さみしさの周波数 (角川スニーカー文庫)

著者 :
制作 : 羽住 都 
  • 角川書店
3.54
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レビュー : 586
  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044253035

作品紹介・あらすじ

「お前ら、いつか結婚するぜ」そんな未来を予言されたのは小学生のころ。それきり僕は彼女と眼を合わせることができなくなった。しかし、やりたいことが見つからず、高校を出ても迷走するばかりの僕にとって、彼女を思う時間だけが灯火になった…"未来予報"。ちょっとした金を盗むため、旅館の壁に穴を開けて手を入れた男は、とんでもないものを掴んでしまう"手を握る泥棒の物語"。他2篇を収録した、短編の名手・乙一の傑作集。

感想・レビュー・書評

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  • 人生の機微や悲しさ、愛おしさ、そして、残酷さまでも、余すことなく、乙一さんらしい、淡々と乾いた語り口の文体で書き記した短編集。

    収録作品は以下の4編。
    「未来予報」
    人生の不確かさと、別れの悲しみ、それでも残った希望が、一人の男性の少年期から青年期を通して描かれた作品。

    「手を握る泥棒の話」
    金策のため、窃盗を試みた男。大金の入ったカバンを盗もうと、外から穴を開けた押入れの向こうに手を伸ばしたけど、掴んだのは少女の手で…。

    「フィルムの中の少女」
    大学の映画研究会に所属する内気な女学生。彼女は部室で謎のフィルムを見つける。
    再生したところ、画面には映るはずのないものが写っていて…。
    怪談としてはシンプルかつベーシックな展開。
    けれど、恐怖と悲しみにかられながらも謎を追う女学生の人生の岐路に関わる描写が、幽霊の少女のそれと巧みに重ね合わせ、織り交ぜられているおかげで、不思議と胸に残りました。

    「失はれた物語」
    交通事故で植物人間状態となった男性。彼は、わずかに右手の人差し指だけが動かせた。
    そのわずかな感覚だけで、妻や娘と意思疎通を図ることに。
    しかし、動かない肉塊として家族の重荷となっていることを痛感した彼が選んだのは…。

    抑揚の少ない語り口なのに、決して味気ないということはなく、むしろ、人生の岐路の捉え方、そこに至るまでのきめ細やかな感情の変遷の描き方が、強く心に残る作品でした。

  • 別名義の中田永一の短編集が面白かったので、古本屋で見つけて手に取ってみた。
    いわゆる「奇妙な味の小説」短編集。4編の中では、コメディタッチの「手を握る泥棒の物語」が好み。
    「失はれた物語」は小川一水の短編小説を思いだした。オチのつけ方はだいぶ違うけどね。全体を通してホラー作家っぽさがでている作品集。

  • 未来には不安が待ち構えている。過去には後悔がたたずんでいる。人生を送るというのは、どんなに難しいことなのだろう――。

    未来を垣間見る能力を持つという同級生の何気ない言葉で変わった関係。すべてが終わり、思い出となった今、改めて思う彼女のこと……『未来予報』
    小金を持った伯母のバッグを失敬しようとした男がつかんだ手。文字通りのちょっとした手違いによって変わる運命……『手を握る泥棒の物語』他2篇。

    封印した、紛失した、奪われたものへの追慕。名前の付かない関係、形にならない願い、叶わなかった思い、見ることのない未来。やり直せない過去。それらのことを考えるときに感じるこころぐるしさ、やるせなさ、胸の底に沈む澱を感じるとき、それを「さみしさ」と呼ぶのではないでしょうか。
    そんなことを考えさせられる短編集。

