陰翳礼讃 (角川ソフィア文庫)

著者 : 谷崎潤一郎
  • KADOKAWA/角川学芸出版 (2014年9月25日発売)
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  • レビュー :7
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044094713

陰翳礼讃 (角川ソフィア文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 表題作で★四つ。西洋との対比で論を展開されると「そんなことないんじゃないの」ってついつい首をかしげたくなったけれど、漆器や金屏風の美しさはろうそくや行燈の灯りに照らされてこそ、という主張にははっとした。一度くらい、そんな暗い中で和食を食べてみたいものだ。

    後半の「昔の女性は首から上と手だけの存在」という論には「変態キタ!」とワクワクとげんなりの間の何とも言えない気持ちになった。止めはしないですけど……。

    ほかの随筆のなかでは「客ぎらい」の猫のしっぽのくだりについ共感。具体的には何も言いたくないけど、好意は示したいときってありますよね。あとは堂々とした筆致で、わりとふつうのことが書いてあった気がする。

  • 日本が欧化したからこそ、谷崎は陰翳の愛すべき性質に気付いたのではないかと思う。

    肌の色と光の関係にまで及んだことは、成る程と思わされた。陰翳の中にある色香、であったり、見えざるものの持つ怪しさ、であったり。
    谷崎は、その陰翳を文学としてみようとする。

    日本文化肯定論というよりも、私たちが本能的に愛してきた闇の淡いに踏み込んでいて、読んでいて頷ける読者は多いのではないか。

    夏の夜に、蝋燭の灯りだけで過ごすイベントは、エコロジーの観点だけで好まれるのではないように思う。

    もう一題。
    「現代口語文の欠点について」も、非常に面白かった。

    「のである」体の気持ち悪さ、主格不在の文法の欧化による、煩わしさ。
    短く、端的に述べることと文学性の相違。
    なるほど、現代国語で指摘される欠点は、それが美になり得るものらしい。

    分かりやすさと、利便性は科学である。
    けれど、文学の持つ魅力はむしろ、そうではないように思う。谷崎の目から見る日本は、なかなか鋭い。

    面白かった。再読前提。

  • 谷崎潤一郎の随筆集。日本建築の闇の美しさを述べている「陰翳礼讃」。ねこのしっぽを羨ましがる「ねこ」、大正時代のトイレ事情を面白おかしく考察する「厠のいろいろ」が特に面白かった。

