殴り合う貴族たち (角川ソフィア文庫 I 107-1)

著者 :
  • 角川学芸出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044092016

作品紹介・あらすじ

素行の悪い光源氏たち!?光源氏のモデルの一人となった藤原道長は、官人採用試験の不正を強要、従者に命じて祗園御霊会を台なしにし、寺院建立のために平安京を壊した。これは道長だけの話ではない。優雅なはずの王朝貴族たちは、頻繁に暴行事件を起こす危ない人々でもあったのだ。「賢人右府」と呼ばれ、紫式部も尊敬した小野宮実資の日記を通して、『源氏物語』には描かれなかった王朝貴族たちの素顔を浮き彫りにした。

感想・レビュー・書評

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  • 藤原実資の日記『小右記』の記載をもとに平安貴族たちの暴力沙汰を紹介していくのだが、まず貴族たちの凶暴さに驚く。従者を半殺しにしたり牛車に投石をしたり掴み合いの取っ組み合いをしたり、、雅で煌びやかというイメージの平安貴族たちがまさかそんな事件を頻繁に起こしていたとは。。
    紫式部が光源氏を創作し、その時代の女性たちがこぞって読みたがった気持ちがわかった気がする。

  • 『小右記』を主として王朝時代に貴族が起こした暴力事件をひたすら紹介する本。官職の地位や職分、身分ごとの力関係、祭りや生活など幅広く説明してくれてるので当時の生活形態の一端を知るには勉強になったけど、憶測と予断があまりに多くていらない思い込みまで身につけそうな落ち着かなさが漂う本でした。

  • 現代人からみると、しょぼい動機で殴りあうどころが暴力沙汰を起こす貴族たち。たいへん読みやすく、歴史の知識がなくても十分楽しめます。

  • 歌人として名高い藤原定家さんが年下の少将相手にマジギレして、プロレスのヒールよろしく凶器で相手の頭カチ割ったって話を知った時「芸術家は気難しいからね」などと思ったんですが、間違ってました。
    定家さんは王朝貴族としては平均的な気の短さと血の気の多さの持ち主だっただけみたいです。

    タイムスクープハンターでも取り上げられた「後妻(うわなり)打ち」。
    あの番組見た当初は「さすが戦国・江戸時代は武闘派だね」と思ったんですが間違ってました。
    平安時代のルール無用流血どんと来いなノリの後妻(夫)打ちを、武士道精神に則って文化的なものにした結果の風習だったらしいです。

    帝の御前でパンツレスリング(意訳)はじめる公卿の御曹司たち。
    男相手に肉弾戦しかける宮仕えの女房さん。
    自分をコケにした相手は物理でボコる皇子様。
    バカかDQNしかいない殿上人。
    イカレたメンバーばかりの王朝貴族たのしいです。
    やっぱり生の根源は闘争本能だよねって、読んでてなぜか安心できます。
    そんで、読み終わった頃には良識人の藤原実資さんにいつの間にか惚れてるという、賢人右府のステマ本()

  • むやみに過激なタイトルなくせに、その実、中身は肩透かしと思いきや、むしろ控え目な題名だと感じるほどに乱暴狼藉のオンパレードでした。事件のほとんどを藤原実資(さねすけ)の日記だけに根拠を求めているのはやや乱暴な気もしましたが、それでも喧嘩、集団暴行、家宅破壊その他諸々、決して微笑ましくは無いエピソード満載で、貴族の一般的な印象を見事に覆してくれます。週刊誌や夕刊紙のゴシップ記事がお好きな男性向けの内容かもしれませんが、平安朝ファンの女性にも読んでいただき、この時代の暗部をも受け止めてもらいたい気もします。

  • 2012年6月6日読み始め 2012年6月11日読み終わり
    タイトルからして衝撃的です。紫式部「源氏物語」の主人公、光源氏のモデルは複数いると言われていますが、あの有名な藤原道長もその一人。しかし、藤原道長は光源氏とは違い、かなり問題行動を起こしていたようです。そして当時の貴族も、貴公子とは程遠いものだった…というのがこの本の趣旨です。
    あるときは髻をつかんでの取っ組み合い、あるときは従者同士のケンカ。門の前を横切る牛車に石を投げつけ、強姦や死体を野ざらしにされる姫君…と、平安事件簿恐るべし、です。
    1000年も前のことなので、基本的人権や警察があるわけでなし、有力貴族の起こした事件はとくに罰を受けることはありませんでした。天皇に矢を射かけて流罪同然、ということはあったようですが。しかし天皇といえども、道長に権力を削がれている状態だと、臣下である貴族にも軽んじられたりもしたようです。
    殴りあう貴族たちはみっともないといえばみっともないですが、人間的な醜さは、現代も昔も変わらないものだな、とも思いました。

  • タイトルインパクトありすぎ。早く読みたいです!
    ※読みました。タイトル通り目からウロコな本でした。平安貴族がこんなにも粗暴だったとは…。源氏物語は当世の人々にとっても、かなり理想的なファンタジーだったのだなあ…と勉強になりました。しかし藤原氏、やりたい放題ですね。

  •  ありそうでなかった、という点では、観点が面白い。
     大抵の人が持つ「王朝貴族」の概念を覆す内容だろうが、所詮、人間。いつの時代でも、こういう人々は存在するものだという良い証拠。
     付録の暴力事件年表に、一番心惹かれて購入の品。 

  • 光源氏は暴力沙汰を起こさなかっただけでも、十分理想的な貴公子といえたらしい
    本当に「王朝貴族」はどうしようもないな。
    やれやれ。

  • 貴公子達は、わりとドラ息子が多かったんだなあとビックリしました。芥川の「羅生門」世界と繋がっているような気がします。

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著者プロフィール

1997年東北大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学。2003年神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科博士後期課程修了、博士(歴史民俗資料学)。神奈川大学日本常民文化研究所特別研究員、同大学外国語学部非常勤講師。著書に『陰陽師』(中央公論社)、『平安貴族と陰陽師』『呪いの都 平安京』(以上、吉川弘文館)、『殴り合う貴族たち』『王朝貴族の悪だくみ』(以上、柏書房)、『天皇たちの孤独』(角川書店)などがある。

「2008年 『王朝貴族のおまじない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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