日本の伝説 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 182
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044083052

作品紹介・あらすじ

「咳のおば様」「片目の魚」「山の背くらべ」など、日本各地に根ざした伝説を丹念に掘りおこす。昔話との違いにもふれながら、誰にでも読めるよう、平易な話し言葉で伝説の実例をあげ、その原型と変遷をひも解いていく。名作『日本の昔話』の姉妹編。伝説分布表付き。

感想・レビュー・書評

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  •  咳のオバ様、神社の片目の魚、神様が決めた国境と山の背比べの話など、日本各地に残る昔話や神話として語り継がれた物語で、似たようなものを集めた本。
     類似した昔話がある場所には、「姥ヶ池」などの似たような地名が残っているというのも印象的だった。
     また、日本各地には様々なバリエーションのお地蔵様が記録されていた。願掛けのたびに墨汁や酒粕を掛けられて臭くなっているところを見かねた村人が綺麗に洗ったらバチが当たった話や、子供に悪戯されていると思い子供を叱ってお地蔵様を元の位置に戻した人の夢枕で「せっかく子供と楽しく遊んでいたのに」と怒る地蔵、歯が剥き出しの地蔵など。今では語る人も居なくなって、どうしてそのお姿なのかもわからなくなったものも多数。

     コニュニケーションが希薄になった現在、語られなくなった昔話を、こうして記録していくことはとても重要なことだと思う。この記録を読むことができたのはとても貴重な体験だと感じた。
     話のネタになるので、柳田國男の本は他も見つけたら読んでおきたい。

  • 日本昔話を子供の頃、よくテレビや絵本で見ていたが、ほとんどの話はハッピーエンドに終わる。それは子供の教育に良くないということで、「砂糖漬け」してしまっている現状だ。原作の昔話は、婆を煮て食べてしまうなど、残酷な話も多い。その昔話が伝える教訓やメッセージを読み手が汲み取ることが大切なのではないか。
    欲を起こすと、自分に返ってくる。夫婦仲良くすることが大切など、示唆に富んでいる。

  • 各地方に伝わる庶民的な昔話を収集し
    内容ごとに整理して検証したもの。
    杖をついて湧き水お出す大師様の話は
    史実と関係なく全国的に広がっているという。
    その他目次を見ると
    咳止めのおババ様・片目の魚・機織り・お箸から大木
    地境・たもと石・石の背くらべ・神戦・伝説と児童と並ぶ

  • 駿河なる富士のたかねは由布ににて雲も霞もわかぬなりけり
      大分県の伝説より

     角川ソフィア文庫「柳田国男コレクション」が、装い新たに書店に並んでいる。日本民俗学のさきがけの人であり、没後50年を経た今日でも読みやすい文章だ。
     「日本の伝説」は、昭和初期に児童向け図書として刊行されたもの。冒頭で、「昔話」と「伝説」の違いがこう定義されている。「昔話は動物のごとく、伝説は植物のようなもの」。つまり、昔話はあちこち動き回るのでどこでも同じ話を見かけるが、伝説は、各地に根ざし、その土地で枝葉を養い成長する、ということだ。似通った話でも、伝説はその土地独特の育ち方をする。土地の生活者こそが、日光であり、水分、養分でもあるということなのだろう。
     掲出歌は「山の背くらべ」という章に引用されたもの。山の神は高さに敏感で、しかも嫉妬深いので、他の山と比較されることを何より嫌うそうだ。各地にそういった話は残されており、たとえば、大分県の由布岳の話。高さもあり、山の姿の美しい由布岳は、地元で「豊後富士」と呼ばれているそうだ。ある旅の僧(西行法師という説も)がその姿を目にし、まずは次の歌を詠んだ。

      豊国の由布のたかねは富士ににて雲も霞もわかぬなりけり

     ところが、「富士に似て」という言い回しに山の神が気を悪くしたのか、たちまち噴火が起こった。あわてた僧は、掲出歌のように「由布」を主体に詠み直したところ、噴火が収まったという。言霊【ことだま】とも関係するところが興味深い。

    (2013年05月12日掲載)

  • 子供向けに書かれてるので読みやすかった、と思う。
    今の子供に読みやすいかは別として。

    全体に一つの流れがあって、関連する話が順番に。
    それよりも前の話題も織り交ぜながら。
    興味を持って読めるつくりかな。

    同じような話が日本全国によくもこれだけ散らばってるものだなぁと思う。

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著者プロフィール

1875年生。民俗学者。『遠野物語』『海上の道』などの著作により民俗学の確立に尽力した。1962年没。

「2022年 『沖縄文化論集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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