とりかへばや物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 日本の古典)

制作 : 鈴木 裕子 
  • 角川学芸出版
3.89
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本棚登録 : 311
レビュー : 36
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044072056

作品紹介・あらすじ

権大納言の息子は内気でおしとやか、対して娘は活発で外交的。このままでは貴族として暮らすことが難しいと心配した父親は、2人を男女の性を取り替えて成人式をあげさせた。娘は男性として女性と結婚、息子は女官として女性の東宮へ出仕。すべては順調に進んでいるようだったが…。『源氏物語』の影響を色濃くうけながら新たな境地を開いた物語は、登場人物の心に深く分け入りながら、大団円へと物語を収斂させていく。

感想・レビュー・書評

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  • 勝手に想像する。
    平安時代や鎌倉時代の少女たちが、御几帳に隠れてとりかへばや物語を読んでいる様子を。
    現代的にいうと、親に隠れて布団でこっそり読むちょっと過激な少女漫画やラノベみたいな立ち位置であったと思われる。
    こんな話が12世紀、今から900年も前に書かれていたとは。驚きしかない。

    漫画家のさいとうちほが、『とりかえ・ばや』を連載していたとき、途中の一話か二話だけ読んだことがあり、その内容の意味不明さに驚いたことがある。
    この時読んだのは、男として出仕し、右大臣の四の姫と結婚している沙羅が、友人の石蕗に四の姫を寝取られ、さらに石蕗は、沙羅の艶めかしい様子に、沙羅が女であることを知らずに迫る…的な展開だった。(※ちなみに、沙羅とか石蕗という名前はさいとうさんの創作である。)

    まさかまさか、原作がこんな内容とは思えず、さいとうさんがとりかへばや物語をパロディにして、話を盛りまくっているんだろうと勝手に思い込んでいた(さいとうさん、すみません。)。

    しかし、その"まさか"だったのだ。『とりかえ・ばや』はもちろん漫画として変えている部分は多くあるようだが、性の乱れっぷりは原作どおり。むしろ男君については、原作の方が酷そうである。

    とりかへばや物語のあらすじはこんな感じ。
    内気な息子と、社交的な娘。父は二人の性別を入れ替えて成人式をあげさせる。男君は女春宮の尚侍として出仕。女君は男として出仕し、右大臣の愛娘である四の君と結婚する。しかし当然、夫婦の契りはなく、清い関係であったところ、宰相の中将が、四の君のところに忍び込み、強引に契りを交わす。そして四の君は宰相の中将の子を妊娠、出産。女君は、宰相の中将と四の君の関係を悟り、四の君との間には深い溝ができる。好色な宰相の中将は、春宮の尚侍(男君)にも言い寄ってあしらわれ、今度はそのきょうだいである友人の女君に乱れ寄り、女君の秘密(実は女であること)を知る。そして女君に執拗につきまとい、挙句、妊娠させるのだ。

    つまり宰相の中将は、夫婦であった女君と四の君の二人を妊娠させたわけで、もうめちゃくちゃである。逢瀬の場面の心情や描写はかなり赤裸々。
    宰相の中将がゲスの極みであることは異論はないだろうが、女春宮の尚侍として出仕していた男君もかなりのもので、ちょっと書ききれないけど是非そのゲスっぷりを読んで確かめてほしい。

    対する女君は翻弄され、苦悩し続ける。女君は他の人からは輝いて見えるのに、男として生きても、女として生きても、いつも生きづらさを感じ、心に憂いを抱えている。
    女君だけでなく、四の君もだけど、なぜ忍び込まれて抗えない側が、責められたり苦しんだりしないといけないのだろうね。女君は男として生きたからこそ、女としての辛さや苦しみがより浮かび上がってくる。
    このあたり、当時の女子にもとても共感されたのではないだろうか…。

    学生時代、とりかへばや物語は教科書には載っていなかった。参考書や模試で出てくる場面は、最初の方の、男勝りで活発な女の子と、雛遊びを好む内気な男の子、それに悩む父左大臣のくだりなど、あたりさわりのない場面ばかりだったと思う。
    和泉式部日記と同じように、教育的な配慮という名の大人の事情により、子供からちょっと遠ざけられている古典だったのだ。
    そりゃ、場面説明で「宰相の中将は、尚侍(実は男君)から相手にされず、四の君(女君の妻)との逢瀬もままならず、思い悩み、ある日、四の君とも尚侍ともゆかりのある中納言(実は女君)に会いたくてたまらなくなり、左大臣邸を訪れる。そして中納言を男性と思いつつ、その美しい姿態に魅惑される心を抑えきれずに乱れ寄る」とかあったら、受験生もある意味めっちゃ混乱するわ。会場騒然。

