機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ〈上〉 (角川文庫―スニーカー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044101312

作品紹介・あらすじ

人類が、増加する人口のはけ口を宇宙に求めてから、すでに一世紀以上が経過していた。宇宙世紀0100年代。シャア・アズナブルが起したネオ・ジオン抗争をくぐりぬけたハサウェイ・ノアが体験する、新たな闘い。ミノフスキー・クラフトを搭載したΞ(クスイー)ガンダムが、紺碧の空に乱舞する-。アニメ界の巨星が綴る、遥かなる魂の伝説、圧倒的な人気に応えてここに再び登場なる。

感想・レビュー・書評

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  • 劇場版を見たので、原作も読んでみたくなり購入です。
    富野さんの小説はもうちょっと分かりづらい印象だったんですが、先に劇場版を見ているせいか、なんだかすごくわかりやすくて読みやすいですね。ちょっと前に読んだ「逆襲のシャア」なんかにくらべて、格段にわかりやすい。
    最後のΞとペーネロペーの対決は、小説版はかなりあっさり決着が付いた感じ。劇場版はさすがに動きがあるせいでもうちょっと盛り上がりましたね。

  • 2021年、もうすぐ公開される機動戦士ガンダムの新作映画、「閃光のハサウェイ」の原作本3部作の一本め。富野由悠季御大の筆によるものだけど、初版はなんと平成元年だから、すでに33年前の作品であり、それを令和の今上映するっていうのは、なんとも遠大と言うか、あらためて驚くべきというか、ガンダムの成せる業というべきか。
    正直映画の予習にと読み始めたわけだけど、読んでる途中で映画も3部作と知って、そこまでして描く内容とも思えず(面白くないわけじゃなく)、せめて前編後編の2作で映画なら事足りるのではと思わさせられた(まだ1/3しか読んでないわけだけど)。
    何より、Zガンダム以降、富野ガンダムに出てくる“ウザい女子キャラ”が、今回もご多分にもれず出ているわけで、それを3話もお金出してみることにすでにうんざりしてしまっていたりする(「逆襲のシャア」でさえ、クェス・パラヤのせいで、一本でうんざりしてあまり観たくないのに!)。
    まぁ、とりあえずあと中と下の2冊は読んでみるし、映画もとりあえず観に行くけど、どうなるものやら。。
    →その後の映画の感想:モビルスーツの戦闘シーン良かったよ!それだけっとも言えるけど、それで全然OKだった!

  • テロリズムを考えるための作品。今年映画が公開される、富野監督による『閃光のハサウェイ』の原作小説。大昔、確か中学か高校の頃に読んだはずだったのに、当時はガンダムが出てこないことにしびれを切らして楽しく読めなかったことしか憶えてない。今回再読して唯一、ああ、昔読んだなと思い出せたのは79頁でハサウェイがジンジャエールを頼む行だった。確かここを読んでから、それまで飲んだことがなかったジンジャエールを積極的に飲むようにしたことを今も憶えている。

    閑話休題。『閃光のハサウェイ』は、富野監督のガンダムにしては珍しく、最初からテロ組織が主役の作品である。1stガンダム、Zガンダム、ZZ、逆襲のシャアは全て、地球連邦軍(正規軍)の独立行動部隊、ホワイトベースだったりエゥーゴだったりロンド・ベルだったり、色々あるけれども、とにかく官軍のはぐれ部隊だった。『閃光のハサウェイ』でハサウェイが指導者を務めるマフティー・ナビーユ・エリンは腐敗した地球連邦政府の高官の粛清(暗殺)を任務とする秘密組織、革命運動でもテロ組織でも呼び方は何でもいいけど、とにかくテロリスト集団である。尤も、マフティー結成の背後にいたクワック・サルヴァーなる人物は元地球連邦軍の将官で、連邦政府に反旗を翻してマフティーを結成したという背景が語られているので(234-235頁)、実態としてマフティーはZとZZのエゥーゴに限りなく近いのかもしれない。因みにマフティーの語源が本書28頁でスーダン語だと説明されている通り、19世紀にイギリスのゴードン将軍によるスーダン侵略を打ち破ったマフディー(救世主)・ムハンマド・アフマドに由来している。ZZでやたらアルジェリアの話や、グレミーの科白からカミュの言葉が出てきた辺り、80年代後半の富野監督はアフリカに特別の関心があったらしい。

