訓読みのはなし 漢字文化と日本語 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川学芸出版
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044081072

作品紹介・あらすじ

訓読みは、発音も概念も文法も全く異なる中国語の漢字を受け入れ、それを大和言葉で読むことに始まった。以来、日本人は、漢字の読みとしてだけでなく、英語や洋数字、さらには絵文字を日本語に取り入れる際にも、訓読みの手法を発揮した。日本人が独自の感性による創造を加えながら、各時代の中で発展させてきた訓読みは、今も自在に変容し続けている。そのユニークな例を辿り、豊かで深遠な日本語の世界に分け入る。

感想・レビュー・書評

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  • 内容はとても楽しく読みました。
    ただ、最後のほうは飽きてきてしまった……。
    韓国や朝鮮、ベトナムといった国の漢字事情も少しづつ紹介され、とても参考になるのですが、日本だけに絞っていただければ最高でした。
    「和名類聚抄」、「類聚名義抄」、「伊呂波字類抄」なんかからの例がもっと沢山あると、より楽しめたと思います。
    訓字は古訓なども含めますと、複雑ですね。

  • 円満字二郎著『漢字が日本語になるまで』を読んで、こちらも気になったので読んでみる。
    『漢字が…』と被っている部分もあったが、こちらの本は「訓読み」に特化した内容で、学者らしく漢字文化圏(中国、朝鮮、ベトナム)との比較や、様々な訓読みの例が豊富なエビデンス(古代中国の文献から現代の芸能人、歌詞に至るまで)とともに示されている。

    以下、面白かったところの一部。
    中国語と日本語は本来系統が異なる別の言語で、訓読みについて(今では)日本人は何の疑問も感じないが、訓読みはアメリカ人が「山」を「mountain」と読むくらい特異なことである。
    訓読みは朝鮮やベトナムにもかつてはあったが、廃れた。あるいは定着しなかった。
    訓読みは和語に基づいているが音読みが訓読みを駆逐した例もある(「肉 しし」、「脳 なづき」など)。
    日本ではたまごは「卵」「玉子」の表記があるが、中国では「玉」は宝石の意、「卵」は卵細胞や動物のたまごにのみ使い、たまごは「蛋」。(皮蛋の「蛋」)
    蛋白はたまごの白身のこと。
    「時計」の謎。「時」の訓読みは「とき」で「と」と読むのは部分訓であるし、「時を計る」の意味の漢語の熟語であれば目的語が後ろに来て「計時」となるはずである。一体この「時計 とけい」はどこから来たのか?
    文選読みや世界の訓読みに近い現象なども「なるほど!」と思った。

    通しで読んだ後は、スキマ時間に適当に開いたところを読んでも楽しいだろう。(到底すべてを覚えきれないので。)

    「おわりに」より
    「ことばは生きている」と比喩が語られるが、「ことばは人が生かしている」のであって主体は我々自身である。必要なことばを表記する文字を適切に選び変えていくことの責任は重い。(p254 )

  • Wikipediaのような文章
    全体の流れがあるというより、
    各単語の歴史や豆知識が並んでいる
    調査→抽象化した考察の順、学者っぽい

    キラキラネームは伊邪那岐(イザナギ)の時代よりはマシかも


    漢字は表語文字 一字一単語

    漢語は一、二音節しかないのに二拍目が限られている
    イ、ウ(フ)、キ、ク、チ、ツ、ン
    硬質、短い、語義の凝縮力高い、同音異義語多い

    漢委奴国王
    日本人は呪符として形を写して書いた、
    意味は理解していなかった

    朝鮮渡来人が使った訓読みの手法を和語にも用いた
    漢文の理解のため、
    その後は和語の効果的な表記のため


    アラビア数字を各国の言葉で読むことも
    訓読みの一種と言える


    ・名乗り訓 名乗り字 読めない男性名のアレ

    ・送り仮名の例外
    行った いった 行“な”った
    表す ヒョウす 表“わ”す

    ・捨て仮名 仏ヶ
    ・迎え仮名 ャ宿
    読み方を特定

    訓読みで音読みを説明 品(しな)の品(ひん)に
    日にち 日(にち)の日(ひ)に、の略
    縁(えん)も縁(ゆかり)もない

    諦の意は明らかにする
    明らかにする→あきらめる→諦める
    諦観 仏教用語 本質を明らかにする、悟る
    理(ことわり) 断ると同源
    書く 掻くと同源、引っ掻いて書く
    骨(コツ)を掴む

    初めは、初めから、初めのうちは
    ×始め


    現代の創作訓読み
    五月蝿い→八月蝉い うるさい
    巨い でかい

    凸凹 でこぼこ
    凹凸 オウトツ
    お凸 おでこ 額
    凸柑 ぽんかん 凸凸はでこぽん?
    凸る デコる
    電凸 突撃の突の代用
    凸 学校の絵文字
    凹い くぼい
    凹み 窪み くぼみ
    穴凹 あなぼこ
    凹凹に殴られる ボコボコ
    お腹凹々 ぺこぺこ
    凹む へこむ
    凹たれる へこたれる
    凸凹 テトリス

