壊れた脳 生存する知 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 267
レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044094133

作品紹介・あらすじ

靴の前後が分からない。時計が読めない。世界の左半分に気が付かない。三度の脳出血で高次脳機能障害となった著者が、戸惑いながらも、壊れた脳で生きる日常を綴る。諦めない心とユーモアに満ちた感動の手記。

感想・レビュー・書評

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  • 整形外科医だった著者が(脳梗塞を合併する)脳卒中のために、高次脳機能障害になったことを綴る体験記かつ医学的資料(と言って差し支えないと思われます)

    私は脳や神経についての専門的知識は皆無ですが、専門用語を交えつつ、しかし「それはどういうことか」を説明してくれる内容のため、容易に読み進めることができました。

    数々の困難を経て、めげずに一生懸命に日々を過ごしておられる姿を察するに、著者はかなりの努力家であり、またとても聡明な人なのだろうと思います。

    一般人には聞きなれない「高次脳機能障害」ですが、「高次脳」という脳の部分があるのではなく、「高次の、脳機能の、障害」ということだそうで。
    どこを損傷したかによってその人の困難なことは変わってくる、ということは場合によっては言語や視覚そのもの、音の聞こえ方などにも不具合を来すということなのかなと思うと、つくづく恐ろしい病です。

    リハビリテーションに携わる方にとっては、高次脳機能障害の方がどのような世界を見ているのかを知る手がかりになると思います。
    特に、41頁「転落事件」から46ページ「医者のくせに」のあたりだけでも目を通しておいた方がいいかもしれません。まさに「当事者」と「傍にいてみている人」の違いというのか、医療現場で「担当者が冷たい」と言われることの根本がここにあるような気がします(素人考えですが)。

    少しだけ、高次脳機能障害と認知症の共通点について書かれているところがありましたが、脳に何かトラブルがあって日常生活がままならなくなったり、問題が起こってくるという点では確かに親和性があるなぁと思うと同時に、やはり「知らない」ということが自他にとっては最大の損失を生むのかもしれないなと、考えさせられるところもありました。

    そして何よりも、著者の奇跡的な生還とその後の回復の記録を目にすると「人間の生命力というのか、脳に秘められた可能性は侮れない」と感じました。

    貴重な体験を分け与えてもらったような本でした。

  • 医者が自らの脳梗塞の体験を綴ったものとしては、ジル・ボルトテイラーの『奇跡の脳』がある。ジル・ボルトテイラーは、その体験をTED Talkでも語るなど世界的にも有名になっている。本書も整形外科医の著者が、脳梗塞や脳卒中(モヤモヤ病という持病のせいで何度も起こしている)の経験を綴ったもので、そういう表現をするべきではないのかもしれないが非常に面白かった。著者がある程度医学知識を持っていることから、自分の置かれた状態を制約はありながらも客観的に見て表現しているため、外から見るとわかりにくいその症状がどのようなものなのかわかりやすくなっている。著者の症状が言語障害を伴わなかったことから、こういう本が世の中に出るようになったのは、ご本人の不幸は痛ましいが、その上で素晴らしいことだと思う。周りのサポートがあり、働く場が準備されたということもきっと大きいんだろうなと思う。読んでいないが、本書はその評判の良さから漫画にもなっているようだ。

    著者は、視覚が現実と結びつかなくなり、その端的な例として時計が読めなくなったり、階段の上り下りが難しくなったりするが、その描写も説得力がある。書かれていることから推測すると、集中力を極端に欠いた状態に近いのかもしれないなと思う。また、意識で処理できないものでも体が覚えていることがあるということの例として、階段歩行など想像がつくものの他に、漢字を書くことも体が覚えているというの意外な発見で興味深い。日本語が表意文字であるという特殊性がこういった場面でも出てくるのかもしれない。また、何かの行為を行うときでも、いろいろなところで機能を補っているので非常にエネルギーを使うというのも、この本で初めてわかった。