    さて、本書の上巻では、このテロ組織マフティーが地球の人々から広汎な支持を集めていることが何度も何度も描写されている。本書第10章(118-135頁)の「ハンター」では、地球に滞在するための正規の居住許可証を持たない宇宙出身者を強制送還させる地球連邦の軍警察組織「ハンター」が、地球(本書で舞台になっているのはフィリピン南部のダバオ)の人々の怨嗟を集め、地球連邦政府へのマフティーのテロリズムを人々が支持している様子が描かれている(125-126頁)。また、地球連邦軍がマフティーを制圧する際に、連邦軍の武力行使の方がマフティーよりも多くの民間人を殺傷している描写もある(連邦軍による市街地への被害を考慮しないミサイル使用。155-156頁)。特に前者のビザ無しの不法滞在民を2000年代以降の先進資本主義国がどのように扱っているかを思えば、本書が30年前に書かれていたことの先見性には舌を巻く。

    にもかかわらず、富野監督が偉いと思うポイントは、富野監督が決してマフティーことハサウェイを、大義のためならどれだけ犠牲者を出しても問題ではない、と考える人物には設定していなかったことであろう。


    “「マフティーの言う正義の爆撃で、いったい何人の民間人が、死んだと思う? 三百人をこえたんだぞ…?」
    「そうか……」
    ハサウェイは、憂鬱になって、自分の部屋にもどろうとした。
    「そっちじゃない。民間人は、そっちは出入り禁止だ。」
    「あ……? ごめん……」
    「どうした?」
    「いや、マフティーがはっきりとした戦いの目標をかかげても、そんなに人を殺していれば、いつかはマフティーが生贄になるなって、そう思って……」
     それは、ハサウェイの実感である。
     ケネスは、ハサウェイとの会話のなかから、なにか危険なことを感じたにしても、ここまで会話をしてしまえば、ハサウェイは、彼との関係は、どうでもいいことのように思えた。
     しかし、その上でも、この結論にたどりつくのは、切ないものであった。
    「そうだよ。おれが、奴の首を刎ねてくれる」
    「……頼むよ。大佐…全面的には賛成はできないが……」
    「それはそうだ。おれだって、同じさ。自分の立場に、全面的に賛成しているわけじゃない……」”
    (本書205-206頁より引用)


    自ら選んで腐敗した地球連邦政府打倒のための革命家・テロリスト・ゲリラ戦士となったハサウェイは、しかし、自らが行うテロリズムの犠牲者に心を痛めてしまう完成の持ち主だった。というよりも、現実のテロリスト達の少なからぬ人々がそうであった通り、そういう感性の持ち主でもなければ思想で武装闘争を始めようとは思わないだろう。「マフティーがはっきりとした戦いの目標をかかげても、そんなに人を殺していれば、いつかはマフティーが生贄になるなって、そう思って……」。1954年に滞在していたグアテマラの民主的に選出されたアルベンス大統領がCIAによるクーデターで倒されたのを目の当たりにしたことを契機に、医者からゲリラ戦士へと転じたチェ・ゲバラは、革命は愛の実践であると語りながらもキューバ革命勝利後に旧バティスタ政府軍の要人を大量処刑した。だからこそゲバラが『ゲリラ戦争』で示した自らの極左戦術の無効性を証明する形で、ボリビアで処刑されたことには、一応はテロリストとしての筋は通っているのである。本書のマフティーことハサウェイもゲバラと同様だったのであろう。自らの行うテロリズムに胸を痛めながら、大義のために手を汚す。長生きできるタイプではない。本書130頁でマフティー=ハサウェイが憧れる人物としてシャアを回想しているが、遥か昔に小説を読み、映画を観た『逆襲のシャア』で描かれたシャアは、独善としか言いようのない発想で地球に隕石(アクシズ)を落とそうとするオウム真理教のような人物にしか見えなかった。本作でシャアと同様の問題意識(地球連邦政府の腐敗と、地球環境の破壊)を抱きつつも、テロリストであるハサウェイを大義に狂った人物にしなかったのは、大きな救いになっていると、私は思う。

