太平記の群像 南北朝を駆け抜けた人々 (角川ソフィア文庫)
- KADOKAWA/角川学芸出版 (2013年12月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044092092
作品紹介・あらすじ
南北朝の動乱の時代を活写した『太平記』。その記述のなかにどのように史実が映し出されているのかを読み解く。後醍醐天皇をはじめ、足利尊氏、新田義貞、楠木正成など、多彩な人物たちの人間ドラマに迫る。
感想・レビュー・書評
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1991年刊行されたものの文庫版。南北朝時代に活躍した人物について、太平記の記述をより確かな史料で検証することで、歴史資料としての太平記の世界を浮かび上がらせる内容。付論での成立過程検証も興味深い。
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何度、どの本を読んでも太平記及び南北朝は理解し難い。登場人物ごとの列伝形式の本書でも、やっぱり迷子になりもうした。
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なかなか読みにくい本だった。どうしても人物ごとに整理されているため、時代の流れが追いにくい。
もともと、仁和寺の変のところ、南朝方の死者が怨霊としてあらわれるくだりが気になって読み始めたのだが、登場人物が多彩で、まだまだ理解が及んでいないことを思い知らされた。
一旦、きちんと歴史的な流れを勉強し直してから読むとまた違うかもしれない。 -
『太平記』を読むためのガイドとして、『太平記』に登場する人々について語ったもの。登場するのは後醍醐天皇やその側室、後胤はもちろんのこと、その三木一草をはじめとする武士たち、足利一門など。上記以外の公家と北条一門、九州勢力や陸奥勢力はあまり紹介されていない。これらの人々について、『太平記』に記述されている様子がまとめられている。のみならず、『太平記』の記述を補完するような様々な文書からの引用と、特に高師直や足利直義について『太平記』がやや悪し様に語っていることを相対化してその歪みを指摘している。『太平記』自体は細川頼之が管領を務めた時代に書かれている。特に、元弘・建武の時代からの騒乱が足利義満・細川頼之の治世において「太平」となったことの歴史的正当化を目指していると著者は見ている(p.315-319)。
印象に残った人物像を挙げておく。
まず、日野資朝と日野俊基をはじめとする日野家。後醍醐天皇の建武の新政は中国の宋王朝の統治構造を一部モデルとしている。その着想の背景として、代々学問を持って朝廷に仕えた日野家を中心とする、朝廷内の宋学研究グループの存在が挙げられている(p.55)。
次いで阿野廉子。後醍醐天皇の側室であり、後村上天皇などの母であるこの人物は、もともと中宮の西園寺禧子の侍女だった。その美貌と才覚で後醍醐天皇の寵愛を厚く受ける。足利尊氏と結託して護良親王の失脚・殺害に関与するなど、政治活動も活発な人物で、女帝と称してもよいくらいだ(p.89-92)。大人しく慎まやかな西園寺禧子との対比が明確。『太平記』にはこうした、兄弟姉妹をはじめ立場の近しい人物の性格を鮮やかに対比させる例が多い。
最後に足利直冬。この人物は足利尊氏の長男でありながら、越前局という出自の不明な側室の子(これは虚構との意見もある)。そのためか尊氏に自分の子と認知されず、鎌倉の東勝寺に入れられ僧侶となる。尊氏の弟の足利直義が見かねて引き取り、養子とする。武勲を挙げるも相変わらず実父・足利尊氏には評価されず。ついに観応の擾乱において直義側・南朝側につき、実父と戦うことに。しかし直義、南朝の衰微にあって直冬の勢力も衰える。その最期や子孫については明確なことは分かっていないという有様という悲劇の人物(p.148-155)。九州にいた際、北朝や尊氏の定めた元号を使用しなかったのは尊氏へのせめてもの抵抗か。
ちなみにこの本は1991年のNHK大河ドラマ「太平記」によって起こった『太平記』ブームの一環で書かれたものの再版。 -
浅くもなく深すぎもせず丁度良い感じで読めた
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『太平記』に登場する人物を取り上げる本書。
有名どころはさることながら、後醍醐天皇の皇子など、太平記の記述は少ない人物でも取り上げられているので、面白かった。