  • 薄い本です。後半に入っている、他愛もない掌篇のいくつかが、僕は一番好きでした。­
    軽くてふわふわ、何のムツカシサも無く、のどごしまろやか爽やかで。薄味で腹に貯まら­ぬ胃にやさしい。
    肩の力も腰くだけな脱力感の中に、ほのめいた品位。群れない孤高と、「へ~なるほど」­と。何ともくだらなおかしいユーモアだなあ、と思っていたら読み終わる。
    読むたびに心地いい谷崎潤一郎さん。そしてこの本を作った編集者さんに、パチパチ。­
    #############­
    谷崎潤一郎さんの、まあ、エッセイ集です。­
    無論の事、最近になっていろいろな掌編を集めて作った本ですから、編集具合は谷崎さん­本人はあずかり知らぬことでしょう。
    表題作になっている、「陰翳礼讃」。­
    「日本的な美っていうのは、陰翳を愉しむ感じの、暗さを愛おしむ感じ。なんでもかんで­も明るいっていうのも無粋だよね」
    と、いうような内容です。(雑ですが)。­
    で、このエッセイは、一般の読書好き、谷崎好きという愛好家の枠を超えて、建築の世界­でとっても大きな「考え方のよりどころ」というか「考え方の古典」みたいな人気?があ­るようですね。
    この文章は、そういう建築的な提言というよりも、趣味の発表みたいなものとして愉しめ­ました。
    あまりはっきり見えないことの喜びというか。悦びというか。ヨロコビ。­
    現実的な暮らしの実際よりも、「俺はこういう世界観が好きだ」みたいな。­
    ちょっとこう、暗くって。じめっとして。合理的とか明快さとかで割り切れないぐにょっ­とした営みというか。谷崎さんですからねえ。
    こういう風に言葉で要約されると、ただの変態なんですけど(笑)、それを谷崎さんが文­章で小説にしていくと、そこにユーモアもあれば人肌な温もりもあって何だか実にこう、­美味しい。
    変態さんではありますが、ただの変態ではありません。­
    この本には「陰翳礼讃」の他に、「現代口語文の欠点について」「懶惰の説」「客ぎらい­」「ねこ」「半袖ものがたり」「厠のいろいろ」「旅のいろいろ」の7篇が入っています­。
    「陰翳礼讃」と「現代口語文の欠点について」の2篇は、エッセイというよりは「説」み­たいな文章ですが、ほかはエッセイ、雑文、という類のものです。これがどれも素晴らし­い。
    #########­
    ●「現代口語文の欠点について」­
    明治以降の文章日本語の改革を、一定の評価をもちろん下しながらも。­
    専門家、人文科学系の学者の晦渋すぎる言葉使いや、文末の言葉遣いの味わいにいたるま­で、もう目が眩むくらい素敵に具体的な検証を行います。
    それでいて無論の事、谷崎さん。この文章自体が毛ほどの難解さもなくまろやかに軽やか­に読み易く進みます。
    無駄に難解な言葉使いへの批判など、そのまま2015年の日本語状況にも目が覚めるく­らいに当てはまります。
    本、文章を読む、書く、などが好きな人には大いにおすすめな一篇。­
    僕は「陰翳礼讃」よりこっちが面白かった。­
    ●「懶惰の説」「客ぎらい」­
    なまけたいなあ、ごろごろするのがいいなあ、他人と会うのもシンドイなあ。­
    というような、それだけのことが素敵な短文。­
    ●「ねこ」­
    猫好きにはたまらないでしょうねえ。「庄三と猫」の作者ですから。­
    ●「半袖ものがたり」「厠のいろいろ」「旅のいろいろ」­
    谷崎さんは、東京生まれのお坊ちゃん。都会でモダンで洒落て西洋かぶれで金持ちな育ち­です。
    そんな谷崎さんが、関東大震災のあとに関西に移住します。­
    そして、大変に関西が気に入ります。­
    関西人の着る半袖の着物がいいんだよなあ。色んな厠があるなあ。旅の面白み、こういう­の好きなんですよ。
    そんな他愛も無い話のそこかしこに、関西礼賛もありつつ、たまに冷静に「こういうのは­関西はアカン」というのもありつつ。
    このあたりの肩の力の抜けた文章、関西生活がとにかく愉しかった僕としては、にやにや­ふむふむが止まらない、極上な味わいでした。
    これを翻訳ではなく、原文で味わえる。­
    日本人で良かったなあ、と、僕としてはココに偽らざる愛国心があります。­
    (できれば谷崎さんが書いた通りの旧仮名で読みたい!というのが趣味としてはあります­が…)

  • 2015/4

  • 和紙がユネスコ世界文化遺産に登録されたということで読んでみた。近代建築や文明はどんどん光を取り入れる方向へ向かっているが、谷崎は逆に陰翳の賛歌をうたいあげる。漆器や金屏風、掛け軸、和食に至るまですべからく古来日本のものは薄暗い部屋にあってこそその真の価値が分かるという。
    そういうものかもしれませんねー。わからんけど。
    文芸書というより今では建築とかデザインの入門書的地位を占めているっていうのが興味深い。

    旅について語ったところもあって、汽車のなかでうつらうつら読むといい感じだ。旅に出たーい。

  • 中公文庫の陰翳礼讃とは別に購入。たしかそちらには無かった「現代口語文の欠点について」が特におすすめ。今の時代にも十分通用する話が、ひとりの大作家の視点から書かれていることに注目したい。文章を書かねばならない立場にある人には、一読の価値あり。自分にとっては、たまたま翻訳の授業を取っていることもあり、英語を日本語に翻訳する課題に取り組む際の姿勢の参考にもなった。
    短いけれども、「ねこ」もおもしろい。谷崎さんが言うねこの魅力が本来の意味(?)のツンデレそのものであり、妙に親近感が湧いた。

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