空海「三教指帰」 ビギナーズ 日本の思想 (角川ソフィア文庫)

  • 角川学芸出版
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本棚登録 : 210
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044072025

作品紹介・あらすじ

日本に真言密教をもたらした空海が、渡唐前の青年時代に著した名著。放蕩息子を改心させようと、儒者・道士・仏教者がそれぞれ説得するが、息子を納得させたのは仏教者だった。空海はここで人生の目的という視点から儒教・道教・仏教の三つの教えを比較する。それぞれの特徴を明らかにしながら、自分の進むべき道をはっきりと打ち出していく青年空海の意気込みが全編に溢れ、空海にとって生きるとは何かが熱く説かれている。

感想・レビュー・書評

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  • さんごうしいき。逝く川の流れは常に流転して住(とど)まることがない。急風(つむじかぜ)は幾たびか、音たてて過ぎかつ消えていく。このように六塵(ろくじん)(色・声・香・味・触・法)の世界はすべて無常であり、人々を溺らせる「迷いの海」であり、常・楽・我・浄という四つの徳性を備えた涅槃の境涯こそが、彼岸にそびえる目標の岑みね。三界(このよ)は私たちの真の自由をさまたげる束縛である。

  • ・本当に単純な童話のような物語なので、私のように、仏教の歴史、特に空海の生涯について疎い人が読むと、後の921年、醍醐天皇によって、弘法大師の諡号を賜るほどの僧が書いた本とは思えないかもしれません。

    『般若心経秘鍵』に続いて手に取った『三教指帰』は、空海が24歳の時に作成した『聾瞽指帰(ろうこしいき)』を、空海が入唐の際に中国に持参し、本場の学者たちの教えを参考にして(帰国後と推定されるが)序文を改め、韻のふみかたなどを修正して3巻に分け、改名して世にだしたものとのことです。

    『密教の聖地 高野山(サンエイ新書)』などによると、『聾瞽指帰』には、18歳で大学に入るも、1年で退学し修行を始めた理由について、出家を反対する親族に対する宣言書とされていたので、この寓話のような物語は、意外でした。

     「およそ文章を作るには必ずその理由があります。空が晴れ渡っている時には必ず太陽がそのおおもと現れているように、人が心になにかを感じた時にこそ、人は筆をとって、その想うところを文章であらわすのです。―文章と人間が心の内に動く思いを外に移すのです。私はどうしてもいまここで私の文章にして述べたいのです。」

     弘法大師空海は、24歳の時、こうして処女作である『三教指帰/さんごうしいき』をあらわした。語り継がれ、歴史に残るものが誕生する時、このように、創作者の使命感に突き動かされた衝動があるように思います。

  • 【書誌情報】
    著者:空海(774-835)
    訳者:加藤 純隆(1909-1982)
    訳者:加藤 精一(1936-)
    装幀:谷口 広樹
    定価: 792円(本体720円+税)
    発売日:2007年09月22日
    判型:文庫判
    頁数:192
    ISBN:9784044072025
    https://www.kadokawa.co.jp/product/200706000182/

    【メモランダム】
    ・意訳。
    ・この文庫の下敷きは、世界聖典刊行協会から1977年に刊行された『口語訳』だろうか。
    ・三代で仏教。[加藤 精神(1872-1956)→加藤 純隆→加藤 精一]。
    ・内容は問答体でわかりやすい。ずば抜けた構成力だ。
    ・国会図書館デジタルライブラリ。明治に刊行された漢文versionが閲覧できる。
    https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/819333/1