  • 数年ぶりに再読。多分10年くらい経ってる。
    初めて読んだ乙一作品で、自分が持ってる唯一の乙一作品。

    書名の通りの4編だと思った。かなしいとは少し違う感じで、さみしいという言葉が確かに合う。何かをなくしたあとが描かれた4編。

    前に読んだときも思ったけど、自分にとって一番面白かったのは「手を握る泥棒の物語」。

    でも一番印象的なのは「失はれた物語」。実際、内容を比較的しっかり覚えてたのはこれだけだった。

    前はあまり覚えのなかった「未来予報」の古寺が気になる。
    古寺視点の「未来予報」や、古寺自身の物語を読んでみたいと思った。

  • 表題のタイトルの話がない短編4編の本。
    内容にあったいいタイトルつけたなとおもいます。

    手を握る泥棒の物語が明るいお話で好き。

    相変わらず切なさが詰まっています。

  • 「未来予報」「手を握る泥棒の物語」「フィルムの中の少女」「失はれた物語」の4つの短編が収録されています。<br>
    一言でいうとこの本も、乙一さん作品が俗に言われている通り「せつない」です。ライトノベルだったから手出しにくくて今頃読むことになったのですが...、やっぱり好きだなぁ。この作家さん。<br>
    <br>
    「未来予報」<br>
     青春を感じる爽やかなイメージ。天気など情景の描写がすごく綺麗。<br>
     この話を思い出すと、雨・雹・雪・青空などが自然と頭の上に広がる。<br>
    <br>
    「手を握る泥棒の物語」<br>
     最初はそんなに面白くもなく、読み進めていったけど、オチがすごく<br>
    いい。笑いも入っているし、4編の中では読後感が一番良い。満足する。<br>
     腕時計もほしくなるし。<br>
    <br>
    「フィルムの中の少女」<br>
     喫茶店で、少女が小説家の先生へ発する言葉しか書かれておらず、<br>
     小説家がどう返答したのかが見えないので、最初はちょっと全容を<br>
     把握しにくいかも。・・・それにしても面白い書き方だ。<br>
     一番「世にも奇妙な物語」っぽい。ちょっと怖くて、最後はやっぱり<br>
     すっごくせつない。寂しい。<br>
    <br>
    「失はれた物語」<br>
     最初からすごく引き込まれるんだけど、なんだか読んでいると痛ましく<br>
     て苦しい。淡々と書かれているからかも知れない。抗いようもない無力<br>
     感を感じる。<br>
     音も色も描写されていないため、主人公の置かれている境遇、感覚を<br>
     そのまま読みながら感じる。五体満足ってすばらしい。奥さん偉いよ。<br>

  •  何年か前に読んだ「GOTH」があまり好きではなかったので乙一さんにはしばらく関心を向けていなかったのですけど、友人が短編集をすすめてくれたので手にとってみました。これは角川スニーカー文庫から発行されているもので、4本の話が入っていました。<br>
    <br>
    ・「未来予報」<br>
     前に立ち読みした「CALLING YOU」と似た系統の話だなーと思ったくらい。同じ切ない系の話だったら「CALLING〜」のほうが好きだなあ。<br>
    <br>
    ・「手を握る泥棒の物語」<br>
     これはいい。好き。あたたかくて、よかったねーと素直に思えるような話でした。ラストシーン、彼女が彼の手を握って表情を変えるところなんか、映像作品にしたら素敵な感じになりそう。「世にも奇妙な物語」なんかで取り上げればいいんじゃないかしらん。<br>
    <br>
    ・「フィルムの中の少女」<br>
     語り手の少女の暗くてゆっくりしてて「……」が多い口調がそれだけで怖くて、てっきり怖い話なんだろうなと思ったら良い話オチで終わってしまいました。ちょっと拍子抜け。私絶対、語られてる側が犯人で、最後この語り手の子殺されて終わりなんだろうと思ってたら全然違った(笑)<br>
    <br>
    ・「失はれた物語」<br>
     感動的な話でしたー。家で読んでたら絶対号泣してた。<br>
     奥さんとぎくしゃくしてた男が事故に遭って、右腕の触覚以外の感覚がすべて失われてしまう、という話でした。<br>
     高校時代、「接触」というテーマで小論文を書いたことがあります。映画「ゴースト」を例に取り上げて、死んで幽霊になった主人公はものに触れない身体になってしまうというところから、何かに触れることと、自分の存在とそのものの存在を確かめること、「生きている」ことはイコールと言えるんじゃないか、みたいなことを書いたんです確か。<br>
     そのことを思いだしました。<br>
    <br>
     夫の右腕に触れ、皮膚の上に言葉を紡ぐことで彼と外の世界をつなごうとする妻。ピアノが得意な彼女が、夫の腕を鍵盤に見たてて曲を弾き、夫はそこから耳には聞こえない音楽と、演奏する妻の感情や思いまでもを感じ取る――というシーンがすごく綺麗でした。同時に切なくもあったわけですが。<br>
     この作者さんの文章って淡々としていて、どこか突きはなしたようで、あまり感情の起伏が感じられないような気がするのですが、この小説ではその文体が特に効果的だったように思います。切ない話なのだけど、とくにラストなんかかなり悲しいのだけど、それでも悲痛になり過ぎなくて。 (2004/9/17)

  • 白乙一を楽しむにはあまりにも汚れちまった悲しみ…

  • 乙一さんの本ははじめて読んだ。それほど期待していなかったが、予想よりはるかによかった。まず、本の表題がよい。入っている短編の題とは違うので、別につけたのだと思われるが、全体をうまく一体化させている。作品のなかでは、手を握る泥棒の物語、失はれた物語がよかった。特に失はれた物語の、腕を鍵飯にしてピアノを弾くという部分は、なんというか、グッと来るものがあった。
    あと、挿絵が凄い。羽住都さんというイラストレーターの方が描いたそうだが、見いってしまった。

  • ちょっと不思議で、
    感情に繊細な作品だった。

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著者プロフィール

乙一(おついち)
1978年福岡県生まれ。山白朝子(やましろ あさこ)、中田永一(なかた えいいち)の別名義で執筆する小説や、安達寛高(あだち ひろたか)という本名名義で脚本を記すこともある。
1996年に『夏と花火と私の死体』で、第6回集英社ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞してデビュー。
2003年『GOTH リストカット事件』で第3回本格ミステリ大賞受賞。2012年、『くちびるに歌を』(中田永一名義)で第61回小学館児童出版文化賞。
代表作として、映画化もされた本屋大賞ノミネート作『くちびるに歌を』のほか、『暗いところで待ち合わせ』『きみにしか聞こえない CALLING YOU』『失はれる物語』などがある。作品の多くが漫画化、映画化された。

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