美しい日本の私 (角川ソフィア文庫)

著者 : 川端康成
  • KADOKAWA/角川学芸出版 (2015年4月25日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044094812

作品紹介・あらすじ

ノーベル賞授賞式に羽織袴で登場した川端康成は、古典文学や芸術を紹介しながら日本の死生観を述べ、聴衆の深い感銘を誘った。その表題作を中心に、今、日本をとらえなおすための傑作随筆を厳選収録。

美しい日本の私 (角川ソフィア文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 本書は1968年に、川端康成が日本人初の受賞者となったノーベル文学賞のスピーチ「美しい日本の私」(サイデンステッカーによる英題は「Japan, the Beautiful, and Myself」)を含む、随筆集である。3日間の徹夜のもとで、スピーチ直前に書き上げられた「美しい日本の私」は、やはり川端康成の文学世界を理解する上では一級のドキュメントであろう。

    このスピーチでは、道元や西行などの和歌を引用しつつ、古来から日本では自然描写に内在される美しさを尊ぶ文化があることが示される。そして、芥川龍之介の自殺の遺書である「末期の眼」を引用しながら、そうした美しさが顕著に感じられるのは、生活力・動物力とは対局の静かな死を待つ境地においてであり、それが日本特有の”虚無”の概念に通じる、とまとめられていく。

    実際、本書に併録されている「末期の眼」という随筆では、修行僧の澄み切った世界では、あらゆる自然の事物が途方もない美の世界として理解され、あらゆる芸術の極意がここにあるとまで語られる。この要点は、世界をどのように理解して何を美と感じるかは個々人の世界認識に依存し、客観的な美があるわけではない、その主観的な美の世界を自殺直前というような「末期の眼」を通さずに文章で再構築すること、そこに日本文学の特異性がある、ということだろうか。

    その点では、原題と英題の微妙なズレを意識することは極めて重要であるように思われる。原題は「美しい日本の私」であり、接続詞により”私”は”美しい日本”に包含されることが明示される。この二語の関係は、”美しい日本”という世界が”私”の主観的世界に依拠するものであるという川端康成の主張を示すものであると理解される。一方、英題の「Japan, the Beautiful, and Myself」では、”Japan, the Beautiful”と”Myself”は”and”という並列詞で接続されている。この並列詞により、”美しい日本”は”私”とは無関係に、ア・プリオリに存在しているかのような印象を抱いてしまう。この微妙な原題と英題のずれにこそ、川端康成が考える日本文学の特異性が最も表出しているのかもしれない。

  • 日本、自然への川端康成の愛情がうかがえる随筆集。川端康成ほどの日本を代表する作家が「日本的」について思考し追求していたことが何だか嬉しい。
    自然に溢れた春の山の風景、日本人が心に描く心のふるさと。これが日本的なものの象徴であるのかもしれない。

  • 川端康成の文学作品の秘密を少し垣間見ることのできるエッセイ集。個人的には、小説のほうが段違いで好き。

  • 角川ソフィアの「先人に学ぶ」シリーズに、随分お世話になっているなあと思う。

    何をどのように編むか、というのはその人の主観もあって、でも普遍性も必要で、難しい作業ではないだろうか。
    今回は「美と日本文化」をテーマとした作品を再編集したとのことだ。

    私が読みたかった「美しい日本の私」。
    解説には最初「美しい日本と私」であり、英語でも「Japan the Beautiful and Myself」であるのだが、川端の手によって「と」が「の」に変えられたという。
    これだけでも、もう充分に面白い。

    こうして同じテーマを追いながら編んでいくことで、似通ったもの、根底に流れている思いが浮かぶ。

    「すぐれた芸術作品は、一つの文化が爛熟して、まさに頽廃に傾く一歩手前の時に生れることが多いようである。鎌倉時代や室町時代に、作家としての天分が紫式部に劣らぬ人はいたかもしれないが、源氏物語に近づく小説は一つも出なかった。時代の運命であろう。」(「私の考え」より)

    「日本の物語文学は「源氏」に高まって、それで極まりです。」(「美の存在と発見」より)

    「明治は明らかに勃興の時代でありましたが、「明治百年」の今日がまた勃興の時であるのか、あるいはこれでもすでに爛熟の時にさしかかっているのか、やはり自分がその時のなかにいては、見定めにくいのですけれども、わたくしは未熟の時のように感じています。」(「日本文学の美」より)

    そして、後半では「末期の目」として、自殺した芸術家への批判を述べた作品が収録されている。

    「この安心のままいつしか芥川氏の死の年に近づき、愕然として故人を見直せば、わが口を縫わねばなるまいが、そこはよくしたもので、自分を恥じる一方、さては自分はまだまだ死なぬのであろうというような、別種の安心に甘えるのである。」

  • 川端康成が、このような随筆を書いていたとは知りませんでした。
    文化という中から「美」という側面を切り出し、
    日本の古典文学なども例に挙げて語っているようです。
    私のような凡人にはよく分かりませんが、ある意味鈍感でもあり、鋭敏でもあるという不思議な感覚を覚える文章です。
    いずれにしても、「文化」というものは、長い時間をかけて育まれてきたものが多いのでしょうし、そのようなことに対しての歴史を知ることや、自分なりの理解をもつことが大事だと思わせられます。

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