- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044253035
作品紹介・あらすじ
「お前ら、いつか結婚するぜ」そんな未来を予言されたのは小学生のころ。それきり僕は彼女と眼を合わせることができなくなった。しかし、やりたいことが見つからず、高校を出ても迷走するばかりの僕にとって、彼女を思う時間だけが灯火になった…"未来予報"。ちょっとした金を盗むため、旅館の壁に穴を開けて手を入れた男は、とんでもないものを掴んでしまう"手を握る泥棒の物語"。他2篇を収録した、短編の名手・乙一の傑作集。
感想・レビュー・書評
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4編の短編集。
好印象だった【さみしさの周波数】という表題。
しかし読み進めど、まったく感情が揺さ振られない、事前期待を超えてくれない。
読むことを諦めそうになったとき、最終編〈失はれた物語〉で救われた。唯一、周波数が合った。
もしもある日突然、右手以外の感覚の全てを失って意思表示もできない、ただの肉塊になってしまったら…
絶望感。罪悪感。想像するだけで苦しい。苦しいに決まってる。自分も、大切な人も。
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人生の機微や悲しさ、愛おしさ、そして、残酷さまでも、余すことなく、乙一さんらしい、淡々と乾いた語り口の文体で書き記した短編集。
収録作品は以下の4編。
「未来予報」
人生の不確かさと、別れの悲しみ、それでも残った希望が、一人の男性の少年期から青年期を通して描かれた作品。
「手を握る泥棒の話」
金策のため、窃盗を試みた男。大金の入ったカバンを盗もうと、外から穴を開けた押入れの向こうに手を伸ばしたけど、掴んだのは少女の手で…。
「フィルムの中の少女」
大学の映画研究会に所属する内気な女学生。彼女は部室で謎のフィルムを見つける。
再生したところ、画面には映るはずのないものが写っていて…。
怪談としてはシンプルかつベーシックな展開。
けれど、恐怖と悲しみにかられながらも謎を追う女学生の人生の岐路に関わる描写が、幽霊の少女のそれと巧みに重ね合わせ、織り交ぜられているおかげで、不思議と胸に残りました。
「失はれた物語」
交通事故で植物人間状態となった男性。彼は、わずかに右手の人差し指だけが動かせた。
そのわずかな感覚だけで、妻や娘と意思疎通を図ることに。
しかし、動かない肉塊として家族の重荷となっていることを痛感した彼が選んだのは…。
抑揚の少ない語り口なのに、決して味気ないということはなく、むしろ、人生の岐路の捉え方、そこに至るまでのきめ細やかな感情の変遷の描き方が、強く心に残る作品でした。
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全体的に切ない話が多かったです。個人的には、フィルムの中の少女と失はれた物語が好きです。
「フィルムの中の少女」は文体の影響もあり、ホラー展開かと予想して読み始めましたが…どうにも切ないです。やり切れないけど、誰かに気付いて欲しくて、主人公が引き寄せられた…主人公は少女と似ていて共鳴しやすいのかもしれません。
「失はれた物語」は辛いですね…閉じ込め症候群の方は同じように感じ、生きているのだろうかと思いました。中には主人公のような選択をする人もいるかもしれません。
この完全な孤独に人は耐えられるのだろうか…人は繋がりがないと絶望してしまうのではないかと感じたお話でした。生きていると言うことは、人や環境と繋がっていると言う事が強く感じられます。
切ない系のお話が好きな人には良い作品だと感じました。 -
羽住都さんのイラストがとても印象的だった。
哀切さが沁みる。
手を〜と失われた物語は、失はれる物語で掲載されていたので2回目。
未来予報の切なさが好き。
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別名義の中田永一の短編集が面白かったので、古本屋で見つけて手に取ってみた。
いわゆる「奇妙な味の小説」短編集。4編の中では、コメディタッチの「手を握る泥棒の物語」が好み。
「失はれた物語」は小川一水の短編小説を思いだした。オチのつけ方はだいぶ違うけどね。全体を通してホラー作家っぽさがでている作品集。 -
未来には不安が待ち構えている。過去には後悔がたたずんでいる。人生を送るというのは、どんなに難しいことなのだろう――。
未来を垣間見る能力を持つという同級生の何気ない言葉で変わった関係。すべてが終わり、思い出となった今、改めて思う彼女のこと……『未来予報』
小金を持った伯母のバッグを失敬しようとした男がつかんだ手。文字通りのちょっとした手違いによって変わる運命……『手を握る泥棒の物語』他2篇。
封印した、紛失した、奪われたものへの追慕。名前の付かない関係、形にならない願い、叶わなかった思い、見ることのない未来。やり直せない過去。それらのことを考えるときに感じるこころぐるしさ、やるせなさ、胸の底に沈む澱を感じるとき、それを「さみしさ」と呼ぶのではないでしょうか。
そんなことを考えさせられる短編集。 -
電子書籍で70%OFFになっていたので懐かしさから再読。
白乙一の短編集。下記の4編。
・未来予報 あした、晴れればいい。
・手を握る泥棒の物語
・フィルムの中の少女
・失はれた物語
ネットで失はれた物語が話題になっているのをよく見ます。
私はフィルムの中の少女が好きです!
対話体で物語が徐々に真相に近づいていき、ホラーかと思ったら読後感は切なさもあって、という感じです。 -
数年ぶりに再読。多分10年くらい経ってる。
初めて読んだ乙一作品で、自分が持ってる唯一の乙一作品。
書名の通りの4編だと思った。かなしいとは少し違う感じで、さみしいという言葉が確かに合う。何かをなくしたあとが描かれた4編。
前に読んだときも思ったけど、自分にとって一番面白かったのは「手を握る泥棒の物語」。
でも一番印象的なのは「失はれた物語」。実際、内容を比較的しっかり覚えてたのはこれだけだった。
前はあまり覚えのなかった「未来予報」の古寺が気になる。
古寺視点の「未来予報」や、古寺自身の物語を読んでみたいと思った。
著者プロフィール
乙一の作品






そうそう!1Qさんも「失はれる物語」を読まれているので...
そうそう!1Qさんも「失はれる物語」を読まれているので、残り2話読めばよしです(。˃ ᵕ ˂ )b