君主論 (角川ソフィア文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044086091

作品紹介・あらすじ

権力とは何か、国家とは何か、そして君主は何をなすべきなのか。ルネサンス期、分裂していたイタリアを強力な独立国とするため、外交官・政治家であったマキアヴェッリが、非情な政治の理論を大胆に提言。軍事や外交の実経験と多くの事例をもとに、政治を道徳から切り離し、純粋に有効な統治方法を追求した。近代政治学の先駆として「マキアヴェリズム」の語を生み、今なお有用な示唆を与える比類なき論考。

感想・レビュー・書評

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  • 「君主論」は、10年前、中央公論社の「世界の名著」で、「政略論」と一緒に読んだのだが、あまり記憶に残っていない。残っているのは、なんだか曖昧模糊として、読みにくい文章だなということぐらい。

    いま考えれば、読みにくいのは理由があって、論旨を明確に伝えることが目的の学術論文を書いたのではなくて、君主に自分の持っている知識を伝え、自分を使ってもらおうと ― 早い話が猟官用プレゼンテーションとして書いたので、そこには当然相手のメディチ家の殿様に対する丁寧な物言いが必要になるので、曲がりくねった、修辞的な表現になるのもやむおえない。また、こういう表現方法が当時の流行でもあっただろうし、さらにその頃はこういうミもフタもないことをアケスケに言うのが憚られる社会背景もあっただろう。(なにしろ作品が書かれたのが1513年、ルターの宗教改革がはじまる1517年より前なのである)だからこそこの著作が長い間排撃され続けたわけである。今となっては、常識的な統治論、統治論、外交論であるが。

    そういう大人の書き方をしているので、もってまわった言い方をしているけれでも、それでもあちこちに過激な言葉が出てきて、それなりに面白い。

    「(国を征服し維持するためには)そこを治めていた君主の血統を根こそぎなくしてしまうことが肝要である。」(P17-18)

    「注意しなければならないのは、人間はなでてもらうか叩きつぶされるか、そのどちらかでなければならぬものだということである。けだしひとは些細な危害の腹いせこそすれ、ゆゆしき危難には手も足も出せないものだからである。ゆえに人に危害を加えるにしても、とうていその腹いせもできないようなことをしなければならない」(p20)

    「(領民に対し)ひどい目にあわせるなら一気にすべてをやっつけると、感じも浅くしたがって大して手向かいもしない。ところが恩を施すには小出しにするに限る、そうすれば余計にありがたがられるというわけだからである。」(p77)

    「どんな場合にでも積善を自分の家業にしたいなどと望む者は、あまたのよからぬ連中に取り巻かれて身を滅ぼすにはうってつけの人間……さればこそ君主として必要なのは、その身を保ちたいと思えばよからぬ人間にもなれる術を会得しておき、必要に応じてこれを使ったり使わずに済ませたりすることである。」(p131)

    などなど。
    有名な箇所はこれ以外にもたくさんあるが、それは割愛。

    この角川文庫版は、他の翻訳書では勝手な官庁名、役職名を用いていることを批判し、鎌倉時代の官名を用いるということをやっているのだが、そこになんの意味があるのか分からない。まわりくどいのがますますわかりにくくなっただけだと思う。奥付を見ると昭和42年頃の訳らしいので、だから古色蒼然としているのだろう.


    「君主論」を読むなら、もっと現代的でわかりやすい訳で読んだ方がよい。その方が作品のエッセンスがよく伝わると思う。

  • ●レビューの要約●
    読みやすくはないけど、内容はオススメ。13章と15章だけでも読んでみて!
    何かを決断するときに、あれこれ考えて悩んでしまうタイプの人に、「決断ってそういうことなんだ。迷わなくていいんだ。」と背中を押してくれる一冊です。

    <以下、詳細。>

    漫画タッチでイケメン風味のお兄さんが表紙になっている版が平積みされていて、「これなら読みやすそう!」と思って買いました。

    ・・・が、表紙のイメージほど読みやすい日本語ではなかったです(・_・;)
    なぜなら、本書は「新版」といっても、昭和40年に日本語訳されたもので、日本語の中身は当時のまま、表紙とフォントだけが現代風になっているものだったからです。