    著者は、高次脳機能障害と認知症との違いを「自分が誰だか知っている」という点であると書いているが、もしかしたら認知症でも軽度の場合にはまだ「自分が誰だかを知っている」状態であったりすることもあるのではないかと思う。いずれにせよ自分自身であったり、周りの人であったりが同じような障害を持つことがいつかあるかもしれない。そのときのために、脳の機能障害であってもリハビリにより回復する可能性があり、回復はずっと続いていくものである、ということはそうなっても忘れないように心の底で覚えておきたい。また、そのときには脳機能障害によってやる気も低下しているので、むやみに「頑張れ」とか叱責とかをするべきではないというのも周りがそうなった場合には参考にしたい。

    他の著作でも、AI研究者が高次脳機能障害を負った経験を書いたクラーク・エリオットの『脳はすごい』や、作家であり状況の表現がうまくて読みやすい鈴木大介の『脳が壊れた』も読んだが、同様におすすめ。脳の不思議さと意外なしぶとさを気づかせてくれる。その他にも世の中には高度脳機能障害を負った人がその体験を書いた本が実はたくさんあることに気が付いた(Amazonがおすすめしてくれる)。自分もいつかそうなるのかもしれない。そのときにこういう本に書かれたことを知っているか知っていないかでずいぶんと回復に向けてどこまで努力できるかが違うような気がするのだ。


    ーーーー
    『奇跡の脳』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4105059319
    『脳はすごい』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/479176885X
    『脳が壊れた』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4106106736

    医師も同じ人間なのでそういった経験をしている人は当然たくさんいて、英語では体験談がまとめられていたりもするらしい。脳の出血部位によりその影響は様々なので、色々な話があるのだろう。

  • 今も医師であり(かつて整形外科医として働いていた医師であった)「モヤモヤ病」・「高次脳機能障害者」の筆者の生きる姿を自分自身で自分を語る。生きることとは、生存すること。生かすことは、はずかしがるではなく、惜しむことなく、カミングアウトすることであり、回復することであり、現状を受け入れて生きていくことである。ふとしたことから、手にすることになったのだが、淡々と読んでいくうちに、ぐいぐいと引き込まれていきそうになるのを、ぐぐっと、できるだけ、事実を読んでいこうという姿勢で読んでいくように心がけた読書であった。

  • 知らない事を知るために読書する。この本は障害を持ってしまった人生・心の葛藤・気持ち・を知るために大切な一冊。とても分かりやすく書かれている。

  • 著者:山田 規畝子[やまだ・きくこ](1964-) 医師。作家。
    解説:山鳥 重[やまどり・あつし](1939-) 医師。神経科学者。
    カバーイラスト:唐仁原 教久
    カバーデザイン:芦澤 泰偉
    定価: 880円(本体800円+税)
    発売日:2009年11月25日
    判型:文庫判
    商品形態:文庫
    ページ数:320
    ISBN:9784044094133

    ◆高次脳機能障害の苦しみに決して諦めない心で向き合う医師の、感動の手記。
     靴の前後が分からない。時計が読めない。世界の左半分に気が付かない。三度の脳出血で高次脳機能障害となった著者が、戸惑いながらも、壊れた脳で生きる日常を綴る。諦めない心とユーモアに満ちた感動の手記。
    https://www.kadokawa.co.jp/product/200906000033/

  • 健常者では想像しにくい高次脳機能障害という世界を当事者本人の目線で分かりやすく書いています。
    本の内容から人の脳の可能性に驚きましたし、当事者さんにどういう態度で接したらいいのか参考になりました。

  • 共感、共感!

  • 高次脳障害を持つ筆者による体験記のようなもの。
    頑張って欲しい。(「頑張って」って言っちゃダメか。。)

    脳卒中で倒れた人の後遺症は、人それぞれで本と同じではないけれど、必ず読むべき本だと思う。

    普通の生活が最高のリハビリ。

    どこがおかしいのかは、外から見てわからないが、今まで知っていたあなたとは違う。
    違っていることが本人にわかっているのかどうか。

    勇気を出して一度聞いてみようと思う。

  • 感想
    前職の上司がおそらく高次脳機能障害で倒れたことを思い出す。彼も、彼女のように、あきらめないで居てほしいと思った。

    目次メモ

    文庫版序文:「あきらめないで!」
    高次脳機能障害者として生きる
    医師として、そして障害者として
    高次脳機能障害をひと言で言うと
    高次脳機能障害が「見えない障害」と言われるわけ
    生存する知 - 「脳には学ぶ力がある」
    高次脳機能障害者にとって暮らしやすい「地域づくり」
    文庫化にあたって増補・改訂したこと

