西行 魂の旅路 ビギナーズ・クラシックス日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 日本の古典)

制作 : 西澤 美仁 
  • 角川学芸出版
3.95
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本棚登録 : 68
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044072124

作品紹介・あらすじ

平安時代末期、武士の道を捨て、家族を捨て、ただひたすらに和歌の道を究めるため、出家の道を選んだ西行。歌をどう詠むかではなく、歌になにを詠むかにこだわり続け、中世という新しい時代を切り開いた大歌人の生涯を、伝承歌を含め、項目で60首、全体で300余首の歌から丁寧に読み解く。桜をこよなく愛し、先人の跡を各地に訪ね、日本文化のさまざまな場面に足跡を残した西行という巨人の和歌をとことん楽しみ味わう1冊。

感想・レビュー・書評

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  • 願はくは 花のしたにて春死なむ 
             その如月の望月のころ

    この歌の印象が強烈で西行に惹かれました。
    テーマごとに分けられており、歌と現代語訳、解説という構成になっています。関連する歌も多く取り上げられていますし、最初出家する辺りの記述以外は比較的読みやすかったです。
    武士を捨て、和歌の道を究めるというと悲壮感が漂いますが、歌に堅苦しさはありません。花を詠んだ歌など情景が浮かぶようです。また思わず笑ってしまうような、歌にジョークを入れたりするんだっていう発見もありました。
    もっと西行について知りたくなりました。入門にはいい本です。

  • 武士であったのに出家したこと、容姿端麗であったことに加えて、
    「願はくは花のしたにて春死なん その如月の望月のころ」
    「花に染む心のいかで残りけん 捨て果ててきと思ふ我が身に」
    など、花と月を多く歌に詠んでいるところから、西行には繊細でナイーブなイメージを持っていました。
    でもこの本を読むと、意外と「陽」な感覚の人であったようです。「花に染む」の他にも、出家して世を捨てたはずなのに花に心奪われたり寒い時期に寒がったりする自分を詠んだ歌も結構たくさんあるのですが、そんな自分を「ダメだなあ」と恥じるのではなく、客観的に興味深いと思って見ていたり。
    花や月を詠んだ美しい歌の他にも、言葉遊びが楽しい歌や戦ばかりの世の中を冷めた目で詠んだ歌などもあって、クスッとなったり驚いたりウットリしたりしながら読みました。

  • (2012.11.25読了)(2012.11.12借入)
    【平清盛関連】
    ビギナーズ・クラシックスシリーズの『方丈記』を読んだとき、同じシリーズで『西行』が出版されていることを知りました。『西行』について書かれた本をすでに三冊読んでいます。
    「西行」高橋英夫著、岩波新書、1993.04.20
    「西行」白洲正子著、新潮文庫、1996.06.01
    「白道」瀬戸内寂聴著、講談社文庫、1998.09.15
    それぞれの本で、西行の作品を紹介していますが、西行の作品にまとめて接したことはなかったので、図書館から借りてきました。
    西行の作品であると伝承されている作品を含めて60首の和歌を解説してくれています。
    和歌に直接触れただけでは、読み込んである意味内容を読み取ることは、なかなか難しいのですが、懇切丁寧に読み解いてくれているので、助かります。
    西行以前の人が詠んだどのような歌と関連しているか、後世にどれだけの影響を与えているのか、和歌の言葉の言外で補うべきこと、等、多くの薀蓄を披歴してくれています。
    『西行物語絵巻』などまで描かれて、多くの人に西行が親しまれていることの一端が、西行が詠んだと伝承されている和歌が多数あるという事からうかがわれます。
    いつか『西行物語絵巻』を読んでみたいものと思います。

    【目次】
    はじめに
    西行への旅
    ◆出家
    ◆吉野
    ◆山家
    ◆高野
    ◆伊勢
    ◆熊野
    ◆四国
    ◆天皇
    ◆仏教
    ◆幼少
    ◆戦争
    ◆恋と月
    ◆神仏
    ◆数奇
    ◆終焉
    ◆伝承
    付録
     参考文献
     発句索引

