて個人的に好きな雰囲気だった。
    和の闇を感じさせてくれる。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「幻想小説とも言えるかもしれない。」
      人の業と言うか情念と言うか、当時の人には、もっと深く心に残ったんじゃないかと。勝手に思っています。
      そ...
      「幻想小説とも言えるかもしれない。」
      人の業と言うか情念と言うか、当時の人には、もっと深く心に残ったんじゃないかと。勝手に思っています。
      それから「春雨物語」も人間臭くて好きです。。。
      2013/03/28
    • サイさん
      なるほど……
      江戸時代の人はきっと現代に生きる私よりもきっと繊細な感受性があったのでしょうね。


      春雨物語はちょっと読んでそのまま本を返却...
      なるほど……
      江戸時代の人はきっと現代に生きる私よりもきっと繊細な感受性があったのでしょうね。


      春雨物語はちょっと読んでそのまま本を返却してしまったような気がしますので、また読み返してみます。
      2013/09/07
  • 現代語訳版を読み終わりました。
    色々な昔話が読めて、興味深かったです。
    妖怪が出てきたり、人の欲の深さなどをテーマにした話が、普段読んでいるジャンルとは全く違うので新鮮な気持ちで読めました。

  • なにをきっかけに読もうと思ったのか忘れてしまった.
    現代語訳の部分だけ読了.あとで原文も見てみたが訳を読んだ後ならすんなり読めそう.源氏物語とちがって大衆の読み物だったわけだし.
    全9篇の短編からなる.どれも幽霊が出てきたり,呪いがかかったり,大変.
    そしてどれもが強い印象を残さずにはいられない.濃い.

  • 元祖奇怪小説的な。

    後半は古文の教科書読んでる気分だった。

    蛇性の淫はなかなか恐ろしかった。

  • 日本最古のホラー小説。
    ホラー好きなら一読しておかねばと購入。
    現代語訳付きなので、負担なく読むことができた。というか三連休のうちに読了。
    原文も、注釈が(現在も使われるような言葉にまで)入っているので、現代語を読んですぐ原文を読むと、古文苦手でも頭にすっと入ってくる。
    1776年刊行。時代背景もあってか、仏教と神様の信仰が厚かった時代を感じる。
    民俗学を勉強してから読むと、その世界をより楽しめるかも。あとはホラー/怪談愛があれば面白いし、修めておくべき一冊。

    鬼とは、死者の霊を指すこと。など
    樹神と書いてこだまと読むらしい。もののけ姫!

    描写は全体を通して、荒廃した家の様子(床の穴からススキが生えているなど)や旅をして楽しむ風景など、自然の描写が丁寧で頭に情景が浮かびやすい。

    注釈を読んでいると、元となった話があってそれを日本風、当世風にしているように思うが、著者の上田秋成の主張も盛り込まれているようだった。特に「貧富論」はそれがわかりやすい。財宝を軽んじて名誉を重んじる=そのために戦をして命を軽んじている。 という話にはハッとするものがあり、今もある「戦国時代の武士は忠義心があってかっこいい」という信奉に一石を投じている。儒教に反抗的という解説を読んで十分に理解できた。

    とはいえ、一つ一つの話を見ると、そんなことで死んだの?命を大事にしなよ…と思うものや、夫が帰るのをまって死んでしまった妻、浮気されたうえ駆け落ちされて怨霊になってしまった女など、救われてほしい人が救われない。でも世の中こういうもの、ってことかなと思った。しかし、解説の中で、死んで成仏することによって辛い現世から解放されたという意味のことが書いてあって、そう読むのか!と思ったものもあった。

    あと、昔の歴史書は政治的敗者の怨霊が歴史の予告をするという形式をとっていると。へえ~!

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著者プロフィール

大阪府生まれ。1734(享保19)年~1809(文化6)年。江戸後期の読本作者。歌人、茶人、俳人、国学者でもある。『雨月物語』は5巻9篇で構成され、1776(安永5)年に出版された。

「2017年 『雨月物語 悲しくて、おそろしいお話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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