壊れた脳 生存する知 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044094133

感想・レビュー・書評

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  • 三度の脳出血を乗り越え、現役の医師として活躍している山田規畝子さんが著した本。元々は外科医だった彼女は非常に客観的に自分の病状とリハビリを記述している。
    山田さんは特に高次脳機能障害が強く、日常生活に大変な困難を抱えておられる。しかしながら、少しずつ工夫を重ね、日々の生活を重ねる中で身体機能・認知機能を回復していく様子が描写されており、驚かされる。現在は、脳出血後六ヶ月までにリハビリで獲得した以上の機能の回復は見込めないと言われているが、もっと長い時間をかけてゆっくり回復(再獲得)していくのだという力強い宣言が心強い。

  • 今も医師であり(かつて整形外科医として働いていた医師であった)「モヤモヤ病」・「高次脳機能障害者」の筆者の生きる姿を自分自身で自分を語る。生きることとは、生存すること。生かすことは、はずかしがるではなく、惜しむことなく、カミングアウトすることであり、回復することであり、現状を受け入れて生きていくことである。ふとしたことから、手にすることになったのだが、淡々と読んでいくうちに、ぐいぐいと引き込まれていきそうになるのを、ぐぐっと、できるだけ、事実を読んでいこうという姿勢で読んでいくように心がけた読書であった。

  • 知らない事を知るために読書する。この本は障害を持ってしまった人生・心の葛藤・気持ち・を知るために大切な一冊。とても分かりやすく書かれている。

  • 感想
    前職の上司がおそらく高次脳機能障害で倒れたことを思い出す。彼も、彼女のように、あきらめないで居てほしいと思った。

    目次メモ

    文庫版序文:「あきらめないで!」
    高次脳機能障害者として生きる
    医師として、そして障害者として
    高次脳機能障害をひと言で言うと
    高次脳機能障害が「見えない障害」と言われるわけ
    生存する知 - 「脳には学ぶ力がある」
    高次脳機能障害者にとって暮らしやすい「地域づくり」
    文庫化にあたって増補・改訂したこと

    序章 壊れた脳の中、教えます
    時計が読めない!
    三十四歳で「余生」!?
    思わぬ出会い
    カリスマのお告げ

    第1章 私は奇想天外な世界の住人
    切れたかもしれん
    転落事件
    医者のくせに
    見えれども見えず
    なんでこうなるの?
    二次元の世界
    下りる階段? 上る階段?
    記憶がやられた
    私の言葉は失われたか
    詩・俳句……ダメだこりゃ
    本が読めない
    私は非常識人
    体がゆがんでいる?
    部屋の中で迷子
    辞書が引けない

    第2章 脳に潜んでいた病気の芽
    脳卒中発作の前兆
    かつてない健康感
    突然の闇
    モヤモヤ病
    整形外科医デビュー
    ベルトコンベアー式結婚
    「妊娠しちゃったんだ」
    長男誕生
    三十四歳、脳出血に倒れる

    第3章 病気を科学してみたら
    私、老人なんです
    いろいろな自分に会える
    高次脳機能障害のつらさ
    へこんだままでいたくない
    できない自分と折り合う
    手探り
    もうひとりの私
    鍵になるのは記憶
    記憶のしくみ
    「年少さん、お休みです」
    絵本袋を縫う
    息子と競争
    ペーパードライバーズコース
    注意力の配分ができない
    もう一度医師として
    白衣がまぶしい
    言葉を発する力
    患者さんとご家族に伝えたかったこと
    脳は大食漢
    どんな脳でも学習する

    第4章 あわや植物人間
    再び脳出血、初めての麻痺
    死にたい
    オムレツの日々
    職場に再々デビュー
    プライド
    意識と理性
    「お飾り」施設長
    服が着られない
    ここはどこ?
    数オンチ
    漢字が書けない
    この痛みはどこから?
    上手く飲み込めない
    病気で失ったもの
    「徳俵」の女

