神曲 煉獄篇 (角川ソフィア文庫)

  • 角川学芸出版
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本棚登録 : 70
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (425ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044069087

作品紹介・あらすじ

地獄を抜けたダンテは現世の罪を浄める煉獄の山に出る。罪の印である七つのPを額に刻まれ、地上楽園である山頂を目指す−−第2部。「父・逸雄が挑んだ全人類の永遠の文化財」(三浦朱門/本書エッセイ)

感想・レビュー・書評

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  • パンデミックの影響で在宅テレワーク時代が到来し、往復3時間の通勤から解放。
     自分時間を持て余す幸福なライフスタイルを信じて疑わなかったにも関わらず、フタを開けると忙しすぎて読書どころかランチの時間すら取れない有様。。。

     おかしい。。。明らかに何かが間違っている。。。

     考え抜いた挙句、「これまでの度重なる罪過のせいで天の怒りをかっているのだ」と結論。
     ああ、もはやダンテの『神曲(煉獄篇)』にすがるしかない。

     くだらない前置きはこの程度にして、『神曲(煉獄篇)』の感想を手短に表現すると、地獄篇以上に隠喩表現がふんだんに盛り込まれており、その一つ一つが教養の塊。同時に非常に示唆に富みます。
     また一方で、ダンテ個人も(ある種の)罪の呵責を受ける特殊なパートだといえます。

     「私は歌おう、ひとのこころが浄められ
      天上へのぼるにふさわしくなるところを、
      その第二の王国のことどもを」

     地獄を出て煉獄に達したダンテとウェルギリウスは、頂にある地上の楽園へ歩を進めます。

     「煉獄」という言葉からは何か地獄に似たおどろおどろしさを感じてしまうかもしれません。
     しかし原典でのこの単語の意味は「浄罪」にあたります。つまりは天国にのぼる資格はあるものの、なおも穢れを抱えた者たちがこれを浄める場と位置づけられます。

     地獄は非常に複雑な構造をしていましたが、煉獄はそれよりもシンプルです。
     全体は円錐形の山で、頂上に向けてらせん状の環道がはしっています。
     そしてその道すがらで、穢れを抱えた者たちが浄罪のための呵責に耐えています。

     彼らの罪は7つで、それぞれ 色欲、大食、貪欲、懶惰、情怒、嫉妬、傲慢 がそれにあたります。映画やアニメでよく聞く「7つの大罪」とはこれのことですね。

     ダンテはこれらの罪を抱えた者たちと会話を交えながら、やがて煉獄の頂である地上の楽園に至るわけですが、そこで交わされる会話や目の当たりにする現象は『地獄篇』以上に隠喩に富み、注釈なしでそれらを理解するためにはかなりの教養が求められると感じました。

     例えば頂に近いある環道で、ダンテは貪欲の罪の呵責に耐える法王アドリアーノ五世に出会います。彼を憐れみ、また敬意を表してひざまずこうとするダンテに法王は次のように檄を飛ばします。

     「兄弟!足を延ばして起ち上がれ!・・・、君がこれまでに「人は娶らず」という神聖な福音書の言葉を聞いたことがあるなら、わしの言う意味がよくわかるはずだ。」

     この「人は娶らず」は『マタイ伝』におけるイエズスの言葉の引用ですが、法王の真意はそれに続く「そもそも神は死せるものの神にあらず、生くる者の神なり」にあるとのこと。
     生き人であるダンテこそ神より祝福されるべきとの示唆が、そこにはあります。

     このように示唆に富んだ表現が『煉獄篇』にはふんだんにちりばめられています。
     なお、角川ソフィア文庫にはこれらが事細かに注釈として添えられているので、それを読んでるだけでも面白いと感じました。

     そして煉獄の頂にいたったダンテは、神の使者ベアトリーチェとの邂逅を果たします。
     彼女はダンテが愛したといわれる女性で、一言も言葉を交わしたことのない彼女を、ダンテは終生慕い続けたといわれています。
     言葉を交わしたこともない女性に対するこれほどまでの思い入れについては異常さを感じなくもありませんが、ダンテがそれほど彼女の篤信に惹かれていたということでしょう。

     ここでベアトリーチェはダンテを激しく責め立てますが、この出来事をあとがきでは「ダンテの特殊な罪、ベアトリーチェに対する罪の浄め」と表現しています。

     うーん、やっぱり異常。。。
     

     ある意味ダンテの内面表現がふんだんに織り込まれているといえる『神曲(煉獄篇)』は、様々な示唆と教養に富む、とても興味深い1冊と言えると思います。

  • 煉獄のイメージがよくわからない。地獄編よりは穏やかだった。それにしても、このイマジネーションを持続できるのはすごい。

  • 地獄もそうだったが、煉獄も主にトマス・アクイナスの神学に倣って描いている。伝統的な聖歌や聖書のワンシーンで7つの徳を鮮やかに戯画的に描くことで、煉獄の各場で償われる罪がどういうものかがわかる仕掛けになっている。訳文は変な文語調の解りづらいものではなく、平易で読みやすい。またカトリックの聖人を「聖~」「~上人」と意識的に呼んでいることなど、カトリック信徒への最低限のリスペクトも感じられていい。

  • 飽きてきた。そもそも煉獄って概念が好きになれない。大半の人はここに落ちて救いを求めて頑張るわけだが、それだと現世と同じだよね。それでチートがあるのかw

  • むつかしいむつかしい。ファンタジーでも馴染みのある「七つの大罪」が軸に進む分読みやすい。
    結局誰の話してるのかわかんないのがどうしようもないんだろうなぁ。神様の名前はメガテンとかで知ってるけど、町の人とか知らないよ…
    七つの大罪を憎しみと善の行き過ぎとどちらでもないものに分けるのはなるほど。

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著者プロフィール

1265年、フィレンツェ生まれ。西洋文学最大の詩人。政治活動に深くかかわり、1302年、政変に巻き込まれ祖国より永久追放され、以後、放浪の生活を送る。その間に、不滅の大古典『神曲』を完成。1321年没。著書に、『新生』『俗語論』『饗宴』 『帝政論』他。

「2018年 『神曲 地獄篇 第1歌~第17歌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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