    序章 壊れた脳の中、教えます
    時計が読めない!
    三十四歳で「余生」!?
    思わぬ出会い
    カリスマのお告げ

    第1章 私は奇想天外な世界の住人
    切れたかもしれん
    転落事件
    医者のくせに
    見えれども見えず
    なんでこうなるの?
    二次元の世界
    下りる階段? 上る階段?
    記憶がやられた
    私の言葉は失われたか
    詩・俳句……ダメだこりゃ
    本が読めない
    私は非常識人
    体がゆがんでいる?
    部屋の中で迷子
    辞書が引けない

    第2章 脳に潜んでいた病気の芽
    脳卒中発作の前兆
    かつてない健康感
    突然の闇
    モヤモヤ病
    整形外科医デビュー
    ベルトコンベアー式結婚
    「妊娠しちゃったんだ」
    長男誕生
    三十四歳、脳出血に倒れる

    第3章 病気を科学してみたら
    私、老人なんです
    いろいろな自分に会える
    高次脳機能障害のつらさ
    へこんだままでいたくない
    できない自分と折り合う
    手探り
    もうひとりの私
    鍵になるのは記憶
    記憶のしくみ
    「年少さん、お休みです」
    絵本袋を縫う
    息子と競争
    ペーパードライバーズコース
    注意力の配分ができない
    もう一度医師として
    白衣がまぶしい
    言葉を発する力
    患者さんとご家族に伝えたかったこと
    脳は大食漢
    どんな脳でも学習する

    第4章 あわや植物人間
    再び脳出血、初めての麻痺
    死にたい
    オムレツの日々
    職場に再々デビュー
    プライド
    意識と理性
    「お飾り」施設長
    服が着られない
    ここはどこ?
    数オンチ
    漢字が書けない
    この痛みはどこから?
    上手く飲み込めない
    病気で失ったもの
    「徳俵」の女

    第5章 世界はどこもバリアだらけ
    やさしくない街
    バリアリッチな学校
    新聞は冷たい
    バリアな人、バリアなもの
    こんなことでいいの?
    患者のやる気をそがないで
    リハビリは想像力
    自分の主人は自分

    第6章 普通の暮らしが最高のリハビリ
    奇跡的回復
    神秘の脳
    時間の経過が必要
    回復に必要なもの
    からっぽの右脳を埋める
    速聴と速読
    脳の静かな声
    カミングアウト
    「ボケきてますから」
    経験がすべて
    障害に恵まれて
    未来日記をつける
    元気出さない、がんばらない
    息子がくれたリハビリ
    恋したい!
    勝者として生きる

    おわりに

    解説 - 神経心理学が解く山田さんの障害

    文庫版あとがき 「脳の中のもうひとりの私」、そして「今の私」
    私の分身、前頭前野の「前子ちゃん」
    前子ちゃんの役割
    「注意の光」
    山鳥重先生との出会い
    大脳の大切な記憶、そして条件反射
    排尿の難しさ
    ピアカウンセリングを始めて
    認知症と高次脳機能障害 - それぞれの苦しみ、同じ苦しみ
    認知運動療法との出会い
    不思議な体験 - 「なかったお尻」がよみがえる
    自分の体の声を聞く

  • 脳の高次機能障害について、自分の症状とそのときの感覚や自分なりの理解が、著者の描写とかなり一致する部分が多く、方向性としては間違っていないんだなと思わせてくれた。

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著者プロフィール

1964年、香川県生まれ。東京女子医科大学卒。同大付属病院、香川医科大学(現・香川大学医学部)勤務を経て、山田整形外科病院院長に。37歳で3度目の脳出血を体験し、重篤な高次脳機能障害を発症。自分の症状や自前のリハビリ法などを綴った『壊れた 生存する知』が話題に。

「2011年 『壊れた脳も学習する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山田規畝子の作品

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