一目小僧その他 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044083083

作品紹介・あらすじ

妖怪とは零落した神である-。一目小僧、物言う魚、ダイダラ坊の足跡ほか、日本全国に広く伝わる伝説を蒐集・整理して丹念に分析。それぞれの由来と歴史、人々の信仰や風習を辿りながら、妖怪が生まれる背景について大胆な仮説を提唱する伝説研究の代表作。

感想・レビュー・書評

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  • この本では怪異的な伝説の類が収集され、テーマごとに論じた文章が集められている。たとえば一つ目小僧や、人間に化ける魚や鰻、白鳥に化身する餅、巨人など。
    一つ目小僧に関しては、隻眼の神のイメージが変容して妖怪化したものだろう、と柳田は結論づける。
    これはいいが、他の文章は読み進めていくと、どうも解釈−結論づけが恣意的のそしりを免れず、学問(科学)としてあまり緻密な検証が完遂されていないような気がした。『海上の道』は特にそうだったが、確かな証拠が少ない中で、あまりにも飛躍的に仮説へと進んでしまうような危うさを感じてしまうのだ。
    だがこのことは、開拓者としての柳田国男の価値を損じるわけではない。フロイトと同様、たどりついた「仮説」に幾つもの問題があったとしても、すべての人に先んじて革命的な思考をまっとうしたという事実が、彼の歴史的な偉大さを明らかにしている。
    おまけに柳田国男の文章は相変わらず随筆風で、膨大な知見が柳田という主体の中で結びつき、からみあい、ゲシュタルトとして醸成されていく様子が読んでいて彷彿とされるために、柳田を読むことはわくわくするような読書体験をもたらしてくれるのだ。
    本書は妖怪じみた伝説を集めたということで、一般に興味もひくし、やはり、何よりも楽しめる一冊だった。

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著者プロフィール

1875年生。民俗学者。『遠野物語』『海上の道』などの著作により民俗学の確立に尽力した。1962年没。

「2022年 『沖縄文化論集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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