    最後になるが、本書でもう一点印象に残ったのは、ハサウェイがΞガンダムを受領するための合流地点に向かう際の少年との会話であった。

    “「しかし、マフティーは、地球にいる人間はみんな宇宙に住まなければならないっていっているのは、認めるのかい?」
    「そこがちょっと賛成できないんだけどね。地球が汚染されているっていう話は、おれにはわからないけど、みんなが宇宙に住んで、地球を自然のままにした方がいいっていう話は、わかるよ。観光だけはやってさ……」
    「そうすれば、君は失業しないものな?」
    「そうさ……地球連邦政府って、偉い連中は好きに地球におりられて、普通の人は、おりられないってのは、こういう仕事をしているとわかるんだ。連中は、金の使い方や口のきき方でわかるからね。偉い連中は、おれたちをバカにしているもの」
    「じゃ、ぼくもそうだな……」
    「そうだね……特権階級でなければ、地球におりて来られないものな」
    「嫌いかい?」
    「……それはいいっこなしにしよう。人は、知らないことは知らないまま、バカはバカのままの方が楽だって……」
    「すごいな……君は……」
    「宇宙の人間は、地球に住めるだけで、幸せだっていっているらしいけど、そりゃウソだぜ? 偉いさんたちの面倒をみる仕事をさせられて、奴隷みたいなのいるんだから。だから、なにも考えないようにしているんだ」
    「フーン……」”
    (本書224-225頁より引用)

    不法移民に対する先進資本主義国の取り扱いの話を上述したが、不法移民が万難を乗り越えて中央アメリカから北アメリカへ、アフリカや中東からヨーロッパに入ったところで、そこは決して楽園ではない。「宇宙の人間は、地球に住めるだけで、幸せだっていっているらしいけど、そりゃウソだぜ? 偉いさんたちの面倒をみる仕事をさせられて、奴隷みたいなのいるんだから。だから、なにも考えないようにしているんだ」。もし移民の2世、3世が、今後公開される映画のこのセリフを聞いた時(できればここは映画化に際してカットしないで欲しいと私は思っている)、どんなことを感じるのだろうか。

    以上、上巻の書評となった。中巻と下巻が楽しみでならない。

  • 逆襲のシャアから12年大人になったハサウェイ。
    物語はよかったけど、ガンダムはアニメじゃないと、ダメだとおもった。アニメじゃないと。

  • おもしろいけど、地味

    ただ相変わらず男女の表現が、YESですね!

  • ガンダムが好きなら文句無しの超オススメ。

    映画もありますが、小説を読んでおかないと話の流れが掴みにくかったなと思いました。

    小説を読んでから映画を見ると「そういうことか!」となると思います。

    世直しのためにテロという選択をした少年。昨今の様々な情勢も踏まえて、読んでいて色々と考えさせられました。

  • ハサウェイ・ノア
    ギギ・アンダルシア
    ケネス大佐
    レーン・エイム

    マフティー・エリン

  • 初版が1989年、私が読んだのは2023年3月の第72版ってどれだけ年月が経っても読まれ続けてるんだろ。三部作のひとつ目なので感想も何もないですが、ブライトさんとミライさんの長男、Zと逆襲のシャアで少しだけ成長の過程を見てきたハサウェイ君が気になるので中巻に突入します。

  • なんとな~く結末は知っているのだが、映画を観たので折角ならと原作にも手を出した次第。
    一先ず上巻のみ。
    いざ読むと映画は割りと原作に忠実で+αで新たな(映像)演出を加えた良作だったと改めて解る。
    街中での地上・空中戦闘の緊迫感もしっかり伝わった。小説は小説でハサウェイやケネス、市民の考えは割りと丁寧に書かれていて、読みづらい会話の妙も助かってか互いの思想の相容れなさが伝わる。でもギギの思考だけは読めん。
    続きがとても気になるところだが第二部公開はいつになることやら。

  • ギギちゃんの絵がかわいい。

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著者プロフィール

とみの・よしゆき 「機動戦士ガンダム」シリーズの総監督にして原作者。多くのヒットアニメシリーズを手がけているほか、ノベライズ、オリジナル作品も含めて50冊以上の著作がある。

「2010年 『リーンの翼 3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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