科学哲学者 柏木達彦のプラトン講義 (角川ソフィア文庫)

著者 : 冨田恭彦
  • 角川学芸出版 (2009年12月25日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044094157

科学哲学者 柏木達彦のプラトン講義 (角川ソフィア文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 『科学哲学者柏木達彦の秋物語―事実・対象・言葉をめぐる四つの話、の巻』(ナカニシヤ出版)の加筆改題版です。観察の理論負荷性と相対主義の問題や指示理論、言語行為論などのトピックを扱った、小説仕立ての哲学入門になっています。

    第1話は、咲村紫苑という物理学専攻の女子学生が、柏木のもとで現代の指示理論について解説を受ける話です。フレーゲとラッセルの指示理論、サールのクラスター説、クリプキらの指示の因果説などを一通り説明した後、指示の因果説においても記述内容が機能しなければ指示ができないとするサールの立場が柏木によって紹介されています。

    第2話では、柏木の同僚でフランス文学を研究している霧島直哉が、歴史的文献研究につきまとう哲学的問題を柏木にたずねます。歴史的文献を読む際に現代の知識を手がかりとせざるをえないのであれば、ありのままの歴史的事実をとらえることができないのではないかという問題を、霧島は柏木にぶつけます。これに対して柏木は、歴史について研究をおこなう者が、過去の事実を解明することをめざしている当事者の立場に立っていることに注意をうながし、そのような立場からは、歴史のさまざまな見方が並存しているという相対主義的な立場をとることはできないという考えを提示します。

    第3話は、アトランティス大陸の物語と天文学とのつながりに注目するハーラルト・ライヒェという研究者の学説が紹介されます。そして柏木は最後に、科学史研究における文献を扱う際に、われわれの認識や解釈が果たしている役割の重要性を指摘して、話を締めくくっています。

    第4話は比較的短い章になっており、第1話に登場した紫苑と第3話に登場した高見沢千春の二人が、柏木から「観念論」にまつわる話を聞くことになります。われわれの信念や知識から独立した実在を想定する考えから脱するときに見えてくる思想的風景が示されています。

  • 科学哲学者柏木達彦の秋物語の改訂版です。「観察の理論負荷性」の説明がわかりやすく再確認できました。最後に出てくる「希望の哲学」という考えかたもいいですね。

  • 柏木達彦シリーズ文庫版の第2弾ですが,プラトンに関する講義ではないです。前作から通底しているのは,あるがままの事実を我々は見ることはできないということ。結局のところ,観察の理論負荷性に代表されるように,事実を知ることはものの見方に束縛されているということなんですね。つまり,絶対的事実など求めても仕方がない,事実と思っているものは「解釈済みの事柄」なのだ,と。また,科学だけでなく文献学(古典学)もまた観察の理論負荷性があってこそ成立しているということを知りました。プラトンの著書の中に出てくる「アトランティス」は大陸のことではなく○○のことだ!という新説が紹介される第3話は特に面白かった。アトランティスの正体も興味はありますが,肝心なのはそれではなくて,データをどのように解釈するかということ。事実を知るということは,整合的な解釈を行うこと…。

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