陰翳礼讃 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川学芸出版
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本棚登録 : 226
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044094713

作品紹介・あらすじ

陰翳によって生かされる美こそ日本の伝統美であると説いた「陰翳礼讃」。世界中で読まれている谷崎の代表的名随筆をはじめ、紙、厠、器、食、衣服、文学、旅など日本の伝統に関する随筆集。解説・井上章一

感想・レビュー・書評

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  • 表題作で★四つ。西洋との対比で論を展開されると「そんなことないんじゃないの」ってついつい首をかしげたくなったけれど、漆器や金屏風の美しさはろうそくや行燈の灯りに照らされてこそ、という主張にははっとした。一度くらい、そんな暗い中で和食を食べてみたいものだ。

    後半の「昔の女性は首から上と手だけの存在」という論には「変態キタ!」とワクワクとげんなりの間の何とも言えない気持ちになった。止めはしないですけど……。

    ほかの随筆のなかでは「客ぎらい」の猫のしっぽのくだりについ共感。具体的には何も言いたくないけど、好意は示したいときってありますよね。あとは堂々とした筆致で、わりとふつうのことが書いてあった気がする。

  • 日本が欧化したからこそ、谷崎は陰翳の愛すべき性質に気付いたのではないかと思う。

    肌の色と光の関係にまで及んだことは、成る程と思わされた。陰翳の中にある色香、であったり、見えざるものの持つ怪しさ、であったり。
    谷崎は、その陰翳を文学としてみようとする。

    日本文化肯定論というよりも、私たちが本能的に愛してきた闇の淡いに踏み込んでいて、読んでいて頷ける読者は多いのではないか。

    夏の夜に、蝋燭の灯りだけで過ごすイベントは、エコロジーの観点だけで好まれるのではないように思う。

    もう一題。
    「現代口語文の欠点について」も、非常に面白かった。

    「のである」体の気持ち悪さ、主格不在の文法の欧化による、煩わしさ。
    短く、端的に述べることと文学性の相違。
    なるほど、現代国語で指摘される欠点は、それが美になり得るものらしい。

    分かりやすさと、利便性は科学である。
    けれど、文学の持つ魅力はむしろ、そうではないように思う。谷崎の目から見る日本は、なかなか鋭い。

    面白かった。再読前提。

  • 薄い本です。後半に入っている、他愛もない掌篇のいくつかが、僕は一番好きでした。­
    軽くてふわふわ、何のムツカシサも無く、のどごしまろやか爽やかで。薄味で腹に貯まら­ぬ胃にやさしい。
    肩の力も腰くだけな脱力感の中に、ほのめいた品位。群れない孤高と、「へ~なるほど」­と。何ともくだらなおかしいユーモアだなあ、と思っていたら読み終わる。
    読むたびに心地いい谷崎潤一郎さん。そしてこの本を作った編集者さんに、パチパチ。­
    #############­
    谷崎潤一郎さんの、まあ、エッセイ集です。­
    無論の事、最近になっていろいろな掌編を集めて作った本ですから、編集具合は谷崎さん­本人はあずかり知らぬことでしょう。
    表題作になっている、「陰翳礼讃」。­
    「日本的な美っていうのは、陰翳を愉しむ感じの、暗さを愛おしむ感じ。なんでもかんで­も明るいっていうのも無粋だよね」
    と、いうような内容です。(雑ですが)。­
    で、このエッセイは、一般の読書好き、谷崎好きという愛好家の枠を超えて、建築の世界­でとっても大きな「考え方のよりどころ」というか「考え方の古典」みたいな人気?があ­るようですね。
    この文章は、そういう建築的な提言というよりも、趣味の発表みたいなものとして愉しめ­ました。
    あまりはっきり見えないことの喜びというか。悦びというか。ヨロコビ。­
    現実的な暮らしの実際よりも、「俺はこういう世界観が好きだ」みたいな。­
    ちょっとこう、暗くって。じめっとして。合理的とか明快さとかで割り切れないぐにょっ­とした営みというか。谷崎さんですからねえ。
    こういう風に言葉で要約されると、ただの変態なんですけど(笑)、それを谷崎さんが文­章で小説にしていくと、そこにユーモアもあれば人肌な温もりもあって何だか実にこう、­美味しい。
    変態さんではありますが、ただの変態ではありません。­
    この本には「陰翳礼讃」の他に、「現代口語文の欠点について」「懶惰の説」「客ぎらい­」「ねこ」「半袖ものがたり」「厠のいろいろ」「旅のいろいろ」の7篇が入っています­。
    「陰翳礼讃」と「現代口語文の欠点について」の2篇は、エッセイというよりは「説」み­たいな文章ですが、ほかはエッセイ、雑文、という類のものです。これがどれも素晴らし­い。
    #########­
    ●「現代口語文の欠点について」­
    明治以降の文章日本語の改革を、一定の評価をもちろん下しながらも。­
    専門家、人文科学系の学者の晦渋すぎる言葉使いや、文末の言葉遣いの味わいにいたるま­で、もう目が眩むくらい素敵に具体的な検証を行います。
    それでいて無論の事、谷崎さん。この文章自体が毛ほどの難解さもなくまろやかに軽やか­に読み易く進みます。
    無駄に難解な言葉使いへの批判など、そのまま2015年の日本語状況にも目が覚めるく­らいに当てはまります。
    本、文章を読む、書く、などが好きな人には大いにおすすめな一篇。­
    僕は「陰翳礼讃」よりこっちが面白かった。­
    ●「懶惰の説」「客ぎらい」­
    なまけたいなあ、ごろごろするのがいいなあ、他人と会うのもシンドイなあ。­
    というような、それだけのことが素敵な短文。­
    ●「ねこ」­
    猫好きにはたまらないでしょうねえ。「庄三と猫」の作者ですから。­
    ●「半袖ものがたり」「厠のいろいろ」「旅のいろいろ」­
    谷崎さんは、東京生まれのお坊ちゃん。都会でモダンで洒落て西洋かぶれで金持ちな育ち­です。
    そんな谷崎さんが、関東大震災のあとに関西に移住します。­
    そして、大変に関西が気に入ります。­
    関西人の着る半袖の着物がいいんだよなあ。色んな厠があるなあ。旅の面白み、こういう­の好きなんですよ。
    そんな他愛も無い話のそこかしこに、関西礼賛もありつつ、たまに冷静に「こういうのは­関西はアカン」というのもありつつ。
    このあたりの肩の力の抜けた文章、関西生活がとにかく愉しかった僕としては、にやにや­ふむふむが止まらない、極上な味わいでした。
    これを翻訳ではなく、原文で味わえる。­
    日本人で良かったなあ、と、僕としてはココに偽らざる愛国心があります。­
    (できれば谷崎さんが書いた通りの旧仮名で読みたい!というのが趣味としてはあります­が…)