    それでも読んでよかったと思えたのは、本書の本当の読みどころと言われている13章と15章の議論がおもしろかったからです。

    君主論は、マキャベリが当時仕えていたフィレンツェの王・ロレンツォ・デ・メディチにあてて、君主たる者こういう心構えで国をおさめていくといいですよ、という手紙の形でつづられています。

    君主論の世間でのポピュラーな評価は、「キリスト教的な道徳を無視して、いかに効率よく国を治めるかという観点で書かれた実用書」。
    当時のヨーロッパでは「反道徳的でけしからん本だ!」という受け止められ方が強かったようです。

    確かに、そう評価されても仕方ないような過激な話をさらっと出しているところがよく出てきます。

    例えば、誰かがもともと治めていた国を手に入れた後は、
    「親しくそこへ移り住む」ことで平和的に統治をするのが一番だが、そんなことを全部の領土にしていくわけにはいかないだろう。

    ならば次善の策として、かの地を治めていた領主の血統を根絶やしにするべきである。

    とか。そういう話が、さらっと出てくるわけです。

    マキャベリは決して、その土地に親しく移り住んで平和的に統治することと、
    かの地の領主の血統を根絶やしにすることを比べて、後者の方が良いと言っているわけではありません。

    あくまでベストは前者であり、でもそれができない状況で、かつその土地を手に入れてしまったら、
    後者のような策を講じないと、土地を失うよということを言っているだけです。

    立派な人格でありながら、(それゆえに余計に)自分の行動についてあれこれ悩んでしまうような性格の君主を「それでいいんだ。悩まなくていいんだ。」と力強く励ましているようにも読めました。

    例えば、「君主たる者、残虐であるという評判がたつことを恐れてはならない」 という話が出てきます。

    これは、現代でいえば
     
    「自分の仕事を遂行する上で必要な特性を自分がそなえていたとして、
     それと表裏一体にある後ろ向きな面を人にとやかく言われたところで、気にする必要はない」

    と置き換えられます。

    当時の君主の仕事は、とにかく戦争に勝つことだった。
    戦争にばんばん勝っていくというということは、良く言えば「強い」ということだし、悪く言えば「残虐である」ということで、両者は切り離せない。

    だから、戦争にたくさん勝っている君主を人が「残虐だ」と言ったとしても、それは君主が仕事を遂行するのに必要な特性の裏側なのであり、気にすることはないのだと。

    現代の話で言えば、例えばSEだったら、自分の話を論理的に組み立てて話すことや、相手の話を具体的に落とし込んでいくことや、たくさん勉強することはどれも 「仕事の遂行に必要な特性」 だと思います。

    それらをことごとく悪い面から見れば、「あいつは理屈っぽくて(=論理的)、細かいことにうるさくて(=具体的)、ガリ勉(=たくさん勉強する)だ」という評判が立ってしまうかもしれないけど、そういうことに思いわずらう必要はないんだ!と、マキャベリさんから力強く励ましてもらったような、そんな気持ちになりました。

  • イタリアのニッコロ・マキャヴェッリが政治学の著作です。ルネサンス期の作品として世界史などで紹介されている作品です。当時のイタリアの政情を考えて書かれているため、ローマやナポリなどを始め、ヨーロッパの歴史を知らないと非常に読みにくいと思います。全26章から成り、君主政体の種類や君主政体において必要となる軍備、国民や同盟国に対する君主の態度や政策がどのようなものか例を挙げながら論じられていきます。たまにビジネス本として紹介されたりしていますが、決してお手軽なハウツー本ではないのでご注意を。

  • 韓非子のほうが頭に入ってきやすかった。

  • 中世ヨーロッパの歴史をある程度知っていないと、わけわからんね。チェザーレとか読んでおくといいのかも。
    君主論そのものとしての重要な部分は、いろんな人がいろんなところで引用しているので、なんとなく聞いたことがあるような話になってしまってました。

  • 君主は、狐と獅子との二役を演じるよう努めなければならない。それというのも、獅子はどうしても罠に引っかかるし狐はどうしても狼に食われざるをえないからである。

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著者プロフィール

1469年― 1527年。ルネサンス期の政治思想家、フィレンツェ共和国の外交官。

「2012年 『君主論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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