    【簡易目次】
    目次

    三教指帰
      序章 この書物を書いた理由
      第1章 亀毛先生の主張
      第2章 虚亡隠士の主張
      第3章 仮名乞児の主張

    原文 訓み下し 
    弘法大師空海略伝 

  • 空海が若いころに書いたもので、儒教、道教、仏教の
    教えの比較をしている。

    これらが今でも正しい解釈なのか、知見がないので何ともわからない。空海が優れた思想家であったことは読み取れる。

    再読は不要。

  • 少年空海が、なぜ儒教や道教ではなく、仏教を志向したかを示した本。おそらく日本最高の天才である彼の残した文章に対しコメントするのは、不遜なのでこれでやめる。

  • 横山さんは推していたけど内容に含まれてるウィットが教養の浅い私には余りわからなかった、という話。人生先が長い。

  • 「はじめに」から引用しますと、法律や道徳だけでは十分でないなにかと信じ込んでみても空しいとすればどうすればよいのというのか、かぞえ24歳の空海は、大乗仏教の精神に活路を見出したのである。
    <略>
    健全な宗教は爽やかなものでなければならない、まさに泥水から頭を出して花開いた純白の蓮の花の如きものでならない。「三教指帰」にはこの爽やかさが感じられる。
    私たちは、この純粋な一青年の、いつわらない心の推移とようやく求め得た大目的とを、すなおに受けとめてみようではないか。
    となっておりまして、中身ですが
    序章 この書物を書いた理由
    第1章 亀気先生の主張
    第2章 虚亡隠士の主張
    第3章 仮名虎児の主知
    弘法大師空海略伝
    となっています。
    大乗仏教こそ真理であると信じた若き空海が、儒教、道教の仏教に比してたらない部分を語っています。
    読み終えて、空海にまつわる「因縁」というものを思ってしまいました。叔父から教わった徹底的な現世における人の倫の学問、そして唐に渡り、劇的な恵果との出逢い、そして、帰国後の嵯峨天皇との出逢い、また、ライバル?最澄の存在、等々。
    空海が保持していた本源的なポテンシャル、そして、努力、その結果として、後世の人間も空海から時空を超えた悟りに触れさせていただいているわけです。
    人間、一生、菩薩の道を歩むわけですが、原初(おおむかし)からいまにいたるまで初めというものもない六道をめぐる最中の私ですが、必ずや仏陀の後継者たる弥勒菩薩の教えに巡り合えることを信じて、日々、心して暮らしたいと思いました。

  • 空海が若干24歳にして記した宗教本。当時の言わば"不良"とも言える蛭牙公子を改心させるため、釈尊の仏教、老子の道教、孔子の儒教それぞれの教えを仮名乞児、虚妄隠士、亀毛先生の三名に語らせるという形式を取る。最終的に加名乞児の語る仏教に軍配を上げ、以って仏教の素晴らしさを説くという内容。
    これがなんと千年以上も前に書かれたというから驚きだ。本書には原文も付されているが(読んでないけど)、現代語訳がとても自然なので、この現代語訳だけ読むとあまり違和感を感じないところに一番感銘を受けた。古典というと言葉だったり漢文調だったりその文章形態によって近づき難いものだという印象を受けるが、現代の言葉で読むと結局人間が追い求めるものやその本質的な部分は変わっていないということがよく分かる。まぁ感心するところが少し違うかもしれないけれど。

  • 空海さん。すごい。勉強になりました。

  • 「儒教」の亀毛先生の主張。
    人間は動物のように本能に偏った生活をしてはいけない。
    口を慎み、孝を実践しなさい。
    学問の道や政治の道でもしっかりしなさい。
    善い連れ合いを持つべきです。

    その上を行くという、「道教」の虚亡隠士(きょぶいんじ)の主張。
    彼はわざと愚か者のふりをしていた。
    彼は仙人の道を説く。
    万物を生成し育むもののの差別のなさを説く。
    道教を伝えるには人を選ぶ。
    仙人の優れた境遇、秘術について。
    そして、世俗への批判。

    そして、最後に、「大乗仏教」の仮名乞児(かめいこつじ)が現れ、前者の二人を諌める。
    それは孔子の道も、道教の道にも通じるものである。
    二人とも、「自分こそが正しい、一番だと思って、この世だけの弁論を戦わせている」と。
    仏教は全体の真理であり、儒教、道教は仏教の一部分と、彼は説く。孔子も老子も仏陀の弟子の生まれ変わりである、と。
    そして、肉体、五蘊の虚しさ、無常の理、
    そして死後の逃れられない地獄の苦しみの世界をありありと説き、人々を恐れさせる。そこには神仙もなければ、金銭や名誉も意味を為さない。
    宇宙の成立や破滅までの、人間の考えも及ばないような仏の世界に両者ともうなだれる。
    仏陀の一切衆生を救わんとする偉大なる慈悲、真理と主体が一体になった世界を示す。

    若き日の、命がけの猛勉強をした若き日の空海が書いた最古の戯曲とも呼ばれている。
    実に空海は偉大だと思った。

    乞児の説く仏のスケールの偉大さは、現代でも変わることのない宇宙観だろう。
    道をいちずに求めた挙句、儒教や道教を仏教に取りこんでしまうあたりなど、空海らしさというか、まあ。

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著者プロフィール

1909年生まれ。大正大学講師。著書に『口語訳秘蔵宝鑰』(世界聖典刊行協会)等。82年没。

「2010年 『空海「秘蔵宝鑰」 こころの底を知る手引き ビギナーズ 日本の思想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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