ひとりの夜を短歌とあそぼう (角川ソフィア文庫 D 102-2)
- 角川学芸出版 (2012年1月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044054038
作品紹介・あらすじ
私かて声かけられた事あるねんで(気色の悪い人やったけど)←これ、短歌? 短歌です。女優、漫画家、高校生――。異業種の言葉の天才たちが思いっきり遊んだ作品を、人気歌人が愛をもって厳しくコメント!
感想・レビュー・書評
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女優や漫画化、絵本作家など異業種の言葉の天才たちが詠んだ短歌を、人気歌人がコメント。
様々な職業・年齢の方々が一つのテーマに対して詠んだ短歌に対し、歌人の穂村さん・東さんと雑誌編集者の沢田さんがコメント・批評をするという形式の歌集です。
それまでに積み重なったいくつもの歌から、詠み人の人間性まで丸裸にされてしまうようなコメントが、興味深いとともに少し怖い。言葉のプロフェッショナルってやっぱりすごい。
「べたべた」や「自慢する」、「芽きゃべつ」といった一風変わったお題や、特定のホラー映画などを詠むという題が出てくるのも面白いです。
読んでいて思ったのが、あるテーマに対して感じる事というのは人それぞれ違ってしかるべきだと思うのですが、それでも詠まれている内容にはどこか共通する本質のようなものがあって(例えば「芽きゃべつ」に対する歌だったら集団性のようなイメージ、内に何か秘めている印象など)、そこに共感したりしているのではという所。
実は短歌というのはイデアにとても近い所にある文化だったりするのかななどと感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
漫画家、翻訳家、学生など、様々な世代、職のひとが1つのお題で短歌を詠む。
意外な言葉遣いで思いがけない風景を描きだす。
文庫版あとがきで、穂村氏(歌人の穂村弘氏。この短歌会の選者のひとり)が、漫画家・吉野朔実さんの歌を引いてコメントしているが、「その後」のことを考えると、なんだかぐっとくるものがある…。
(コメントが書かれたのは平成23~24ごろ) -
短歌とは近寄りがたしと思えども この本読むとあら楽しそう
「猫又」という同人会の主催者が 選首をまとめてコメントしてます
会員に吉野朔美氏在籍中 コミックの如く味のある作
吉野氏の歌のお勧め以下のもの 深いワールド彼女ならでは
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「愛こめてどうか不幸であるように 君無き春の我無き君へ」(吉野朔美)
この歌もびっくりしたけど気になった 聞けば作家は女子プロレスラー
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「噛みつきとチェーンと棒と反則は あたしの技さ文句は言うな」 (プロレスラー尾崎魔弓)
恥ずかしいことほど歌のいい材料 照れ回っては上達はばむ
五・七・五・加えて七・七そのリズム 日本古来のすてきな宝
今回は短歌調子でレビュー書き いつかは身近にできるといいな -
歌人、穂村弘はこんなひとなのか!
と、思いながら読んだ。
ゆるっとしたエッセイしか知らなくてごめんなさい。
メール短歌会「猫又」なるものの同人たちの短歌を、穂村さんや「猫又」主宰の沢田さん、穂村さんと同じく「かばん」所属の東さんが講評している本。
短歌を語っている穂村さんが意外で意外で…いえ、こちらが本職なんですけど、エッセイの感じと違っていて、同姓同名の別のひと?!と思うほど、笑
毎回お題があるのですが、「芽きゃべつ」の回で豆苗やアーティチョークを知らなくてからかわれる穂村さんにホッとしました。
こんなめにきみを会わせる人間は、ぼくのほかにありはしない(穂村弘、p.164) -
う~ん、やっぱり面白いっ!
私はこのシリーズ(『短歌はじめました。』『短歌があるじゃないか。』。執筆者はこの本と同じ)で短歌を読み始めた人間なので、その続編にあたる本作が出たときは「また『短歌~』シリーズが出たんだ! やったーーー!」と心の中で一人歓声を上げたくらいなのである。
(この本に収録されているものと『短歌があるじゃないか。』で収録されている内容が、半分ほど被っていると知ったのは、もう少し後のこと)
短歌同人・「猫又」メンバーの提出作品を、主催の沢田さんを進行役に、穂村・東の両氏が批評するという体制のこの本。
相変わらず、よく言えば肩の力が抜けた、悪く言えば脇が空きすぎな短歌たちが、にぎやかにそして時に真剣に評されていく様子がたいへん面白かった。
たとえばこんな歌。
君と乗る深夜のタクシー窒息しそう閉じ込められた好き好き好き好き 本下いづみ
いいでしょう? どれもこれもそれらもね ほんのわたしの あれ なんですわ 平田ぽん
君の字がやけに綺麗で風鈴の音も忘るる残暑のころに 清野ゆかり
全体的に、プロの歌のような「完成度」はそこにないものの、伸び伸びとした印象を受け、読んでいるうちに同人それぞれの性格も見えてきて、大変親しみやすい。
穂村・東両氏の的をついた批評も、歌の「読み」にぐいぐい分け入ってくれて、歌を読む可能性の大きさを感じる。穂村さんがドライ、東さんがウエット、と作風が正反対なことも、批評に良く作用していると思う。進行役の沢田さんのツッコミの上手さも○、です。 -
ひとりの夜を短歌とあそぼう。穂村弘さんと、東直子さんは、大好きな歌人。おふたりの、短歌だけでなく、エッセイや小説にあふれる、「言葉への愛」つまりは人間への愛を、勝手に受け取っています。31音にこめられた想いを、おふたりがいろいろ読み解いていく様はスリリング。日常の皮を一枚一枚はがして最後に残る人間性までも見透かしているかのようです。歌は人なりって感じかなぁ。
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【展示用コメント】
短歌が作りたくなる!
【北海道大学蔵書目録へのリンク先】
https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2001751962 -
歌人が何を考えているのか、少しだけ垣間見ることができた気がする。
一般的な言葉のルールや暗黙の了解を、絶妙な距離感で破るのがいいのかな。
ちょっと短歌を詠んでみようかと思った。 -
例えば、梅干しの種には毛が生えていることとか。そう言われればそうなのだけど、言われるまで忘れていることを掬いとってくれる短歌にハッとさせられる。このシリーズを読むのは二作目なのだけど、詠み手の個性や特徴が分かるようになってきて、自分のお気に入りの方が見つかるのもまた楽しい。タイトル通りひとりの夜に本作を読むと、心がしんと静まりかえって、温かいのだけど少し寂しくなりそう。でもそれも含めてとっても良かった。