    第5章 世界はどこもバリアだらけ
    やさしくない街
    バリアリッチな学校
    新聞は冷たい
    バリアな人、バリアなもの
    こんなことでいいの?
    患者のやる気をそがないで
    リハビリは想像力
    自分の主人は自分

    第6章 普通の暮らしが最高のリハビリ
    奇跡的回復
    神秘の脳
    時間の経過が必要
    回復に必要なもの
    からっぽの右脳を埋める
    速聴と速読
    脳の静かな声
    カミングアウト
    「ボケきてますから」
    経験がすべて
    障害に恵まれて
    未来日記をつける
    元気出さない、がんばらない
    息子がくれたリハビリ
    恋したい!
    勝者として生きる

    おわりに

    解説 - 神経心理学が解く山田さんの障害

    文庫版あとがき 「脳の中のもうひとりの私」、そして「今の私」
    私の分身、前頭前野の「前子ちゃん」
    前子ちゃんの役割
    「注意の光」
    山鳥重先生との出会い
    大脳の大切な記憶、そして条件反射
    排尿の難しさ
    ピアカウンセリングを始めて
    認知症と高次脳機能障害 - それぞれの苦しみ、同じ苦しみ
    認知運動療法との出会い
    不思議な体験 - 「なかったお尻」がよみがえる
    自分の体の声を聞く

  • 医者が自らの脳梗塞の体験を綴ったものとしては、ジル・ボルトテイラーの『奇跡の脳』がある。ジル・ボルトテイラーは、その体験をTEDで語るなど世界的にも有名になっている。本書も整形外科医の著者が脳梗塞や脳卒中(モヤモヤ病という持病のせいで何度も起こしている)の経験をつづったもので、そういう表現をするべきではないのかもしれないが非常に面白かった。著者が、ある程度医学知識を持っていることもあり、自らの状態を比較的客観的に見て表現することができているためにその症状がわかりやすく面白い本になっている。著者の症状が言語障害を伴わなかったためにこういう本が世の中に出るようになったのは喜ばしい。また、周りのサポートとして働く場が準備されたということもきっと大きいんだろうなと思う。読んでいないが、本書は漫画にもなっているようだ。

    著者は、視覚が現実と結びつかなかったり、その端的な例として時計が読めなくなったり、階段の上り下りが難しくなったりするが、その描写も説得力がある。書かれていることを読むと、集中力を極端に欠いた状態に近いのかもしれないなと思う。また、意識では処理できないものでも体が覚えていることがあるということで、階段歩行などの他に漢字を書くことも体が覚えているというのが面白い。日本語の特殊性がこういった場面でも出てくるのかもしれない。また、何かの行為を行うときでも、いろいろなところで機能を補っているので非常にエネルギーを使うというのも不思議だ。

    著者は、高次脳機能障害と認知症との違いを「自分が誰だか知っている」という点であると書いているが、もしかしたら認知症でも「自分が誰だかを知っている」状態であったりすることもあるのではないかと思う。いずれにせよ自分自身であったり、周りの人であったりが同じような障害を持つことがいつかあるかもしれない。そのときのために、脳の機能障害であってもリハビリにより回復する可能性があり、回復はずっと続いていくものである、ということは覚えておきたい。また、やる気も含めて脳機能障害によって低下しているので、むやみに「頑張れ」とか叱責とかをするべきではないというのも参考にするべきだろう。

    他の著作でも、AI研究者が高次脳機能障害を負った経験を書いたクラーク・エリオットの『脳はすごい』や、作家であり状況の表現がうまくて読みやすい鈴木大介の『脳が壊れた』も読んだがおすすめ。脳の不思議さと意外なしぶとさを気づかせてくれる。その他にも世の中には高度脳機能障害を負った人がその体験を書いた本が実はたくさんあることに気が付いた(Amazonがおすすめしてくれる)。自分もいつかそうなるのかもしれない。そのときにこういう本に書かれたことを知っているか知っていないかでずいぶんと違うような気がする。そうなると、そういうことも覚えていないのかもしれないけれど。