    でもね、正直、とりかへばや物語や和泉式部日記こそ、ガンガン教科書にも載せたらいいと思うのよ。
    何これどーなんの?!まじ?続き読みたい!ってモチベ上がるはず(笑)。古典作品に興味湧く学生増えること請け合いだ。
    義母に言い寄る源氏物語がいいのに、何故とりかへばや物語がいけないのか。源氏物語は大人になって読んでも難しくて理解しきれないのに、高校生にいきなり高いハードルから跳ばせているようなものだ。そんなんじゃすぐに諦めておしまいになってしまうじゃないの。

    ちなみに、この本、図書館のジュニア向け文庫の棚にあった。そうそう、ジュニア向け!(笑)やるなぁ我が市!
    ビギナーズ・クラシックスシリーズの手軽さと面白さにすっかり嵌まってしまっている。

    • りまのさん
      おはようございます!
      皆様 楽しいです♪
      地球っこさん、コメントありがとうございます ♡
      おはようございます!
      皆様 楽しいです♪
      地球っこさん、コメントありがとうございます ♡
      2021/03/05
    • マリモさん
      りまのさん
      おはようございます。
      楽しんでいただけたら幸いです!
      ちょっと妄想が過ぎるところがあるので恥ずかしいですが\(//∇//)\←今...
      りまのさん
      おはようございます。
      楽しんでいただけたら幸いです!
      ちょっと妄想が過ぎるところがあるので恥ずかしいですが\(//∇//)\←今更
      いつでも参戦してくださいませー!
      2021/03/05
    • りまのさん
      マリモさん
      コメントありがとうございます!おはようございます♪
      マリモさんのコメント、好きですよ〜。
      マリモさん
      コメントありがとうございます!おはようございます♪
      マリモさんのコメント、好きですよ〜。
      2021/03/05
  • 面白かった。初心者初学者にも読みやすく、内容も現代のドラマのようだった。ぜひ再読したい。

  • 性とは一体どうあるべきなのかを強く訴えかけている本だと思う。
    所謂男らしさ、女らしさに縛られているこの社会で兄弟はそれぞれの性格とのギャップを感じ、父親が性を偽装し別々の性別で人生を送っていく。

    女君は男の姿であるときの果断に富んだ性格が本来の女君の姿になることで一変しステレオタイプの男を待ちわび苦悩し
    男君においては引っ込み思案な性格から宇治の女にもアタックする疑いようのない色男へと変貌した。

    このように考えると男はこうあれ、女はこうあれという規範が確固たるものとなりすぎているあまりに、幼少期の性格がどうあれ型にはまった性格に変わっていってしまうのだとも思った。

    また元の性別に戻る引き金を引いた内大臣が女を得られなければ渇望し、得られればまた次へと「ゲームのような感覚」で、そして行方のわからなくなった女をいつまでも思い恋慕に浸り続ける滑稽さとそのゲームへ取り組む真面目さを感じられる。

  • 初めて粗筋把握した。こんな話しとは知らんかったわ。
    ストーリーも凝ってるし文章もこなれており、これは源氏なんかよりよっぽど中高生に読ませるべきなんじゃないかと。

  • ストーリー展開が面白く、源氏より読みやすい。
    男君よ、尚侍として出仕した途端に目覚めちゃって。入れ替わり後の色男ぶりは何なのかしら。それに比べて女君の苦悩の深さよ。

  • びっくりするぐらい現代的だなと思わせる箇所があり、それだけでも読んでよかったと思う。作者不詳とのことだけど、男性によって書かれたなんてありえないと思う…。

  • 1000年前に書かれたこのお話は、今でも充分楽しめるし、今だからこそ考えさせられるジェンダーの問題。
    生まれ持った性質より生まれた性別で役割や振る舞いが制限される時代。男女の役割を入れ替えたきょうだいの運命やいかに?

    面白いのは、男性の魅力として、優美さやたおやかさが描かれていて、平安時代の平和さを象徴してるなと思いました。
    また、権力や男性的な力によって手篭めにされた女性が悲しんでいる場面で、権力を行使した側は気づかなくても、力によって傷つけられた方は恨みを溜めているのだという解説にうんうんと頷いてしまった。

  • ところどころ内容が紛失しているのがとりかへばや物語だっけ?全文載せようにも難しいのかな?

    きょうだいで性別取り替え、最後はあるべき姿に戻って大団円、なんて聞くと少女マンガにありそうなラブコメだけど、読んでみたら意外とラブコメしてなくてびっくり。
    むしろ最後なんて女君の様子を見るとなんだかすっきりこないなーと思う。

    それにしてもこの作品に登場する男性はまったく魅力的じゃないね…なんだかもやもやするね…。

  • 「女君」の心がクローズアップされていく物語の進行がやはり興味深い。
    女君が「ああ、自分も男の訪れを待つばかりの女になってしまった」と嘆くあたりを、同時代の読者たちはどう思ったんだろう。
    女性は身につまされたのかな。そして、男性は…?

    男女の境が攪乱されたけれど、結局伝統的な男女の役割に収斂していく、と読むべきなのか、攪乱の中になにがしかの価値があるのか。
    どう判断すべきか、まだ決めがたいけれども、とにかく読了。

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