    ●桜を植えたのは(130頁)
    岩戸開けし天つ尊のそのかみに 桜を誰か植ゑはじめけん
    (天照大神が天の岩戸を開けた時、桜は既にあったという。そんな昔にいったい誰が最初に桜を植えたのだろう。)
    ●老化(191頁)
    竹馬を杖にも今日は頼むかな 童遊びを思ひ出でつつ
    (「竹馬」の竹を今日の私は杖に頼るなんて、随分年を取ったものだ。子供のころにこれに乗って走り回ったことをそのたびに思い出すよ。)
    ●秋(213頁)
    心なき身にもあはれは知られけり 鴫立沢の秋の夕暮
    (世捨て人である私が感じとったこの感動を、和歌の言葉で伝えたい。鴫の群れが飛び立った羽音の轟く沢辺に、秋の夕暮が寂しく訪れる。)
    ●春の花(234頁)
    春ごとに花の盛りはありなめど あひ見むことは命なりけり
    (春の来るたびに花は盛りを迎えるのであろうが、その花に逢えたのはまさしく私の命次第だったのである。)
    ●富士の煙(236頁)
    風になびく富士の煙の空に消えて 行方も知らぬ我が思ひかな
    (風に吹かれてなびく富士の噴煙が空に消えて行方もわからない、そのように、私の思いもこれから先どこにたどり着くのか自分でもわからない。)
    ●桜の花を手向けて(253頁)
    仏には桜の花を奉れ 我が後の世を人とぶらはば
    (仏前には桜の花を供えてください。私が死んで仏になったとき、供養をしてくださるのなら。)
    ●はねくそ(270頁)
    萩踏んで膝を屈めて用を足し 萩野はねくそこれが初めて
    (萩の枝を踏んで、膝を萩の枝のようにしなやかに屈めて用を足したところ、踏んだ足をはずしたら糞が跳ね返った。こんなことは初めてだ。)

    ☆関連図書(既読)
    「平清盛福原の夢」高橋昌明著、講談社選書メチエ、2007.11.10
    「平家の群像-物語から史実へ-」高橋昌明著、岩波新書、2009.10.20
    「平清盛-「武家の世」を切り開いた政治家-」上杉和彦著、山川出版社、2011.05.20
    「平清盛 1」藤本有紀原作・青木邦子著、NHK出版、2011.11.25
    「平清盛 2」藤本有紀原作・青木邦子著、NHK出版、2012.03.30
    「平清盛 3」藤本有紀原作・青木邦子著、NHK出版、2012.07.30
    「清盛」三田誠広著、集英社、2000.12.20
    「平家物語(上)」吉村昭著、講談社、1992.06.15
    「平家物語(下)」吉村昭著、講談社、1992.07.20
    「海国記(上)」服部真澄著、新潮文庫、2008.01.01
    「海国記(下)」服部真澄著、新潮文庫、2008.01.01
    「西行」高橋英夫著、岩波新書、1993.04.20
    「西行」白洲正子著、新潮文庫、1996.06.01
    「白道」瀬戸内寂聴著、講談社文庫、1998.09.15
    「方丈記」鴨長明著・武田友宏編、角川ソフィア文庫、2007.06.25
    「鴨長明『方丈記』」小林一彦著、NHK出版、2012.10.01
    (2012年11月25日・記)

  • 選ばれていることばの重さ、深さを感じずにはいられない。
    大河ドラマでちょうど清盛が高野山の塔再建をやっていたから、よりリアルなイメージが持てたのかもしれないが。
    貴族と武士の拮抗、源平の時代を時代の傍観者として見ていたこと。現世利益を捨てて仏道という崇高な世界を目指しながら、現世の花を愛でることを捨てられなかった西行。鴨長明と同時代なんだよね…。
    読み疲れたなぁ。

  • 平安時代末期、武士の道を捨て、家族を捨て、ただひたすらに和歌の道を究めるために出家の道を選んだ西行。歌をどう詠むかではなく、歌になにを詠むかにこだわり続け、中世という新しい時代を切り開いた大歌人の生涯を、伝承歌を含め、項目で60首、全体で300余首の歌から丁寧に読み解く。桜をこよなく愛し、先人の跡を各地に訪ね、日本文化のさまざまな場面に足跡を残した西行という巨人の和歌をとことん楽しみ味わう1冊。

  • 平安朝末期の大歌人西行。花―わけても桜―と月を愛し、和歌の道を究めんとした漂泊の歌人の生涯に(伝承歌含め)項目60首、全体で300首以上から迫ったもの。

    歌をどう詠むかでなく、歌に何を詠むかに心を砕き続けた西行。彼が何を詠み、何を感じ考えたかということを丹念に読み解こうとはしている。が、著者の解説や解釈がやや小難しいというか衒学的というか、「歴史背景などをそこまで知らないと味わえないものか」と、かえってとっつき難いものに感じられてしまう面もなきにしもあらず。

    序文で著者のいう「西行研究書」という趣で、シリーズ名の「ビギナーズ・クラシック」の割には、読者に要求するレベルは高い気がする。むろん自分にはかなり難しく、西行の和歌そのものを味わいきれなかった。

    項目となった和歌が目次になっているので、最初から順に読むよりも、知っている歌や気になった歌の項目から読む方が楽かもしれない。

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