    ーーーー
    『奇跡の脳』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4105059319
    『脳はすごい』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/479176885X
    『脳が壊れた』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4106106736

    医師も同じ人間なのでそういった経験をしている人は当然たくさんいて、英語では体験談がまとめられていたりもするらしい。脳の出血部位によりその影響は様々なので、色々な話があるのだろう。

  • 脳の高次機能障害について、自分の症状とそのときの感覚や自分なりの理解が、著者の描写とかなり一致する部分が多く、方向性としては間違っていないんだなと思わせてくれた。

  • 三度の脳出血で高次脳機能障害となった、自身も整形外科医であった筆者が、その症状とはどんなものであるのか、という自身の体験を語り、また、社会や周囲が患者にどう接すべきであるか、などについて論じている。

    高次脳機能障害は、盲目や認知症などと違い、症状が周囲から見て分かりづらく、ただ単に少しトロい人、で片付けられがちであるというが、そのとき、実は本人の中で何が起こっているのか、筆者の体験談を通して、その一端を理解することができた。
    高次脳機能障害は、脳の機能の一部が脳出血等により働かなることにより、環境からの刺激による情報を統合して評価することができなくなるという。
    すると筆者のように頭頂葉が傷ついた場合であれば、周囲の世界の空間認識・・・遠近感、凹凸などが把握できなくなり、食べた後の食器をお膳の空きスペースに置いたり、階段を降りたりといった、普通の人には何でも無い行動が、非常に困難になるらしい。
    ダメージを受けた脳の部位の違いにより、人によってどんな機能が抜け落ちてしまうかというのもまちまちらしく、やっかいだ。
    筆者は、治療やリハビリに関わる人には想像力が必要だと論じているが、その通りだ。

    このように、自分にとてつもない変化が起こっているのに、他人事とも言えるような冷静さで症状について語る筆者がすごい。
    あまつさえ、高次脳機能障害について興味を深め、自分の症状を客観的に分析し、生活の工夫に生かしている。
    また、「普通の生活が最高のリハビリ」をモットーに、どんどん社会生活に飛び込んでいく姿勢も、なかなかできないことだと感じた。
    (周囲の遠近感や凹凸が消え、ただ平面的なパターンだけが見え、知らずにものにぶつかったり、落ちたりしそうな世界を一人で歩こうと、私なら到底思えない。)
    このように重篤な障害であれば、絶望に塞ぎ込み、戻ってこれなくなっても、いた仕方ないと思う。(実際、そういう時期もあったのだろう。)
    この先、重大な病気にかかったとき、筆者の病気に対する立ち向かい方を、思い出せたらと思う。
    たとえ、そうなってすぐにはそうできなくても、決して諦めず、明るく生きていく道を探したい。

    しかし、脳というのは、さらりと高度な情報処理をこなしているものだ。
    そして、私たちは、その脳のフィルタを通してしか、決して周囲を認識することはできないのだ。
    健康であればまず認識できないが、生きていく上で必要なものは、全て持っているという当たり前の事実に驚愕する。
    まさに筆者の息子さんが言うとおり、「何もできなくても生きているだけでいい」ということなのだ。

  • 素晴らしく興味深く、読みやすい1冊。同テーマの「奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき」と比較してもとても分かりやすく、著者が日本人ということもあって親しみやすかった。人に薦めるならこちらを優先したい。
    脳のリハビリでものすごくおなかがすくというエピソードと、半側無視を自身の視点から記述した部分が特に興味深かった。
    著者の義兄の人柄には惚れ惚れする。脳に損傷を受けた人々を「生き残った勝者」とし、「勝者としての尊敬を受ける資格があるのです」と言ったスピーチにはぐっときた。

  • 押し付けられるような文章で、内容は納得できるけれど表現がちょっと。そういう意味で読んでいて苦しくなる本かな。気合を入れて最後まで読み続けてる類の本。

  • 2014年12月新着

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