    転転 ころころ・ゴロゴロ とかいくらでも作れそう

  • 『方言漢字』からの派生読み。

    中国から大陸を経由して「漢字」を学んだあと
    もともと話していた「やまとことば」も
    漢字で活用できそうだなーって
    考えた昔の人はえらかった!
    おかげで「当て字」も「ルビ」も使える
    ゆかいな言語ができました。

    なんとなくだけど自分も
    かしこまって言いたい時は「音読み」で
    やわらかく言いたい時は「訓読み」で
    自然と使い分けている気はします。
    さらに軽くしたい時はカナを使うしね。

    韓国語やベトナム語に
    似たような使い方をしているものがあると
    幅広く紹介してくれているのが楽しい。

    ※実際は「光文社新書」を借りました

  • 数年前から中国語を勉強しています。覚悟をしていましたが、音の変化の無い軽声を入れて5種類ある発音は難しく、未だに一つの文章を間違いなく読むことができずに困っています。

    こんな私ですが数年も勉強していて日本人の使う漢字と中国語で習う漢字の違いがあることを理解できます。発音が異なる以外に特徴的なのは、中国語の漢字の発音は基本的に1種類で、日本語のように、音読みや訓読みがありません。

    訓読みとは日本人がつけた読み方のようですが、どのような歴史があるのだろうとずっと気になっていました。そのような私がこの本と出合うことができて嬉しかったです。

    この本の著者は、中国語だけでなく韓国語にも堪能なようで、随所に中国語や韓国語での発音の解説があります。今の私には興味深く読むことができました。

    以下は気になったポイントです。

  • 同訓異字・一字多訓の話が面白かったが専門的な話がかなり多い。楽しく読めたが難しいところもおおかった。
    2014年出版ということで最近の流行語も多数入っている。
    男の娘が「女」を「こ」と訓読みするところで紹介されていたのにはびっくりした。

    漢字の表意文字としての素晴らしさを改めて実感。同時に何故韓国・ベトナムは漢字を捨てたのか疑問に思う。

  • 第一章、第二章だけで十分楽しい。
    特に「訓読み」というものの特殊性、唯一性を解説しているところは、わかりやすく、面白い。
    そのあとは体系だっていないためか、知識の羅列になってしまった印象。
    唯一の訓読み国家である日本の、民族性なりと絡めた話が読めればより面白いと思う。

  • 漢字に対して自分の中で曖昧で気になっていたいろいろなことが分かって面白かった。
    また自分の中で持っている漢字のニュアンスとそれほど違ってなかったので少し安心できた。
    漢字は普段から使っている割に知識に乏しいのでこういう本は読んでおくといいなと思う。
    純粋に知識欲を満たしてくれて楽しかった。

  • 光文社新書版を、加筆修正したもの。

    ひじょーーーに、情報量の多い一冊!
    一読では、残念ながら頭に入りきらない。

    「中国で漢語を表すには、旁などで音を示す形声文字が適していたのに対して、日本では字音語ではなく和語を表すには意味の組み合わせによる会意の方法が好まれた」

    音読みと訓読みの違いはまだしも。
    形声文字や会意文字、重箱読みや湯桶読みが織り混ざってくると、正直混乱していた。
    が、そこを「ユニーク」と表現し、楽しみながら解説をしてくれている所に安心する。

    また字義についても、丁寧に歴史的背景を踏まえており、なるほど、現代に至るまでの変化が分かりやすい。

    ただ、扱う語数がなかなかに多く、それらが個々に迫ってくるため、全体として概要の部分は見えにくい。(熟読しろ、ということだな)

    私がかつて間違えて恥ずかしかった「月極」や、「玉子焼き」と「卵焼き」の違いまで触れている。

    しかし、日本語は不思議。
    漢字と平仮名とカタカナを織り交ぜて、しかも漢字には漢語から来た読みと、和語から来た読みを振るんだから。

    「この訓読みという行為は、実はかなり驚くべきことを行っていることに気づかされる。

    仮にアメリカ人が……「犬」という字を「dog」と読み、反対に……「dog」を「犬」と書き、さらに「my dog」を「my 犬」などと表記していたら、かなりの違和感を抱くであろう。」(引用省略部分有)

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著者プロフィール

早稲田大学社会科学総合学術院教授
1993年早稲田大学文学研究科博士後期課程単位取得退学、博士(文学)。
専門は日本語学(文字・表記)、社会言語学(文字論)、漢字学。

「2022年 『漢字系文字の世界 字体と造字法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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