  • 1933年に出版された書
    建築、インテリア、照明を専門とする者においては今なおバイブル的な存在である
    日本的な美のあり方を陰翳を軸に語られている
    改行が少なく読みにくい文体ではあるが丁寧に読み進めると、文章の美しさから情景が浮かび上がってくる

  • 日本の伝統的な漆器や金箔を使ったものや能や歌舞伎の衣装は蝋燭の明かりで見てこそ本来の美しさを発揮できると言うような部分はとてもそう思いました。揺らめく灯りに浮かぶそれらはどれだけ美しいのでしょうか。
    西洋と比べるあたりは「そこまで言わなくても…」と思うところもありましたが日本古来の闇が持つ美しさを再発見させられる表題作でした。
    『ねこ』は今も昔のこの仕草に人類はやられてしまうのだなぁ、と思ってしまいました。猫好きの人ならきっと頷いて読みそうです。

  • インテリア系の本を読んでいるとかなりの頻度でお目にかかるので教養として。
    文章が古いもののはずなのにものすごく読みやすくて驚いた。
    そして日本語の乱れについての話とか今に通じ過ぎてて笑ってしまう。
    すでに現代語訳みたいな書き方というかエッセイというか、旅に関してとか、料理についてとか。

  • 日本建築のバイブル

  • インテリアや照明に携わる職業の方々に幅広く読まれている本書。日本家屋についてだけではなく、すぐれた日本人論としても読める珠玉の一冊。

    日本人が好む美しさとは、省略の美であるということ。空白を持って画面を構成する日本画もそうであるし、無駄な言葉や描写のない小津安二郎、北野武の映画も実に日本的な美と言える。宮崎駿さんが「アニメーションは三歩あるいて十歩あるいたように見せなければ意味がない」というような主旨のことを何処かて語っておられたが、それも日本の美なんだなあと強く思った。また、世界で評価されているのはまさにそれら省略の美そのものなのだ。

    その点では若者の流行言葉の略語なども日本独自の文化なのだと思う。一から十まで説明過剰というのは西欧文化なのだろう。しかし、現在の日本では行き届いたサービスや過剰な説明などが多くなり、かなり文化は変化してきている。もちろん外国文化を取り入れることで快適になり、発展するのはうれしいことだ。一概に善し悪しを言えることではないが…。比較文化論としても興味深い内容だった。もっと谷崎を読んでみたい。

  • 松浦弥太郎さんのセンス入門を読んだ時から気になっていた1冊。
    陰翳礼讃を含めた短篇集であったが、全てを通じて言えることは、今一度我々の国、日本と言うものの文化の優美さや趣深さを再認識することが出来るということである。

    今回はとくに陰翳礼讃について書こうと思う。

    近現代となるまさに転換期、様々な西洋の文化が輸入される時代背景の中でこのような文章を書けること自体がまず私にとって衝撃であった。
    モダニズムの流行による光の捉え方の変化、それに対して、"影"こそに日本古来の本当の良さを見出す感性に感服である。
    これは私事であるが、今まで西向きの角部屋で生活しており、日当たりの悪さやに嫌気がさしていたが、本著を読むことでその中で自分がどう良くしていくかを考えることが出来たと思う。
    また、これから建築について学習をしようと考える私にとってこの本は、物事の見解や受け取り方に対する新しい姿勢を示してくれているように感じた。
    谷崎潤一郎氏の優しい文体、確固たる彼の考え方、気付けば魅了されて、直ぐに読み切ってしまった。
    陰翳礼讃を含め全ての短篇に彼の人相を感じることができた。非常に良い作品である。

  • 文章が美しく、正に声に出して読みたい日本語という感じ。陰翳礼讃は、闇や暗がり、影と言った、通常好まれないものに対する別の見方を与えてくれる。特に、漆器や黄金の闇との調和から見た美しさ、日本人の肌の色から生じた微妙な影から来る独特の美しさなどの記述は、それ自身が美しい。
    懶惰の説、旅のいろいろ、ねこ、なども谷崎のノスタルジックな見方を伝えてくれる。内容もさることながら、文章そのものの美しさが心地よく、何度も読んでしまう。

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著者プロフィール

明治十九年(一八八六)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴抄』『細雪』『少将滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和四十年(一九六五)七月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和二十四年には、第八回文化勲章を受けた。昭和三十九年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた。

「2021年 『谷崎マンガ 変態アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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